The great kinoko kingdom   作:皆笠

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第十四話『椎奈先生』

「木山、隣いいか?」

昼、食堂で一人食事を取っている椎奈は背後から声を掛けられた。

流れる美しい紅髪、椎奈は軽く振り返り、その姿を確認して口を開いた。

「サクラか、別に構わないぞ」

椎奈の返答に軽く頷き、サクラは流れる動作で席に着いた。

そして、椎奈の顔をじっくりと睨み付けた。

(・・・?何でサクラはこんな怖い顔をしてんだ?)

椎奈は耐えきれず、その原因を追究すべくサクラに語り掛けた。

「ど・・・どうしたんだ?サクラ」

「どうしたもこうしたもない、木山・・・貴様は何時から氣を使いこなしていた?」

サクラの声は忌々しげで、いつもの厳しさの中に秘めた優しさが見えない。

椎奈はその口調に少し怯えつつ、正直に答えることにした。

「えと・・・サクラと模擬戦した前々日かな?」

勇者として勤める際に己の弱さを感じた椎奈は人知れずヒラの元へと赴いていた。剣術だけでないアプローチが出来れば戦い方の幅も広がるだろう、と考えた故の行動だった。

当初は魔術を学ぶ予定だったのだが、ヒラは椎奈の適性を魔術では無く、氣功術にある、と早々に気づいた。それから椎奈はヒラの教えに従い、氣功術を身に着けていった。

椎奈の返答にサクラは重い溜息を吐き、椎奈を見た。

「つまり・・・私との戦闘では手を抜いた、と言うわけか?」

サクラの言葉は的を射たもので、椎奈は少し返答に詰まった。

「あー、その・・・まだ未完成だからな、そんなもの見せられないだろ?」

椎奈はなんとかひねり出す。が、それはすぐに打ち崩された。

「では、タモギ将軍には何故使ったんだ?」

サクラの指摘は相変わらず的確、椎奈は冷たい汗の流れを感じていた。

「それはだな・・・ほ、ほら、サクラは俺が勝つ、とか言ってくれたからな。負けるわけにもいかなかったと言うか・・・」

椎奈の口調はしどろもどろ、まるで浮気を突かれた夫の様。

だが、サクラはその答えに意表を突かれたのか、そうか、と告げるだけだった。

 

それからしばらく無言で気まずいままにも食事は進み、椎奈が席を立ったところで、サクラは椎奈の服の端を掴んだ。

「えと、サクラ?これはどういう意味だ?」

「木山、教えてくれないか?私にも。その・・・氣功術を」

頬を少し赤らめたサクラの様に、椎奈はドキリとし、視線を逸らせながら告げる。

「いや・・・教わるならヒラの方が良いんじゃないか?俺に教えてくれたのもヒラだし」

サクラは嘆息。

「私は木山に教わりたいんだ。駄目か?」

「いや・・・だが、ヒラに教わった方が効率的だぞ?」

「それは分からないだろう。実践出来るのと知識のみでは違うものだ。違うか?」

「だ、だが、そもそもサクラが氣を扱えるかどうか分からないし・・・」

椎奈の言葉に答えたのはサクラではなく、場外からの言葉。

「その心配は不要だ。サクラ殿は十分に氣を扱えるだろう。勇者殿とまではいかずとも、繊細な剣術の使い手だ。氣功術において、サクラ殿はタモギ殿以上の素質はある。私はタモギ殿に集中したい。サクラ殿の指導は勇者殿に預けたいのだが・・・?」

姿は見えないが、ヒラの言葉が二人に届いた。

思わぬところから現れたサクラの援軍に椎奈は口を詰まらせ、サクラは畳みかける様に言葉を続けた。

「私は仮にも将軍だ。だからこそ力が欲しい。協力・・・してくれないか?」

「お、おう、分かった・・・だが、保証はしないからな?」

椎奈は押しに弱い。

急速に攻められた椎奈はサクラの勢いに負け、頷いてしまったのだった。

困った顔の椎奈にサクラは口を開く。

「私が氣を習得したらまた戦ってくれ、今度こそは出し惜しみがないように、だ」

椎奈は簡単に了解、とだけ返した。

 

食事後、さっそく始まった椎奈の氣功術の指導。

城から少し離れた草原で椎奈はサクラと向かい合っていた。

「まず、氣の存在を理解しなくちゃならない。えと・・・氣ってのは、こんなもんだ」

椎奈はサクラの手を取り、白い光を放ちながら氣を流した。

電流のような何かがサクラの体を流れ、ビクッと震えた。

「これが氣。自分の中に流れるものと他人の身体を流れるものは違うとは思うけど、とりあえず感じを掴んでもらおうと思ってしてみたが・・・どう?」

確認をするような椎奈の問いに、サクラは上手く答えることが出来なかった。

しなかったのではなく、出来なかった。

サクラは少しだけだが、放心状態にあり、恍惚の表情を浮かべている。

その理由は簡単で、単に心地よかったからである。氣はエネルギーである、日ごろエネルギーは食物などから地道に蓄えられるものであり、急激に摂取出来るようなものではない。

だから、突然に椎奈から渡された氣はサクラの身体を巡り、その通りがもどかしい感覚とともに強い心地よさを与えたのだった。

「・・・ん?どうした、サクラ?」

そんなサクラの状態を全く知らない椎奈は単純に不審がり、そう言った。

 

 

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