The great kinoko kingdom   作:皆笠

16 / 16
第十五話『晩秋に咲く夜桜』

「いや・・・なんでもない、木山」

サクラは咳払いをした。

「そ、そうか。話、続けて良いか?」

椎奈の問いは頷くだけの反応だった。

「普段は感じたこともないだろうけど、火事場の力ってあるだろ?ここぞというときに自分の持てる以上の力が発揮されたりとか、サクラにも経験はあるだろ?」

椎奈の言葉に、サクラは頷く。

「確か・・・木山との戦闘の最後になんとなく感じたような気がする」

椎奈はだろ?とサクラに言う。

「無意識でもあの強力さだ。意識することでコントロール出来ればその力は更に強力な物になる。とりあえず意識させるために俺の氣を流してみたけど、どう?わかりそうか?」

「なんとなくだがな・・・」

「ヒラから聞いたとは思うけど、氣は体内のみにあるわけじゃない。氣はそこらじゅうにあるんだ。体内にあるだけでは氣は賄いきれなくなる。だからこそ、氣功術は己だけじゃなく、周りの自然をも理解しなくちゃならない難しい術なんだよ。まぁ、とりあえず、体内にある氣だけでもコントロール出来るようになろうか」

「あ、ああ。分かった」

サクラは瞳を閉じ、強い集中状態に陥った。

先ほど椎奈に流された物を自分の中で模索する。

「・・・!!」

椎奈と同じものではない、だが、似た何かをサクラは発見した。

「木山、なんとなく見えた」

椎奈はフッと笑った。

「よし、それが氣だ。こんなに早く認識するとは思わなかったよ。けど、認識するだけじゃまだ足りない。コントロールはずっと難しいからな?」

「大丈夫だ、必ず習得してみせるさ」

(頼りがいのあるお言葉だ)

椎奈はそう思いながら、講義を続けていった。

 

サクラに氣を教え始めてから三日が経とうとしていた。

勉強熱心だからか、夕方になるとサクラは毎日椎奈の元を訪れ教えを乞いていた。

椎奈もそれには真剣に取り組み、午前は国王たちと議論を交わし、午後は基礎能力向上の鍛錬を行い、夕方になるとサクラと共に氣の鍛錬をする、と言う生活を送っていた。

(はっきり言って充実してるな。ここに来る前よりよっぽど)

椎奈はそう思い、だが、その気持ちをすぐに振り払って、サクラへの教えを続けた。

 

「はあぁっ!!」

サクラへ氣を教え始めてから五日が経過した。

順調な成長を見せるサクラは、体内の氣をコントロールするどころか、刀身に氣を纏うことも習得。氣を斬撃の形に集束させて飛ばす氣円斬までも習得していた。

椎奈はサクラの放つ紅色の氣が消えたのを確認してから、よし、と言った。

「サクラ、大成功だ。よくやったじゃないか」

「木山の教えが上手いからだろう。私は従っただけだ」

「謙遜はよくないぞ。自意識過剰は身を滅ぼすだろうが、自分のブランド性を下げ、ダメなやつだ、と貶めるのは自意識過剰であるよりもいただけないことだ」

椎奈の説教じみた言葉に、サクラはふむ、と悩み始めた。

こうなるとサクラは長い自己問答をする。

椎奈は話を変えるべく、口を開いた。

「それにしても、サクラの氣は紅色なんだな。髪にも似て綺麗だ」

「それを言うならば木山の白い氣も美しいものだろう。濁りが見えない」

「氣はその人の本質を見せる物だったっけかな。白は勇気、赤は情熱、黄は元気、青は冷静、緑は平和・・・とか色々あるらしい」

椎奈はうろ覚えながらもサクラに説明した。

「私は情熱か・・・ふむ、だが木山」

サクラは気になるところがあったようで椎奈に語り掛ける。

「幾ら本質とは言っても、変わってしまうことはあるのではないか?元気な者が力を失い、非力な者に変化するように」

椎奈は首を振った。

「本質は変わらないし、変われないよ。色自体は変わらない。ただ濁っていくだけだ」

「では、木山。本質はどこで決定するんだ?生まれたときに決まるとでも言うのか?」

「そんなまさか、生まれたときは黒だよ。あらゆる色が混在しているらしい。そこから次々と要素が外されて、その者の本質が決まり、氣の色も決まる、とかなんとか」

「ふむ、なるほど・・・」

サクラは納得したように首を軽く縦に振った。

 

「さて、そろそろ帰るか」

椎奈はサクラの背を軽く叩いて促す。

「あ、ああ。そうだな、もう夕飯時だ」

二人は横並びに城へと戻って行った。

椎奈の白とサクラの紅、その二人の澄んだ美しい氣は、晩秋に咲く夜桜と呼ばれ始めていることを二人は知る由もない。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。