「仕方ねぇ、何をすりゃ良いんだ?」
(非常に嫌だが、さっさと手伝ってやった方が精神衛生的にも良さそうだ)
「すくってくれるんだね?」
「非常に嫌だがな」
「なら、まずはきのこのおうこく“The great kinoko kingdom”にきてよ」
肩に乗る物体は嬉しそうな声を出すと、突如体から光を発した。
(眩しっ!!)
世界が一瞬でホワイトアウトし、意識を失った。
穏やかな光が体を温めていく。
その心地よさをもう少し感じていたかったが・・・仕方ない、起きなければ。
どうにかぐったりと意識を起こすが、未だ目は開けられない。
光が眩しく、目は開かれるのを拒絶している。
視覚はまだ働かないが、他の感覚は着実に起き始めていた。
聴覚は軽やかで楽しげなワルツを捉えており、触覚は先ほど感じたような温かさの他に、柔らかくキャベツの千切りのようなものに触れているし、嗅覚は草原を彷彿とさせる草の匂いで満たされている。
味覚は口に何もしていないわけで何も感じてはいな・・・草の匂い?
急激に意識が現実(?)に引き戻された。
まさしくバッと起き上った。
目の前に現れたのは地平線の彼方まで広がる草原。
「やっとおきたんだね~」
伸びやかな声に視線を向けると、そこには・・・っ!!!
「まちくたびれてたよ~」
「誰だお前」
ついついそんな言葉を口にしてしまっていた。
「やあ、ぼくはきのこ」
「はぁ!?」
あの精神を破壊していくような物体は、美幼女に変わっていたのだった。
「にんげんのせかいにいくにはたくさんのえねるぎーがひつようなんだよ~」
(なるほど、それであんな、まんまのキノコの姿をしていたのか)
手はおろか、口すらないから、どこから声が出てんのとか、色々考えさせられて、心が疲れてたところだ。
(つかさ・・・)
傍らに立つ美幼女(元キノコ?)を睨み付ける様に見た。
「どうしたの~」
「・・・お前、女だったんだな」
「む~、ひどいよ~。たしかにきのこにせいべつなんてないけど、ぼくはりっぱなれでぃーなんだよ?」
(レディーっつうか、思いっきり幼女だけどな)
赤い帽子は笠のつもりなのか、ベージュの服は柄のつもりなのか、顔が可愛いのがなんかむかつく。
「声も中性的だったし、お前、キノコの姿だったしな」
美幼女はむ~、と悩むポーズをした。
(・・・間違いないな、コイツとあの物体はおんなじだ)
「つか、しめじだったよな?」
(どう見ても、よくあるファンタジーキノコ姿じゃないか)
だが、キノコは声に怒気を含ませて、言い放った。
「ちがうよ、ぶなしめじだよ、ほこりたかき“ぶな”しめじだよ」
コイツは意味不明なところに拘っているらしい。
「はいはい」
「そんで、ここが・・・その、キノコの国なのか?」
「うん、そうだよ~」
落ち着け、と頭を撫でてやると、コイツはいつもの調子を取り戻した。
「んで、俺はここで何をすりゃ良いんだよ」
「何から話せば良いのかな~」
キノコは座り込み、その隣に俺も座り込むことにした。
「とりあえず、名前を聞いていいか?じゃないと呼びづらい。いつまでもお前、とかで呼んでるわけにもいかないしな」
キノコはにへら~、と穏やかな笑顔を浮かべ、もはや聞きなれた伸びやかな声で言った。
「そうだね~うん、“らふれ”なんてどうかな?」
(ラフレ・・・ん?もしかしてラフレシアが元ネタなのか!?)
(何故ぶなしめじと自称した奴がそんな名前なのかは疑問が残るが・・・まあ、そんなことはどうでもいいか)
「よろしくな、ラフレ。俺は木山 椎奈(きやま しいな)だ」
「よろしくね、しいなっ」
(可愛い幼女の姿をしたキノコ、ラフレと異世界にやってきてしまった)
了
今回から、キノコ界入りです。
たぶん続きます。。。