「キノコの国って言っても、それほど変わらないんだな」
(まだ少ししか見ていないが、想像とはまるっきり違う)
想像の中では、ジメジメとした、あからさまにキノコの好むような場所だと思っていた。
しかし、流石に現代の日本、とまではいかないが、中世のヨーロッパ辺りの建設技術くらいはあるらしい。
目覚めた草原から歩いていると、ちらほらレンガ造りの家々が見受けられた。
都会の少し煙くさい空気にも慣れてはいたが、自然に包まれた今の状態は、新鮮な空気が肺に充満し、心地よかった。
「そうかな~そうかも~」
ラフレは伸びやかな声を返す。
(んで・・・)
ここに来て色々なことを感じた。
だが、それを感じた上で敢えて思ったことを言う。
「この世界のどこがピンチなんだ?」
むしろ平和にすら思える。
どこにも危機なんて見受けられなかった。
「うん、じゃあ、まずはぼくのくにまできてもらおうか~」
ラフレは歩を少し速くした。
・・・それでもずっと遅いのだが。
しばらく歩くと、日が沈みかけ、空は清々しい青から茜色に変わった。
この世界と椎奈の世界の時間経過はそれほど変わらないらしい。
「まだ着かないのか?」
傍らを歩くラフレに問う。
「う~ん、もうすこしじゃないかな~」
(さっきそう言ってから既に一時間は経っているんだが?)
苦言を呈したい気持ちに駆られながら、どうにか椎奈は抑えた。
もう、しばらく歩いた、既に日は沈み、暗い中を進む。
「・・・なあ?」
「・・・ん?」
呆れと憂いを混じらせながら、ラフレを見た。
ラフレはのんびりと歩き続ける。
「まだなのか?」
「そうみたいだね~」
足が疲れてきて、腹も減ってきた。
「少し休まないか?」
「そうだね~」
ラフレはようやく進みを止めた。
延々と歩いていた中、その疲労感はちっとも窺えない。
ラフレは周りを見渡してから、ゴソゴソと肩掛けの鞄から荷物を取り出した。
「やどやでもあればよかったんだけどね~ないからしかたないや~」
取り出した荷物を野に放ち、ゴソゴソと何やらいじると、その荷物は急に膨らみだした。
(ふむ・・・材質は布みたいなもの、膨らんだ時の大きさはどうにか四人程度が入れそう、形は三角錐、色は黄色をベースになっている・・・うん、これ完璧にテントだ)
膨らみきったソレにラフレは入り、内部を明るく灯した。
それから、椎奈を内部に誘う。
「おいで~」
色々突っ込みたいポイントはあったが、まずは一つだけ言わせていただくことにした。
「明かりあったのかよっ」
何故暗い夜道を歩かなければならなかったのか、ひたすら疑問になった。
夕飯としてラフレが用意したものは、意外にも普通の料理。
「へえ、美味いじゃん」
ラフレはにへら~と微笑んだ。
「いがいかもしれないけど、ぼくたちだってきのこはたべるからね?」
「確かに意外だな。同族を食うなんて真似はしないものだとばかり思ってた」
「うん。でも、いきてるきのこをたべたりはしないよ。なくなったきのこをとむらうきもちでしみじみとたべるの」
少し悲しそうな顔でラフレは語る。
「きのこはしんだらほんらいのすがたにもどるんだよ。ほんらいのきのことしてのすがたに・・・」
(だから、食べられる、人間にはありえないが、キノコらしい習慣だ)
それにね、とラフレは続ける。
「とむらうきもちもだいじだけど、あじわうのもだいじなんだ~。おいしいんだよ?」
ラフレはいつもの笑顔で言った。
「だからね、もしぼくがしんだら・・・」
「無いだろうが、もしあったら美味しく食ってやるよ」
ラフレは驚いたような顔を浮かべるが、すぐにいつもの気の抜けた笑顔を浮かべて言う。
「・・・うん、ありがとね~」
(今日はキノコの独自の習性を学んだ、あと同じテントで寝た。)
了
どうも、皆笠です。
個人的に書いてて楽しいのですが、一話の様なカオスが出来ず、単なるシリアスになってきていることが、なんとなく心残りだったりします。
(;´・ω・)
しかし、カオスって難しいんですよね。
今後もシリアス寄りになりますが、それでも良ければよろしくお願いします。