The great kinoko kingdom   作:皆笠

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第六話『宴の陰で』

「ふう、少し食いすぎたな・・・」

パーティーは続き、いつの間にか日は落ち、城の明かりが夜の闇を照らしていた。

異界での食事の美味しさに舌鼓を打ち、色々と食べては飲み、人々との触れ合いをしていた椎奈だったが、いつの間にか満腹になり、夜風を浴びるため、一人テラスへと出た。

(・・・ん)

誰もいないと思っていた場所には先客がいた。

「こんなところでどうしたんですか、国王様」

椎奈は見えたシルエットから判別し、声をかける。

シルエットは椎奈の方を向き、苦笑を浮かべた。

「まあ、なんだ、少し酔ってしまってな」

「こんなところで一人だなんて、襲撃されでもしたらどうするんですか?」

椎奈はこの世界の平和から、そんなことは無いだろうと思っていたが、敢えて口にした。

国王は困った様に頭を少し掻いて、口を開く。

「まあ、確かにそうかもしれないな・・・」

そう言ってから、国王は嘆息、そして、真剣な顔へと移った。

空気が変わった。

もはやこれからはパーティーのような楽しいものではない、とでも言うような雰囲気を国王は息一つで急激に移らせた。

「椎奈君、少し話さないかね」

「ようやく、ですね」

「ああ、すまない、私にも少し事情があってな」

「ラフレ・・・でしょう?」

椎奈の言葉に国王は驚いたような顔を浮かべた後、穏やかな顔で頷いた。

(まだ幼いラフレに聞かせることではない、だからこそ用意されたのがこのパーティーだった。人の多く集まるパーティーならば、ラフレと離れることも不思議ではなく、二人きりと言う場を用意することもずっと容易になる。まったく、手の込んだことをしてくれる。楽しめたからいいけど)

「唐突だが、椎奈君、君に問いたいことがある」

国王は椎奈に酔いを感じさせぬ声で語り掛ける。

「君は・・・突然に自分の絶対的な常識が、当たり前だと思えていた物が崩され、壊されたらどう思う、またはどうなるかね?」

何のことか椎奈にはさっぱり分からなかったが、国王の言葉は冗談で言っているわけではないことを感じ取っていた。

「信じてた物とか事に裏切られるなんて、そんなことはいつもだと思いますけど、でも・・・自分でもそれほど思っていたのかってくらい、心底大事にしているものだとしたら・・・もしかしたら、俺自身が壊れちゃうかもしれないっすね」

(親や兄弟、恋人や友人、人間関係だけじゃない、自分が心の支えにしているような物が突然なくなってしまったら・・・俺はそれに耐えられるんだろうか?)

まだ若い椎奈はその問いへ決着させることが出来なかった。

その問いを答えるには経験があまりにも不足している、と自覚していたからだった。

そんな中での椎奈の答え、国王は真剣にそれを受け止め、それから口を開く。

「椎奈君の答えも一つの答えとして正しいだろう。他の者は『そうさせないために騎士をしている』『新しい何かを見つける・・・かな?』『そんなことは考えないようにしています』『何も出来ません』等々、様々な答えを言っていた。中には椎奈君と似たことを言った者もいるし、実際にそうして心を失った者もいたよ」

国王は口を潤すためか、グラスに少しだけ口につけた。

「どの答えも間違いではない一つの答えだ、守る、探す、見ない、止まる、どの行動もその者の選択であり、その者の答えだ。また、その大切なもの、と言うのもそれぞれだ。家族や物のような目に見える形である場合もあるし、愛や友情のような目に見えぬ形の場合もある。私にとってはこの国が絶対のモノであるが、国民の内の一人にとっては恋人の存在が絶対のモノであるように」

椎奈は国王の言葉を聞く、寂しげに語る国王はまるで一度その大切なものを失ってしまったような様子であった。

騒がしげなパーティー会場は近いはずなのに、遠い。

この空間は確かに冷めていて、圧倒される程静か。

国王は言葉を続ける。

「失った後、立ち直れる者も勿論いる。だが、立ち直れない者も多い。また、向き合わず、暴走する者もいる。心はそれぞれで一定ではない。幾ら調べようとしても、見えるのは大雑把な姿だけ、それもその一瞬一瞬で変化を続けている。今どう考えていようと、そうなるとは限らぬ。私たちはその出来事に直面して初めてその事を知ることが出来る」

国王はそこで口を閉ざし、斜め上の宙を見た。

「なあ、椎奈君」

問いかけるような声。

「私は・・・受け止められぬような出来事から逃げた情けない存在だ。そうはならん、立ち向かう、とずっと考えていたのに、だよ」

言葉から漏れ溢れるほどの後悔、そして自己嫌悪が表面に濃く出る国王の言葉。

椎奈はその言葉と姿に何も言うことが出来ず、ただ無言で話を聞いた。

国王はグッとグラスに残る葡萄酒を飲み干す。

それから、少し情けない顔に戻り、緊張していた空気が一気に解かれた。

「少し酔っ払いすぎて語りすぎたな。すまないな、椎名君。退屈だったろう」

そう言い、大広間へと帰る国王の姿に嘘偽りはない、と椎奈は感じた。

 

 




どうも、こんにちは、皆笠です。
タグの不定期更新に反しての週一の定期更新になってるキノコです。
今回はとても暗い話でした。
難しい、と言われたりもした話です。
ですが、今回は物語の核心を突いた重要な回とも言えます。
国王は何故こんな事を椎奈に言ったのか、それはもう少し後の話しで。

今回も予約投稿してみました。
しっかり機能してることを確認して、調子に乗ってまた使ってみました。
あまりストックはないのですが、これからは土日の十三時投稿の週二回投稿を目指してみようと思ってます。

また機会があれば読んで頂けると幸いです。
ではでは。
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