The great kinoko kingdom   作:皆笠

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第七話『国王の意志』

「おはよう、椎奈君」

パーティーから日を跨いでの朝方、椎奈は国王の使いに呼ばれ、国王の部屋にいた。

「詳しく説明・・・と、その前に、聞きたいのだが、部屋はあれでよかったかね?」

部屋、それは椎奈に割り当てられた部屋、と言う意味であり、椎奈は正直に広すぎたくらいだ、と返した。

平凡な生活を送ってきた椎奈には家の今よりも大きな部屋は持て余す程に大きかったのであった。

国王はそうか、と少し困った様に顎を掴むようになぞった。

その時、バタン、と大きな音とともに勢いよく扉が開かれた。

「おはようですっ」

聞き慣れた可愛げなソプラノボイス、ラフレが部屋にやってきた。

「おう、おはよう」

「ああ、丁度いいな、では始めようか」

国王はそう言い、部屋にいる者達を下げさせ、三人だけの状態を作った。

それから、抜けた目が変わり、昨晩のような緊張が場を支配した。

「椎奈君、君はタイムスリップと言う言葉を知っているかね?」

国王はふざけた様子もない口調に、椎奈は少し困ったように答えた。

「まあ、言葉くらいは・・・」

「それならば、話は早い。知っての通り、タイムスリップは過去へと遡ることだ。・・・私とラフレはね、現在から先の未来から来たのだよ。とは言っても、そう遠い未来ではない、一年も経っていないだろう」

椎奈は国王の言葉に唖然とした。

「椎奈君は何度もラフレに言ったね、そして私にも昨晩言った。『この国は平和だ』と。確かに、私も現状はそうであると思う。・・・だがね、少し先の未来ではそうではないんだ。この平和も過ぎ去り、この国は戦火に身を投じることとなる」

国王は冷めた瞳で告げていく、椎奈は何も言えなかった。

「長年平和であった国に戦力などあるわけもない。我が国は負けた、何も出来ずに、である。私は逃げ出した、と言ったね。これはそう言うことなんだ。私はラフレのみを連れ、タイムスリップをした」

ラフレはいつの間にか国王の元へ寄り添い、無言で撫でられていた。

「・・・なるほど、一応理解しました。それで、俺はどうしたら良いんでしょう」

椎奈は国王に尋ねる。

(事態が完璧に飲めたわけではない。けど、まずは俺のするべきことをはっきりさせなきゃならない。国王の話によれば、この国は近く滅びる、その手助けをする。それは分かるんだが、俺は何をすればいい。何が出来る?)

国王は椎奈の言葉に深く頷き、部屋の隅にある暖炉脇まで移動してから、手招きした。

(ついて来いってことか、そこに何かがあるんだろうな・・・)

それから、国王は壁のレンガを押した、まるで隠し扉のスイッチを押すかのように。

まるで、ではなく、本当にゴゴゴゴゴ、と壁が割れた。

「ここに隠し通路がある。もっとも、見つけたのは戦火に晒されてからだったがね」

国王の言葉はやはり冷めている、椎奈は国王の後に続いて、隠し通路に入った。

 

コツコツ、と三人分の足音が暗闇に響く。

ほとんど無言のままかれこれ十何分も階段を下りていた。

魅せるためではない、単なる通路のためだけのもの、一切の装飾もなければ、一切の助けもない。暗いのもあり、気を抜けば踏み外してしまいそうなほどに危なげな道だった。

「椎奈君、タイムスリップは過去に飛ぶ、と言う認識があるだろう?だが、私はそうでないと考えている。タイムスリップをしたとしても、過去に行くわけではない、その者にとっては先の未来へ進んでいるものだと思っている。現に、私は過去へと飛んだが、記憶は無くなっておらぬし、経験も残っているままだ」

(タイムスリップなのに、過去ではなく、行くのは未来・・・)

「こうしてみると、私はつい考えてしまう。私が移動したのは時間軸ではなく、世界線ではなかったのかな、とね」

「世界線・・・?」

「椎奈君が知らないのも無理はないだろう。そうだな・・・分かりやすく言うならば、同じような世界でも、戦争が起きなかった世界もあったんじゃないか、と私は考えているんだよ。そして、随分と身勝手だとは思うが、そんな世界に辿り着けたかも、と希望を抱いている、ということさ。そもそも戦争自体が起きないのが一番だからね」

明るく語る国王の言葉はやはりどこか影が見える。

(同じような世界で、迎える未来は別のモノ・・・それが世界線ってことなのだろうか)

椎奈の思想は尽きない、国王によって告げられる言葉は椎奈の知識や常識からは離れたところにあるものばかりであり、椎奈はその情報を自分なりに解釈しようとしていた。

「もちろん、虫の良い話なのは分かっている。だからこそ、私はこれからでも強固な軍を作り、この国を守ろうと考えているのだよ」

国王の言葉は強い覚悟に満ちている。

椎奈はまだ若い、背負い頼られるよりは、背負われ頼る方の立場だ。

国王と椎奈は違う、国王と椎奈では背負うモノの大きさや重さが違っている。

椎奈はその事実になんとなくだが感づき、それを尊敬すると同時に危惧した。

(俺にはまだその重さなんてものは分からない。だからこそ、国王は凄いな、となんとなく思う。でも・・・その思いが空回りして暴走しなければ良いが・・・)

椎奈の考えは告げられることなく、事態は確実に進んでいた。

 

 




どうも、皆笠です。
六話あとがきで定期目指すと言っておきながら、忘れてこんな時間になってました。
申し訳ないです。

今回は物語の核心を突いた話となっています。
第六話の国王の語りから、予想出来た人もいるかもですね。

次回の投稿内容はこの話のベータ版、つまりは没になった内容になります。
大部分は同じなのですが、気に入らなくなって削除された話です。
なので、読み飛ばしてしまっても一切問題がないのですが、残ってたので一応投稿することにしました。
従って、八話投稿は来週の予定となります。

もし気に入っていただけたら、今後もよろしくお願いします。
ではでは。
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