とりあえず書いてみたものの、満足がいかず、書き直したのが前話の『国王の意志』となってます。
冒頭部分はおそらく全く同じですので、読むなら国王が隠し階段を出す:辺りから読んでいただけるといいかみうんb
正直読まなくても良いですが、残っていたので敢えて投稿することにしました。
それでも良ければ、どうぞ、です。
「おはよう、椎奈君」
パーティーから日を跨いでの朝方、椎奈は国王の使いに呼ばれ、国王の部屋にいた。
「詳しく説明・・・と、その前に、聞きたいのだが、部屋はあれでよかったかね?」
部屋、それは椎奈に割り当てられた部屋、と言う意味であり、椎奈は正直に広すぎたくらいだ、と返した。
平凡な生活を送ってきた椎奈には家の今よりも大きな部屋は持て余す程に大きかったのであった。
国王はそうか、と少し困った様に顎を掴むようになぞった。
その時、バタン、と大きな音とともに勢いよく扉が開かれた。
「おはようですっ」
聞き慣れた可愛げなソプラノボイス、ラフレが部屋にやってきた。
「おう、おはよう」
「ああ、丁度いいな、では始めようか」
国王はそう言い、部屋にいる者達を下げさせ、三人だけの状態を作った。
それから、抜けた目が変わり、昨晩のような緊張が場を支配した。
「椎奈君、君はタイムスリップと言う言葉を知っているかね?」
国王はふざけた様子もない口調に、椎奈は少し困ったように答えた。
「まあ、言葉くらいは・・・」
「それならば、話は早い。知っての通り、タイムスリップは過去へと遡ることだ。・・・私とラフレはね、現在から先の未来から来たのだよ。とは言っても、そう遠い未来ではない、一年も経っていないだろう」
椎奈は国王の言葉に唖然とした。
「椎奈君は何度もラフレに言ったね、そして私にも昨晩言った。『この国は平和だ』と。確かに、私も現状はそうであると思う。・・・だがね、少し先の未来ではそうではないんだ。この平和も過ぎ去り、この国は戦火に身を投じることとなる」
国王は冷めた瞳で告げていく、椎奈は何も言えなかった。
「長年平和であった国に戦力などあるわけもない。我が国は負けた、何も出来ずに、である。私は逃げ出した、と言ったね。これはそう言うことなんだ。私はラフレのみを連れ、タイムスリップをした」
ラフレはいつの間にか国王の元へ寄り添い、無言で撫でられていた。
「・・・なるほど、一応理解しました。それで、俺はどうしたら良いんでしょう」
椎奈は国王に尋ねる。
(事態が完璧に飲めたわけではない。けど、まずは俺のするべきことをはっきりさせなきゃならない。国王の話によれば、この国は近く滅びる、その手助けをする。それは分かるんだが、俺は何をすればいい。何が出来る?)
国王は椎奈の言葉に深く頷き、部屋の隅にある暖炉脇まで移動してから、手招きした。
それから、国王は壁のレンガを押した、まるで隠し扉のスイッチを押すかのように。
まるで、ではなく、本当にゴゴゴゴゴ、と壁が割れた。
「ここに隠し通路がある。もっとも、見つけたのは戦火に晒されてからだったがね」
国王の言葉はやはり冷めている、椎奈は国王の後に続いて、隠し通路に入った。
コツコツ、と三人分の足音が暗闇に響く。
ほとんど無言のままかれこれ十何分も階段を下りていた。
魅せるためではない、単なる通路のためだけのもの、一切の装飾もなければ、一切の助けもない。暗いのもあり、気を抜けば踏み外してしまいそうなほどに危なげな道だった。
「椎奈君、タイムスリップは過去に飛ぶ、と言う認識があるだろう?だが、私はそうでないと考えている。タイムスリップをしたとしても、過去に行くわけではない、その者にとっては先の未来へ進んでいるものだと思っている。現に、私は過去へと飛んだが、記憶は無くなっておらぬし、経験も残っているままだ。私の心はあのころに凍てつき、そしてそのままなのだよ」
(タイムスリップなのに、過去ではなく、行くのは未来・・・)
「世界線、と言う言葉を知っているかね?」
国王が椎奈に語り掛ける、椎奈には聞き覚えの無い言葉だった。
「いいえ」
椎奈の言葉に、国王の影は少しだけ頷いた。
「まあ、知らないのも無理はないだろう。私もタイムスリップのために調べ、そして知った言葉なのだから。世界線、と言うのはこの世界と似て非なる世界のことを言う。人は瞬間瞬間に選択をし、そして分岐を進んでいる。その選ばなかった分岐に戻ることは無い。しかし、確実に存在しているのだ。決してその道を歩むことは無い、しかし、存在はする。今と限りなく似てはいるが、異なっている世界を世界線、と呼ぶ・・・らしい」
国王の言葉はもう一言だけ続けられて閉められた。
「まあ、数多くある内の一つの論だから、正しいとは限らないがね・・・」
(世界線・・・今と似て非なる世界・・・俺がこの世界に来ていない現在もあったかもしれない、と捉えれば分かりやすいか。だが・・・そんなことを考えても仕方ないと思うのだが。たとえそんなものがあったとしても、行けないのならば、意味がないのならば、存在しないのとおんなじだ。考える必要性すらもない)
椎奈は思ったことを国王に伝えた。
国王は笑う。
「確かに、そうかもしれないな。しかし、私は思うわけだよ。タイムスリップをしたならば、別の世界線に移動したことになり、この国が戦火に襲われぬ世界もあるのではないか、と」
国王の語りは暗闇に響いていた。
了
どうも、皆笠です。
今回は冒頭で語った様に没ストーリーです。
特に言えることもないのでここらで終わります。
ではでは。