魔法少女リリカルなのは 未来への系譜   作:ロシアよ永遠に

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Side Mission2『金髪幼女テスタロッサW』

自己紹介を終えた二人と一匹だったが、アリシアの可愛らしいお腹の虫が餌を求めたことにより、揃っての夕飯と相成った。先程作っておいた特製のディナーをお盆にのせて運び、ベッドサイドに移動させた簡易テーブルの上に置く。ほかほかとしたご飯と味噌汁。なによりも生姜焼きの香りが食欲を一層かき立てた。

 

「これ…悠が作ったの…?」

 

「まぁ…な。両親が仕事で中々帰ってこないから、これくらいは一丁前に出来る。」

 

いつの間にか『悠』と呼ばれるようになったことにさほど違和感は感じない。彼も彼で自室から持ってきた小型のテーブルに自分の夕食を広げる。少し多めに作っておいて正解だった、と悠はどことなく満足感に浸っていた。

 

「…とりあえず、冷めないうちに食べよう。」

 

「そ、そうだね。」

 

「頂きます…」

 

手を合わせて、念をするかのように目を閉じる悠。アリシアもそれに習って同じく。既にエルは部屋の隅でドッグフードをカリカリと貪っている。

彼女が箸に不慣れと考慮してスプーンとフォークも用意したところ、フォークで生姜焼きの処理に掛かった。手頃な大きさに切られた豚肉に、すり下ろされた生姜を混ぜた甘辛いタレが絡み付く。そして一口、口に運ぶと…。

 

「お…美味しい…、美味しいよコレ!」

 

「…そうか。外人さんの口に合って何よりだ。」

 

無表情の様に見えて、纏うオーラが少し喜びを表しているような…そんな気がする。こうやって味を占めたアリシアは、小柄な体躯に似合わず下品では無い程度に物凄いスピードで平らげていった。

 

「はぁ~、美味しかった~。」

 

満腹感に満たされたアリシアは、ぐてっとベッドに実を預けた。見事なまでに綺麗に完食。よほど空腹だったのだろう。皿まで舐めたのかと言わんばかりになにも残っていない。

皿を重ねてお盆にうつし、片付けの準備をする前にすべきことがあった。

 

「…アリシア。」

 

「なぁに?」

 

「どうしてあそこに倒れてたんだ?」

 

やはり気になってしまう。あんな公園の林の中で、しかも一糸まとわず、だ。普通に考えたら有り得ないし不審に思うだろう。事件性のあるものだと、警察に通報しなければならない。

 

「えっと…ね?…わかんない。」

 

「は?」

 

「覚えてるのは…ママが働いてるトコが、ピカーって光って…危ないなぁって家の中に入ったことくらい…?」

 

推察しようにも端的すぎた。しかし、先程の状況と繋げようにも接点がなさ過ぎる。現状を理解しようにも情報が少なすぎるし、何よりもアリシア・テスタロッサに関して何も分からない。あるとすれば、クラスメイトへの事実確認くらいか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…テスタロッサ・ハラオウンさんのお宅でしょうか?」

 

アリシアは再び眠ってしまって、時刻は夜八時。湯張りを始めた風呂の合間に気になるクラスメイトの自宅に電話を掛けていた。…電話番号自体はクラスの連絡網があるので問題なく分かる。

 

『はい、ハラオウンですが…』

 

応えたのは少年の声だった。…兄がいたのか。と、ほんの少しクラスメイトの血縁を理解した。

 

「…クラスメイトの緋村悠と言います。…フェイトさんは御在宅ですか?」

 

「あぁ、少々お待ちください。」

 

実を言うとこの緋村悠、電話の応対に関しては同年代に比べて少々大人びている。と、いうのも、勧誘の電話とか対応するのに憮然と、なおかつ大人らしく話さないと、子供と思って舐めてかかられ、挙げ句あれやこれやと勧められて断りにくい状況を作り出しかねない。年内のほとんど両親がいない家庭で、身に付いてしまった一種の彼なりの処世術なのだ。

 

『もしもし?悠?』

 

次に出てきたのは時々だが、クラスでたまに聞く声だ。…成る程、改めて聞くと確信がある程度湧いてくる。

 

「…夜分遅くに済まないな。」

 

『大丈夫だよ、丁度ご飯も食べ終わったところだし。』

 

「…少し尋ねたいことがある。」

 

フェイトにしてみれば、悠の方から用事で電話してくるなんて初めてだ。しかも質問ときたから、首をかしげる。もとより学校でも余り話さない仲なので余計に。アルフやリンディに至っては、男子からの電話と聞いて、フェイトに春が来たのでは!?と訳の分からない妄想をしていた。その内容を知りたいがために、ハンズフリーボタンを押している。ちなみにこのボタン、受話器を持たずとも会話できるボタン。周囲にいる人にも聞いて欲しい用なので、受信音声がスピーカーを通して聞こえるようになる。

しかし、その雰囲気は発せられた名前で辛くも崩れ去った。

 

「アリシア・テスタロッサを知っているか?」

 

フェイトは自分の血の気が引くのが分かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

物の10分後。

緋村家のインターフォンが押された。…電話を切ってそれほど時間が経っていないにもかかわらず、玄関を開けると、そこにはライトグリーン、ブロンド、オレンジ、ブラックとカラフルな頭が目に飛び込んできた。そのうちブロンドは知った顔なので、ハラオウン一家なのかと分かったが、その表情は少し怯えているようにも感じられる。他のメンバーはと言うと、表には出していないように見えるが、険しさを内包しているようにも感じられた。

 

「夜分遅くにすいませんね、私はフェイトさんの母親のリンディ・ハラオウン。こちらは兄のクロノ、姉のアルフ。」

 

紹介された兄と姉、それぞれブラックとオレンジの頭が会釈した。

 

「早速で悪いがアリシア・テスタロッサの所に案内してくれないか?」

 

「…構わないが…、ハラオ…いや、フェイトの方は大丈夫なのか?…随分と恐れているようにも…」

 

「…私は大丈夫だよ、ありがとう悠。」

 

そうして浮かべた笑顔は、どことなく悲しげで…。作り笑いをしているのがありありと伝わってくる。アルフはそっと後ろから彼女の肩に手を添える。

 

「大丈夫だよ、何がどうあっても、フェイトはフェイトなんだ。それは誰にも否定できないし、アタシがさせないからさ。」

 

「ん、…ありがと。」

 

…どうにも複雑な家庭環境なのかとどことなく察しながら、四つのスリッパを並べる悠。そのままごく自然にアリシアの眠る客室へぞろぞろと足を運んだ。ガチャリとドアノブを回す音に、ピクリと反応して起き上がるエル。開け放たれたドアの向こうには知らない顔が四つもあった。

 

「…俺の知り合いだ。そういきり立つな、エル。」

 

鼻の頭にシワが寄って、牙を剥き出しにして威嚇するエルだったが、主人の一言で大人しくなった。そしてジャマにならないように部屋の隅によって再び伏せる。

 

「…よく躾けられてる。」

 

クロノが感嘆の声を挙げる横で、フェイトがベッドで横になる少女に駆け寄った。

その表情は、歓喜にも驚愕にも、そして少しの恐怖にも感じられた。

 

「アリシア…本当にアリシアだ…!」

 

「…ホントだ!でも何でだい?…確か彼女はプレシアと虚数空か…」

 

「アルフ!」

 

口を滑らせたアルフに制止の声を挙げるクロノ。しかし、キーワードを聞いてしまった悠は、眉をひそめて奇怪なものを見るように見ていた。

 

「…プレシア?虚数空…?」

 

しまった、と口を塞ぐアルフ。少し気まずい空気が客室を包んだ。

長くも短くも感じる沈黙を経て、一家の柱たるリンディが口を開いた。

 

「…少し場所を変えましょうか。アルフさんはフェイトさんに付いててあげて。…クロノ、一緒にお願い。」

 

「…わかりました。…緋村君、キミも…」

 

「……いや、無理に説明しなくても構いません。…どういった事情があろうと無かろうと、俺はフェイトに対しての付き合いを変えるつもりは無いし、アリシアに対しても同じです。…もちろん、貴方方ハラオウン家も含めて、ね。」

 

いつの間にか持ってきていた緑茶を四つの湯呑みに注ぎ、テーブルに並べる。ほんのり苦み感じる香りが、部屋の空気を物理的に中和していくのが分かった。

 

「…だから知ったところで何でも無い、と言うことです。どうしても話したい、というなら腰を据えて聞く用意はあります。…何か辛い事情なら、そんな思いをしてまでも話せとは言いません。」

 

エルの側に座ると、その体毛をゆっくり優しく撫でていく。それに眼を細め、心地よさそうな表情を見せた。

しばらく沈黙が流れていた室内だが、クロノが口を開いた。

 

「…本来アリシア・テスタロッサは事故で亡くなっていて、遺体だけが現状保存されていたんだ。…しかしこうやって彼女は生きている。一度確認された結果と現状が食い違えば、それに至った経緯を調べるために、言い方は悪いが実験の被検体にされかねない。…何しろ死者蘇生等という物は僕らの知識では有り得ないからね。」

 

「…でもどうするんだい?あたしゃ嫌だよ?生きてたとは言ってもアリシアが実験台にされるなんてさ」

 

「…その辺に関しては何か対策を考えましょう。…クロノもそれで良いかしら?」

 

「母さんがそう判断したなら僕もそれに従いますよ。…両手を挙げては喜べないが、もしもプレシアが生きていたなら、…少なからず報われるはずだ。」

 

話がいまいち飲み込みきれない悠だったが、深く踏みいらないと公言したことは偽りなく、他の家庭問題と割り切って聞き流していた。

 

「…ところで緋村さん…」

 

「悠で構いません。そちらが良ろしければ、だが。」

 

「じゃあ悠さん、ご両親はどちらに…?」

 

「俺の両親は海外へ出稼ぎしています。帰ってくるのは年に数日程度です。」

 

つまり、この家は犬と、10にも満たない少年少女だけ。どう転んでもおかしいとしか言えない。児童相談所あたりにご近所さんが連絡しそうなものだ。

 

「…エルもいるし、寂しくはありません。仕送りも貰っているし、毎日過ごす分には余裕があるくらいですが。」

 

…確かに先程から見てみれば、家の中はかなり整理が行き届いている。子供一人にしては上出来なぐらいに、だ。加えて悠の栄養状態も、見る限りでは問題なく、健康的とも言えるだろう。念のためにクロノは軽くサーチャーでバイタルチェックするも、これまた問題ないという結果がはじき出された。

 

 

 

 

 

 

 

 

フェイトも悠とはそれほど話をした間柄ではないから、どんな人なのかを詳しくは知らない。だが、こうやって家にお邪魔して、アリシアのことや、エル、それに悠自身のことを少し分かった気がした。彼女自身、自分から話すことはなかったが、それでもリンディやクロノが話す内容を頭に入れて、学校でも話せるように話題を考えようとした。

悠がアリシアとの経緯を話している最中…かくして話に入らないアルフはというと、エルとじぃっとアイコンタクトを取っていた。睨むわけでもなく、ただただ瞬きを忘れたのではないかと言うくらいに微動だにしない。

やがて、どちらかが動いたと言うわけでもないくらい同時に、右前脚と右手が握手していた。…犬と狼、極めて近い種族であるこの一人と一匹の間に奇妙な友情が生まれた。

 

「な、何をやってるの?アルフ…」

 

「え?いやぁ、なんか見てたら直感で気が合うなぁって…ね?」

 

アルフの言葉に一吠えして応えるエル。その鳴き声で、眠っていたアリシアが目をこすりながらムクッと起き上がった。寝始めてから1時間ほどなので、それほど深い眠りではなかったようだ。

 

「なぁに…悠…。もう朝…?」

 

ふわふわとした彼女の雰囲気に、どこかアリシアに不安を抱いていたフェイトは少しドギマギしている。

ぼぉっとした目に映るのは、カラフルな色、もとい頭髪。だんだんと目が覚めてくるにつれ、知らない顔ばかりというのを認知するのに軽く10秒。しかしその中で、自らの顔とよく似た少女が目にとまった。

 

「あれ…?もう1人私が居る…?」

 

首をかしげる彼女に対して、フェイトはどう言い出したものかと困惑の表情を浮かべる。そんな彼女を察してか、クロノが助け船を出した。

 

「アリシア・テスタロッサ、で間違いないか?」

 

「へ?う、うん。そうだけど…」

 

「僕はクロノ・ハラオウン。管理局執務官だ。早速で悪いが、君の現状について説明させて貰うが、構わないか?」

 

「か、かんりきょく?しつむかん?え…えっと…。」

 

さすがのアリシアも困惑していた。いきなり目が覚めたら、目の前には管理局。日本で言うなれば警察と言うことになる。そんな現状に困惑するな、と言う方が無理なものだった。

 

「君と彼の経緯に関しては、悠本人からある程度聞かせて貰った。君の今の現状に至るまでの経緯だが…」

 

そういうと、クロノは話し始めた。

母親、プレシア・テスタロッサの研究する魔導炉の事故でアリシアが仮死状態に陥っていたこと。

その間に生まれたのが、妹のフェイトであり、姉妹揃って事故で次元断層に巻き込まれ、フェイトは三年前、アリシアがこの時代に流れ着いたこと。プレシアは未だに見つかっていないことを伝えた。

…事実とはかなりかけ離れているが、アリシアの年齢から考えたら重すぎる事実を突きつけるのは忍びないものだ。嘘をつく、と言うことに後ろめたさを感じつつも、必要な嘘、と言い聞かせて悟られないように努める。

 

「そっか、ママ…無事だと良いけど」

 

「そう…だね。」

 

暗い表情をするフェイト。事実を知っているだけに、この嘘は辛いものがあるが、それでもアリシアの為を思って頑張っているものの、素直な笑顔は出せずにいた。

眉毛がハの字になっているフェイトの頬が、急にむにっと引っ張られた。

 

「ひゃう?」

 

「ダメだよフェイト。」

 

頬を摘まんでいたのは他でもない、アリシアだった。その眉毛はフェイトとは逆に、ハの字を逆さまに、まさしく『ちょっと怒ってる』と言うに相応しいものだった。

 

「ママはちゃんと生きてるんだから、落ち込んでたらダメだよ。しょんぼりしてたら、良いことが逃げちゃうんだからね?」

 

「で、でもアリシア…」

 

「アリシアじゃないよ!お姉ちゃんだよ!ワンモアタイム!」

 

「お、お姉……ちゃん…」

 

「お姉ちゃん…!良い響き…!」

 

1人恍惚とした表情を浮かべて悶絶した。フェイトとしては、アリシア自身が自分を妹として認めてくれるのか?と言うことに不安と疑問が入り混じっている。…しかし先の事件で、自分の転写された記憶から再現されたアリシアの幻と、それと言うほど違和感がない。まぁ、事実アリシアが亡くなるまでの記憶を移されたのだから、違和感がなくて当たり前なのだが…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当にいいのかしら?悠さん。フェイトさんを泊めて貰っても。」

 

「…アリシアたっての希望です。部屋は空いてるし、こちらとしても何ら問題はありません。」

 

どうしてこうなったのか、というと、いざハラオウン家がお暇しようかと言うときにアリシアが、フェイトともっとお話ししたい!と、駄々をこね始めた。…まぁ、彼女が言うには、ずっと欲しくて、プレシアに誕生日プレゼントとして強請るくらいだった妹なのだそうで。

フェイトも困惑しているし、どうしたものかと皆が悩んでいたところ、悠が『何なら泊まると良い。2人で寝るくらいには問題ないだろう』と言い出したのを皮切りに、アリシアが大賛成。フェイトも遠慮しつつも構わないのか怖ず怖ずと尋ね、ハラオウン家大黒柱のリンディが先の質問をしたところでOKが出た。

 

「…まぁ、フェイト自身、アリシアと話すことで不安とか、そう言ったものを拭えるんなら僕は何も言わないよ。」

 

「アタシはフェイトが笑顔になるんならそれでいいさ。」

 

兄と姉の了承を得たことで、フェイトの緋村家外泊が決定。

3人はフェイトの着替えを取りに行く、と一旦自宅へ戻った。その際、悠がアリシアへの女物の下着を頼んだ。少し言い辛そうにしている彼は、普段の物静かさとは裏腹に、顔を少し赤らめているのがフェイトにとって新鮮だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やれやれだな。」

 

風呂場から聞こえるのは女子2人の笑い声。悠はというと、リビングでゆったりとテレビのバラエティを見ていた。エルは悠の足元で身体を丸めている。画面の中では男のアイドルグループ『ストーム』に助っ人にゲストを加え、相手のチームとゲームで激戦を繰り広げている。ちょうど目玉種目であるロッククライミングをしていた。壁の至る所にある得点が描かれたボタンをゲストが押しながら登り、一度登頂してストームのメンバーに交代。最大の難所とされる『顎』に取りかかる。

ちなみにこの顎。しゃくれた顎のように迫りでており、その先端部分にある高得点ボタンを押そうとすれば相当な握力と体力が要る、鬼畜な仕様なのだ。

 

『さぁ、この顎をどう攻略するのか!』

 

攻略率が芳しくない、しかし高得点を得るために通る道。これを成功させるか否かで今後の運びが左右されかねないだけに実況にも熱が入る。

 

『悠~!ちょっと来てよ~!』

 

…やれやれ、盛り上がる場面で呼び出しとは。

ぼやいても耳に入るのはエルで、あとはテレビの音量に揉み消される。どうにもこうにもままならないものだ。

 

「なんだ?シャンプーでも切れたか?」

 

脱衣場と浴室を隔てるドア越しに尋ねた。…姉妹だからか声質が似ているので、どちらが呼んだか分からないが、口調からすればアリシアの方だろうか?

しかし帰ってきた返事は予想を上回るものだった。

 

「私とフェイトの髪を洗って欲しいんだけどなぁ~」

 

「は?」

 

「えぇぇぇぇぇっ!?」

 

間の抜けた返事と、素っ頓狂な声が見事に調和して家に響き渡った。

 

「フェイトと私って、自分で洗ったことないんだ~、だから悠に洗って欲しいんだけど…。」

 

………。

どうにもアリシア、という女の子は羞恥心とかそう言った感情が乏しいようだ。今日出会ったばかりの男子に、風呂場に入って髪を洗えという、そんな女子がどこに居るというのだ。この場合、フェイトの親や姉たる2人が戻ってくるまで待とうか。丁度その時、

ピンポーン

と来客を知らせるインターホンが鳴り響いた。

 

「来客だ。どっちにしろ少し待て」

 

そう言い残して脱衣場を後にする。その際背中になにやらブー垂れる声が聞こえたが無視した。

どちらにしても問題を先延ばししたにすぎない。願わくば、リンディかアルフが来てくれることを願いつつ、ドアを開けた。

 

「…すまないな、悠。これが2人分の服と下着だ。彼女たちを頼んだ。」

 

黒い髪の少年から手渡された紙袋を手にし、来る来客によって再び閉められたドアをただただ見つめながら、この世に神は居ないのか、と心で嘆く一人の少年の姿がそこにはあった。

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