魔法少女リリカルなのは 未来への系譜   作:ロシアよ永遠に

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はい、と言うわけで、今回は戦闘メインになります。描写って難しい。



Mission10『白き騎士は闇夜に舞う』

「っ!ヒカリ…!?」

 

ユーリの声と目映いまでの光が、人目のない路地裏を支配した。ストロボカメラのフラッシュのように点滅していて、目を覆うか閉じていなければ眩んでしまうくらいだ。

キリエもハルも、各々に目を閉じ、腕でカバーし、その光から目を守る。

 

『パーソナルデータ、照合。…一致。登録者と認識。おはようございました、サージェント。』

 

「え?え、あ、うん、お、おはよう…、ございました?」

 

『これより初回起動シークエンスに入ります。』

 

光が治まり、いきなり響いたのは男性の声を模したような機械音。

初回起動シーケンス?

何かコンピュータでも起動するのか?

混乱する頭を稼働しながら、その右手に白銀のブレスレットがいつの間にやら装着されていた。

 

「今のは…転移…魔法だと…!?しかもデバイス…その単体で…!?」

 

『肯定。データベース照合…合致。陸士108部隊所属ハル・エルトリア准尉と確認。後退を推奨します。』

 

「…なるほど。中々に口の回るデバイスだな…。だが。」

 

ようやく解析し終えたバインドを解除し、しかしデバイスの忠告には従おうとはしない。

 

「民間人を危険に曝すわけにはいかんだろう?そちらこそ後退すればいい。」

 

『当機の起動を以て、敵対者の撃退をします。』

 

「え、えと?なんか話が進んでるけど…。」

 

『サージェント、当機と共に戦う、と言うことです。』

 

「は…?戦…」

 

『戦闘モード、起動。アンダースーツ、展開。』

 

話が付いていけないヒカリを尻目に、ブレスレットからの機械音声は着々と話を進めていく。『展開』の言葉を皮切りに、着用していた聖祥大附属の制服が光り輝く。白銀に輝いたと思えば、ガラスが割れたかと思うような音と共に、霧散していく。

 

「えっ!?えぇぇっ!?」

 

顔を赤らめて身体を隠す。下着を付けているような感覚もなく、素肌を曝しているようにスースーしている。だが、そこには肌色ではなく、白銀の光が身体を纏っていた。かろうじて裸ではないが、水着以上に未成熟なボディラインを表している。

更にその光が霧散すると、黒いフィットスーツが纏われていた。レオタードのような、ワンピースタイプの水着のような、しかしハイネックで二の腕の半ばまでは覆われている。足はと言うと、膝と腰の間辺りまでにニーソックスを思わせるようなものが展開され、靴は白銀の装甲が付いているようなメカメカしいデザインの物に変化している。

 

「な!なんなのこれ!?ボクの服はどこ!?」

 

『当機を起動するに辺り最も動きやすく、耐衝撃性、及び加速耐性向上のボディスーツです。先程の服は、量子化し、当機内部に保存しています。それではこれより、戦闘外部骨格を…』

 

「と、とりあえず先手必勝!」

 

デバイスの説明の最中、キリエがヴァリアントザッパーをフェンサーに変形させて突っ込んでくる。ユーリはそれを引き留めようと魄翼を伸ばす…、が、キリエの後ろの空気を掴むに終わった。

 

「ヒ、ヒカリ!!」

 

「くっ!!」

 

ユーリは叫び、ハルは駆け出す。しかし、ハルの一歩はキリエに比べると遅れ、このままでは到底間に合わない。

ヒカリも咄嗟に手をクロスして防御態勢に移行する。振り上げられた片刃の剣を受けることを悟り、ヒカリだけではなく、ユーリもギュッと目を閉じた。

 

『腕部装甲、展開』

 

響いたのは、肉が切れる音でも、血が飛び散る水音でもなかった。

金属音。

剣と、何かしらの金属製の物質がぶつかった音だ。ギチギチと互いが軋む音が木霊する。

さすがのキリエも驚いていた。咄嗟に刃を背にして峰打ちを狙っていたものの、こうも防がれるとは思わなかった。腕で防いだとしても、骨折くらいは起こりうると考えてもいた。

だが防いでいたのは…

 

『腕部装甲、問題なく展開。魔力回路良好。補強魔術展開中。』

 

ヒカリの腕に覆われていたのは、これまた白銀の、西洋の騎士が装着しているようなガントレットを彷彿させるような装甲だった。ガントレットにしては人の腕を覆うだけの金属以上に巨大で、ヒカリの体格上、肘から先に大人の体格に合わせたガントレットを装着しているかのような大きさだった。装甲の切れ目所々に青い光を放っており、美しさすら感じる。

 

『脚部装甲展開。』

 

続いて展開されたのは脚部。これも白銀を基調とした色で統一されており、形も重装甲化したグリーブのようで、しかも爪先までしっかりと覆われている。膨ら脛にあたる部位には、魚のヒレを思わせるような薄い装甲が横並びになっており、それをカバーする装甲が上下に稼働している。

 

『稼働領域確保。ブースト、開始します。』

 

動いていた装甲が位置を定めた直後、ヒレのような装甲の間から、白い魔力の粒子が漏れ出してくる。

震える空気。

舞い上がる塵。

 

「えっ!?ちょっ…」

 

『飛翔…開始。』

 

瞬間。宇宙へ向かい飛び立つロケットのごとく、一気に粒子を噴射した。

ゴミを入れておくポリバケツ。

誰が、いつ停めたかもわからないような埃をかぶった自転車。

壁に貼り付けてはあるが、それは形ばかりといわんばかりにぼろぼろに風化しているようなポスター。

それらが噴出された魔力の粒子により空に舞い上げられる。視界が塵や埃で遮られるユーリとハル。目に入らないように腕と瞼で防ぐのに精一杯だ。

 

「う、うわわわぁっ!?」

 

渦中のヒカリも驚愕しきりである。噴出された魔力でキリエを押し出して、共に空へ飛翔していく。暗くなりかけた海鳴の市街地を眼下に、どんどん上昇していく。

 

「ちょっと!?これ、どこまで上がるの!?」

 

『市街地での戦闘は管轄外世界とはいえ危険。上空3㎞まで上昇します。』

 

「お、落ちたらどうするの!?」

 

『………』

 

「ちょっとオォォォォっ!?」

 

軽く10秒程上昇したところで、機体が噴射を止めた。それと同時に、キリエも後ろに宙返りして距離を置く。さすがの予想だにしない展開に、キリエも、さらにはヒカリもげっそりしていた。

 

「な、なんなのかしらね、この展開…!」

 

「ボ、ボクにも分からないですよ…!」

 

奇しくも敵対していた2人の意見が初めて合致した。どうにもヒカリ自身、付いていけない状況。いきなり現れた異能の力を持つ2人。魔法関連はユーリと出会ったときにある程度は知識を得ていた。が、それを攻撃転用してドタバタするなどとは露とも思わなかった。

 

「と、とりあえず、あの砕け得ぬ闇の女の子…。あたしに譲ってくんないかしら?」

 

「この期に及んでまだ言いますか…!というか、砕け得ぬ闇ってなんですか!?それに、ユーリは物じゃないです!」

 

「そう…!だったら力尽くで奪っちゃうわよ?…こっちにも…譲れない思いってのが……あるんだから!」

 

ザッパーを拳銃に戻し、魔力の弾を連射してくる。かなりの早撃ちに、一瞬気後れしてしまうが、

 

『回避行動に移ります。』

 

「おわっ!?」

 

再びブーストを噴かして強制回避。勿論キリエもそれを見越していたのか、銃口の先はヒカリを追い、次々に弾を撃ち込んでいく。が、機体のマニューバが優秀なのか、そのまま彼女の周りを旋回しながら回避し、一定の距離を保つ。

 

「ちょっ!ど、どうするの!?」

 

『戦ってください。さもなくばやられるだけです。』

 

「で、でもボク、空を飛んだこともないし、そもそも…」

 

「余所見してる余裕、あるのぉ?」

 

いつの間にやら止んだ弾幕。それを意図してであることを証明するように、取り出していた2丁目のヴァリアント・ザッパー。二丁のそれを両方ザッパーへと形を変え、並列にして構えていた。

 

「ちょっち消耗が激しいから、使うのははばかられるけど…。確実に勝たないとね!」

 

並列にしたことで、二つの銃口の先に集まる魔力が相乗効果によって大きく、そして強力になっているのが一見して分かる。青と桃が混ざり合った魔力。それが風船のようにどんどん膨らんでいく。

風船、と言うのもあながち遠くないたとえだ。魔力による膜。その中に魔力をどんどん注ぎ込み、膨張して膜が弾ける寸前まで溜め込む。それを相手にぶつける事で生まれる破壊力は侮れない。

 

「ファイネスト…カノン!!」

 

トリガーヴォイスと、引き金を引くというトリガーアクションにより、射出される魔力の『大砲の弾』。直径を目測するに、ヒカリの身長とそう変わらない位の巨大さ。おおよそ120~130センチ。そのサイズはヒカリにとっては気圧されるほどに。

 

「おおおお大きくない!?当たる!当たっちゃうって!?」

 

『武装を顕現します。』

 

あせるヒカリとは裏腹に、機械特有の淡々とマイペースな音声で、自分のリソースに割り当てられた武装を呼び出す。

 

 

 

何やらやらかそうとしていたみたいだが、巻き起こる爆発は、ファイネストカノンが直撃かは分からないが、少なくとも命中したであろうと推察するには十分な要素である。距離にして数十メートル離れていたのにも関わらず、爆風による余波が髪を殴りつけるかのように吹き荒ぶ。これが威力を十分に示しているし、なによりもキリエが使う単発での射撃魔法では最大の威力を持っている。それだけに威力には自信を持っていた。

 

「さ、流石にこれは効果ありでしょ…」

 

撃墜の確信を持ち、口元をつり上げる。目の前に目標の物があるのだから、出し惜しみする理由もない。少し過剰に魔力を注いでしまったものだから、肩で上がった呼吸を整える。

モクモクと立ち上る煙。空を吹き荒ぶ四月下旬の風が、それを吹き流す。

そこには漆黒のボディスーツ。

それを覆うのは白銀の鎧。

右手に持つのは漆黒の銃。

先程と大きく打って変わっているのが、胸部に装甲。そこから肩の装甲を通して、背中に大型の一対の大型のユニット。そして…

 

『当機のイニシャライズ、コンプリート。同調、正常。』

 

頭に響いていた声は、いつの間にか左耳から聞こえてくる。目の前には緑色で半透明のバイザー。それを固定するのは頭部に着用された、これまた白銀のヘッドギア。そして左耳から頬に掛けてインカムのように機部が伸びている。

その姿は、白い騎士のように、神々しくもあった。

 

「嘘…!?あの一撃を受けて無傷って…!?」

 

「あ~、その…受けたわけじゃないけど…。」

 

『僭越ながら、撃ち落としました。』

 

どうやら右手に持つ銃。あれが攻撃手段のようであると、キリエは推測する。

見るに、キリエの持つヴァリアントザッパーのような、拳銃サイズの物とは違い、長さ1メートルほどのサイズ。カートリッジシステムを装着しているかのように、グリップトリガー前に無骨で、約20㎝のマガジン。バレルは重々しく感じるようなヘビーバレル。後部には肩越しにに撃ちやすいようにストックが備え付けられている。

所々仕様は変わってはいるもののM16A1。アメリカで使用されている小口径自動小銃。それの陸軍正式採用モデルだ。

…しかし、それはあくまでも『人間が軍隊で使う質量兵器』のサイズだ。

ヒカリの持つそれは、原型となったであろう銃を、ソックリそのまま1.5倍サイズに膨れあがらせた物。つまり、普通に生身のヒカリと並び立てば、銃のほうが大きくなってしまうほどの長さになっている。

 

「な、な、なんなのそのゴツゴツとした銃!?物騒にも程があるんじゃない!?」

 

「いやぁ…いきなり襲ってくるそちらも負けないくらい物騒かと…。」

 

仰るとおり…キリエはぐぅの音も出ない。

 

「で、でもコレ、アメリカ軍のアサルトライフルって奴でしょ!?あの人を撃てないよ!?撃ったら…」

 

『問題ありません。実弾射出型ではなく、魔力弾射出仕様にカスタマイズされています。質量兵器への法には抵触しておりません。』

 

「そ、そうなの?」

 

『加えて、非殺傷設定に切り替えておきました。死に至らしめることはほぼありません。撃退、もしくは捕縛することを推奨します。』

 

バイザー越しにキリエを見ると、円グラフになったメーターで、残存する戦闘力を表示し、相対距離に自機の状態など、細かな情報が記される。

そして円グラフは、先程のファイネストカノンの射出、ラピッドトリガーによる弾幕の使用で、10%程減少している。

 

「しかも、なんかさっきよりメカメカしてなぁい?」

 

『肯定、これは当機の完全展開である。無意味な消耗は望まない。大人しく投降を推奨する。』

 

「か、完全に立て篭もりとか、悪役に対する台詞回しだね…」

 

「…悪役でも何でもいいわよ?」

 

キリエの顔から、先程までの穏やかさは消え、ビリビリとした気迫すら感じるほどに目つきは鋭くなる。

 

「それでも…私にはすべきことがあるから…そのためなら悪役だって何だって…やってやろうじゃない!」

 

円形の、ミッド式とは違うピンクの魔方陣『フォーミュラプレート』を展開。両方のザッパーをフェンサーへと形を変える。腰を落とし、まるで陸上選手がスタートラインに立つように右足を引き、上体を低く。

 

「せ~…のっ!!」

 

踏み出す一歩。それは一回だけの跳躍。ヒカリの目の前に瞬時に移動したキリエ。フェンサーをクロスして切り裂く。

 

「ぐっ…!!」

 

辛うじて手甲で防いだ。速さを上乗せした斬撃。防いだとは言え、そのインパクトはヒカリを吹き飛ばすには十分すぎる。

 

「た…探知!姿勢制御!」

 

「その隙は…ないわよ?」

 

スラスターを噴かして体勢を戻そうとするが、キリエは既に背後に。旋回しようとするが、鈍い痛みが既に肩へ響く。

 

「スラッシュ…!」

 

切り抜けと斬り返し。高速で切り抜け、高速で斬り返す。探知する頃には次の一撃がヒカリの体に痛みを与える。

 

「レイヴ…!」

 

フェンサーの背を互いに繋げる。グリップが鍔となり、白くも鈍く光る大剣『ヘヴィエッジ』へと変わる。両手でその重心を利用し、振り回す。金属がぶつかる鈍い音。重みが集約されたことにより、一瞬攻撃のタイミングが遅れたようだ。魔力で強化されたガントレットが防ぐが、速さを犠牲にした分、その衝撃は片手剣との比ではない。

弾かれた手と、その手に引かれて吹き飛ぶ。

無防備。

そのチャンスをキリエが見逃すはずもなかった。

 

「インパクト!」

 

追撃と一閃。胸部装甲に直撃。

 

「ぐぅっ!?」

 

胸への圧迫感がヒカリの視界を朧気にする。

勝った…!

そうキリエは確信した。力なく吹き飛ぶヒカリの姿を見送り、少し大人げなかったか?と後悔の念を感じる。

…悪役でもいい。

そう思っていたが、やはり自分は甘いなぁ、と思いつつ、このまま落下はマズいので受け止めに行こうと移動し始めた瞬間だった。

赤い光。

眼下を照らす、赤い光。

時間として、所々灯り始めた街の電光ではない。

ヒカリのデバイス。その装甲の隙間から洩れる光。各バーニアをふかし、姿勢制御。体制を整える。

 

「ま、まだやるっての?」

 

三度、フェンサーとザッパー、一挺一本に持ち帰る。キリエにとってはこの世界のデバイス一機一機が未知のもの。何があっても構わないよう、臨戦態勢で待ち受ける。

 

「うぅ…痛い…。」

 

『各部、戦闘行動に支障はありません。しかし、経験の差による彼我の戦闘能力の違いがあります。』

 

「か…勝てない…かな?」

 

『…Maximumで行けば…あるいは。』

 

Maximum…詰まるところ、最大出力だろう。その意味が示唆する物…それの行き着く先が何たるかをこの時知る由も無く…

 

「…それなら、それで…行こう。」

 

『…ならば、当機に命名を。』

 

「名前?」

 

『肯定。それを以て、サージェントの当機への登録が終わります。』

 

「……そうか…だったら…」

 

目を閉じ、小休止。正直、ヒカリは名前を名付けたことは、この10年弱の人生の中では経験がない。でも、この機械は自分に名前を求めている。名前は大切なもの。でも、それを熟考する猶予はない。目の前にいる襲撃者。それが許すはずもない。

すっ…と。静かに目を見開く。

 

「機体名……『ヴァルキリー』」

 

『ヴァルキリー…登録完了。なるほど、北欧神話の勝敗を決する女神のワルキューレ、その英語読み。サージェントらしいチョイスと思います。』

 

「そ、そうかな?ってあれ?どうしてのボクの出身を…」

 

『Mode…Maximum…start-up』

 

言い終わらないうちに、ヴァルキリーと命名したデバイスから赤と白銀、混じり合った魔力の光がヒカリの視界を支配した。合わさってピンクというわけではなく、混じり合うこともなく、それぞれが独立して放出されていた。

足下に展開するのはミッド式。ヒカリの魔力光なのか、目映いばかりに銀色の光を放つ。

 

「ちょっ…なんなのよコレ…!?」

 

『各種装甲、スライド開始。内部フレーム露出確認。』

 

赤い光が漏れ出す部分を起点に、身体の各部にある装甲がその形を変えていく。それはインテリジェントデバイス等のモードチェンジ。俗に言う変形にも見える。

だが違う。

変形ではない。

変貌しているように見えた。

赤い内部フレームから漏れ出す赤い光。淡いネオンのようにも見えるが、それは強い光と弱い光、それぞれが一定のペースで心臓の鼓動のようにゆっくり代わる代わるで輝いている。

 

『サージェント。このモードは一定時間、魔力の最大放出と循環を行う、いわばフルパワーです。戦闘能力が格段に向上します…ですが。』

 

「戦闘継続時間が狭まる。つまり、短期決戦。そういうわけだね?」

 

肯定、とヴァルキリー。

 

『マニューバーの軌道はこちらが請け負います。サージェントは…』

 

「OK!照準とトリガー…だね!」

 

背部の大型のユニット。その装甲内部から大量の魔力粒子を噴す。

 

だが、まだ跳ばない。

 

まだ…踏ん張る。

 

力を溜める。

 

『スタンバイ…レディ?』

 

足の装甲による身体機能をブーストのお陰で、何とか踏ん張りが利く。今の格好はまさに、思いっきり飛ぶから力を溜める、足を肩幅に開き、膝と腰を少し落とした状態。

 

「ロケットォ…!」

 

ガシャリとM16を構え直す。右手人差し指をトリガーに添え、左手はパワーバレルを保持。いつでも照準を付けて撃てるようにする。

 

「ブーストォッ!!!」

 

溜め込んだ力場を解放する。

 

先程とは比較にならないほどの加速性能。

 

キリエとの距離は瞬時に埋められる。

 

トリガーを引く。マガジン内部に装填されたカートリッジ。いや…それにしては小さい。恐らくは本来の弾丸であるNATO弾に合わせて、カートリッジのサイズを合わせているのだろう。薬莢が、引き金の作動により、備え付けられた仕事を果たさんとし、内部に込められたそれを炸裂させる。それと同時に、銃口から高速で白銀の軌跡を描き射出。オートマチックの機能で、立て続けに撃ち込む。

発射するとマズルフラッシュで暗がりの空を、まるで流星群が連続して流れるようにみえる。

排莢口から魔力を使い果たした薬莢が排出され、下方を流れる雲に消えていく。

キリエはといえば辛うじて円形のシールドを張り、その振動にこらえながらも、魔力弾を防ぐ。

 

F1カーか何かが空を裂き、通り過ぎるような鋭い音が彼女の横で鳴り響く。

 

「うおぉぉぉぉっ!!」

 

背後を取ったと同時に急旋回。ブーストの加速度に比例し、かかるGも半端ではない。ある程度の緩衝はヴァルキリーとスーツが行っていても、完全に防げるものではなく、多少なりとも身体に負担が掛かってくる。歯を食いしばり、身体が持って行かれそうになるのを必死にこらえる。

肺が

胃が

心臓が

骨が

筋肉が

悲鳴を挙げる。だが、せっかく不意打ちにも近い、背後が取れたのだ。この気を逃すわけには行かない。

痛みにこらえ、M16の銃口を再びキリエに向ける。幸い未だ相手はこちらを捉えていない。

 

「いっ………けぇぇぇぇぇっ!!」

 

先程の回避と同じように、標的を中央に固定。その周囲を旋回しつつ魔力の弾丸が撃ち込まれていく。

魔力の弾による着弾で、キリエを中心として魔力爆発が発生し、グレーの煙が周囲を支配していく。

 

…やったか?

 

トリガーを引いても、何も出て来ないところを見るに、マガジン内部のカートリッジが切れたのだろう。

朦々と上がる灰煙に視界を遮られながらも、目をこらし、不測の事態に備える。

 

『予備の弾倉を射出します。』

 

サイドアーマーの上部がスライド。中から黒い、なめらかに湾曲したマガジンが射出される。危なげなくそれを受け取ったヒカリは、ライフルのマガジン・キャッチ・ボタンを押し込んで空弾倉のロックを外し、新たな弾倉を差し込む。ボルトキャッチボタンを操作して、初弾を装填。カートリッジが本体にセットされ、臨戦態勢は万全。

 

「…落とせたと思う?」

 

『攻撃のタイミング、角度共に現時点ではベストに近い物でした。加えて彼女の張ったシールドはラウンドシールドと同じタイプと推測。背後からの防御は恐らくは不可能。…撃墜は行かなくとも、多少なりともダメージはあるかと…』

 

バイザー越しに見るにも、魔力による爆煙でサーチが頼りにならない状態。相手がどう出て来るか。待ちの一手でしかないのだ。

 

「アクセラ…」

 

「っ!?」

 

聞こえた。

聞こえてしまった。

余り聞きたくなかったあの声が。

トリガーにしっかり手を掛け、どこから来ても良いように。

 

「レータ-!!」

 

目の前にピンクの閃光。

次の瞬間には、桃色の髪が眼前に靡き、不敵の笑みを浮かべた彼女がヘヴィエッジを振りかぶっていた。服は、銃撃のダメージなのか、所々黒く煤こけ、肌が露出している部分も見受けられる。

しかしその刃はヒカリを切り裂かんと唸りを上げ、ギラリと鈍く光る。背を三日月のように逸らせ、全身のバネを使い、振り下ろすそれは、当たれば必殺の一撃になるだろう。

ごぅっ!と空気ごと断ち切る。キリエも取ったと確信する。

 

 

 

 

 

しかし、響くの鈍い、金属がぶつかり合う音。

その黒いボディが、目標との間に遮り抗う。

M16のストックとパワーバレルを手で支え、押し負けないようにするつもりだったが、その一撃の重みはそれ以上。まさに叩き落とすように、ヒカリは下方に吹き飛ばされる。

さすがにあのタイミングで反応されるとは思わなかったキリエだったが、それでも、と空を蹴り急降下。

ヒカリもそれに感付き、左方向にブースト。キリエのヘヴィエッジがポニーテールの先端を少し切り、はらりとブロンドの髪が宙を舞う。

ヒカリはそのまま脚部と背部のスラスターを噴かして逆加速。M16を撃ちつつ、上昇をかねて距離を空けていく。

ヘヴィエッジの腹で防ぐ。

一発一発の威力は大したことはない。しかし、その連射性は中々厄介だ。

 

残りエネルギーは?

アクセラレータを使用したし、多少減ったが継続戦闘自体は未だ出来る。…自動回復にしても問題はない。それに、ここで決着をつければ、目的の物を手に入れることが出来る。

そうすればきっと…!

 

それがキリエの引き金となり、そして奮い立たせる意思。

蹴り出すように宙を跳び、バックブーストをかけながら弾幕を張るヒカリを追撃する。

迫るのは白銀の弾幕。その軌道を予測しつつ、シエルの持つM16についての見識に思考を巡らせる。

マガジン一つにつき、さっきの突撃と射撃。その中で撃たれた弾数は60発ほど。ある程度の誤差はあれども、撃ちきればマガジンを再装填するだろう。そうすればその隙を突くことで流れを一気に引き寄せられる。

 

「でも…!この速度は中々…!」

 

追撃しようにも、速度差がかなりある。アクセラレータならば追いつけなくもないが、あくまでもそれは直線でのみ。相手は軌道をある程度の調整できる分、有利だ。

弾幕の軌道は直射のみなのが不幸中の幸いか。キリエにとっては予想はしやすい。

 

…そしてその時が来た。

サイドアーマーの装甲が展開した瞬間を、キリエは見逃すはずもなく。

 

迷うことなく、

 

「アクセラレータ!!」

 

発動した。

常人から見れば、この速度は瞬間移動と見紛うほどの物だ。恐らく、これで彼女の虚を突くならば、一気にひっくり返せるはず。

アクセラレータの始動と同時に、銃口にエネルギーを集めるのも忘れない。

 

零距離から撃ち込む。

 

そうすれば、流石に防御の魔力を撃ち抜く事が出来るだろう。そこまでは無理でも、魔力を多量に削ることが出来るはず。

設定した座標に抜け出た。

眼前には白銀の装甲。

計算通り!

 

ヴァリアントザッパーの銃口が、火を噴き、唸りを上げる!

 

「ラピッド・トリガー!!フル…ファイヤー!!」

 

連射…

連射連射。

連射連射連射!!

倒れろ…

倒れろ倒れろ。

倒れろ倒れろ倒れろ!!

トリガーを引く指が、自ずと速度を上げる。

眼前にはマズルフラッシュが視界を遮る。

しかし、当たっているのは分かる。

確かな手応えが、確信がある。

爆発が、爆煙が、閃光が、爆音が、

視覚を、聴覚を、嗅覚を、支配している。

 

 

どれくらい撃ち込んだか。

気付けばトリガーを引いても、銃弾が出なくなっていた。恐らくはその銃その物が、短時間での連射によるオーバーヒートでセーフティーが掛かったのだろう。

銃に流し込んだ力は膨大だ。掌を伝い、銃を媒介にして、撃ち込めるだけ撃ち込んだ。引き金の引きすぎで指が少しシビれてる。

コレで落ちないなら、正直お手上げになるかもしれない。

 

2人は朦々とした煙に包まれていた。キリエ自身も、センサーの類いが効かない状況で、目の前にいる相手の状況はそれ程把握できていない。撃ち込めば当たった。それしか分からないから。

 

上空に吹き荒ぶ、夜を告げる風が煙を流していく。

段々視界も晴れ、白銀の装甲が目の前にある。…一点黒く煤けているが、装甲自体は割れもしなければ砕けてもいない。

つぅっと嫌な汗がキリエの頬をなぞる。

 

抜けていない。

 

その無二の事実を突きつけられた。

 

なんなのよ、この装甲…。

ガン○リウム合金なの?

超○金ニューZαなの?

 

戦慄。憤慨。

そんな感情がキリエの思考を支配する。

しかし、それを自覚した瞬間、心中鼻で笑ってしまった。

自分が?

戦慄?

憤慨?

ちゃんちゃらおかしいわね…!

なんせ、私は…

私達『姉妹』は…!

 

次は自嘲していた。

しかして、その彼女の思いと、努力の結果は、今の想像とは外れた。

キリエにとっては、良い意味となり得るものとして。

 

白の流星と黒の閃光が、宙域に浸入していた。




そんなわけで、ヒカリのデバイス登場です。基本的に追々物語に沿いながら、機能解説をしていきます。
出来るだけチートはしません。まぁ欠点もかなりある機体なので、その事を踏まえての戦術を組み立てるのもヒカリの仕事になっていきます。その辺を加味して楽しんで頂けたら、と。
では次回!
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