魔法少女リリカルなのは 未来への系譜   作:ロシアよ永遠に

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Mission26『マテリアル娘と雲の騎士』

「王。」

 

蝋燭が小屋をうっすらと照らす中で、シュテルが普段余り開かぬ口を開く。それを予期できていたのか。ディアーチェは目を閉じたままではあるが、彼女の言葉に耳を傾ける。

 

「一朝一夕…ではありますが、魔力も昨日に比べて戻りました。そろそろ、夜においても探索を仕掛けても良いのでは?」

 

「うむ、我もそう思うておった所よ。」

 

「え?何何?夜更かししてもいいの?」

 

2人の会話に最初は余り耳を傾けていなかったレヴィだが、夜の探索という単語に反応して話しに入ってくる。夜更かししたい年頃なのか?

 

「夜更かしではありませんよレヴィ。…いえ、夜に起きている、と言う意味合いでならばあながち間違ってはいませんか。」

 

「ともあれ、我らが力を戻すためには、砕け得ぬ闇が必要よ。」

 

「じゃあじゃあ!ぱぱっと探知魔法をかけて、ぱぱっと終わらせちゃおうよ!見つかったら、ちょー速いボクが…」

 

「たわけ。…確かに大規模な探知魔法を使うことが出来るのであれば手間が省けるのではあるが、頭上に浮いておるハエ(管理局)が五月蠅い故な。小規模なサーチで地道に探すしかないのだ。」

 

「それに…恐らくここ数日で砕け得ぬ闇の反応は確かにありましたが、やはり分散されているようですね。その断片を局が回収している可能性も十二分にありますので、奪回も場合によっては一考しないといけません。」

 

「何事も当たり方が肝要よ。我等がいかな強者とて、管理局という組織に正面立って立ち向かうには無理がある。ともすれば無意味に藪をつついて蛇を出す必要はあるまいて。…もっとも」

 

夜風に揺れる蝋燭の火が、ディアーチェの顔をうっすらと映す。見開かれた碧い瞳、そして吊り上がる口許は恐ろしさすら感じ得るほどに。

 

「向こうが鼻からその気ならば話は別だがな?」

 

「そう来なくっちゃ!俄然やる気が出て来たぞぉ!」

 

「では、参りましょうか。」

 

「うむ。来よ。我が剣杖エルシニアクロイツ。そして魔道書(グリモア)紫天の書。」

 

「爆現雷光!バルニフィカス!」

 

「いきましょう。ルシフェリオン。」

 

それぞれの力を振るうその得物を手に、そしてそれぞれの紫、茜、蒼の光を帯びて、彼女らは夜天を舞う。全ては…己が悲願の為に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「む……。テスタロッサ、か…?いや、違うな。」

 

「お……!」

 

散開した矢先、一人の騎士がレヴィの前に立ちはだかる。片刃の騎士剣を携え、既に騎士甲冑は展開済み。哨戒でもしていたのか、レヴィにとっては間が悪い。

 

「お前は…ブシドー!」

 

「いや…武士、と言うよりも騎士なのだが。」

 

「じゃあ…キシドー?」

 

「…聞かれても解答に困るのだが。…一先ず聞こう。お前も、模造品(イミテーション)か?」

 

騎士―シグナムは問う。眼前に居る少女は、自分の知る好敵手と、色は違えどそれ以外の見目形は瓜二つ。髪形もさることながら、身に纏うバリアジャケット。そして手に持つその戦斧。流石にこの数日で引き起こされている瓜二つの人物が現れるという現象と無関係ではないだろう。そして、大抵その相手とは相見えることは免れない。

何時でも抜刀できるように、左手に携えるレヴァンティン。その柄に右手がかかる。

 

「いみてーしょん?ナニソレ?ボクには、凄くて!強くて!カッコいい!レヴィ・ザ・スラッシャーと言う名前があるんだ!そこんとこ間違えないでよね!」

 

「凄くて強くてカッコいいかどうかはわからんが…一先ず…レヴィ、と呼べば良いか?」

 

「うん、いいぞっ!敬意と親しみと慈しみを込めて呼ぶが良いさ!」

 

見た目は…色違いなれど、その中身―正確はまるで正反対だ。自己主張の乏しいフェイトと違い、まるで自分を誇示して、それでいて『どうだ!?』と言わんばかりに胸を張る。そして、自分の名を―名乗った。つまり、今までのエグザミアの欠片から生みだされた者達とは違うと言うことになる。

 

(騎士各位。そちらの方で何か遭遇は?)

 

騎士間での念話を飛ばす。このタイミングでレヴィと名乗る少女が出て来た以上、他にも何らかの変化があるのかも知れない。

そう予感して念を飛ばして数瞬。真っ先に返してきたのはヴィータだった。

 

(シグナムゥ…)

 

そしてその声は余りにも気弱だった。強気がウリの彼女にしては珍しいこともあるものだ、と思いながらも、その異常性にはシグナムも眉をひそめる。

 

(どうした?何かあったのか?)

 

(なのはが…にゃのはが…!)

 

ようやく克服したはずのなのはの読み、それが崩れていることに対しての突っ込みはさておき、

 

(どうしたヴィータ?高町がなんだ?)

 

(なんか目つき悪いし髪を切ってるし…しかも悪堕ちしたみたいなバリアジャケットになってんだよぉ…!しかもアタシを見付けるや否や、『鉄槌の騎士とお見受けします。捜し物の途中ですが、強者と相見えたのも一興…一槍お願いいたしたいのですが…』とかいって、ギラギラ目ぇ輝かせてんだけどぉ…!)

 

(………ふむ、少し待て。)

 

どうやら混乱しているように見えて、どこか自分の今の状況と重なる点もある。そもそも、なのは自身は自分から勝負を挑むなどと余りないし、ヴィータに対しては敬語も使わない。これまた模造品(イミテーション)とは違うとも言えるだろう。

 

「時にレヴィ。」

 

「ん?何だよキシドー。」

 

「…結局その呼び方は確定なのか…?」

 

「じゃブシドー?」

 

「はぁ……、どっちでも構わん。お前の仲間に好戦的で敬語が主流の人物はいるか?」

 

「うん、居るよ!シュテルんって言うんだ!強くて賢いんだ!」

 

「ふむ…成る程。」(ヴィータ。)

 

(な、なんだよぉ…!)

 

流石に純真爛漫であるなのはが物騒に『戦いましょう!』と目の前で言ってたら、自分でも若干引いてしまうだろうが…それにしてもビビりすぎである。

 

(その目の前に居るのは高町の模造品(イミテーション)ではない。…おそらく、私が現在目の前に対峙しているテスタロッサと瓜二つの少女と同じ存在なのだろう。性格は…ほぼ真逆だがな。名は…シュテルんと言うらしい。)

 

(シュテルん…?)

 

(そうだ。もしかしたら今回の怪異について、何らかの進展があるかも知れん。故にこちらからの手出しはするな。)

 

そう伝え、念のために警戒は怠らないように、且つ慎重に。普通とは違う存在。もしかしたら、何らかの情報を得られるかも知れない。それだけに、高町なのはではないが、話し合いと言うものをしなければならない。

それだけに皆が、穏便に済ませられることを切に願うシグナム。

 

 

 

 

 

 

 

「え、え~と…。」

 

「どうしましたか?鉄槌の騎士。刃を交える気に?」

 

「いや、刃も何もこっちにんなモン付いてねーって…。そっちも…杖、なんだろ?」

 

「…成る程、これは盲点でした。」

 

どうにも調子が狂うな、とヴィータは心中で語散る。知り合いの少女に、髪形こそ違えど、声質にバリアジャケットも似通うだけに。

しかし本物のなのはとは違い、ピリピリと感じる闘気と魔力は歴戦の騎士のそれであり、どこかのほほんとしている彼女とはかけ離れている。

戦闘中毒者(バトルジャンキー)とも感じられるかのように、まるで目の前にあるオモチャでどう遊ぼうかとウキウキする子供のように目をぎらぎらさせ、ヴィータにとっては若干薄ら寒い物も感じた。

 

(ど、どーしよ。シグナムには穏便に事を済ませるようにって…。そ、そうだ!平和の使者は槍をもたねぇんだ!うん、アタシとしたことがこれは盲点だ。)

 

間違った格言を推しながらも、ヴィータは愛機であるグラーフアイゼンを量子化して待機させる。その行動に怪訝な表情を浮かべるシュテルん。

 

「………?なぜ鉄の伯爵を収めるのですか?」

 

「え、え~と……シュテルん…だっけ?べ、別にこっちは戦うためにこうして出て来たわけじゃないんだ。」

 

「……失礼ですが、私の名はシュテル・ザ・デストラクター。シュテルん、というのはあの娘(レヴィ)が自分を呼ぶ呼び名であって、決して正式な個体名称ではありませんので、その辺をお間違えなきよう…。」

 

「あ、そ、そーなの?あははは……。」(シグナムゥゥゥゥゥッ!!間違ってんぢゃねぇかぁぁぁっ!!)

 

表面上、苦しい笑顔を浮かべながらも、間違った情報を与えてきた自分の将に内心憤慨する。

対すシュテルん改めシュテルも、流石に存在は知っていたとは言え、初対面の相手に愛称で呼ばれたことに若干眉を顰める。が、そこまで心の狭くはない彼女は、すぐにいつもの無表情へと戻った。

 

「…どうやら、雲の騎士たる貴女方の一人がレヴィと対面しているようですね。丁度今し方、彼女より連絡が入りました。」

 

「そ、そーか。一応言っとくけど…アタシらはやり合う気は無いわけで…。」

 

「えぇ、貴女が武器を収めたことには疑念が湧きましたが…戦わずにこうして向き合うと言うことは、その意志がないと信ずるに値すると確信できました。」

 

「そ、そうか。」

 

「それに。」

 

そう付け加えて、シュテルは若干表情を崩した。無表情キャラかと思えば、こう言った顔も出来るのか。そうヴィータが認識を改め―

 

「平和の使者は槍を持たない、がそちらの認識なのでしょう?」

 

前言撤回だ。

 

「なっ!?なんでそれを…!?」

 

「いえ…私のオリジナル、その記憶の末端に貴女がそう言っていたのを思い出しましたので。」

 

オリジナル…やはり彼女はなのはを元にした複製では無い何かなのだろうか。ということはレヴィという少女もその理屈で行くならフェイトの…。

そこで、ヴィータに一つの嫌な予感が脳裏を走る。

 

「なぁ?」

 

「はい、何でしょう?」

 

「シグナムと話してるヤツと、レヴィの他にも…同じようなヤツがいるの?」

 

「えぇ。我等が王。元となったのは…貴女方の主でしたか。」

 

嫌な予感的中ッッッ!!!!

つまり、つまりだ!目の前に居るシュテルやレヴィのように、オリジナルとほぼ正反対の性格になる。そういうパターンなのかなんなのかは分からないが、もしこのままの流れで行くと―

普段穏やかで謙虚で、良い意味で夜天の主らしからぬ気質を持つ彼女の正反対―

 

(オレ)こそが夜天の主よ!雑種!(オレ)にひれ伏せ!慢心せずして何が王か!ふははは!!』

 

「うっぎゃあああ!!なんだこれ!?なんだこれ!?」

 

「…いきなり叫び出すとは…、思考ルーチンのプログラムにバグでも?」

 

以前見た王様キャラと被ってしまい、自身の八神はやて像がガラガラと音を立てて崩れていく気がした。ブンブンと展開したグラーフアイゼンを自分の頭上で振り回して、想像した変な物を振り払おうと努める。

しかし…

彼女の想像は当たらずもほぼ遠からず、努力は空しく終わることをまだ知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ックシッ!!…む。風邪でも引いたか。我としたことが。」

 

やはり夜はまだ冷えるか、と王こと、闇統べる王『ロード・ディアーチェ』は身震いする。いくら騎士服…否、暗黒甲冑(デアボリカ)の恩恵はあれど、着衣部はともかくとして肌をさらす部位には効果がないのだろうか。

 

「これも、我等が完璧な存在たり得ぬ故か。一刻も早く砕け得ぬ闇を手にせねば…!」

 

砕け得ぬ闇を入手したら、防寒対策が出来るのだろうか。シュテル辺りに炎熱変換して貰えれば手っ取り早いと気付かないのは寒さのせいか。

 

「お…。」

 

「あ…。」

 

寒さに気をやって周囲への警戒を怠ったからか。目の前に目視できる距離まで気付かずに居た。

どこかで見たような顔だった。服は…帽子こそ被ってはいるが、纏う服は暗黒甲冑と色が違うだけで形は瓜二つ。手に持つ杖も、手に持つ魔道書も、だ。

しかし、

 

「む?むむむむ?」

 

「ぬあっ!?何だ貴様!?えぇい!寄るな纏わり付くな!」

 

一考する間に相手は至近距離に近付き、まるで嘗め回すようにまじまじと見つめてくる。さしものディアーチェもこう寄られては仰け反らざるを得ない。

 

「……私とそっくりさんや。色違いやけど。」

 

「人は自分を見ると嫌悪感を抱くものだと聞くが、事実のようだ。」

 

「そぉ?私は別に大丈夫やで姉やん。」

 

「誰が姉か!?誰が!?」

 

「じゃあ、私が姉やん?」

 

「貴様のような抜けた姉は要らぬわ子鴉!」

 

「あ、あの…我が主?姉か妹か、という以前に、彼女は何者なのでしょうか?ここまで瓜二つのなのも流石に…。」

 

目の前で繰り広げられる双子とも思しき二人の漫才。それを止めに入ったのは夜天の融合騎たるリインフォースだ。このままでは収拾が付かないと判断した為のものだが…。

 

「アカンでリインフォース。姉妹の感動的再会に水差したら。馬に蹴られるで。」 

 

「は、はぁ…。」

 

「それは恋路の話であろうが!?貴様はオツムも残念なのか!?」

 

「アカンで姉やん。家族の愛は、恋の愛しさも超越するんや。」

 

「いらんわそんな愛!?しかも我は姉ではないと言っておろうが!?」

 

これはもう…気が済むまでやれば良い。

リインフォースは諦観を決め込み、遠い目をして主とそのそっくりさんを見つめるのだった。




え?題名の割に二人足りない?
気のせい、か…な?
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