魔法少女リリカルなのは 未来への系譜   作:ロシアよ永遠に

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正直駆け足気味かも知れません。描写不足は筆者の技術不足。改善点に気付いたら推敲してみますので御容赦を。


Mission27『収束への予兆』

とあるビルの屋上にて、翠の騎士服に身を包んだシャマルが目を閉じ佇む。周囲には愛機のクラールヴィントの宝石に当たる部位が舞い、彼女はそれを媒介にして周囲に探知を掛けている。

 

「どうだシャマル。」

 

「うん。市内には今の所反応は3つ。それぞれ応対してくれている3人以外検出されないわ。」

 

彼女の数メートル後方には褐色の肌をした筋肉質の男―ザフィーラが腕を組み、背中越しに語り掛ける。対しシャマルはゆっくりと、そしてうっすらと目を開き応対する。

 

「御免なさいザフィーラ。はやてちゃんの直衛に回るはずなのに。」

 

「構わん。主には彼女が付いている。力は落ちたとは言え、並大抵の輩には遅れは取るまい。」

 

「…そうね。」

 

「探知中はお前は無防備だろう?それに、直接戦闘には不向きだ。誰かが盾になる者がいるなら専念できよう。」

 

「ふふっ、頼りにしてるわザフィーラ。」

 

盾の守護獣の二つ名のまま、彼の守護においては騎士の中で右に出る者はいない。それだけに、シャマルにとってはこの上なく嬉しい護衛だった。

 

「会話を傍受したけど…はやてちゃんの所を除いて穏便に済むかも知れないわ。」

 

「…主以外…?」

 

「どうにも揉めてるのよね。…聞いてみる?」

 

「う、うむ。」

 

穏やかなはやてが他者と揉める?にわかには信じがたい報告ながらも、不躾ながらその内容と相手が気になり、傍受をしてみることにしたザフィーラ。クラールヴィントの1機がフワリと彼の傍に浮遊すると、オープン回線にてその音声を拾うことにした。

青と、そして白の獣毛で被われたその犬にも似た耳がピクリと動き、耳を澄ませる。

 

『なぁ姉やん。』

 

『だから姉と呼ぶな!話しがループしておるぞ!』

 

『まぁえぇやん?ヴィータに聞いた話やと、姉やんは私を元にして姿をとったんやろ?』

 

『…ふん、不本意だがな。』

 

『……ん?せやったら姉やんは、私の妹…』

 

『だからループしておる!』

 

『まぁえぇわ。って言うことは、私の知識とか、そー言ったものも受け継がれてたりするん?例えば…料理とか。』

 

『…調理の知識等は問題なくあるな。…貴様が元というのはやはり気に喰わんがな。』

 

『お、えぇなぁ。いっぺんでえぇから、料理勝負してみん?』

 

『ふん!誰が貴様などと…!』

 

『あれぇ?姉やん、負けるのが怖いん?なぁ怖いん?』

 

『…良かろう!そのにやけ面を泣き顔に変えてくれる!首を洗って待つが良いわ!!』

 

『……以上、我が主と、曰くディアーチェと名乗る者の料理対決勃発だ。』

 

〆にリインフォースが、まるでニュースの中継のように纏めると、シャマルは傍受を止める。

 

「…平和だな。」

 

「…そうね。」

 

血で血を洗うような戦いが始まるのかと、期待はしていたわけではないが、危惧はしていた二人にとっては肩の力が抜けることとなった。争いは争いではあるものの、武器を用いない、平和で、血を見ぬ戦いというのは良いものだ。

 

そう…肩の力を抜いた瞬間だった。

 

「ちょっ……何なのコレ!?」

 

「むっ!…どうした?」

 

広域に展開していた探索魔法に一つ引っかかりが生じたことを、クラールヴィントがシャマルに伝達する。落ち着いた矢先にこれなので、さしもの彼女も驚愕しきりで仮想キーボードを叩く。

 

「大規模な魔力反応探知…海上方面!?」

 

『こっちでも探知したよシャマル!凄い反応…!衛星軌道からでも充分直接伝わってくるくらい!』

 

遥か上空のアースラでオペレートするエイミィからも同様の反応を拾ったとの通信だ。ふと見れば、海上方面上空にまるで電流でも流れているかのような光が走る。そしてその膨大なまでの魔力の奔流が風となり、まるで唸り声のごとく吹き抜けていく。小さな粉塵を巻き上げ、シャマルも、ザフィーラも、条件反射に腕で顔を保護する。

 

『これは…!』

 

「どうかしたの!?エイミィさん!」

 

『各員警戒っ!!!周囲に(おびただ)しいまでの魔力反応探知!!臨戦態勢を取って!!クロノ君!!』

 

『聞こえている!ヴォルケンリッター各位!念のために援軍を手配する!無茶はしないでくれ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、何なんだよコレ…!」

 

「これは…。」

 

自身の周囲に現れた、紫色の、『ヒト』の形を模した『ナニカ』が、まるで極楽浄土から黄泉返ったかのように古代ベルカの魔法陣から顕現する。それも一体や二体所ではない。

 

「うじゃうじゃと…何が起こってんだ…!?」

 

「…随分と…、粗悪な人形ですね。」

 

数十体はあろうかというソレに周囲を取り囲まれ、無意識ではあるがヴィータとシュテルは死角を補い合う為に背あわせになる。

 

「これもエグザミアの影響なのかよ…!」

 

「エグザミア…?」

 

「砕け得ぬ闇とかいうやつもいるらしーけど、アタシらはそう呼んでる。」

 

砕け得ぬ闇、その言葉に少々シュテルが反応する。本懐であるそれがこの現象の原因ならば、ここで力を振るわないわけには行かない。

クスリと口元を緩めた瞬間、シュテルは足元に茜色の円形魔法陣を形成する。同時に、構えたルシフェリオンの先端からは、同じ色のスフィアが数個展開。彼女の周囲に浮遊し始めた。

 

「お、おい!?」

 

「彼らを倒したならば、事態は収束する。それならば早いに越したことはありません。」

 

「だ、だからってよぉ!」

 

「と言うわけです、よろしいですね?王。レヴィ。」

 

(無論だ。この塵芥共を片付け、砕け得ぬ闇、その断片を手に収めてくれようぞ!)

 

(待ってました!よぉっし!暴れるぞぉ!)

 

今の会話を念話の回線をオープンにして2人に届けていたのだろう。彼女らの思念通話がシュテルの脳内に響いた。

 

「時に鉄槌の騎士…」

 

「ヴィータだ。今はそっちの方が馴染んでる名前なんでな。」

 

「失礼。ヴィータ、ぼやぼやしていてはいけませんよ?向こうは…問答無用のようです。」

 

剣を携えた『ヤツ』が一体、シュテルとの話を進める中でヴィータに斬り掛かる。

しかし、茜色の弾丸はそれを許さない。巧みなまでのスフィアコントロールでカウンター気味に撃ち込まれたヤツは霧散、今まで見付けた欠片よりも小さな紫の結晶と化す。

 

「さ、サンキュ…。」

 

「いえ、礼には…。しかし脆いですね。…このような物なのでしょうか?」

 

「いや…今までのはもう少し手強かった。…それにこんなシルエットだけじゃなくて、もう少し造形を真似て、端から見たら本物と見分けが付かねぇ程だった。」

 

それに、と付け加え、形成していた欠片も今までより小さいものだ、とも。

 

「なるほど。」

 

全てを理解したのか、シュテルは得心した表情でスフィアを操作、向かい来る奴らのを一撃で撃ち落としていく。

やはり脆い。スフィアの一撃で砕けるソレは、ただ形を模しただけのハリボテに過ぎず、逆に言えばそれを補うための数の暴力である。

 

「おそらく、先ほどの強大な魔力反応。それによって小さな欠片の力を強制発動させたのでしょう。おそらく、砕け得ぬ闇。それらは今まで近くの欠片と引き合い、そして合わさり、ある程度の大きさと力を取り戻して模造品(イミテーション)を作り上げるのがパターンである、と私は推測します。」

 

「じゃあ…小さな欠片を強制発動させたから、未熟なコピーばっかりになった…ってことなのか?」

 

肯定、と静かにシュテルは頷いた。

なるほど…それなら話しは噛み合う。彼女の分析力にヴィータは素直に感心して舌を巻きつつも、生みだした鉄球を撃ち放って、共に迎撃していく。

 

「…となると、あの反応は…誰だってことになるんだよ…なっ!!」

 

迎撃を擦り抜けてきたヤツよ横っ腹を、愛用の鉄槌でぶん殴る。頭をかち割る。物足りないと感じつつも、数の厄介さにヴィータは少々苛立ちを覚えていく。

 

「恐らくは…砕け得ぬ闇を狙う者、かと。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だろうな!」

 

レヴィの話を聞きながらも、レヴァンティンによる斬撃が敵を両断する。1対多数ならば、過去の主の元で幾度となく経験した。人相手ならばともかく、意志もなく、ましてやハリボテなどに遅れを取るほど、ヴォルケンリッターの将は容易い相手ではない。

 

「ボクらの王様が砕け得ぬ闇を一番上手く使えるんだ!だからボクらが砕け得ぬ闇を手に入れて、そして飛ぶ!」

 

レヴィも負けじとバルフィニカスから発せられた鎌を投擲。誘導にて数多の敵を切り裂いていく。

 

「お前達はそれを手に入れたとして、何とするんだ?」

 

「決まっている!ボクら構築体(マテリアル)の3人が完全な身体になる為さ!その為には砕け得ぬ闇がいる!だから手に入れる!それだけ!」

 

「砕け得ぬ闇、もしそれがロストロギアならば管理局が管理せねばならん!物と場合によっては世界が滅ぶ!」

 

「そのための王様なんだ!…何でか分からないんだけどさ。」

 

最後の最後にこれだ。しかし、確たる証拠はないが、レヴィの眼には疑う余地もないほどに自信に溢れていた。彼女の性格故のものか、はたまた別の根拠があるのかは分からない。将としておかしなものかも知れない。しかし、シグナム個人としては彼女を信じるに値するとも思える。

 

「…なんにせよ、だ!この場を切り抜けなければ元も子もない!」

 

「同感!」

 

互いに広域殲滅用に片や蛇腹剣(シュランゲフォルム)。そして片やジャケットをパージ(スプライトフォーム)。どちらかともなくスタートし、攻撃を開始する。蛇の、否、龍のうねりのごとく、空を舞う剣の流れ。そして放電現象(スプライト)のように超高速の切り抜けにおいて敵を両断し。

バトルマニアの二人による殲滅はまだ始まったばかりだ。

 

 

 

 

 

「ん~…キリがあれへんな~。」

 

「はっ!もう息切れか子鴉。」

 

「主、ここはお下がりを。」

 

「いやぁ…四方八方囲まれて、下がっても敵や。戦うよ。」

 

さしもの広域殲滅型の二人も、際限なく現れる敵にはうんざり仕掛けている。リインフォースも善戦している物の、やはり闇の書事件の後遺症で継続戦闘力が低下しているのか、はやてやディアーチェに比べて魔力の残りも少なくなってきていた。

 

「ふん、下がっておれ。朽ちかけの躯で前に出るな!」

 

「いや、まだまだ。朽ちかけなればこそだ。我が身に変えても護らんとする方がおられる。ならば私は躯を推して前に出よう。主の騎士であるために。」

 

「ふん、なれば今一度突破口を我が開く。その間に突破せよ。子鴉を連れてな。」

 

「王様?何言うてるん?私らも戦うよ?」

 

「やかましい。我でこそ戦いの知識は脳に入っておる。しかし貴様はその融合騎と一体となって完全な力を引き出せるのだ。魔力制御もろくに出来んのならば足手纏いよ!」

 

「…我が主を愚弄するのか…!?」

 

普段余り感情を高ぶらせないリインフォースも、さしもの敬愛するはやてを罵られたのであればその怒りは如何ほどか。思わず固めた握り拳が、ぎりっと絞られる。

 

「ちゃうて、リインフォース。王様はな?まだまだ不慣れな私と、調子悪いリインフォースを心配してくれてるんよ。自分がここは引き受けた~、2人は先に行き~、って。」

 

「そ、そうなのですか。…というか主、それは映画などでよくある、所謂死亡フラグでは…?」

 

「最近は逆らしいよ?あからさまにフラグ立てたら、それが生存フラグや言うてな。」

 

「えぇい貴様ら…早いところ用意せよ!こちらはチャージを始める故、その間奴らを足止めせい!」

 

「はいは~い。」

 

やはり緊張感の少ないはやてに翻弄されるディアーチェではあるが、他人とは思えないはやてに何とはなく世話を焼いてしまう。どこかしら、そのマイペースはレヴィと似たり寄ったり…。

 

「世話が焼ける子ほど可愛い言うやろ~?」

 

「くっ!人の内心を読むでないわ!」

 

パラパラとページを送っていた紫天の書。それが特定の頁で止まる。そこに記された術式の文字が光ると、ディアーチェの足元にミッド式、前方に古代ベルカの術式が描かれる。

 

「紫天に吼えよ!我が鼓動!」

 

座標指定の広域殲滅魔法。はやても得意とする殲滅戦。その空間製圧力は他の追従は許さない。

撃ち出される5つの閃光。

 

「出でよ…巨重…!!」

 

目指すは敵の密集する地帯。最も密があり、逆に言えばそこを撃ち抜くことで敵の包囲に大きな穴を開けることも可能だ。ディアーチェにはそれが出来る。彼女が暫くはやての魔法の扱いを見たところ、制御はてんでよろしくない。恐らく座標指定もユニゾン、もしくは誰かのオペレートがなければままならないだろう。逆に言えば、条件さえ整えば、ディアーチェ以上の殲滅力を発揮できるに違いない。

 

「癪だが、子鴉に比べるならば我は出力が不足していよう…!しかし単体での殲滅戦ならば劣ってはおらん!」

 

複雑な軌道を描き、5つの閃光は敵密度の高い場所へと寸分違わず座標固定する。あとは…合図を待つのみだ。

 

「潰れよ!ジャガーノート!!!」

 

刹那

打ち出した閃光は固定座標を中心とし、巨大な紫の魔力の爆発。徐々に膨れあがるそれは、敵を瞬く間に巻き込み、消し炭と化していく。

 

「行け!子鴉!クロハネ!」

 

「了解や!リインフォース!分かってるね?」

 

「はい、仰せのままに我が主。」

 

2人は黒翼―スレイプニール―を羽ばたかせると、飛び立つ。ディアーチェが開けた敵陣の大穴。それを抜け出すために。

しかし

 

「ぬあっ!?何をする!?離せ!離さんか!!」

 

「そんなん言うたかて、王様も魔力が切れかけや。そんな所に1人置いてなんか行かれへんよ。」

 

がっしりと両脇を抱えられ、ディアーチェは強制的に自分の開けた突破口を連行されていく。無論、抱えているのははやてとリインフォースだ。

 

「貴様は自分の心配をしておれ!我はまだ戦えるぞ!」

 

「元々王様、魔力も完全や無かったんやろ?無理したらあかんて。」

 

「…我が主の言うとおりだ。あの数…1人でどうにか出来るものでもない。」

 

「一旦退却や。」

 

2人に説かれながら、納得がいかない表情を浮かべつつも、ディアーチェは暴れることはなく敵の包囲を共に突破する形となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…せ、成功…かしら?」

 

海鳴の海上。

件の敵が大量発生した原因を造ったキリエは、肩で息をしながらその成果を確認する。ざっと探索魔法を掛けてみると、案の定、砕け得ぬ闇―エグザミア―の反応が大量に引っ掛かる。しかし、それは魔力の波という1つの起爆剤を得て、エグザミアの欠片が無理矢理人の形を取ったに過ぎない。奇しくも一年前、フェイトが海中に眠るジュエルシードを発動させたのと同じ策、そして同じ場所であった。

 

「でもま…これで視認できるわけだし…ね。」

 

発動させた自身も、大量に散った欠片、その一つ一つが(かたど)った人の姿。それに包囲されるのも致し方ない。正直今現在、戦う力は先程放出した魔力でほぼ尽き掛けている。しかし彼女の事情など奴らは知ったものではない。

 

「自業自得なんだろうけど…、でも…!」

 

やるべきことが自分にはある。その結果の責めは、それを果たしてからでもいくらでも受けよう。

ヴァリアントザッパーを構え、キリエは敵の一体に斬り掛かっていったのを皮切りに、彼女の孤独な戦いは始まった。

 

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