魔法少女リリカルなのは 未来への系譜   作:ロシアよ永遠に

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どんどん物語を進めていきます。今年の抱負、何とか達成できる…かな。


Mission29『堕ちる時、そして突入』

ユーリの意識は、微睡みの中に沈もうとしていた。

どこか頭が、まるで雲が掛かったかのようにぼやけハッキリせず、項垂れてしまう。

 

眠たくなる。

 

確かにさっき一緒に住む2人と共に寝床に就いたのも覚えていた。

夢かとも思えば、朧気ながらベッドから抜け出したのも記憶にはある。

何を思い、ベッドから出たのか?

トイレ…ではない。

喉が渇いたわけでもない。

 

「…なんで…でしたっけ…。」

 

『もうすぐ完成するから。』

 

耳に入ったのは、少女の声。その声はとてもよく知っている。

重い瞼を持ち上げ、顔を上げて声の主を探した。

 

「君は…私?」

 

『そう。君は私、そして私は君。』

 

目の前に居たのは自分と同じ、ウェーブの掛かった長い髪と、幼い身体。そして袴を履いた自分そっくりの姿。

しかし決定的に違うところ。それは…眼の虹彩か緑。服は赤を基調とした、まるで業火のように燃える色。そして…頬や、大気に晒す腹部に走る、禍々しささえ覚える刺青にも似た紋章だ。

 

『完成すれば、もうもどかしい自分はサヨナラだ。エグザミアからもたらされる圧倒的なまでの魔力を振るうことが出来る。』

 

「圧倒的な…魔力…。」

 

『だから、眠れば良い…。後は私がやる…。

 

エグザミアに組まれたプログラム…その思いのままに…。』

 

それは、微睡みを深い眠りへと誘う甘い言葉だった。そしてユーリは頬に手を添えられ、程良いくすぐったさと、その甘言、もう一人の自分の言葉に身を委ね、そして…意識が遠のくにつれて、周囲が彼女を現すかのように赤く…赤く染まり行く。

 

『そう…全ての破壊を。』

 

視界が完全に閉じる前、赤いユーリはこう言ったのを皮切りに、意識はブラックアウトした。

 

 

 

 

 

 

 

 

結界内部に突入したアースラチーム。

転移の閃光から明けたその光景に、殆どのメンバーが呆気取られる。先程見たマップはあくまで見下ろした上での物。言わば2Dだった。

しかし、実際目にしてみれば、全周囲に紫の人型が軒を連ねたかのように浮遊している。その数は、空が覆われているのかと思うほどに。

 

「な、なんなのこれ…。」

 

「まさか…ここまでとは思いませんでした。」

 

古代ベルカの王の血を引く二人も、この圧倒的なまでの数には驚愕を隠し得ない。未だ仕掛けては来ないが、それでもこの数に一気に攻められればひとたまりもない。

 

「流石の僕もこれだけの数は予想以上だが…。」

 

現場指揮としてクロノが、ロックの解除されたS2Uを携えて、空を見やる。その内心は驚きがあるものの、それを押さえ込み、面には出さないように努めて敵を睨む。

 

「一体一体は驚異ではない。各々索敵範囲を広げつつ互いの距離を保ち、現地に取り残された仲間を発見、救出して欲しい。」

 

大出力砲撃(スターライトブレイカー)、で一気に殲滅は…得策じゃないよね?」

 

「…それは流石に…というか、スターライトブレイカーに付いてる特性知ってる?」

 

「えっと…結界破壊…だっけ?」

 

そう、ユーノの指摘する部分。それは『貫通』ではなく『()()』。PT事件の後、自己鍛錬を続けていたなのはだったが、その過程にて、スターライトブレイカーのチャージ時間を延ばす代わりに、破壊力を向上させた結果に偶然付与されたもの、それが結界破壊だ。貫通を通り越して破壊に行き着く彼女の末恐ろしさに、事情を余り知らない未来組は戦慄する。

 

(…なのはママって…小さい頃は脳筋だったのかな?それとも私の知らない時系列?)

 

特になのはを知る未来の愛娘たるヴィヴィオも、さすがにスターライトブレイカーの詳しい部分は知らない。しかし、過去にブラスタービットを加えたソレを受けた経験があるだけにその威力と恐ろしさは身を以て知っている。それだけに、本来の自分と変わらない年齢から、こんなあり得ない威力の砲撃や、それに付与する特性に改めて震撼せざるを得ない。

 

「結界破壊したら、中にいる奴ら全員が現実世界に溢れかえる。そうなったら海鳴市は混乱につつまれてしまうし、そのまま魔法技術の露呈になるかも知れない。それだけは駄目なんだ。」

 

「だ、だよね。じょ、冗談だよユーノ君。というか皆そんな目で見ないでよぉ!特にヴィヴィオ!まるで鬼か悪魔を見るような目で見ないでぇ!なんか知らないけど、すごく突き刺さるんだけど!?」

 

今に始まったことでは無い物の、改めてなのはの砲撃癖が白日の下にさらされたことで、周囲からの視線が突き刺さってくる。

 

「よし、肩の力を抜いたところでそろそろ始めよう。」

 

「く、クロノ君!?もうちょっとフォローとかあっても良いんじゃ…!?」

 

「君のバカ魔力には期待しているよ。」

 

「さわやかに言っても全然嬉しくないんだけど!?」

 

「各員、散開して殲滅開始!」

 

『了解っ!!』

 

「スルーされたっ!?」

 

クロノを先陣に各員が飛び出す中、なのはは一人遅れて飛び出す。色々スルーしてきた皆には言いたいことはあるが、それは全てが終わったときに『お話』するとしよう。

 

「アクセル…!」

 

『シューター!!』

 

展開された10発以上のスフィア。それを驚異的な集中力を用い、群がる敵を討ち貫く。桃色の軌跡を残し、それぞれ一体貫いては、次の敵へと殺到する。一発で倒せるのなら、何とかなるかも知れない。だがそう楽観視できないのはその数だろう。

やはり目を開けば、視界を遮らんばかりに敵影が埋め尽くす。それだけに…

 

(…無双って言うのも、正直ゲームの中でのシステムなんだよね。)

 

画面を埋め尽くさんばかりの敵を、武器や拳一つで爽快に薙ぎ払うゲームと現実とはかけ離れていた。

ショートバスターで、ディバインシューターで、あまねく敵を討ち貫きながらも、やられたらそれまで。

 

『マスター!後方!』

 

「はっ!?」

 

シューターの弾幕を抜けたのか、自分が見落としていたのか。長剣を振りかぶった敵が背後に肉薄していた。バリアジャケットがあれど、直撃すればただでは済まない。咄嗟に目を瞑り、来たるべき衝撃に、間に合えとばかりにシールドの展開を始める。

 

「アクセル…スマァッシュ!!!」

 

しかし、その衝撃は、虹色の軌跡と共に免れるに至った。髪を撫でる疾風のような衝撃と共に、白と黒のジャケットを羽織った少女が、なのはを護るように立ち塞がる。

 

「だ、大丈夫!?なのはマ…なのはさん!」

 

「あ、ありがとうヴィヴィオ!助かったよ!」

 

「よかった…なのはさんに何かあったら…大変ですから。」

 

未だ迫り来る敵を、ヴィヴィオは高速弾頭を撃ちだし撃墜していく。鋭くホーミングするそれは、緩慢な動きである敵を容易に捉えることが出来た。

 

「凄いね、格闘戦もだけど、何より変身魔法を組み上げられるのもだし、本当は私達と変わらない歳だって言うのが信じられない。」

 

「…護りたい人が居るんです。そのためなら、何処まででも強くなって見せます。」

 

「…あはは、本当に年が近いのかわかんないや。」

 

(護りたい人…それはなのはママ。貴女のことなんだよ?)

 

声に出すこともなく、ただ自分の思いを打ち明ける。苦笑するなのはは、自分の知る大人びた母である彼女とは違い、年相応に笑う、もしかしたら同じクラスにいるんじゃないかと言うほどの少女だった。

それだけに、未来の自分の、輝ける母へと成長するなのはを護らなければならない。変な物かも知れないが、この場を切り抜けて、一度は堕ちるが再び舞い上がり、教導隊として活躍し、機動六課へと出向して、そして…過去の自分と出会い、戦って、そして養子として親子となるハズの未来。

 

(今の私があるのは…皆が…レオン君が…フェイトママが、そして何よりもなのはママが居てくれるからなんだ。)

 

だから、だからこそ護りたい。自分を優しく見守ってくれる母を。

だからこの拳に乗せる。自分の全てを…。

 

「行きますよなのはさん!絶対切り抜けましょう!」

 

「うんっ!」

 

「「全力、全開ッ!!ディバイン…バスターっ!!!」」

 

桜と、虹の閃光が夜空を切り裂く。本来、背を合わせるはずのない歳の親子が、敵を蹂躙する。

 

 

 

 

 

 

 

 

全く、空中という物は慣れないな。

と、ハルは宙に展開したベルカの魔法陣の上で独りごちる。元々空戦適性のない彼女に空中戦はほぼ経験することがない。しかし敵の大半が空中に展開している以上、思考を凝らして魔法陣を足場にすることによって浮くことが出来る。

 

『チーフ、心拍数と血圧の上昇が見られますが?』

 

「も、問題ない。な、慣れないことをしてるから、それでだろう。」

 

『…もしや高所恐怖症ですか?』

 

「そ、そんなわけあるか!バカなことを言ってないで、早いところ殲滅開始するぞ!」

 

左手に展開されたガルム。フォームチェンジし、獣の顎と呼ばれるに相応しい、二対上下の牙が姿を現す。本来、敵の障壁を打ち砕くことを目的とした形態ではある。

 

「今の私が何処までやれるかは解らん。しかし、やれることはやろう…ガルム!」

 

『ブレードビット、展開。』

 

牙の一つが、根元より分離する。反り返らんばかりに爪は伸び、白銀に輝く内部フレームの機部。そこから半透明の刃が展開される。

 

「よし…展開は問題ない。残りも射出しろ。」

 

ハルの左手に残ったのは腕甲のみ。しかし周囲には白銀の刃を展開した遠隔操作兵器が浮遊している。

息を整える。テストしたとき以来余り得意で無いなのもあり使うことがなく、例えるなら埃を被っていた状態だ。元々試作の技術が使われていることもあり、扱いづらい物もあったのだが、ハルはそのまま使用することもなく今日まで過ごしてきた。

一対一ならば問題ないだろう。しかしこの状況、1対多数という状況において、これを使わざるを得ない。

 

「操作はガルム、お前に任せる。」

 

『OK。索敵力の低下が弊害として現れます。警戒を。』

 

「解っているさ。行くぞ。」

 

手甲より、白銀の魔力によるブレードを展開。魔法陣を蹴って、手近な敵を刺突する。飛び出したのを口火に、ブレードビットも周辺の敵を蹂躙に入る。ガルムの処理能力はそれ程高くはないため、なのはのアクセルシューターのように精密な動きは出来ない。しかし相手が烏合の衆ならば話は別だ。狙いを定めて突撃、ただそれだけだ。

 

「やはり、お前に任せた方が上手く出来るな。」

 

『しかし繊細な動きは不可能です。』

 

「こう言った場面ならば問題ないだろう?敵の動きがわかりやすいからな。」

 

『グゥレイトォ!数だけは多いぜっ!って奴です。』

 

「何処でその様な台詞を…!?」

 

炒飯よろしく砲撃ではないにしろ、ビットと共に切り裂き魔の如く敵陣に文字通り切り込みを入れていく。まずは騎士達やはやてと合流しなければならない。そのためには自分が切り込み隊長として前に出る。そうすれば他の面々も戦いやすくなるだろう。

こと近接戦に置いては、シグナムほどではないにせよ、近代ベルカを選ぶ上では避けて通れない、必須とも言えるスキル。左手のブレードと、周囲を飛び交うビットによる殲滅力。そして敵陣中央に向かい、斬り込む。

 

『エルトリア准尉!前に出すぎだ!』

 

流石に現場指揮を任されるだけあって、すかさず通信を入れてくる。

 

「問題ない。このまま殲滅前進する。それに、このまま攻め倦ねていては、八神の面々が間に合わなくなる可能性もある。」

 

『しかしここで戦線を崩して僕たちまでやられては元も子もないんだ!』

 

クロノの言うことも最もだ。しかし、時間との勝負、と言う物もある。いくら騎士達の力が秀でていようと、限界というものもいずれ来る。そうなってからでは遅い。

 

「…突撃戦法なら慣れている。まぁ出来るだけ引き付けてやるさ。そちらが戦線を進めるためにな。以上!」

 

『お、おぃ…』

 

プツンと言う音と、もの言いたげなクロノの残響を残し、通信をシャットアウトする。

 

『…いつものパターンですね。』

 

「問題ない。良くて折檻、下手をすれば降格だろうな。」

 

『…肯定。』

 

「…それなら同じ処罰を受ける以上、出来る限り敵を殲滅するとしようか。」

 

『OK。……観測可能距離に味方の識別反応感知。』

 

「…どうやら、突っ込んできた甲斐があったな。」

 

敵の密度が濃いために索敵が掛けられなかったために、手探りでヴォルケンリッターを探していた。索敵範囲を狭めて、その密度を高めることで、敵陣のど真ん中でも味方の識別を可能とするようにしておいたわけだが…

 

「数は?」

 

『それが…1つだけなのです。可能な限りの拡大映像、出力します。』

 

ホロウインドウに映し出されたのは、白銀の軌跡を残し、敵を薙ぎ払う者。これ以上の拡大は不可能ではあるが、撃ち出される白銀で直射状の魔力弾。それに同色の魔力光。

 

「あれは…如月か?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結界内部に突入し、程なくして、周囲に立ち塞がる敵の数に唖然とした。見渡す限りの敵、敵、敵、敵の反応。レーダーを表示したとて、周辺は敵対勢力を示す赤一色だ。

しかし、迷うことはない。右手にヴォルケーノ、左手シルバリオ。今あるだけの武器2丁だ。これだけの敵の数に遠慮は要らない。ユーリが、もしかしたらアミタが、この中に居るかも知れない。危険に曝されているかも知れない。それが彼女の原動力だ。

 

「ヴァルキリー。索敵お願い。ユーリとアミタさんを探して。」

 

『ラージャ。』

 

「本当は殲滅させなきゃならないけど…、でも二人が怪我してからじゃ遅い。だから、先ずは突破だ。」

 

こう言う突撃を目的とした時に、ヴァルキリーの装甲と速度が頼れる。正面に立つ敵ならば撃ち払えば問題ない。

一点突破において、ヴァルキリー程の適任は居ないかも知れない。

 

「でも出来るだけ被弾しないようにしないとね。飛行と防御の両方に魔力を使ってたらすぐ無くなるし。」

 

『周辺100メートルを半径とし、高密度の索敵開始。サージェント。』

 

「了解っ!」

 

ヴァルキリーの準備も整ったところで、背部のブースターを稼働させ、直進する。無論、正面一帯には敵が雁首揃えているわけだが…

 

「ファイヤ!」

 

ドウン!と言う、重い発射音と共に、ヴォルケーノから散弾型の魔力弾が飛び散る。集束率はそこまで高くないものの、距離さえ間違わなければこう言ったハリボテにも似た敵を殲滅するにはかなり適任だ。文字通り、目の前に立ち塞がる敵を三体を一撃で蜂の巣へと変える。射程こそそこまで長くはなく、遠距離戦には不向きではある。しかし中~近距離の間でならば、離れれば弾幕を、近付けば散らばる弾丸全てを叩き込む必殺の一撃ともなり得る。

正面の敵が消滅したのを確認するが、敵密度の高い場合の恐ろしさは死角。それは勿論自分の背後もだが、敵の影と言う物も死角にあたる。それだけに、敵を倒したからと言って、うかうかはしていられない。

鉄槌を構えた敵が、蜂の巣になった奴の影から飛び出す。その速度こそ緩慢であるものの、こちらは正面突破を目的としているために、相対的に近付く速度も速くなるもの。

振りかぶった鉄槌が振り下ろされる。

瞬間的にヒカリは選択した。防ぐか、それとも噴かせての急速軌道変更からの回避か。

 

どちらでもない。

 

ほんの少し、それこそ右へ半身ほど軌道をずらすと、振り下ろされる鉄槌の横っ腹、そこにシルバリオの銃身で薙ぎ払って受け流す。不意を突かれ、予想だにしなかった力の掛かりに、敵は体勢を崩した。

すかさず重厚な脚部からの蹴りに続いて、シルバリオのバレットを数発撃ち込んで沈黙させる。

 

「…ちょっと…危なかった。」

 

『悪くない動きです。しかし努々油断ないように。あらゆる可能性を想定し、それに対する対応策を考えておいて下さい。』

 

「ん、そうする。」

 

ヴァルキリーに悪くない、といわれ、戦闘中ながら若干頬を綻ばせてしまう。しかし、すぐに元に戻り、目を動かして視界内の敵、その動きを出来るだけ捉えようと努める。

 

「以前戦ったザフィーラさんの模造品(イミテーション)に比べると脆いね。」

 

『力その物の差が歴然としてます。その分構築魔力も少ないものかと。』

 

「…余り頑丈じゃなくて、シンプルな模造で、紫一色かぁ…。」

 

ちょっとだけ、物思いに耽ってしまう。

 

『サージェント?』

 

「あ、うぅん。昔やったことある大乱闘ゲームで、そんな敵が居たなぁって…。」

 

あれは、百人の組み手で、パンチ一発で吹き飛ぶような相手。自分キャラとあわせて四体なので、そこまで囲まれる危険性はなかった。が、現状はそうはいってられない。百人が一斉にどころか、それを優に超える数が視界に捉えられている。

 

『しかしサージェント、これは…』

 

「うん、わかってる。これはゲームじゃない。だから急ぐ必要があるのも。…でもユーリはともかく、アミタさんまで居なくなるのは変だと思う。」

 

『同意。妹を探している、と言うには、こんな夜更けに出歩くのも可笑しな話しです。』

 

「……でもなんか引っ掛かる。…何かが…。」

 

丁度結界の中心部にあたる場所。先日、3人でやってきたショッピングモール。高々とそびえるそれの上空でホバリングをしながら、索敵をレーダーだけではなく、有視界での捜索。バイザーを一旦額にスライドさせ、自らの視力も駆使。

そこでようやく…普通ではない物が見えた。

流石にヒカリも、浮かぶその『異型』ともとれる物体は、現地点から目視距離で数キロ離れて遠くから見ても呆気取られるほどだ。

 

「ヴァルキリー、見える?」

 

『肯定。サーチをかけますか?』

 

「ん…それは近付きながらにしよう。戦闘は…何とかしてみる。」

 

『ラージャ。解析に映ります。索敵機能が一時ダウンします。サージェント、御武運を。』

 

その言葉を皮切りに、ヴァルキリーの反応が希薄になる。機能のリソースの大半をそちらに回したのだろう、会話も最低限にするようだ。

 

「よし…!ボクも進もう…!もしかしたら…この異常な現象について何か分かるかも。」

 

再度ブースターを噴かして向かう。

その先にあるもの。

それは水平線がある海。

普通ならそれで何も思わない物だが、その上空に浮かぶ物。それが明らかに現実離れしていた。

 

紫の球体。

 

黒や赤とも混ざり合うかのように、淀み、そして蠢く。それが与える周囲への影響なのかは解らない。だが眼前に、その球体の真下の水面が抉れ、海底が露わとなっているともなれば、その異常性は嫌でも感じられる。

 

直感で感じた。

 

あそこに元凶がいる、その確信めいたもの。

そして…ユーリがいる、と。

 

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