魔法少女リリカルなのは 未来への系譜   作:ロシアよ永遠に

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おぉう…前回更新から一ヶ月以上…
今年の抱負であるGOD編クリア…出来るのか…?いや!してみせる。

あ、活動報告に記した武器募集、皆さんの要望を募ってます!浪漫武器でも何でも!私めが解るものならば!


Mission37『火ぶたは切って落とされる』

「皆、集まったわね。」

 

ブリーフィングルームの中央奥にて、リンディが部屋に集まった皆を一瞥する。普段穏やかな彼女も、今回はとばかりに神妙な面持ちだ。

 

「ではこれより、砕け得ぬ闇、及びユーリ・エーベルヴァインさんの救出についてのブリーフィングを行います。エイミィ。」

 

「了解です。艦長。」

 

リンディの後方で待機していたエイミィが端末を操作する。すると、衛星軌道…つまりアースラから捉えたユーリの映像が映し出される。

 

「目標である砕け得ぬ闇。つまりユーリだけど、海鳴海上にて浮遊・待機中。何もしていない、と言うわけでもなく、恐らくエグザミアの出力を上げるのに集中していると考えられるの。」

 

「…つまり、仕掛けるには早いほうが良いというわけだな。」

 

「その通りだ。じゃないと護りも強固になり、こちらも攻め手にあぐねてしまう。」

 

シグナムの案は正しい。現に先の戦闘では、高出力の攻撃を受けたにしても、たいしたダメージを与えられずに居たのだ。時間をおけば、エグザミアの出力を上昇させ、その護りはより強固な物になりかねない。つまり先手必勝。

 

「ついさっきシュテルからアンチプログラムが仕上がったと報告があった。今、各々のデバイスならびに、カートリッジシステムの口径毎に入力しておるとのことだ。それが終了次第、各員出撃。各々アンチプログラムを用いた魔法による飽和攻撃を行い、エグザミアの機能を停止。その上で我が紫天の書を用いてプログラムを上書き。エグザミアを制御下に置く。」

 

「つまり、ナハトヴァールの時と同じやり方やね?」

 

「…ふん、癪だがな。」

 

はやての合いの手にそっぽを向いて、遺憾という意をありありと示す。が、彼女達が行った事が打開策のヒントとなったのも事実。どうにもはやてに対して苦手意識を持つディアーチェは、彼女に対して素直になれないでいた。

 

「とにかく、もう少しで出撃準備が整う。各員、心の準備を…」

 

「クロノ。」

 

クロノが纏めようとした言葉を、フェイトが悲痛な面持ちで遮る。

 

「その…ヒカリについては…」

 

「…絶対安静だ、としか言えない。」

 

「彼女自身も、そして彼女の持つデバイスも、とてもじゃないけど戦闘できる状態じゃないわ。デバイスのオートリカバリーじゃ到底間に合わないし、彼女の怪我はともかく、意識もまだ戻らない。これも同じく、ね。」

 

「そう…ですか。」

 

フェイトと同じくして、隅で聞いていたハル、アミタ、キリエの三人は顔をしかめる。だが、後悔よりも先にやるべき事を見据えており、その目に闘志が宿っている。

加えて、ヴィヴィオやアインハルトにトーマ、そしてレオンも。未来の彼女と知らない間柄ではないだけに、その表情に影を落とす。しかし、彼ら、彼女らもその手を握る力は強い。

 

「気に病むな、とは言わないよ。でも、彼女が目を覚ましたとき、全て解決していたならそれで良いと思う。」

 

「そっか…、そう、だよね。ヒカリは…頑張ったんだ。だから…休んでてもいいよね。」

 

本人に協力し、戦う意志があったとはいえど、あくまでも彼女は戦闘経験の浅い民間協力者だ。戦闘能力、そしてその成長性には目を惹く物はあれども、である。クロノにとっては、これ以上危険な戦闘に巻き込むのは気が引けるのだろう。

 

『王。』

 

フェイトの納得を待ってか否か。シュテルからの通信が投影される。

 

「おぉ、シュテルか。…して、首尾は?」

 

「抜かりなく。各々のデバイスとカートリッジにアンチプログラムのインストールが完了しました。これからそちらに…」

 

「いや、よい。それならば転送ポータルに運べ。そちらで我等が受け取る方が多少なりとも時の短縮になろう。」

 

『わかりました。ではその様に。』

 

流石王と名乗るだけあり、効率を判っているようである。くるりと振り返ったディアーチェは、集まった皆に視線を一瞥。

いよいよだ。

アンチプログラムが完成した。

それが意味すること即ち、決戦の火ぶたが切って落とされる様な物だ。

誰かが、固唾を飲み込む。

誰かが、ぶるりと身体を武者震いさせる。

しかし臆する物は誰も居ない。誰もがその眼を滾らせ、射貫かんばかりにディアーチェを見据えていた。

 

「聞いての通りだ塵芥共!これより転送ポータルでシュテルと合流し、デバイスとカートリッジの取得!そのまま出撃!よいな黒助!」

 

「黒助って…まぁいい!君の言うようにしよう。」

 

ディアーチェの自身への呼び名に対して若干思うところがあるのか一瞬引き攣るが持ち直す。

 

「では…全員、行動開始!」

 

『了解!!』

 

プログラムに操られた一人の少女を救うため、誰からともなく一斉に歩を進める。

もし、普通の高官からの指示があったのならば、アルカンシェルでの一掃を命ずるだろう。相手の力は未知数。ナハトヴァールよりも強大な力をその身に宿し、着一着とその秘めた力を解放せんとしている。存在その物がロストロギアとも言える存在が暴走して、引き起こされるかも知れない大惨事。地球だけではない。数多の次元世界が危機にさらされるかもしれないのだ。大局的に見れば、アルカンシェルの使用は正しいのかも知れない。大を救うために小を切り捨てるこのもある。

しかし誰もがそれを良しとはせず、また進言もしなかった。

件の一人の少女(ユーリ)を救い、更には世界をも救う。

理想論なのかも知れない。

青臭いかもしれない。

だが誰もがそれを成し遂げようと、ただ直向(ひたむ)きであった。

誰もが笑って終われるハッピーエンド。

それは成し遂げられない物なのかも知れない。

しかし目指すことは出来る。

そしてここにいる皆は、やり遂げられることを信じていた。

 

さぁ、始めよう。

最高()クラスのロストロギアとされる少女と、管理局でも屈指の戦力を持つアースラチーム。

彼女たちによるとんでもない戦争(救出作戦)って奴を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

立ち篭める暗雲が天空を支配し、海は荒れに荒れていた。

下を見れば、唸る海面が水飛沫を飛ばし、高々と上空へと打ち上げる。

上を見れば、漆黒の雲がその内に秘める稲光を蓄え、その存在を示すかのようにゴロゴロと地を響かせるような音を発する。

こんな天候であれど、豪雨が降り注がないのが不思議なほどであった。

 

「確認する。」

 

誰もがこの天候に不安を感じるだろうそんな中、転移してきた部隊へと視線を移し、クロノが声を発した。その手には、愛用するS2Uではなく、対ロストロギア用のストレージデバイスである聖剣の名を宿した『デュランダル』が握られていた。普段は汎用性の高い前者を多用する彼だが、今回ばかりは火力を…否、その強力無比な凍結魔法を求めた結果、切り札たるデュランダルを持ち出すに至った。

 

「今回の砕け得ぬ闇攻略は、三つの班に分かれて行う。まず結界班は、ユーノ、シャマル、アルフ、そしてザフィーラだ。」

 

「了解。」

 

「正直、私は前線に向かないしね。ここはユーリちゃんを閉じ込めるのに専念するわ。」

 

「アタシとしては、フェイトの護衛が出来ないのが残念なんだけどねぇ。」

 

「大丈夫だよアルフ。皆が居るから。だから、アルフは自分の仕事に集中して?」

 

少々、この配置に納得がいかないアルフだったが、フェイトにやんわりと窘められて、仕方ないなぁ、と納得する。

しかしその心中では、ほんの少し、陰る物があった。

自分が居なくとも、背を預けられる親友が、好敵手が、仲間がフェイトには沢山出来た。

そんな中で、自分は使い魔として必要なのか、と。

 

(もうフェイトはスゴク強くなっている…、そろそろ引き際なのかも知れないなぁ…)

 

契約したずっと一緒に居る、と言う内容。だが自分が彼女の魔力を元に生きながらえている分、足枷になっているのではないかと思うこともままあるのも事実。

 

「顔を上げろ。」

 

「え?」

 

いつの間にやら隣に立っていた褐色の守護獣ザフィーラが肩に手を乗せる。その目はアルフを見ては居ないが、クロノに説明を受ける者達の方へとしっかり注がれていた。

 

「戦うことだけが、守護獣…いや、お前は使い魔か。」

 

「どっちも一緒だろ?」

 

「否定する。我は守護獣、これからもそれは変わりは無い。陰に日向に、我が主を支える雲の騎士の一角だ。」

 

「相変わらず、そーゆーとこに拘るねぇ。」

 

そういえば先の闇の書事件でも同じようなやりとりをしたものだ、とアルフは少しばかり感慨に耽る。

あの時は拳と拳をぶつけ合って、己の誇りと意志をもぶつけ合い、どうでも良いかわからないが、使い魔と守護獣を一括りにするなやら何やらで…。気付けばナハトヴァールの時には肩を並べて戦った奇妙な縁だ。

 

「こだわり、と言うのは一言で片付けるならばプライドとも取れる。自身が決意したことを成し遂げようと進む意志と原動力にもなるだろう。」

 

しかし、と彼は区切りを入れる。

 

「時としてそのこだわりは視野を狭める事もある。自分はこうだ、こうあるべきだという固定概念が、自身の有り様の柔軟性を欠落させてしまう。」

 

「…何が言いたいんだい?」

 

回りくどい言い回しに、少々語気と目元を吊り上げて結論を求める。正直、ややこしいのは苦手で、どちらかと言えば直球を求めるアルフにとって、そう言った言い回しには少々イライラするものだ。

 

「…ならば言おう。…戦いばかりが我等の責務と思わぬ事だ。」

 

「………は?」

 

耳を疑った。正直、彼の口からこんな言葉が飛びだそうなどと、露とも予想できなかっただけに、気の抜けた返事が口から飛びだす。

 

「我々は主を護る。そう言ったな?」

 

「言ったねぇ。」

 

「それは、戦いだけの中のものか?戦う中で、主を護れたらそれでオシマイか?」

 

「それは…」

 

「違うだろう?『護る』と言う言葉を、先のように柔らかく捉えるならば、『支える』とも受け止められるだろう。」

 

護る、ともなれば、主従関係のように堅苦しくも感じられるだろう。しかし、支えると聞けば、それは気の知れた間柄であるようにも思えてくる。

 

「戦いの中で護る、それは確かに必要なことだろう。否定はせん。だが我等は主と言う愛しき方のためにするべき事を模索するのも肝要だとも考えている。それは守護獣に限った話しではない。シグナムも、ヴィータも、シャマルも、アインスも。皆が自身の出来る中で、主はやてを護り、そして支えられることを探しているのだ。俺が言うのもおかしいかも知れないし、烏滸(おこ)がましいやもしれんが、…それが家族、と言うものではないか?」

 

家族、と言う言葉は、アルフは電流が流れたかの如く衝撃を与えた。

 

(そう、だね。フェイトは今までアタシを(しもべ)のように扱わず…何て言うか、姉妹のように接してくれていたんだ。)

 

使い魔としての契約は、『ずっと一緒に居ること』。それは使役を目的とするものではなく、互いに寄り添って、支え合うものなのだろうと。

 

「ははっ…なんだい…案外答えは随分シンプルじゃないかい。」

 

そうだ。回りに頼れる親友達が居るのならば、他に助けられることをすれば良い。それが何なのかはまだ判らない。しかし、我武者羅で、暗中模索で、手探りになっても、戦い以外でフェイトを支えられるものをきっと探し出す。

 

「そうだね。アンタの言う戦い以外でフェイトを、家族を支えられる事を探し出す。それもアリなのかもね。」

 

「…少しは吹っ切れたか?」

 

「あぁ!この戦いが終わったら、それを探すことにするさ!」

 

「その言い回しは不吉極まりないぞ?…まぁなんにせよ、互いに乗り切るとしよう。己のために、そして家族のためにもな。」

 

「ん!」

 

がちっと、2人の腕は交錯する。不敵な笑みを浮かべながらも、これからの大仕事を家族が成し遂げられるよう、結界を張る、と言うことでまずは支えるところから始めるとしよう。

 

 

 

 

 

守護獣と使い魔の2人が思いを改める中、その光景を横目で見ながらクロノは班分けを済ませていく。

おおまかに作戦を言えば、先発隊と後発隊での波状攻撃を仕掛ける、と言う物だ。先発隊が仕掛けてアンチプログラムを打ち込み、後発隊の高い火力によるエグザミアの停止。シンプルではあるが、これがベストとも言える。それには二つの理由があった。

一つは、未だ上昇し続けるエグザミアの出力への危惧。おそらくは前回の交戦と比較して、その攻撃の激しさは増しているだろうとの予想は容易だった。そのため、攪乱の意味と、相手の狙いを絞らせないための一計だ。

 

「では…先発隊はシグナム、ヴィータ、キリエ、アインハルト、シュテル、レヴィ、リインフォース、そして僕の8人で勤めよう。異論は無いか?」

 

「いや、ありません。私たちは執務官の指示に従いましょう。」

 

「それが決定ならば、私はそれに従います。構いませんね?レヴィ。」

 

「よゆーOK!でっかい船に乗ったつもりで任せても良いぞ!」

 

「アタシも文句ねーです。ま、なのはの奴も執務官の指示ならぐうの音も出ないだろ。」

 

「…何かあったのですか?」

 

どうやらなのはとヴィータの間で一悶着あったようで、それを含む彼女の物言いにアインハルトは首をかしげる。

 

「何かあったも何も、あいつ自分から先発隊に志願してたんだよ。で、アタシがアイツの火力は後発隊向きだって言っても聞かないんだよ。で、最終手段をとったんだ。」

 

「最終…手段?」

 

物々しい言葉に、アインハルトはゴクリと固唾を飲み込む。

 

「古来より物事の優劣を決め、且つ不満不平不公平のない決闘法…それ即ち

 

 

 

 

 

ジャンケンだ」

 

「ジャンケ……は?」

 

「いや~、あいつってば、火力は馬鹿みてぇに高いのに、ジャンケンはてんで弱いんだもんなぁ。一発勝負のハズが諦め悪く縋ってくるんで、三タテかましてやったよ。」

 

「は、はぁ…」

 

してやったり、と言わんばかりに笑みを浮かべるヴィータ。決闘法、などと言い出すから、どんな血生臭く殺伐とした方法かと思えば、何のことはない、普通の決め方で、アインハルト含め、クロノ以外の皆がホッとする。白いバリアジャケットを纏った茶髪の少女が、若干頬を膨らませていたのには誰も触れないが。

 

「後発隊は、なのは、フェイト、はやて、ヴィヴィオ、レオン、トーマ、アミティエ、エルトリア准尉。」

 

「うん!任せて!」

 

「絶対ユーリを助けるよ。」

 

「リインフォース、先発隊やけど…むりはしたらあかんで?」

 

「勿体ない御言葉です。我が主も御武運を。」

 

「頑張ろうね!レオン君!」

 

「そうだな。さっさと終わらせて、元の時間に戻らないとだし。それに…」

 

「それに?」

 

「あの人が救おうとしたユーリを、ほっとけないし。そのまま帰ったら、それはそれで後味悪いだろ?」

 

「ん、そだね。」

 

後味悪い。

救えるはずの、その可能性があるにも関わらず、それを行使しようともせず、その結果に後悔するは嫌なだけ。

ただそれだけ。

ヒカリが、我が身を省みず、ただユーリを止めて、救いだしたいという想いは、レオンにも良く伝わってきた。だからと言って、風穴を開けられたり、呼吸器に繋がれなければならないほどの重症を負うというのは褒められたものではない。が、来る未来に、ユーリを友と呼び、笑って過ごす彼女でなければならない。そんなヒカリを身近で見るレオンだからこそ、彼女に代わって尽くしたいと想った。それだけに、握る拳に自然と力が入る。

 

「レオンさん、気合いを入れるのは結構です。しかし、ある程度肩の力を抜かなければ、動きが硬くなりますよ。」

 

「分かってる、ケドさ。こんな大一番の勝負…気合いでも何でも入れないと、どうにかなりそうだから。」

 

「正直俺も、怖くないって言えば嘘になるけど。でも未来に戻る以外にもあの子を止めないと、ほんとにとんでもないことになりそうだ。」

 

遥か遠方。

恐らくその視線の先にいるのだろう件の少女を、トーマは見つめる。彼自身、詳しくは未だに話しては居ないが、エクリプスウイルスに感染して、黒騎士の力を得た彼の目は、肉眼では捉えられない、それこそかなりの魔力強化を施してようやく得られる程までの視力を得ている。しかも、敵対するものか否かを色で識別する。ズーム機能も付いている等、正直エクリプスウイルスの力の壮絶さを物語る機能と成り代わっていた。もっともこれは、彼の中に居るリリィとのリアクトによって機能するものなのだが、その眼の力により、僅かながらもユーリを捉えることが出来た。

黒々と立ち篭める暗雲の中に、赤の装束と亜麻色の髪がとても栄えて見えた。

識別する色は黄色。

赤が敵対者。青が味方。

となれば、敵意は持たないが、友好的でもない、と想像するには容易いものだろう。

 

「今の所…こちらから近付いたり攻撃さえしなければ、何もしてこないみたいだけど…。」

 

「けど、だからと言って、ほっとけばエグザミアの力は強大化して、その力を振りまく。そうすればナハトヴァールと比にならない程の破壊行動となって、地球は愚か、各次元世界にまで影響を及ぼしかねない。仕掛けるなら今だ。」

 

「あぁそうでした。仕掛ける、という話で一つ留意点が。」

 

ふと思いだしたかのようにシュテルが、普段と変わらぬ高揚のない口調で話す。

 

「なんだシュテル、何か思うところでもあるのか?」

 

「えぇ、これを伝えておかなければ、我々構築体(マテリアル)はともかく、ナノハ達には宜しくない事が起こりますので。」

 

「良くない事って?」

 

重々しさを感じられるシュテルの物言いに、なのはは冷や汗を垂らしながら、恐る恐るといった様子で尋ねる。それに関しては、他のメンバーも同じくするところで、全ての視線がシュテルへと集められる。

 

「端的に言えば、プログラムカートリッジは一発、インストールプログラムも使用するのは一度のみに留めておいて下さい。」

 

彼女が言うには、アンチプログラムを使用した際、ユーリの強固な防御を貫く必要性がある。それに加え、高出力の攻撃によって出来る限りの魔力ダメージを与え、ディアーチェによるプログラム書き換えの助けをしなければならない。膨大なプログラムへの抗体のみならず、極めて強固な防御を持つ彼女には、それに応じた術式を組み込んで、本体にダメージを与えられるようにしなくてはならない。それを全てひっくるめたアンチプログラム。そのプログラム容量は、普段使用する術式の容量を有に上回る物になるのは明らかだった。

 

「それ故にデバイス本体に掛かる処理能力と出力による不可はかなりの物となります。つまり…」

 

「文字通り一撃必中、そして一撃離脱、と言うわけだな。」

 

「はい、アームドデバイスの強度を以てしても、やはり一撃が限度かと…」

 

強硬な守りと、強力な攻め。対極である二つがぶつかり合えば、互いに砕け散る。しかしそれは互いに対等であった場合のみ。デバイスその物を武器とするアームドデバイスは、その用法からミッド式のインテリジェントデバイスやストレージデバイスと比べて、堅牢な作りとなっている。それを以てしても耐えられないと評するならば、ミッド式の面々もゴクリと固唾を飲み込む。

つまり、これが二班に分かれるもう一つの理由、と言うことだ。

 

「一撃に全てを込めてぶつける、か。」

 

「どうした?怖じ気づいたか?」

 

「はっ!寝言は寝てからだ!」

 

ディアーチェの挑発にも鼻で一笑し、ゴキゴキと手の関節を鳴らす。

 

「後先考えずにぶち込むのは、俺の十八番でね。オラ、ワクワクすっぞ!」

 

その眼はまるで、餌を取り上げられ、空腹に空腹を重ねられ、その上で檻から開放された獅子の如く血走っていた。戦闘が始まっていないにも関わらず、魔力を滲ませる彼に、皆は若干戦慄する。

 

(レオン君…よっぽどフラストレーションが溜まってたんだねぇ…)

 

(はい…ブリュンヒルデと言うデバイス。その枷が出来てからと言う物、魔法の出力にデバイスがある程度制御を掛けているそうですので…。)

 

(…昔のなのはママみたく、砲撃じゃなくても、全力厨にならないでよレオン君…)

 

同年代の2人は事情を知るだけに、ヒソヒソと。下手な悪役よりも悪役している彼の今後を心配する。

 

「ま、まぁ、やる気があるのは良いことぞ。うむ。どちらにしても、こやつのみならず、他の塵芥共も精々我の露払いをするが良い!フゥハハハハ!」

 

腰に手を当てて仰け反りながら、厨二臭い笑いを暗雲立ち込める夜空に響かせた。

 

「…なんか、コイツの露払いとか気が進まねーです。」

 

「まぁ、これでも今回の重要なポジションなんです。大目に見て頂ければ幸いかと…。」

 

王たるディアーチェの態度にゲンナリするヴィータに、シュテルがフォローを入れる。

 

「…どちらにしてもディアーチェは最後発だ。僕達は僕達のやるべき事をやる。皆、それだけだ。」

 

クロノの一声で、皆の顔が引き締まる。どことなく緩んでいた空気も、元に戻る。しかしながら、皆の肩に余計な力はない。ほんの僅かな時ながらも、和やかになったその雰囲気が、張り詰めた緊張を解したのかも知れない。張り詰めすぎていない皆の表情に一安心し、クロノは口を開いた。

 

「さぁ!作戦開始だ!」

 

最終決戦…それがこの一言で幕を開けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここまで手酷くやられたとはな…」

 

研究室にて男が本体のみ転移してきたヴァルキリー。その大破した機体を一瞥してつぶやく。

 

「しかも…これだけの血液の付着…あの娘は無事でしょうか?」

 

「向こうには、湖の騎士もいる。それにアースラの医療チームも素人ではない。ハラオウン提督が配属させた腕利き達だ。…心配なのは私も変わりないけどね。」

 

原形を留めないほどに変形した装甲、それに付着した紅い鮮血に、2人は操縦者たる彼女に思いを馳せる。だが彼女を信じ、こちらにはこちらがやるべき領分があるのを再確認しながら、男は端末を操作し、壁から突き出た整備用のアームにヴァルキリーを固定させる。

 

「ヴァルキリー。戦闘データと、相対した人物のデータを出力してくれ。」

 

『了解ですマイスター。』

 

繋げられたケーブルを介して、コアユニットから膨大な文字の羅列が高速で自持ちのPCに送られてくる。それを目で追いながら、大まかにその内容を理解して、脳に刻み込んでゆく。使用者たるヒカリの能力、戦闘パターン、銃火器の使用結果とその成果、ブースターの出力データに、内蔵魔力の使用状況。そして、相対したユーリのデータ。攻撃性、防御性、機動性。

…そして、彼女達が共に過ごした時間のことを。

 

「そう…一緒に住んでいた子が…」

 

金髪の女性がしみじみと、しかし悲しげにそのデータに男性とともに目を通す。仲が良い人物と刃を交えなければならない想いとそのジレンマは如何ほどか。

 

「…よし。ティナ。メインフレームは問題ないようだ。以前製作していた、装甲の予備や別形状の物があっただろう?それをリストアップするから、それを用意してくれ。大至急だ。」

 

「なっ…!それは…!」

 

「念のため、だ。それに、あのデータからしてもし私の予測が当たるならば、ヴァルキリーの力が助けになるやも知れない。…無論、あの娘は目を覚ます前に全てが終わるかも知れないがね。」

 

「…わかりました。」

 

金髪の女性―ティナ―はそう言うと、保管区画へとその姿を消した。

残された男性は、腕まくりをし、ヴァルキリーに接続された端末のキーボードへと手を伸ばす。

 

「私達のことを知れば、鬼と思うかも知れない。悪魔と思うかも知れない。」

 

ヒカリに思いを馳せながら、彼はキーを撃ち込んでいく。

 

「だが、友人を助けたいと言うお前の思いを、私は尊重したい。ただそれだけだ。」

 

スラスターの出力を、新規の装甲の重量バランスを想定、計算しながら調整。

 

「だから、…目を覚まし、それでもなおお前が戦場に向かう気持ちがあったときのために、親として全力を尽くそう。」

 

彼―如月雄造―の眼には、親としての気持ちがジレンマを生み、複雑な心情を出していた。

それでもなお、手を止めない。そして…ポッドに液体の中で浮遊していた()()が量子化され、ヴァルキリーへとインストールされた。




メンバーが本編に比べて変更されています。しかも、アンチプログラムにオリジナル設定。ゲームみたく、一撃以外なら、うだうだ展開になりそうなので、わかりやすくプログラム使用したら一撃必中!にしてみました。
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