魔法少女リリカルなのは 未来への系譜   作:ロシアよ永遠に

45 / 48
今回、ゲームからの台詞を一部引用しています。が、小説の内容に応じて少々アレンジを加えていますので、若干変かもしれませんが、お付き合い下さいませ。

タイトルが安直なのにはご愛嬌です…


Mission38『最終決戦(烈火の将)』

暴風吹き荒れる海上で、ユーリは膝を丸め、まるで母親の胎内に居る胎児のように浮遊していた。自身を纏う一対の魄翼は、その大きさが対比しておらず、先の戦闘のダメージを未だ引き摺っている証拠だ。なまじ自身の出力が高いだけに、その修復に掛かる時間もそれに比例する。自信が防御と攻撃に特化しているだけに、こう言った補助が不得手なのがネックだ。それだけに、少しでも癒やそうと最低限度の機能を残して修復に専念していたのだ。そう、それはまるで冬眠する動物のように。

しかし、完治という越冬は、最低限度の機能として残しておいた探知能力に引っ掛かったことで、妨げられることとなった。

 

「敵対者…接近。」

 

自身の身体を起こし、その機能を十全に戻していく。身体能力、障壁、各魔力循環、エグザミア。最後のそれに関しては、出力が徐々に安定してきていた。

少しずつ…少しずつ完全稼働に近付いてきている。そしてそれは…無差別による破壊の始まりを意味する。自身の中にある、官制人格(ユーリ)という存在を完全に取り込み、プログラムに従って力を振るう破壊の使徒と化す。

 

「…先の敵対者を確認…。……?」

 

と、そこで一つ、ユーリの…否、砕け得ぬ闇の思考に、一つの疑問点が浮かび上がる。

一つ、反応が足りない。

反応一つ一つを識別していく。魔力の質や色、外見など様々な情報を元にして。

そして、居ない人物を認識した。

 

「あの白い鎧の人が…居ない?」

 

先の戦闘で、魄翼に少なくないダメージを与え、いくら打ちのめされてもなお食い下がってきた彼女は、官制人格たるユーリは勿論だが、砕け得ぬ闇にとっても印象に残っていた。

 

「…やはり、あれだけの負傷では戦線離脱もやむを得ない…。」

 

出力が上昇してきた今、敵対するあらゆる脅威も、それは意味をなさなくなってきている。それはちかづいてくる彼、彼女達においても同じである。しかし、数は少ないに越したことは無い。リスクは少なければ少ない程良いのは、何処も何時も同じである。

なのに…

 

「…何だろう…この胸部をちくちくと…刺すような痛みは…」

 

無表情だったその顔に、若干の陰りが浮かぶ。あれだけの重傷を負わせたのだ。今頃は治療を受けているに違いない。敵の頭数は少なくなる。

だが…それを喜ばしくないと思う自身がいるのか、そんな謎の葛藤が、砕け得ぬ闇の胸中を蠢いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「目標コード、システム(アンブレイカブル)(ダーク)位置確認!結界魔導師による封鎖完了!」

 

「あぁ。こちらでも目視した。…今のところ…特に敵対行動らしき物は無い…が。」

 

『うん!周辺魔力の蒐集と共に、魔力反応の増大!どんどんパワーアップしてきている!』

 

肌で感じるまでに周辺の魔力が吸い寄せられているのが解る。それと共に、少しずつであるが、砕け得ぬ闇…コード『UーD』としてのユーリの覚醒が進んできていることを意味する。

 

「了解。第一チーム、これよりシステムUーDの確保に入る!」

 

「ぅおーい!ユーリィ!!レヴィだぞー!!起きてるかぁ-!?」

 

「………。」

 

大手を振って大声でレヴィが自己アピール。何とも脳天気な物だが、これで奇襲は不可能。しかし、システムを治癒と復旧、そして索敵に回していたのなら、こちらの反応などとっくに察知されているだろう。

 

「反応は無し、ですね。」

 

「…無し、というよりも呆れているというのも有るのでは無いか?」

 

「…それは一理あります。レヴィの突拍子な行動には、私も変な意味で驚かされることもありますので。」

 

「しかし、借りに前者だとすれば、警戒をこちらに向けながらも未だ覚醒を続けていると言うことになるかも知れん。」

 

「ここで仕留めねーとマズいな。」

 

シグナムとヴィータの危惧も最もだろう。直接対峙したわけでもないが、対策のために映像を見せては貰ったものの、その圧倒的な戦闘力には、百戦錬磨のヴォルケンリッターと言えど目を見開くほどの物だった。それだけに、今回の重要性には重々理解はあるつもりだ。

 

「しかし…ユーリさん…何だか悲しそうにも見えますが…」

 

「見た目に油断は禁物よ。…気を抜いたら…一瞬であぼんなんだから。」

 

実際に目の当たりにしたキリエは、危惧を隠すことは出来ない。目の前で蹂躙され、ヒカリとヴァルキリーの決死の突貫がなければ、あの場に居た全員が一網打尽にされていた可能性も十二分あるからこそ、同情の念を抱きかけたアインハルトにキリエは釘を刺す。

 

「第二チームの到着まで時間がある。全員、警戒しながらプログラムを撃ち込んで…」

 

「なぁなぁ、黒助。ちょっと良いか?」

 

「だから黒助言うな…何だ?」

 

どうにもこのレヴィ、話の腰を折るのが好きなのだろうか?無邪気とも取れる顔を黒助…もといクロノに向けて言う。

 

「プログラムを撃ち込んで第二チームの到着を待つのも良いけど…別にアレをボク達で倒してしまっても構わないのだろう?」

 

言ってはならないことを、しかも『ボク達で』と第一チームを一括りにして言ってしまったレヴィ。ここにいる全員の死亡フラグが立ってしまった…様な気がした。

 

『システムUーD!行動開始!そちらに移動していきます!』

 

「各員散開!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「…まずは私の所に来てくれたか。」

 

「夜天の守護騎士…烈火の将シグナム…」

 

「あぁ。私の名前はともかく、二つ名までは名乗っては居なかったが…それもエグザミアの中にあるデータによるものか?」

 

長きにわたり、夜天の書の中に秘蔵されていたエグザミアとユーリ。その中で自身の中に夜天の書のデータ、夜天の守護騎士であるヴォルケンリッターや、書の官制人格たるリインフォースのことを知るのは当然なのだろう。

 

「なにをしに…来たんですか?私に近付いたら…プログラムに従って、皆壊してしまうのに。」

 

(…なんだ?…映像にあった無機質な喋りではない…?)

 

以前のように淡々とではなく、明らかに僅かながら感情を含めたかのような言葉遣いに、シグナムは一瞬戸惑う。が、そこは二つ名の烈火の将。すぐに取り直してユーリに向き合う。

 

「お前を救いに来た。その先陣のチームの先鋒さ。」

 

「救う事なんて、できませんよ。…私はもうすぐ完成します。もっと強い私に変わるんです。もう誰も、私に触れられないほどにまで。」

 

語るその目にはやはり哀しみの色が浮かぶ。

これも元の人格だろうユーリと同化しつつある兆しなのか。

 

「強くなるのは構わんがな。だが…お前を必要としている…そして救おうとしている者のことも見てやってくれないか?」

 

彼女は言う。呪われた強い力を手に入れてしまい、それを奮って数多の哀しみを広げた女性が、出会いによって救われたことを。そして…

 

「お前と共に暮らした如月は…少なくとも私から見ても、お前と居れば楽しそうに見えたがな?」

 

「でも私は…彼女を墜とした。私が一緒に居ることは…」

 

「その事に関して、如月が何を思うかは解らん。だが…。」

 

愛剣レヴァンティンを鞘より抜刀し、正眼に構え…

 

「お前が奴の友で居たいならば…2人で語らえ。少なくともお前にそのつもりがあるのならば…!」

 

そして…その言霊を口にした。

 

「プログラムカートリッジ、ヴィルベルヴィント、ロード!」

 

ガシャリ!とスライド音が鳴り響く。

瞬間、

レヴァンティンの刀身が紅蓮の炎に包まれる。

しかしそれは、通常のそれではない。

ヴィルベルヴィント(つむじ風)と銘打っているが、しかしそれはまるで暴風の如く、刀身を中心として渦巻いていた。

 

「―なるほどっ…!これは確かに…二発目の使用は難しいだろうな…!」

 

予想以上の出力上昇に、身体への負担は普段のカートリッジ使用に比べるべくもなく高いものだろう。しかし彼女は顔をしかめるどころか、むしろ不敵に笑みを浮かべていた。

 

「それは…そのプログラムは…!」

 

「さぁ…行くぞユーリ…いや、システムUーD!お前を連れて帰るためにもな!」

 

瞬間、シグナムは踏み込んだ。紅い炎、その残影を残して一気にユーリの懐に飛び込むと同時に切り上げる。普通ならば、意に介することもなく受けるだろう。其程までにユーリの持つ障壁は強固な物だ。

しかし、ユーリは身を引いてかわした。その顔には冷や汗が流れる。

それは、ユーリが先程驚愕したプログラムカートリッジによるものだ。自身の障壁を中和、突破し、さらには自身にダメージを与えるための物。つまり自身に対し特化したもの。それ故に受け止めるという選択肢は選べなかった。だが、ユーリには驚きに浸る暇は無い。何故なら目の前に居るのが、ヴォルケンリッターの将たるシグナム。数多の戦を経て立つ、文字通り武将とも言える存在だ。隙あらば自身を止めるべく畳みかけてくるハズだ。

 

「むっ…!」

 

身を逸らして交わしたと同時に、小柄なユーリ自身の身体、その死角から、巨大な手となった魄翼の振りあげが迫る。しかし、シグナムもヴォルケンリッター。この程度で終わるほどの存在でもない。寸での所で左手に展開した純白のレヴァンティンの鞘。それを剣で言うならば、切っ先を下にした逆手持ちでいなす。鞘とは言えど、アームドデバイスの一部だ。その頑強さには特筆する物がある。

二つが赤と白が鬩ぎ合い、夜空に火花が走る。

やはり浮遊物とあってその軌道は、手持ちであるレヴァンティンの上を行く柔軟さを持つものだ。だが…

 

「はぁっ!!」

 

いなした魄翼に、渦巻く炎の剣が振り下ろされる。

バキン!と甲高い音と共に、左の魄翼にレヴァンティンが防がれた。

しかし、シグナムにとって、防がれることは予想済み。いや、避けられるよりもこちらを狙えたならば好都合だ。

あらゆるUーDの術式に対して抜群の効力を持つプログラムカートリッジ。その一撃は、途方もない魔力の恩恵で頑強さを誇る魄翼の手に、僅かながらも綻びを入れるには充分だ。

 

「この一撃…畳み掛ける!」

 

若干、魄翼にめり込んだレヴァンティンの刀身。それに亀裂が入り、等分にはじけ飛ぶ。魄翼の硬度に押し負けて砕けてしまったわけではない。

 

『シュランゲ・フォルム』

 

男性の声を模した機械音。レヴァンティンの疑似人格プログラムの声がそれを告げた。

それは鞭の如く。

それは蛇の如く。

蛇腹剣という武器にも似たそれは、まるで刃の付いた鎖の如く動きで、

(しな)り、

走り、

そして唸りを上げる。

鎖で繋がれた刃達が、魄翼とユーリを駆け巡る。

 

「こちらには余り時間が無いのでな。一気にケリをつけさせて貰うさ。」

 

鎖によって絡められたユーリは、シグナムが振り上げたレヴァンティンの柄の軌道によって舞い上げられる。それと同時に巻き取られるレヴァンティンの刃だが、その衝撃によって錐揉みながら打ち上げられた。自身の思惑とは裏腹の空中浮遊に、ユーリは体勢を立て直すのに一時気をとられる。

しかし、シグナムにとっては、その一時の隙で充分だった。

若干回った目を見開いた時には、シグナムは眼前に迫ってきていた。

 

『紫電…!』

 

鞘に収められたレヴァンティン。それを自身の頭上で、弓を撓らせるかのように引き絞る。鞘に込める力を限に。そして引き抜く力はそれを僅かに上回るように。

鞘から刃を抜き放つ、その一瞬に総てを込める。

 

「一閃!!!」

 

抜き離れた炎の顎。特殊カートリッジ使用によるものか、本来振るう炎を上回り、わずかながら驚愕の表情を浮かべる。魄翼の防御を諸共ユーリを飲み込んだそれは、まるで壁の如く巨大な物だった。

本来、座して行う抜刀術。「座」を意味する「居」から取られた剣術。名を居合。断って行うこれを立居合いとも呼ぶらしいが、この場合のシグナムは飛翔しているだけに、どう呼称すべきかはわからない。しかし、古来の日本より存在する抜刀術を、異世界の騎士が振るうというのは偶然か否か。それはわからないが、シグナムが自身が常在戦場であったときから、主の敵を数多屠ってきた一撃にして剣術であることに変わりない。

だが、その信頼置ける一撃を以てしても、未だ拭えぬ不安が、シグナムにはあった。

それだけに、

 

切り札(ジョーカー)を切るか。」

 

もはや増大した魔力の出力はかなり減ってきている。大技とも言うべき一撃を打っただけでも、数割持って行かれた。だがそれに見合う一撃となっていたのには変わりない。だから、残る魔力総てを以てぶつける。

未だ炎渦巻くレヴァンティン。その柄の先に、左手に持った鞘を繋いだ。

 

『ボーゲン・フォルム』

 

剣による近接、蛇腹剣による中距離、そして最後の遠距離を担う、シグナムの最高単発火力にして切り札。

それは弓。

繋いだ鞘は、レヴァンティン本体と同じく刀身を持つ。しかしそれは互いに、緩く弧を描くように刃を変形させ、まさしく弓と呼ぶに相応しい形となる。

 

そして…引き絞られる弦に、鋭利な矢が添えられる。

 

しかし、何時もと違う点。それは矢に纏う炎。

刀身であった弓の炎は消え去り、矢に総てが集束してきていたのだ。

だが、それを引き絞る手も、不思議と熱さを感じない。逆に、火傷による痛みどころか、弓引く手に力が増すかのように。

 

「ユーリ、これが私の最後の一撃だ。」

 

鏃の先に、目標を見据える。

あれだけの炎に飲み込まれながらも、その紫天装束には若干の焦げ程度しかない。しかし、ダメージが無いわけではないはずだ。

 

「この一撃が、お前を救う一歩となると願うぞ。」

 

燃え盛る矢は、今か今かとその時を待つ。

疾風の如く空裂き、隼の如く敵を射るそれは、『シュツルムファルケン』と銘打った。

しかし、この炎を纏った矢を、改めて名付ける。

そう…

射るべきユーリが、元の大人しくも、そして優しい少女として…息を吹き返す。

蘇ると信じて…

 

幻影(ファントム)()不死鳥(フェニックス)!!」

 

解き放たれた矢。

それは燃えたぎる、燃え盛る炎を纏い。

風によってその形を変える炎。その後惹く炎は翼の如く。

不死鳥と銘打つに相応しいそれは、

 

 

 

 

ユーリを射貫かなかった。

 

「っぐ…!!」

 

辛うじて…魄翼によりその(やじり)は、身に当たるすんでの所で握って止められていた。

超高速で迫る矢を、腕とも言うべき魄翼で掴むなどと、彼女の運…そして土壇場の力には、さすがのシグナムも眼を丸めた。

 

「破損箇所…修復プログラムの異常によって修復遅延…?くっ…!」

 

握りしめた矢は、魔力の効果を失ったのかその硬度を失い、いとも容易く2つに折れ、投げ捨てられて漆黒の海へと消えていく。

最後の切り札は意味を成さなかったが、それでもプログラムの幾つかは撃ち込めたはず…!

その証拠に…彼女はゆっくりと、シグナムから離れて身を引いていったのだから。

 

「退いた…か。…正直…それは有り難いな。」

 

もはやこちらの魔力は無い。仮にあったとしても、相方の方が限界なのか、その排熱ダクトから、絶えず高熱の蒸気を吐き出している上に、その頑強であるはずの刀身には亀裂が入っていた。

 

「やれやれ…これでは整備班に文句を言われるのは避けられんな。」

 

ほぼ確実にオーバーホールは免れないだろう。しかし其程にまで全力で撃ち込んで、自己修復プログラムの遅延を引き起こすのがやっとだった。最後の一撃が当たっていれば、もう少し好転していたかも知れないが…。悔やんでいても仕方ない。

 

「烈火の将としてどうかは解らんが……あとは任せるしかないか。」

 

未だ、暗雲は立ち込める。しかし、それを晴らすために皆が奮闘している。残るメンバーの行く末を案じるしかないことに、若干の自身を不甲斐なく思いながらも、シグナムは後方へと下がることにした。




かなり安直なネタを放り込んで申し訳ないです。
次は誰になるか…大体予想は付くかもですけど。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。