魔法少女リリカルなのは 未来への系譜   作:ロシアよ永遠に

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Mission41『最終決戦(覇王)』

「…そう簡単にはいきませんね。アンブッシュ一発で倒せたならば、シグナムさん達が終わらせていますし。」

 

眼前に浮かぶユーリの身体は、それと言うほどダメージはない。自己再生が微弱ながらも働いているのだろうか、ただでさえ強固な護りでダメージが通らないというのに、珠玉の負傷も、微弱な再生で充分補えるほどと言うことらしい。

 

「…皆…どうして…私に関わるんですか?」

 

ボソリと、ユーリは呟く。

 

「私は壊す、壊してしまう…!なのに…どうして皆…放っておいてくれないんですか…?私は…誰も壊したくないのに…!」

 

「そう、ですね。」

 

アインハルトは一考する。しかし、すぐにその目をユーリに向け、紡いだ。

 

「それは…貴女がユーリさんだから、ですよ。」

 

「私…だから…?」

 

「そんなに哀しそうに…抑えきれない力に振り回されて、でも貴女の心がそれに必死に抗っている。…私と貴女は出会って数日かも知れません。なのはさんやヒカリさんと比べれば、浅い付き合いには変わりないでしょう。」

 

「…だったら…逃げれば良い…」

 

「いいえ、逃げません。…逃げてもそれは…ただの先送りに過ぎません。」

 

「先送り…?」

 

「かつて私は…覇王であるクラウス、先祖である彼の記憶を引き継いで…それを成そうと無我夢中でした。」

 

ストリートファイトに明け暮れ、ただひたすらに覇王流カイザーアーツが最強である証を立てるために戦い続け、挙げ句、古き王の子孫をも屠って、その名を不動の物にせんとしていた。

だが、ヴィヴィオ達と出会って、インターミドルに出場し、因縁の相手に叩きのめされ…、そしてヴィヴィオとの二度目の決闘。そこで気付かされた。

 

「過去の記憶に囚われて、今いる仲間と距離を置いていた。そんな私にヴィヴィオさんは、ぶれないで、真っ直ぐに向き合って。そして一緒に歩んで欲しいと、手をさしのべてくれました。」

 

「…それが…私と何の関係が…」

 

「あります!」

 

少々恥ずかしがり屋かアインハルトにしては、自身も驚くほどの声が出ていた。

 

「皆が…貴女を助けたい。プログラムの呪縛から貴女を解放したいと、ユーリさんに手をさしのべています。…だから!逃げないで下さい!皆が貴女を助けたい!だからその手に貴女の手を伸ばし、握りしめる勇気を持って下さい!かつて私が…ヴィヴィオさん達に助けられたように…私も貴女に手をさしのべます!」

 

「手を伸ばして…握りしめる…勇気……。でも…私は…私は!!」

 

「覇王流…アインハルト・ストラトス…、今はただ、貴女を助ける、そのためにこの技と拳を…震わせて頂きます!」

 

瞬間!

再び懐へと踏み込んだアインハルトの掌底が、眼前を走る。一歩身を引いていなければ、顎を的確に捉えられていた。返しとばかりに、魄翼の爪が縦にアインハルトを引き裂かんと振り下ろされるも、彼女は身を捻り、それをかわす。

 

「手を伸ばして…掴んでも…また破壊を振りまくに決まってます……!」

 

「くっ…!」

 

やはり同じ拳であろうと、その大きさから来るリーチの差は埋められないもので、少し距離をとられて、アインハルトの拳よりも外、魄翼の射程圏内からの猛襲へと戦いは変えられる。魄翼のインパクトもそうだが、大きいだけに大きな回避を取らざるを得ない攻撃範囲も驚異的だ。

 

「それなのに…!」

 

「諦めては…」

 

「っ!?」

 

魄翼の射程に合わせて引き撃ちの如く距離をとっていたにも関わらず、自身の生身の腕に、拳ほどの衝撃が走る。激痛、と言うほどでもないが、それでも意識外の衝撃に驚く。見れば、アインハルトとの距離は先程とは変わってはいない。それなのに…

 

「諦めては、そこでお終いです…!」

 

一瞬目を離したのも、アインハルトにとっては好都合だ。その分、魄翼へ注ぐ意識も削がれる。イコール、攻撃の手が緩むと言うことだ。場数を踏んだアインハルトにとって、それは充分つけ込む隙となる。

 

「ハァッ!!」

 

肘打ち。魄翼の動きが鈍った事で、アインハルトは一気に踏み込んだ。次いで、裏拳へと繋げ、仕上げに肩からの体当たりで、フィニッシュ。背折靠(はいせつこう)と呼ばれる太極拳の技の一つに酷似したそれは、魔力を上乗せした威力により、怯んだユーリを吹き飛ばすには充分だった。

 

「大切なのは…貴女の心です…!どうしたいのか…どうなりたいのか…!プログラムなんかに飲み込まれないで、UーDではなく、ユーリ・エーベルヴァイン、貴女自身の意志を…!」

 

「ぐ……!ぅ…!」

 

ユーリの表情は苦悶に満ちている。と言うことは、攻撃が通っているか、はたまた言葉が響いているのか。

 

「あぁぁぁっ!」

 

もはや本能なのか、それとも破壊衝動が抑えきれないのか、叫びながら炎の翼と共に突貫してくる。

だが、さっきの表情からするに、心の中では必死にプログラムと戦っているのだろう。

だったら、と、アインハルトは拳により一層の力を込める。

彼女の苦しみを解放したい。泣いている彼女の心を…拳で!

祖先である覇王から受け継いだこの力を以て救う。

相手の出方を伺うために構える。

対し、ユーリは炎の翼を肥大させる。これはアインハルトにとっては予想範囲だ。

しかし、その翼は広がりを止めない。業火の如く大きく、そして威圧的な物を感じさせるほどにその炎は巨大な姿へと変貌する。

 

「これは…!」

 

文字通り不死鳥を彷彿させるかの如く広げられたそれは、目を見開くアインハルトを、まるで慈しむかのように包み込む。我を取り戻した時には既に遅く、まるで皮膜の様に包み込まれ…否、閉じ込められた。

 

「しまっ…」

 

「ナパーム・プレス!!」

 

映像で見た、相手を結界内部に封じ込め、魔力による爆発を内部で起こすと言うものだ。

 

『ティオ!!』

 

『にゃあ!』

 

自身の中にいるアスティオンに念話で合図を送る。自身の中で、攻撃や機動、防御など、あらゆるサポートを行う彼?に一つの指示を飛ばした。

直後、アインハルトは、魔力による爆発に飲み込まれ、魄翼による膜も解かれる。

だが、ユーリは追撃の手を緩めない。

両手の平を爆発のど真ん中に翳し、念じる。

真紅のリングが、爆発を束ねるかのように収束。

弾けるような音と共に、晴れた爆発、爆煙の中から四肢を拘束されたアインハルトが姿を現す。

 

「……これは…!」

 

「これで……!」

 

次いで天に翳した手の平から、魔力の奔流が渦を巻き、赤と紫の入り混じった槍が生成される。あの槍に似たような物に、ヒカリは貫かれ、その果てに墜とされたのを、アインハルトは見ている。その貫通性は…言うまでもない。

 

「終わり…。」

 

告げると共に、振り投げた長々としたそれは一直線に、このまま行けばアインハルトの胴が貫かれる。破壊衝動というプログラムに駆られる彼女に、非殺傷などと言う生温い設定はない。貫かれれば、魔力などではなく、命その物を墜としかねない。

避けようにも、四肢はバインドで拘束され、抜け出すことなど不可能。

万事休す

誰もがそう思うだろう。

 

しかし、

 

「ティオ…繋がれぬ拳を!」

 

『にゃあ!』

 

力強い相棒の答えに、アインハルトは口許をつり上げる。

瞬間、両手首に淡い光が走ったかと思えば、ガラスの割れるような音と共に、真紅のバインドが砕け散る。

これで両手は自由。しかし、まだ両足は拘束されている。迫り来る槍は、上半身を反らせば避けられるほど、生易しい大きさと太さではないのだ。

 

「はぁぁッ!!」

 

一息の掛け声と共に、なんとアインハルトは、両手で迫る槍の先端を挟み、受け止めに掛かった。下半身が固定され、速度は余りないが、巨大な質量を受け止めにかかる。正直正気とは思えない行為だが、足の拘束が解けない以上はこれ以外にないのもまた事実だ。

 

下半身が軋む。

 

掌が摩擦で熱い。

 

ジリジリとだが、自身の腹に向かって押されていく先端に冷や汗を流しながら、食い縛る。

()()()まで。

 

『にゃあ!!』

 

再びガラスの爆ぜる音と共に、足の拘束が解放される。瞬間、下半身の力を一旦抜き、左脚を一歩下げると、再び足場を踏みしめて力を込める。

 

「ハァッ!!」

 

はき出した一息と共に、槍は遙か彼方へと放り投げられる。

槍投げ大会ならば、間違いなくワールドレコードを刻めるほどの飛距離だ。

 

「今度は…こちらから行きます!」

 

右手に纏わせた旋風と共に、踏み込む。

正直、先程の槍の受け流しで、かなりの体力を消耗したが、まだやられるわけには行かない。

だが、魔力もそこまで残っていないのもまた事実。

ならば、自身が持つ最大威力の覇王流奥義を仕掛ける。

 

「ヴェスパーリング!」

 

迎撃のために撃ち出した、あらゆる射砲撃を打ち消し、相手に打ち込む、攻防一体の魔法であるヴェスパーリング。出力の上昇も相まって、当たればかなりの損傷を受けるだろう。

 

だが、

 

アインハルトは止まらない。

むしろ、迎撃行動に出てくれたのは有難いものだ。その分、一直線に迫ることが出来、クリーンヒットさせられる可能性も上昇する。

 

繋がれぬ拳

これは何も、バインド破壊のみに作用する、と言う物ではない。ある程度まで射砲撃の反動を軽減…つまりノックバックを極力減らす、と言う効果もある。砲撃によるダメージや、バインドによる拘束。それらを含めて、繋がれず、そして縛られることなく拳を振るうと言うのが名の由来だ。

ヴェスパーリングの命中による爆発。

しかしそれに怯むこともなく、アインハルトは間合いを詰め続ける。

 

「怯まない…!?」

 

「覇王…!!」

 

間合いに入った。迎撃行動の成功に頼っていたのか、ユーリは回避行動に若干の遅れが生じた。アインハルトにはこれ以上の好機はない。

 

「断・空・拳!!!」

 

晒されている鳩尾に、文字通り空を断つ連拳がめり込まれる。加え、練り上げた魔力が、拳を通してユーリの身体を駆け巡っていく。

 

「かっ…は……!!」

 

内臓が圧迫され、吸い込んでいた空気が無理矢理吐き出され、ユーリの体躯はくの字に折れ曲がる。

これでかなりのダメージを負った。

見る者がいればそう確信するだろう。

しかし今宵の覇王は、何処までも容赦なく、慈悲なく、目の前で屈むユーリに対し、左手の手刀を振り上げる。

 

「断空拳…(つらね)!!!」

 

振り下ろされた二連発目の断空拳。それは容赦なく、ユーリの背に打ち込まれた。

 

「っ…か……!!!」

 

最早、上からも下からも、続けて撃ち込まれた奥義は、ユーリの意識をコンマ数秒消し飛ばした。

ふらり、と魄翼の猛りが失われて墜落するも、ある程度の距離で持ち直す。

 

「…ふぅ…ふぅ…!」

 

『にゃぁ…』

 

迎撃と、二連発の断空拳の消耗…いや、それだけではない。アインハルトとティオにはそれを加味しても大きな消耗が見て取れる。

繋がれぬ拳のデメリット

反動が軽減される、と言うが、何も展開すればそれで軽減されるわけではない。便利な物にはその反作用とも言える物もある。

この魔法の場合、その反動を魔力が肩代わりする、と言うことだ。つまり、繋がれぬ拳で反動軽減を発動する間、ダメージを与えられれば、それに応じて魔力を相乗して削り取られると言うことになる。加えてただでさえその出力がダンチであるユーリの物ならば殊更だ。

 

「覇王…」

 

自身の上空にて整息するアインハルトに攻撃を加えることもなく、ユーリは呟いた。

 

「あの白い騎士…ヒカリは…」

 

「…大丈夫です。意識は失ってはいますが命に別状ないそうです。」

 

「そう、ですか…。」

 

よかった、とアインハルトに聞こえるか否か、そんな声でつぶやくと、ユーリは魄翼をはためかせ、離脱していく。

そんな彼女を、アインハルトは見送ることしか出来ない。

 

「…ふぅ…。逃して、しまいましたか。」

 

『にゃあ…』

 

ティオ自身も、実際、面と向かったり話したりしたわけでもないのだが、ユーリを助けたい気持ちがあったのか、その声に気落ちが感じられる。

 

「私の言葉は…少しは、届いたのでしょうか?」

 

『にゃ?』

 

「正直、生意気なことを言っていたと自覚しています。以前、記憶に振り回されて戦い続けた私が言うというのは、やはり…」

 

『にゃっ!にゃあっ!!』

 

弱気な自身を叱責するかのように声を荒げるティオ。まるで、

気にするな!

自信を持て!

と言わんばかりに…。

そんな勇敢な相棒に、柔い笑みを浮かべながら、飛び去った彼女の方へと視線を向ける。

きっと…自身の言葉が届いたと、そう信じて…。

 

「後はお願いします…皆さん。」




※没ネタ

「ドーモ、お久しぶりです、ユーリ=サン。」

まずはアイサツ。如何な格闘家とは言えど、アイサツは大事。昔のスゴクエライ人曰く、

『礼を失すると書いて、シツレイ』

らしい。アンブッシュは置いておいて、慎ましくオジギする。

「…ドーモ…アインハルト=サン。ユーリ・エーベルヴァインです。」

相手もそれに答えてかオジギとアイサツを返してくれたので、心なしかアインハルトにとっては嬉しく感じた。

「ユーリさん、元に戻って貰います。慈悲はありません。」

「へ?」

気の抜けた声と共に、アインハルトが踏み込んだ。10メートル前後だった距離は、瞬時にそれを無くし、目と鼻の先に整ったアインハルトの顔がある。

「イヤー!」

「イヤー!」

「イヤー!!」

「グワー!!」

「ハオウ・ダンクウ・ナックル・ケェェン!!!」

「サヨナラッ!!!」







少々駆け足気味なのが否めない…。
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