魔法少女リリカルなのは 未来への系譜   作:ロシアよ永遠に

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Mission4『マザコンでもシスコンでも良いじゃない』

聖祥大付属小学校

生徒は男女ともに白を基調とする黒いラインの入った制服に身を包み、小綺麗な学舎が特徴の地元では名の知れた学校だ。校風もよく、この辺りに住む子供にとっては憧れもあるし、親からしても余裕があれば通わせたい学校として名が上がる。

そんな学校の門前に一台のバスが停車した。人の眼に触れる前後左右には、『聖祥大付属小学校送迎バス』と明記されており、一種の宣伝カーも兼ねているようだ。近場の生徒なら徒歩でも問題ないだろうが、何せ海鳴市内全体から通う生徒もいるので、こうしてバスが回っている。

バスのスライドドアが開くと、ぞろぞろと白い制服を着込んだ生徒が、それぞれの鞄やランドセルを背負って降りてくる。徒歩の生徒と交わるスペースからは、朝のおはようという挨拶が飛び交っていた。

そうして登校してきた生徒は、下駄箱への入り口の横に設営された掲示板に、誰一人として欠けることなく集まっていく。手には自身の上履きを持ってがやがやと掲示板に張り出された大きな用紙に視線が集中する。ある者は喜び、ある者はちょっぴりネガティブになりながら、その一連の動作を終えた生徒は下駄箱へと消えていく。

 

「あら、やっぱり4人とも同じクラスだわ。」

 

そう声を挙げたのはアリサ。つま先立ちをして、人混み越しに振り分けを確認した。少し爪先が痛くなっていたのは内緒。

 

「流石に全員同じクラスとは思わなかったね~。」

 

「うん、嬉しいけど、なんか余りにも出来過ぎてる気がして仕方ないな…」

 

すずかとフェイトはこの奇妙な偶然というモノが気になるようだ。

 

「ま、まあまあ、前向きに考えようよ。ね?また一緒で、私は嬉しいな。」

 

そうポジティブに捉えたなのは。まぁ一緒になれた、というのは嬉しいことなのは確かだ。そんな中、アリサがふとつぶやく。

 

「このままだと、はやても同じクラスかもね。そんで、ヒカリも聖祥に転入して…」

 

流石にそこまでは、ないない、と3人はシンクロしたリアクションを取った。

 

「そうそう、そういえば今朝のニュースでさぁ…アメリカの最新鋭のステルスヘリが…」

 

アリサが口にした何気ない朝のニュースの話題を口にしながら、4人は下駄箱へと歩を進めていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

所変わって職員室。

新しい学年度が開始するとあって、新しく赴任した先生もそうだが、各々の先生も慌ただしくしている。その中で、2人の転校生が隅の椅子に座って担任の先生が来るのを待っていた。一人はなのは達が着ていたワンピースタイプの白い制服。もう一人は男子生徒用の制服。上半身は女子と基本的に同じだが、下半身は膝くらいまでの半ズボンだ。女子と違って赤いリボンでは無く、黒いネクタイを締めている。

 

「なあ?」

 

「ん…?なに…?」

 

茶髪の少女、はやてがもう一人に尋ねる。『彼』は今にも消え入りそうな声で返す。

 

「どうしてこうなってもうたんやろな?」

 

「…ボクには分からないよ。…世界はいつだって…こんなはずじゃなかったことばかりなんだ…。」

 

ぎゅっと男子生徒は制服のズボンを握る。昨日届いたばかりの2人の制服は、しわ一つ無く、まるで汚れを知らないかの如く、2人を象徴しているかのようだった。

 

「あ、ごめんねえ。準備できたから行きましょうか。八神はやてさん。」

 

「あ、はい~。」

 

傍らに立て掛けておいた松葉杖を手に、はやては立ち上がる。

 

「そして…ヒカリ・如月『君』。」

 

「……………はい。」

 

どよどよと負のオーラを滲み出させる彼?の後ろ姿は、哀愁と絶望が感じられた。金髪ポニーテールを揺らしながら肩を落として、3人は廊下を歩いて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

正直言うと、事情を知るはやて以外の4人は唖然とした。アリサの予想通りに2人が転入してきただけで無く…

 

「ヒ、ヒカリ・如月…です。よろしくお願い…します…。」

 

男子生徒としてヒカリは入ってきたのだから。金髪のポニーテールに、独特のサファイアのように透き通るような瞳は見るモノを惹き付ける。しかも、少し緊張しているのか、モジモジしている。ソレがどうにもツボだった連中もいるらしく、主に…

 

「金髪!?金髪の王子様!?」

 

「遂に美少年転校生(・∀・)キター!」

 

…とまぁ、以前のフェイトや今のはやての転校により、男子生徒の受けはよかった。女子も受けはよかったモノの、しかし男子ほどでは無かった。…実際ヒカリは、女の子であるはずが男の子として転入させられた境遇からか、居心地悪そうにしているだけなのだが。

しかし、ようやく訪れた男子生徒はその見た目もあってか、女子に大反響を呼んだ。

 

「チョッ…え?…えぇえぇっ!?」

 

「バニングスさん、自己紹介中ですよ?」

 

『彼女』を知る4人の中で真っ先に立ち上がると共に、素っ頓狂な悲鳴を挙げたのはアリサだった。先生に窘められて、すいません、と着席する。

 

「八神さんは足の病気で休学していましたが、完治に向かっているため、四年生から復学する事になりました。治るまでもう少し時間がかかりますが、その間、皆さんはやてさんの力になってあげてくださいね。」

 

『ハァーイ!!』

 

この年頃の生徒特有の間延びした返事が重なり、元気よく教室に響き渡る。はやても、よろしゅうお願いします~、とにっこりと便乗した。

さて…問題は…

 

「如月君は、お父さんが日本人、お母さんがアメリカ人のハーフです。アメリカで育った『彼』は、日本の言葉を始め、まだまだ分からないことが沢山あります。日本の良いところを、皆さん教えてあげてくださいね~!」

 

『ハァーイ!!!!』

 

こちらは主に女子の返事が主だった。

どうしてこうなってしまったのか?

ボクが知るか、そんなこと!

そんな自問自答を繰り返しながら、先生からの紹介がどこか遠い世界の言葉に聞こえつつも、自分のことを『彼』と呼ばれたときにグサリと自分の心に何かが突き刺さる感覚に見舞われるヒカリだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっとパパ!!どういうことなの!?」

 

遡ること三十分前。

廊下で困惑と怒りとが入り混じった叫びを上げたのはヒカリ。大声にかかわらず朝の喧噪に掻き消されて注目はされないが、通り過ぎる生徒や先生はちらっと横目で見る程度に収まっていた。

さて、携帯電話越しに話していたのは、言わずもがなヒカリの父『如月雄造』だった。

 

『ハッハッハッ!驚いただろう?』

 

「笑い事じゃないよ!間違いだよね!?記入ミスだよね!?」

 

笑い飛ばす父に捲し立てる娘。当然だ。女子生徒で転校したつもりだったのに、先生に『如月君』と呼ばれたのだから。すかさず『へ?君…?』と聞き返した始末。その時自分はさぞや抜けた顔をしていただろう。鏡があったらなお驚いたに違いない。

何かの間違いだと思い、転入届を頼んで見せて貰ったら、性別欄の『男』で○が入っていたのだ。

すかさず先生に許可を貰って廊下で電話して今に至るわけだ。

 

『いやいや、私としたことがついうっかり。テヘペロ』

 

「いやそれ、パパがしたのを想像したら気分悪くなる。というか、うっかりで済まないでしょ、これ!」

 

『昔、こんな話が都市伝説であったのだよ。女子高に入学した女装男子が、全校生徒からの羨望の的になり、卒業したことがある、と。』

 

「それに憧れて、男子校じゃないけど、性別を偽って転入させた、と?」

 

『察しがよくて助かる。流石は私たちの娘、いや、愛娘だ。』

 

………。

泣きたくなった。

流石にこんなどんでん返しが来るとは思わなかった。これから学校卒業まで何とかバレないように過ごさないといけないらしい。…思えば出立の際に条件を提示されたのが気にかかった。

 

「ねえパパ。」

 

『なんだい、愛娘よ。』

 

「独り暮らしの条件って、『男装をバレないように過ごすこと』じゃないよね?」

 

『ふっ……。まさかそんな厳しい条件を愛娘に出すわけ…』

 

「そうだよね。そんな訳の分からない条件って…」

 

『出すわけあるだろぉぉぉぉぉぉッ!!』

 

「えぇぇぇぇっ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…と言うわけで、男子として転校することになりました。」

 

無茶苦茶だった。

支離滅裂だった。

破天荒にもほどがあった。

よもやあんな条件を提示してくるとは思わなかった。

そんな思考が脳内で混濁する中で、ほぼ心ここにあらずで済ませた質問攻め(主に女子によるもの)。その後流れるように始業式を済ませ、そのまま放課後へ。

ヒカリに説明を求めるため、5人は彼女の席に集まった。

 

「私達にはバレてるけどね。まぁ学校始まる前に条件が提示されてないし、ノーカウントでしょ。」

 

流石のアリサも自己紹介の時のように最初は動揺していたが、何とか受け入れるに至った。

他の四人もアリサほど取り乱さなかったが、各々最初は目を疑ったのは共通している。

一応昨晩に制服を確認した時に、女子なのにズボンなのかと疑ったが、そう言う学校なのかと受け入れてしまった。

しかし、状況が変わったのが登校中。途中見かける生徒は男子がズボン。女子がワンピースタイプのスカート。…まさか発注ミスか?と思い、先生に尋ねてみようと心に決めた矢先、男子生徒として登録されていたのである。

 

「と、とにかく、私達でヒカリちゃ…、ヒカリ君の生活を守るよ!うん!」

 

「そ、そうだね。頑張ってヒカリが男の子として過ごせるようにね。」

 

グサグサッ!

ヒカリはジョー(顎)にアッパーカットを受けたかの如くのけ反る。フォローしてくれるのはありがたいが、いざ面と向かって言われると予想以上に響くもので、ヒカリは軽くふらついた。

そんな彼女の肩に手を置いて、とある人物は言う。

 

「なんや、面白うなりそうやな~♪」

 

「人事だと思って…」

 

少し毒づきながらヒカリは、満面の笑みで語りかけるはやてを横目でにらんだ。

ヒカリはこの先の学校生活に大きな不安を抱えつつ、五人と共に帰路に着いた。

 

 

 

 

 

 

 

各々の家路につく分岐を終えて、ヒカリは一人になった。始業式の日なのもあって午前中で大抵の各学校は終わるので、早く帰った子供達が遊びに行く姿がちらほら覗える。なのは、アリサ、すずかは塾。フェイトと、はやては家庭の用事。誰かと午後を過ごそうにも相手がいなかった。

 

「…でも、ボクも用事が無いわけじゃ無いんだ…」

 

近くの公園のベンチに座り、ごそごそとポケットから取り出したエグザミアの欠片。少し目を閉じて念じると、頭の中に声が響いてきた。

 

(ふぁ……?ヒカリさん…おはよーございまふ……)

 

少し眠たげなユーリの声が聞こえた。眠たそうなのは、エグザミアの力が弱いからで、欠片が集まるたびに力も戻り、活動時間も延びるし、明朝のように半透明では無く、実体化できるのだとか。そのため、休眠というエコモードを取ることにより、いざというときに動けるようにしているらしい。更に言うと、なぜか明朝が力の使用効率が良いんだとか何とか…。

とまぁ、呼び出されたユーリはというと、声が眠そうなのか少し舌っ足らずな感もある。むにゃむにゃと口元をゆがませながら、目をこすっているのがありありと想像できた。

 

(とりあえず今からフリーなんだけど、早速欠片の捜索、しようかなって)

 

(ほ、本当ですか?ありがとうございます!…って、まだお昼前なのに良いんですか?)

 

(うん、No problem。今日から数日は午前中で学校が終わるからね。午後は捜し物に充てられるよ。)

 

明日は入学式だから、今日と変わらない時間に帰れるし問題はなかった。ユーリの力を早く戻してあげたいのもある。そしてなによりも暇だからだ。

 

(それじゃ、ボクは探索がてら町を歩いて回るから、反応があったら教えてね~)

 

(はい、わかりました~。ではでは、いきましょう~)

 

目が覚めてきて元気な声が出るようになったユーリのかけ声で、エグザミア捜索と、ヒカリの街探索が始まった。まずは昨日回れなかった住宅街からだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第67管理外世界『アルフォード』

科学を中心にして発展した世界で、大気内に魔力はあるし魔力資質持ちの住民もいる中で、魔導師と言う概念は無く、魔法自体と無縁の世界から管理外世界となった。科学が発展している分、魔力に頼らない動力で世界を支えている手前、大気汚染や自然破壊など、地球の抱える環境問題と酷似した世界でもあった。

そして、管理外世界であるが故に、この世界における支部も無ければ管理世界内ほど管理局の監視もあまりなく、緩い。そういった意味合いで、管理世界からバイヤーや運び屋などが管理局の目を逃れて売買する、裏取引の場所に選ばれることが多かった。

場所はアルフォードの指折りの都市に店を構えるバーだった。

床と地面に接しない観音開きのドアは、地球でいう西部の酒場を思わせる雰囲気が感じられ、周囲の高層ビルなどが立ち並ぶ首都圏において独特だった。それだけに週末はカップルや飲み会に来る人々には隠れた穴場と化している。

その店のカウンターに面した席で、長いコートを羽織った中年の男が座っていた。サングラスで素顔が見えないが、髪の後退具合から五十歳前後か。

カラン…と、グラスに入ったロックの氷が、注がれたウイスキーの波に踊るように音を立てた。独特の匂いと色。流し込むと喉を焼き、全身に張り巡らされた血管を流れていくような感覚を味合わせる。

既に他の客が飲んだグラスを、マスターは静かに、かつ客のジャマにならないよう片付けていく。店内を支配するのは、アルフォードで人気のクラッシック。ラッパにも似た音の楽器をメインにしたモノのようだ。

 

「まぁったく…予定の時間過ぎてるじゃないの。待ち合わせ時間と財布とケツの穴はしっかり守らなきゃ駄目よって、ママに教わらなかったのか?」

 

氷だけが取り残されたグラスに、ボトルから再び注がれるウイスキー。まるで砂時計のように時間が経つにつれて、その中身も減少していく。満タンで注文したボトルも、三分の一を残すばかりになっていた。

グラスを口に付けた瞬間、入り口のドアが開く音が耳に入る。ドアに取り付けられたカウベルがカランカランと店内に響き渡る。

いらっしゃいませ、とマスターが月並みの挨拶。入ってきた人物は迷うこと無く男の席の隣に座った。

注文を聞かれ、「ミルクで。」という注文を済ませる。

男は横目で座った人物を見やる。

ずいぶんと背丈が低かった。先程注文した声からするに、女性。フードをかぶっていて顔は分からないが、おそらく若い。しかもこの場で呑まないとなると下戸か、はたまた未成年なのか…。どちらにせよ予想外の人物だった。

ゴトン…と重厚そうなアタッシュケースが床に降ろされる。アルミ合金で作られているのか、はたまた何なのかは分からない。しかし重要なものが入っている、というのはありありと伝わってきている。

 

「これが例のブツってことで?」

 

「…そう聞いている」

 

男がアタッシュケースを持ち上げて、他人に見えないように小さく開いて中身を確認する。隙間からだが、機械の装甲板のような、金属にも似たものが入っていたようにも見えた。男はにやりと笑みを浮かべると、アタッシュケースを元の閉じられた形に戻す。

 

「…なるほど、間違いないねぇ…。…ところで。」

 

「…まだ何か?」

 

フードの人物はただ淡々と受け答えを行う。男にとってはその態度が若干不快にも感じられたが、取引相手と言うこともあってか、不快を吐露するように出かけた言葉を飲み込んだ。

 

「いやぁ、取引相手としてこんな幼女をよこす連中の気が知れないなぁ。上の局員は何を考えているのやら…。いや、私としては全然問題ないんだけどね、むしろバッチ来い!ビバ幼女!」

 

声高らかに、しかも真っ昼間に店の中とはいえ、こうも堂々と叫べるのは到底真似できないだろう。道行く人がいたなら奇怪な眼で見ているし、ヘタすれば警備組織のお世話になり得るかも知れない。ソレが幸いなのか。

しかしそんな彼よりも、この訳の分からない宣言を間近で聞きつつも、動じずに淡々と自分の仕事をこなすマスターの方が凄いと思うが…。

 

「…で?元の取引相手はどこだ?」

 

一変。先程までのおちゃらけた声から、低く、ドスの利いた声だ。

殺気。

ビリビリとした空気がマスターとフードの女性を襲う。が、やはりマスターは動じない。何者だろうか?

 

「いえ、ただのしがないバーのマスターですよ。」

 

さいでっか。

 

「ンッンー…。さてはお嬢ちゃん、局の回し者だな?成る程、荷物を確認させて、確証を得たら捕縛と。そう言う筋書きな訳だ?」

 

「…そこまで分かっているのなら話が早い。」

 

バッと女性が手を挙げると、周囲の色彩が消えていく。空や雲、草木や建築物の色がどよどよとした雰囲気の色合いへと変わっていった。

 

「成る程…封鎖結界か。ということは武装隊や結界魔導師も包囲済み、と。」

 

「…月並みだが、既に包囲されている。危険機器の密輸の現行犯で拘束させて貰う。」

 

フードの裾より左手にあたる位置から、黒のフレームの塊が伸び出る。塊、と言っても無骨なモノでは無く、生身の拳を挟み込むように左右対称の機械が取り付けられている。

 

「実力行使かい!?いいねいいねェ!!そうこなくっちゃあな!おじさんハッスルしちゃうよォッ!」

 

彼が展開したのは、巨大、ともとれるガトリング砲二門だった。砲身はそれぞれ六連装。男の体を挟むように左右で取り付けられた1メートルを超える砲身に、ずっしりと見るからに重量感溢れる本体、背中から弾薬がジャラジャラと音を立てて供給されていた。恐らく弾倉が納められているのだろう。

質量兵器。

管理世界では禁止されている、殺傷に重きを置いた兵器。

 

「…罪状が更に増えたな。質量兵器保持と使用、だ。」

 

「男の子はなァ…罪を重ねて大人になるもんなんだよォォォォッ!」

 

訳の分からないことをくっちゃべりながら、 ガトリング砲の砲身が回転し始める。すかさず少女は飛び退き、店に備え付けてあったテーブルを、まるで畳返しのように垂直に立ててバリケードにする。

 

「ハチの巣になりなァ!!」

 

直後、耳の奥に響く音が店内を支配した。51mmNATO弾が毎秒100発という間隔で嵐の如く吹き荒ぶ。

飛び散る壁や机の破片。細かい埃が煙のように漂う。薄暗い店内は、砲身の先から発せられるマズルフラッシュによってチカチカと点滅している。

 

「おっといけない、ハチの巣を通り越してミンチになっちゃったのかな~?…んな訳ないか。」

 

発熱により、ほのかに銃身が赤くなって自然冷却する中、埃の中に一人の影…いや、一人増えていた。

一人は背中辺りまでのプラチナの髪に赤い瞳。左手の装甲からして、フードの少女だろう。

同じくらいの背丈で黒い髪に黒いジャケットの少年。そして黒く、薄い青の装飾が施された杖が携えられていた。そして、左掌をかざし、ミッドチルダ式を表す、円形の魔法陣が銃弾を尽く防いでいた。

 

「まったく…確信がとれたら念話をする手はずだったろう?」

 

「…流石にあの兵器がここまでとは思わなかったからな。…正直、礼は言おう。」

 

いきなりの第三者介入に対して、男は少年に一瞥を投げる。

 

「なんだ、この身長にコンプレックスをもっていて、インテリジェントデバイスよりもストレージデバイスを選んで、さらにその機械音声にママの声を使っている隠れマザコンで、さらにさらに最近出来たかわゆい義妹のことでシスコンになってしまったのかと自分自身に疑いの目を向けていそうな小僧は~!?」

 

「ちょっ…何でそんなに僕の情報を…!?…てか、コンプレックスに関しては否定を申し出る!」

 

「…ほう、執務官殿はマザコンでシスコンで低身長を気にしていたと。…確かに14にしては…。」

 

「ち、違う!断じて違う!…と言うか君も信じ切らない!」

 

時空管理局次元執行隊アースラ所属執務官クロノ・ハラオウン。

時空管理局地上第108隊武装隊員兼特別捜査官ハル・エルトリア。

とある理由により、共同任務に当たっていた。

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