辻堂さんの純愛ロード的な何かを書こう   作:津谷 桐矢

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第10話

 よい子が良子として江乃死魔のアジトへと駆け付けた頃には全てが終わり、気絶している者などを介抱している状況だった。

 彼女の目から見ても惨憺たる光景だった。

 

「恋奈…」

 

 良子は数人の者から恋奈の場所を聞き出し漸く目的の人物を発見した。そこには幹部が揃い誰もが暗い顔をしていた。

 

「あら、今日は集まりの日では無かった筈よ。リョウ」

 

「そんな事はどうでもいい。一体何が有った?」

 

 良子は間違いなく愛の仕業である事は確信しているが、それだけで此処までの被害を出す事は考えられなかった。

 

「何処まで話しを聞いているのかしら?」

 

「辻堂が現れたと俺は連絡を受けた。しかし、それだけではないようだな」

 

 良子は湘南BABYのメンバーから緊急連絡を受け、此処へと姿を見せている。

 

「同時に腰越も姿を現したわ」

 

「何っ!?」

 

 愛については元々知っていたから衝撃を受けなかったが、マキは想定外だった。良子は神出鬼没なマキに暴言を吐きたい気持ちになった。

 

「あの二人が揃ったらやばいってのリョウ…」

 

「死んだかと思ったシ…」

 

 ティアラと花子はそう良子に感想を漏らしたが、梓が一向に口を開かない事にどうしたのかと感じた。

 その想いは、視線で恋奈が感じ取り訳を話す。

 

「梓はね、危険を感じ目の前で逃亡かましてくれたのよ」

 

「ああ、成程な。まあ、悪い事ではない。危険だと感じたんだろ。ならば自然なことだ。但し、江乃死魔が潰れていたら大変なことに為っていたけどな…」

 

 梓は自分を擁護してくれると思った矢先、落とされて落胆と反省の色をより滲ませた。

 

「まあ今回は本当に予想外よ。まさかあの二人が同時に現れるなんて…」

 

 両国分かっていながら、敢えて恋奈から事の経緯を受ける事を求めた。

 恋奈は愛の携帯に写メ付きメールを送り付けたことを皮切りに、稲村学園に梓たちが乗り込んだ事まで事細かな話を聞かされ驚きを隠せなかった。

 

「この前辻堂と協定を結んだばかりだろう。それを簡単に反故にする様な事をして…」

 

「手を出す事は禁止していたわ。あれには不干渉と明記しただけで…」

 

 文言の違いで侵入する事は可能だと恋奈は主張したが、良子は首を横に振った。

 

「違うな、不良の縄張りを荒らされたんだぞ。既に干渉した事に為るではないか。話からすると辻堂の部下たちが探し回ったんだろ。なら、決定的だよ。恐らく今日か、明日にでも向こうの人間が話を着ける為に現れるだろう」

 

 良子は俯瞰して今回の事件を見る事が出来ていた。だからこそ恋奈に対し説明する事が出来たのだった。

 

「そうね。今回の事は私の落ち度だったわ。恐らく向こうの使者はクミね。どんな事を言われても今回は受け入れる事とするわ。ティアラ、ハナ、梓悪かったわね」

 

 恋奈は自分の失態が江乃死魔と言うチームを崩壊させかけた事で大いに反省していた。

 

「恋奈様…」

 

「れんにゃ…」

 

「まあ、ああは言ったが、反省しているならば良いんじゃないか。幸いチームは生き残った。全員を招集していなかった事で人数としては生き残っているのだろ?」

 

 良子は数字を基に恋奈に言葉を掛けた。数は力が恋奈の考えであり、必要に人数を集めることに執着している。

 

「ええ、凡そ五十人が集まっていた程度よ。まだ二百五十は確実に残っているわ」

 

「そうか、なら気を落とすことなく前を向いて勢力拡大に励む事だな。一度の失敗で折れるほど柔ではないだろ」

 

 良子の言葉はどこか気持ちを奮い起たせる効果があり、恋奈の目に力が戻り始める。

 

「ええ、ええそうよ!私の目標は湘南制覇!今回の事は運が悪かったとして、同じ轍を踏まなければ良いだけの事!!まだ、完全敗北を喫していない以上何度でも立ち直って見せるわ!梓、ティアラ、ハナそれにリョウ、今まで以上に勧誘を行い五百の大台に乗せるわよ!!」

 

『おー!!』

 

 恋奈の言葉が彼女等の気持ちを奮い立たせたのか全員が元気に声を上げたのだった。

 

 

 

 

 

 正哉たちは家路に着く中、愛は孝行に商品を取りに戻った。そしてマキと正哉は彼女のリクエストに答える為、途中でスーパーに立ち寄った。

 

「ふんふん、おっこのみ焼き!おいしい、おいしいおっこのみ焼き!!」

 

 マキの脳内では、すでに美味しい香りのするお好み焼きが完成していた。正哉が作る事と為るが、失敗は無い物と嬉しさを隠せないでいる。

 

「なぁマキ、何故あそこに現れたんだ?」

 

「恋奈にメシたかろうと思ってな」

 

 悪気もなく堂々と述べるマキに、正哉は仲が良いのかと尋ねるとその真逆を話し始める。

 

「んな訳ねーじゃん。恋奈とはそんなんじゃねーよ。そんなことより早くお好み焼きを食べたい!」

 

「はいはい、愛が帰ったら食べられるように準備するよ」

 

 正哉の言葉にマキは苦い顔をするだけであった。一緒に住むことに成って以降、愛と真琴の親子が一緒に訪れる機会が増えた。真琴に苦手意識の有るマキは遠慮願いたい思いだった。

 案の定、辻堂親子を交えた夕食はマキの暴走を抑え付ける真琴によってつつがなく終わりを迎えた。

 

 

 

 

 

 良子の言葉は翌日に実現する。

 久美子が江乃死魔のアジトに堂々と訪れたことで、恋奈は苦い顔をしていた。

 

「俺が言いたいことは分かってんだろうな、恋奈?」

 

「さあ、何の事かしらね?」

 

 舐めきった態度の恋奈は素直に認める事はしなかった。ハッタリもチームを維持するのには必須となる要件であるため、解ってはいてもこうせざるを得なかった。

 

「テ、テメェ……」

 

「フッ、この程度で怒るなんてたかが知れるわよクミ。辻堂軍団なんて名乗ってはいても、所詮辻堂頼りのチームって思われるわよ」

 

 恋奈は久美子を挑発し相手が乗ったことで、流れを幾分戻したことを悟った。ここに愛が居ればこうする事が出来なかったと、まだツキが残っている事を感じ取った。

 

「チッ、分かってるよ。それにしても本当に総災天が居るのな」

 

「そうね。リョウが加わった事で江乃死魔に厚みが生まれたわ。どかしらクミ、昔の誼で今なら厚待遇で迎えてあげるわよ?」

 

「馬鹿なこと言ってんじゃねーよ。愛さんと恋奈を天秤に掛けられる訳ねーだろ!おら、さっさと始めようぜ」

 

 恋奈の言葉に久美子は侮蔑とも取れる表情で交渉を始めるよう促した。

 

「はいはい分かっているわよ。それで、そちらの要望は?」

 

「総てに於いて不干渉。これが愛さんの出した条件だ!」

 

 言葉の端々から不満を伺わせた久美子は、表情が全てを物語っていた。これでは江乃死魔が有利な条件でしかないからだ。

 しかし、愛が言うのであればそれに沿って動くのが辻堂軍団だ。不満が有っても久美子は独断で愛の決定を覆すことはしなかった。。

 

「此方が有利だけどそれでも良いのかしら?」

 

「良くねーよ!ただ愛さんが決めたことだ。俺はそれに従うだけだ」

 

 久美子は、恋奈の言葉に悔しそうに言葉を吐き捨てた。この件に自由裁量を与えられれば、辻堂軍団により有利な条件で話を着ける事が出来る自信が久美子にはあった。

 

「まあいいわ。本当なら梓を差し出せ位言われるかと思ったけど安心したわ」

 

「うぇっ!アズっすか!?」

 

 突然の振りに梓は驚かさ、何故そうなるのか理解が及ばなかった。

 

「まあ、そんなゲスな案も出たが俺と愛さんが潰したよ」

 

「まあこのおっぱいだからねっ!」

 

「い、イダダダダ。痛いっすよ恋奈様~」

 

 梓の胸を潰さんばかりに揉んだ恋奈は、涙が出るほどの威力であった。

 

「まあそういうことで、この話しはお仕舞いだな」

 

「そうね。ところでクミ」

 

 席を立った久美子に恋奈が言葉を掛けた。

 

「何だよ。まだ何かあるのか?」

 

「加藤正哉ってどんな人間なの?」

 

 言葉少なげに恋奈の後ろに控えていた良子はドキリとさせられた。

 良子は大以上に危ない場所に踏み込む正哉に対し、大きな溜め息を吐きたい気持ちだった。

 

「加藤正哉?……ああ!そう言えば愛さんの家に居た奴か!!」

 

「はぁ!?辻堂の家……そう言えば幼馴染みだったわね」

 

 恋奈は情報から二人の関係を思い出すが、マキという存在が当て嵌まらない。

 

「あと腰越との関係よ。何故アイツが味方しているのよ!」

 

「あっ、んなこと知るか……ああ!?そうだよ、思い出した!愛さんの家に腰越も居たんだよ!あの男と結構仲が良さそうだったぜ!」

 

 恐怖心で封印していた光景を恋奈の言葉で思い出してしまった。気を付けていても出会いたくないのがマキだ。

 

「こ、腰越とも仲が良い?信じられないわどうしたらそんな……」

 

 愛とマキの関係は水と油の様に周囲では見られている。それが基となり恋奈は江乃死魔の方針を決め動いている。

 もし関係が見せ掛けとすれば、戦略の練り直しが必要だとこの短い時間で考え出していた。

 

「そんなことまで知らねーよ。それじゃあ話しはここまでだな。それじゃーな、約束は守れよ!」

 

 今度こそ席を立ち上がり久美子はアジトを後にした。

 

「リョウ、頼めるかしら?」

 

「別に構わんが、どの辺りまで調べる?今不干渉を認め合ったばかりだが?」

 

「そうなのよね……稲村にはスパイが居るから腰越との関係を頼むわ」

 

 この言葉に正体を隠している自分を叱ってやりたいと思ったことはない。良子はばれないよう息を吐き恋奈の言葉に頷く。

 

「わかった。出来るだけ調べてみよう。但し期待するなよ」

 

「ええ、無理をしてまで求めないわ。相手は腰越だからね」

 

 藪をつついて蛇どころか竜が出かねないと、恋奈は無理をさせようとは思わなかった。

 

「了解した。それじゃあ俺はこれで帰るぞ」

 

「ええ、態々御苦労様リョウ。あなたの忠告、この先に役立たせて貰うわ」

 

「何、総長を支えるのも部下の役目だ。それに不良の先輩である俺の経験が必要に為る時もあるだろ。気にするな」

 

 良子はそう言葉を残しアジトを去った。それを見送った四人は同様の感想を抱く。

 

「ハァー総災天先輩カッコいいっすねー」

 

「やはり仲間に引き入れた事がは大成功だったわね」

 

 梓と恋奈の言葉にティアラとハナは大きく頷くのだった。




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