辻堂さんの純愛ロード的な何かを書こう   作:津谷 桐矢

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第2話

 加藤正哉は腰越マキと幼馴染の関係にある。加藤家代々の墓がある極楽院に、幼少の頃から通い慣れていた。そこで年の近い二人が出会ったのは偶然のことであった。他にも幼馴染として長谷大、姉と為る冴子に武考田よい子と歳の近しい者が居るが、中でもマキとは仲が良かった。

 

 辻堂愛との関係についてはお隣同士の関係である。正哉と愛が十歳の頃、ほぼ時を同じくして新築に引っ越してきた者同士であった加藤家と辻堂家は、その波長が在ったのか家族ぐるみの付き合いをするようになる。そう言った理由から、娘の愛と息子の正哉は仲が良く為る事は必然であったのかもしれない。そして、関係で言えばマキよりも愛の方が深い付き合いなのかも知れない。

 

 しかし、マキはその勘の鋭さから正哉と言う人間がどう考え、どう行動するかと言う物を瞬時に導き出す事に長けていた。

 

 そして、長谷家の二人とは大に関しては普通に接し、仲の良さが窺える。しかし姉の冴子には過去のトラウマから拒否反応を示す正哉であった。

 

 

 

 

 

「そう。昨日はマキが泊りに来ていたのね」

 

「そうなんだよ。愛も来ていてさ、マジでヤバかった…」

 

 徹はもう一人の幼馴染の家が経営する惣菜店へと客として訪れていた。此処には長谷家も常連として訪れ、度々正哉と大が試作品の採点と感想役としてよい子の手伝いを行っている。

 

「愛…ああ、つ、辻堂さんね」

 

「あれ、前に話したか?」

 

「そ、そうね。可愛らしい名前の番長さんは有名でしょ。はい全部で千五百円に為ります。それとこれ試作品だから今度感想聞かせてね」

 

 よい子は商品とは別に分けた。試作品を同じ袋へと詰め込んでいた。

 

「分かった。厳し目で採点するから覚悟してくれ」

 

 大は甘く正哉は辛い採点の付け方を行い、奇しくもバランスの取れた批評が行われ孝行に良い影響を齎していた。それ故よい子にとって二人は欠かせない存在であった。

 

「ええ、お願いね。ヒロ君に頼んでばかりだと冴子さんに怒られちゃうから…」

 

「ああ、あの暴君ね。まあそうなるよね。任せてよ。多分マキもまた来るから一緒に採点する」

 

 と、幼馴染の楽しい会話も終わりが訪れる。

 

「マサ、暴君とは失礼しちゃうわね!」

 

 その言葉で正哉は体を硬直させた。対してよい子は信頼できる姉貴分が顔を見せて嬉しそうだった。

 

「あっ、冴子さん!お久しぶりです」

 

「ええ、本当に久しぶりね、よいちゃん。全くあのハゲ教頭が残業押し付けて来るから、こうして買いに来る時間すりゃありゃしないわ」

 

 冴子は久しぶりに会った幼馴染に気を良くしたのか彼女の職場となる稲村学園での不満をぶちまけていた。

 そして、正哉は無音でこの場を立ち去ろうとした。

 

「ちょっと待ちなさい、マサ」

 

 正哉は冴子がそう呼んだだけで体を硬直させる。これこそ幼い頃に味わった体験故の結果である。以後、彼は冴子の事を暴君と呼び恐れている。

 

「ちっ。未だに硬直するって、なんて失礼な!」

 

 冴子は自らの行いからこうなった事は認めているが仮にも幼馴染である。冴子の可愛がり度では大に続くランク付けが行われ、大が再起不能になると必ず順番が回って来るのだった。耐久値成長力に才能の有った大は慣れるようになったが正哉はその限りではない。

 その当時を鮮明に覚えているよい子は、どうしてもフォロー出来ず苦笑いを浮かべるしかなかった。

 

「し、仕方がないだろ冴子。未だにあの悪夢が甦るんだよ」

 

 その事に対する贖罪からか、冴子は年下の正哉が呼び捨てにする事を唯一認めていた。但し、学校ではその限りではない。

 

「分かっているわよ。一体どんだけの事を私がしたって言うのよ!よいちゃん、キンピラとから揚げにあとは…」

 

 冴子はそのやり場のなさをよい子に向け、多めに品物を選び始める。よい子もそれに遅れない様に必死で着いて行き、聞き返す事無く品物を詰めることに成功した。

 

「流石、惣菜店孝行の看板娘ね。まさか一発で詰めるなんてね」

 

「よい子は出来る子元気な子」

 

 昔の標語に為っていそうな言葉を正哉は発した。これには二人も微妙な顔をするばかりである。

 

「マサ、その言い回しは正直無いわ」

 

「そ、そうね。出来れば使わないで貰いたいわマーくん」

 

 と二人から不評な結果となったが、正哉にはへこたれるという言葉はない。

 

「そうか。何れ良い言葉が生まれると信じ、より精進しよう」

 

「……そう言えば、まーちんとはどうなのよ?」

 

 冴子は徐に離れて立つ正哉にマキの事を尋ねた。

 

「まあ幾度となく会っているよ。昨日も家に来たし」

 

「はっ!?あの子、今何処に住んでいるのよ。あの寺って相当距離あるじゃない!」

 

 小さい頃は親が運転する車で無ければ向かえなかったし、今も行くとなれば自家用車が当たり前である。電車もあるが時間の掛かる事に変わりは無かった。

 

「わからん。家に泊る事もあるし、そうでない事もある。それにそう言った話しをマキがしたがらないからな」

 

 正哉とマキの間には一定のラインが引かれている。それは極楽院の話しを極力しない事だ。彼女の祖母を話題にする場合は別だが、それ以外はタブーに近しいのだ。

 

「そう。久しぶりに会いたいわね。ヒロも連れて、それによいちゃんもね」

 

 当然集合場所は正哉の家に為る事は冴子の頭の中では決定事項である。それは正哉も分かっている話しであった。

 

「家に為る事は明白だろうから言っておくけど、家にはよく愛も来るからな」

 

 その言葉に冴子は驚きを隠せなかった。愛と言う名イコール稲村の番長辻堂愛と言う図式が出来上がるほどに彼女は有名な名前であった。

 

「えっと、ちょっと待って……ああ、そう言えばあんた引っ越したんだったわね」

 

「そっ、愛の家が隣なんだよ」

 

 そこでお姉ちゃんスキルが冴子に発動する。

 

「大丈夫なの、マサ。いじめられたりしていない?窓ガラス割られたり、バイク盗まれたり!?」

 

「いやいや、そんな歌詞に有りそうな事を愛はやらないよ。それに結構大人しいからな」

 

 その言葉に二人の知る愛と、正哉の知る愛が別人ではないかと、と言う考えが浮かんだのであった。

 

 

 

 

 

「っと、いけない。ヒロがお腹空かせて待っているわ。お姉ちゃんがやってあげないと駄目な弟を持って大変だわーそれじゃあまたね、よいちゃんにマサ!!」

 

 言うだけ言うと冴子は駆けて家路へとついて行った。それに合わせ頃愛と正哉も帰る事に決めた。

 

「それじゃあ俺も帰るよ。またねよい子」

 

「ええ、それじゃあねマーくん」

 

 正哉は乗って来た原付に跨りそのまま走り去った。

 

 

 

 

 

 正哉は家に到着すると電気が付いている事に気が付いた。鍵は彼の他に隣の辻堂家が与っている。これは正哉の両親が海外へと赴任するに当たり、信頼できる者へ正哉を頼み込んだ結果である。つまり、この時間に居るとすれば愛の可能性が非常に高かった。

 

「あっ、お帰り正哉」

 

 正哉が玄関の扉を開けると愛が子犬のマールを抱えて反応良く出迎えた。

 

「ただいま。またマールと遊んでたのか」

 

「まあな、だって可愛いんだもん。なーマール!」

 

 それに呼応するようにマールが吠えて正哉に訴えかける。

 

「そう言えば、今日母さんが家に食べに来ないかって」

 

 辻堂家の食卓は基本豪快な丼飯で有名である。愛の母親真琴が調理するその料理はどれもが一品と唸る物だが、それ以外の料理は壊滅的な酷さである。だから決まって正哉が食べる物は丼飯と為る事が確約されている。

 

「そっか、丁度惣菜を買って来たからこれをおかずに使えるな」

 

「よし、それじゃあ早速行こうぜ。母さんも待っているから」

 

 そう愛が急かし、電気を消した正哉はお隣へと吸い込まれるのである。

 

「あら、いらっしゃい正哉君」

 

 そう優しげな声で出迎えたのが、愛の母親真琴であった。彼女も愛以上に現役時代は数多くの伝説を残した人物である。今ではそのなりを潜めているが時としてその片鱗を窺わせる場面を見かける。

 

「こんばんは、真琴おばさん!これおそうざ、い?」

 

 元気よく挨拶した正哉だったが、目の前には阿修羅さえも逃げさんばかりに怒りに燃える真琴が立っていた。

 

「ねえ、正哉君今何て言ったのかな?」

 

「ま、真琴さん、そう真琴さんだよ」

 

 確かにおばさんと付けても間違いではない年齢ではある物の、全くその様には見えない若々し姿が辻堂真琴である。愛と歩いていると親子では無く姉妹として間違われるという、とんでもかーちゃんなのである。

 

「そうよねー私も聞き間違いだと思っていたわ。あっ、お惣菜を買って来てくれたのね。もう用意は出来ているから手を洗ったら直ぐに来なさい」

 

 一先ず怒りは収まったが、久しぶりに見る真琴の怒った顔で正哉は喝を入れられた気持ちになった。

 人とは得てして呼び慣れた名前を呼んでしまう。愛も訂正を行わなかったが、二人で居る時などで呼んでいる事が真琴にばれてしまい怒られる羽目になった。

 

「はーい。今日はステーキ丼よ!」

 

 真琴がそう言って二人の前に出したのは食べ易い様にカットされたステーキが乗った丼であった。その下には海苔、白髪葱があるなど芸の細かさが窺える。そして、味付けも完璧なのだ。

 

「おお、すげえぇ!」

 

「でしょー特売で安かったからこのメニューに決めたのよ。さあ食べなさい」

 

『いっただきます!!』

 

 二人は息の合った様に言葉を発すると勢い良く丼を持ち口へと運んだ。それは見た目と同じく絶品と言える物であった。真琴が調理をするに当たり不思議なのが、丼にしない場合事如く失敗すると言う事だ。これが丼へと乗る食材となれば安物でも高級品と間違うばかりのクオリティーへと変化する。若さと言い辻堂家の謎はこうして生まれて行くのであった。

 




 ご一読頂きまして有難うございます。

 冴子は正哉にとっては天敵でした。色々設定を変えているため原作に即した話になりますかどうか……
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