辻堂さんの純愛ロード的な何かを書こう   作:津谷 桐矢

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第3話

「はぐはぐはぐ!うまー!!」

 

 マキは物凄い勢いで目の前にある食事を平らげる。それこそ誰にも奪われまいとする勢いでだ。

 

「落ちついてとは言わないけど。もう少しゆっくり食べてもいいんじゃないか?」

 

 正哉は同じ料理が三倍速で無くなる光景を目にしつつ食事を摂っている。

 

「やだ。だって昨日は晩飯無かったんだもん!」

 

 それは辻堂家で食事を頂き、満腹となった正哉が戸締りを完璧に早々と眠りに着いてしまったことが原因であった。とは言うものの、マキは気紛れで正哉の家にやって来る為文句を言われる筋合いはない。

 

「無かったって、そう言えばマキは普段の食事はどうしているんだよ?」

 

 正哉は良い機会だと考え、普段の彼女について問い正そうと尋ねた。すると思いのほかすんなりと話し始める。

 

「そうだな。風雨が凌げる場所で暮らしているぞ。食事は調達しないと難しいけどな…」

 

「なあ、それって家出って言わないか?」

 

 何処かのあばら屋で夜を過ごし、食事は何処かで手に入れるという街中でサバイバーな生活を行っている事に正哉は驚いた。

 

「まあ、そうとも言うな!」

 

 ところがマキは悪びれる様子もなく、平然と自分の生活を当てた正哉に言葉を返した。

 

「ば、バカ野郎!!」

 

「うわなんだよ。野郎って私は女だよ」

 

「何当たり前の事を言っているんだよ。さあ、今すぐにばあちゃんに連絡しないと!」

 

 正哉はそう言って朝早くにも関わらず、固定電話へと移動するとナンバーディスプレイをいじりだす。何度か使用したことで使い方に慣れている正哉は素早く極楽院への連絡を始めた。

 しかし、直ぐに通話は切られてしまう。

 

「おいマキ!」

 

 正哉はそう言ってマキの顔を見たが何処か陰鬱そうな顔をし、普段の明るい表情からは想像できない表情であった。それには正哉も困り、理由を聞こうにもタブーへ足を踏み入れなければならないと思いこれ以上連絡を取ろうとするのは控えねばならなかった。

 かと言って、正哉はマキの生活を知った以上此のままと言う訳にもいかない。加えて人様の家を無断で使用し、食べ物を盗み食いしている事も考えられ環境も悪いとくれば考え着く先は一つであった。

 

「よし、今日から家に住め!」

 

 その言葉はマキにとっても衝撃的であった。何と言ってもこの家には現在、正哉しか住んでいない。お隣の辻堂家の存在を知るマキであるがそれでも男女が暮らすには正直良いのかな、とった考えが浮かんだ。

 

「おい、そんな勝手に言って大丈夫なのかよ?」

 

「だって極楽院へは連絡されたくないんだろ。だったらこうするしかないだろ。まあ今からお隣に報告と相談をして来るから暫くはテレビでも見て待ってろ」

 

 有無を言わせず正哉は席を立つと、軽々と辻堂家へと赴いた。

 

 

 

 

 

「はーい、あらおはよう正哉君」

 

「おはようございます、真琴さん。昨晩は美味しいステーキ丼有難う御座いました」

 

 普段は早朝から漁のバイトに出ている真琴であったが、幸運にも在宅してくれた事に正哉は感謝した。そして、彼女は正哉が何か言いたがっているのを見抜き取り敢えず家に上げることにした。

 

「それでどうしたの。朝から家を尋ねるなんて」

 

「実はですね……」

 

 正哉は今朝の事を包み隠さず真琴へ話す。それこそ、マキとの関係などもである。但し、名前は異なるが。…

 

「へぇーあの子、腰越マキって言うのね。それに愛と同じで不良でしょ?」

 

 流石に真琴にはばれていたのか、確信を持って正哉に問い質した。

 

「はい。本人はやりたい事をしているだけだって言いますけどね。この前も不良に絡まれてあっと言う間に叩きのめしたなんて話しをしていました」

 

「この歳でやりたい事だけをするなんて十分不良じゃない。それに、結構強そうな子だものね。よく正哉君の家を窺っている様子だったから覚えているわ。それに愛とは仲良くなさそうよね」

 

 母親である彼女には相性も含めて筒抜けであった。正哉は時折家の中で衝突する事を真琴へと告げると笑いながら謝る。

 

「ごめんね。多分同族嫌悪だと思うわ」

 

 そうは言うが全く性格が異なる事を正哉は知っている。だからこそ真琴が言う言葉が正しいとは思わなかった。

 

「根本的な部分ってところかしら。何れ愛が見せる日が来るかもしれないわね。って、話しが逸れたわね。そうね、此のままだと余所様に迷惑が掛かる、かと言って実家には連絡されたくない。だから正哉君の家に住まわせる…」

 

 普通なら即実家に連絡が為されるが、嘗て不良であった真琴は様々な生い立ちの仲間を知っている。だからこそ、そう言った事が悪手に為る場合もあると踏んでいた。そして今回の場合がそれに近いと思い、実家への連絡は最後の手段として考える様に決めたのだ。

 

「仕方がないわね。他ならぬ正哉君の頼みですものね。ちょっとそのマキちゃんを一人で此処に向かわせてちょうだい。家の前までは付き添ってもいいけどそこから先は一人でね。それと学校に遅刻しない様に正哉君は出掛ける事。いいわね」

 

 それだけを言われ正哉は家を出てマキを迎えに行くことにした。

 

 

 

 

 

 そして、言われた通りに正哉は行い、渋々ながらマキもその言葉に従った。彼女も伝説の稲村チェーンは有名であった。

 

「それじゃあ、俺は学校に行くから。それと鍵を渡しておくよ」

 

「お、おう。何か悪いな、正哉…」

 

「気にするな。俺とマキの付き合いだろ!それじゃあ健闘を祈る!!」

 

 それだけ言葉を残すと正哉は学校へと歩みを向けた。

 そして、マキが呼び鈴を鳴らすと入る様に指示され、扉を開けた瞬間中から凄まじい殺気を受けた。

 

「くっ、これってかあちゃん以上か…」

 

 気を引き締め、事に当たらないといけないとマキの感が全身で以って警鐘を鳴らしていた。奥へ進むごとに強く為るその殺気に足取りは当然重く為る。だが、三大天と周囲から呼ばれるマキは決して屈する事は無かった。

 奥へと進み扉を開けるとそこには普段とは似ても似つかぬメンチを切った真琴が立っていた。

 

 

 

 

 

「おはよう正哉」

 

 登校すると早速長谷大が声を掛けて来た。席が隣り合うからこそこうして話す事が出来る。

「おはようヒロ、よい子の試作品どうだった?」

 

「そうだね、結構美味しかったよ。でも姉ちゃんからは酷評だったよ」

 

 予想通り、大はよい子の試作品に多甘採点を下していた。それに正哉は大きく溜め息を吐いた。

 

「やっぱりな。どうしてもそう言う評価に為るよな、ヒロは」

 

「そうかな。結構真面目に評価しているんだけど…」

 

「遺憾ではあるが、俺の評価とあの暴君と同じ評価に為る筈がない」

 

 正哉は大の前でも冴子を暴君と呼んでいる。これには大も苦笑いをするしかなかった。そして、過去の傷が相当大きなものであったと改めて振り返る指標となっている。

 

「未だにそれで呼ぶんだね…」

 

「当然だ。あの暴君は現役の暴君様だ。間違い様がない!」

 

 そう話していると周辺の男子も集まりだす。

 

「なんか面白い話しをしているな」

 

「若しかして不良の話し?だったら俺に任せてよ。昔悪かったからさ…」

 

「エロの話しなら任せるタイ」

 

 三人は組野英、松田南、次藤比良戸が話し掛けてきた。

 

「ああ、家の姉ちゃんの話しをね」

 

「長谷先生?」

 

「ああ、あの暴君が如何に暴君であるかをな」

 

 正哉がそう言うと三人は示し合わせた様に否定し、笑い飛ばした。美人で歳も比較的近く、冴子は学園の中でも接し易いお姉さん的な立ち位置を確立している。加えて性格もよく、生徒の相談も親身に乗り、隙の無いその姿は生徒のみならず保護者からも信頼が高かった。

 しかし、そんな物冴子の仮面被りと言うスキルを使えば雑作の無い事と正哉は笑い飛ばす事である。だが、洗脳とは恐ろしい物で、一向に正哉以外に真の姿を目撃した生徒は居ないのだ。

 

「くっ、此処では俺一人か…」

 

「その話を信じろなんて無理だよ、加藤。長谷先生は人気高い先生だからね」

 

「そうタイ。授業は難しいけど、分からない事があれば親身になって教えてくれる優しい先生タイ」

 

 そう孤立無援のまま登校時刻を迎える頃、外が賑やかに為る。

 

『整列!おはようございます!愛さん!!』

 

 一人の大きな声の後、左右に立ち並ぶ不良集団が一人の女性に対し頭を下げ挨拶を行った。その間をゆっくりと貫録を持って歩く姿の者こそ、稲村の番長喧嘩狼の辻堂愛であった。

 その姿はいい意味でも悪い意味でも目立ってしまう。特に風紀委員からは目の敵にされる彼等は天敵とも言える存在である。

 

「全く、不良たちのあれは傍迷惑な物だ」

 

 何時の間にか姿を露わした学年一の秀才、板東太郎が正哉達の前に立っていた。

 




 ご一読頂きまして有難うございます。

 さっそく同棲なんてどうなのよと言った突っ込みは勘弁を!
 隣の家には怖い人が居るため悪さは出来ません。そう言えば江乃死魔の事書けていないな。
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