この子供艦娘・摩耶は、意外と英雄に成長する……かも。   作:おしぼり。

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バトルものです。
キャラクターは艦隊これくしょんから。
ストーリー運びは若干NARUTOからお借りしている部分はありますが、話が進むに連れてオリジナルになると思われます。


プロローグ 私の名前は摩耶さまだ!

 ここは横須賀鎮守府にほどちかい近代都市。隙間もなく建ち並ぶ超高層ビルのせいで、もはや地上には日光は届くことはない。ここに住む人間たちはかつての地上を捨てて、新たに人工的につくられた『第二の地上』というものを実現してみせた。だからこの都市でいう地上というものは、ビルとビルのあいだに渡されたコンクリートのことだ。人々が時折ふと見下ろす『かつての地上』は、ただの薄暗い闇のつづく谷底になっていた…………。

 

 「しっしっし! やめて欲しければこの摩耶さまを捕まえてみな!」

 

 いくつもの看板を足場にして空中を駆け回るひとりの少女がそう叫んだ。少女の名前を摩耶(まや)といった。年は10才くらいだろうか。活発やんちゃな少年をそのまま女の子にしたような、すこし吊り上がった勝ち気そうな瞳をもつ子供であった。彼女は左手にたっぷりと赤いペンキのはいったバケツを持っていて、そして右手にはそのペンキに汚れたハケを握っている。

 

 「…………クソっ! なにをしている! はやくあいつを捕まえろ!」

 「し、しかし、あそこまで高いところにのぼられて駆け回られては、私たちにはなにもできません…………!」

 「だらしねえ! たかが落ちこぼれの『艦娘』一匹ごときに……! それでも軍人のはしくれかっ!」

 

 何人もの軍服を着た男たちが『第二の地上』から、遥か上空にいる摩耶を睨みつけていた。摩耶と男たちの距離は、おそらく20メートル以上はあるだろう。空中をちょこまかと走り回る彼女に、地上の彼らはてんてこ舞いという感じだった。

 

 男たちの屈強な身体は、はたして摩耶の小さい身体の何倍あるだろうか。それは比べる必要もないほど、ありありと見えている結果だ。しかし今の摩耶にとっては、そんな比較はごくごく小さな違いにすぎなかった。今こうして男たちがたったひとりの少女、摩耶の行動に慌てふためき、それを彼女が遥か高みから見下ろしている……。摩耶はこんなときに大人や子供という仕切りもなく、対等に優越感に浸ることができた。

 

 摩耶は誇らしげに、その可愛らしく赤みがかった鼻のあたまを掻いた。空中に設置された看板の幅は狭い。彼女は絶妙なバランス感覚で、その幅にまったく物怖じせず立っている。すこしでも自分を大きく魅せるために。彼女はバケツにはいった赤いペンキを、充分にハケに吸わせた。まだなみなみとペンキのはいったバケツは、彼女の手によって地上にいる男たちへと投げ捨てられた。頭からペンキをかぶってしまった男たちは、さらに混乱する。

 

 「いいか、お前らァ! この摩耶さまの勇姿を目に刻んでおけ!」

 

 そう言い放った摩耶は、器用にビルの窓に張り付いてクライミングしていく。地上からそれを眺めた男たちは、彼女が壁を走り回っているようにも見えた。摩耶は右手にもったハケを振るう。ビルの壁、窓と……すべてに区別無くハケを滑らせていく。イタズラの範囲を遥かにこえた行動だった。人間が落下すれば間違いなく怪我を負うだろう。彼女が起こしたこの行動には、それほどの価値と理由があるものなのだろうか。

 摩耶が満足そうに息を吐き、また看板のところに戻ってからハケを投げ捨てた。かわりにその右手を高く振り上げて空を指差すと、彼女は空に向けてドカンドカン、と主砲を2回打ち鳴らした。空砲である。

 

 「…………私は横須賀鎮守府で一番強い艦娘になる! この世界にある海は! 隅から隅まで一滴のこらずこの摩耶さまのものだぜ!」

 

 ────日ノ丸。

 仁王立ちでそう高らかに宣言した摩耶の傍らには、とても無骨でとても巨大な赤い丸が描かれていた。




前作に頂いた作品に、精進しろという旨の感想を頂きました。
素直に、皮肉ではなく、本当に素直に嬉しかったです。やる気を頂きました。
どんなことでもいいので感想をのこしてくれると嬉しいです。

更新は2,3日に一回です。
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