ISに告白された少年 人類最悪の遊び人との邂逅 作:二重世界
楽しいと言うよりも色々と大変だった夏休みが終わり、今日は二学期の初日。俺は始業式をサボり午前中から、専用機であり恋人でもある黒とデートしている。
今日は女装をしておらず普通に男の服を着ている。IS学園を出る時は女装していたが、後で着替えた。
「ねぇ、深夜。次はどこに行く?」
黒が俺に抱き付きながら聞いてくる。
「そうだな。ちょっと服でも見に行くか」
「深夜が言うならそれで良いわ」
そして俺達はデパートに向かって歩き出す。
「よぉ、飛原深夜、初めまして。実質的男性初のIS操縦者にして篠ノ之束のお気に入り」
「ッ!?」
俺は声をかけられて振り返る。そこにはベンチに座って漫画を読んでいる和服姿の男性がいた。言葉では表現できない不気味な雰囲気を持った男だ。
そして近くには眼鏡をかけた魔王こと織斑千冬に似た女の子が不機嫌そうに立っている。いっくんと魔王の妹か何かか?だが、それなら俺がウサギから聞いていないのはおかしい。もしかして、ただの他人の空似か?
「……俺に何の用だ?」
「『俺に何の用だ?』か。ふん。もう少しで切りの良いどころだから待て」
「…………」
いきなり話かけてきたのに漫画を読むまで待て、だと。何て自分勝手な奴なんだ。
「ねぇ、こんな怪しい奴等は無視してデートの続きをしない?」
「まぁ、待て。デートならいつでも出来る。何なら明日もしても良い。だから、こんな面白そうな状況を無視することなんて俺には出来ない」
それにこの男が俺のことをどこで知ったのかも気になる。俺のことは世間に発表されていない。知っているのはIS学園関係者か日本政府の一部、そして俺が個人的に繋がりのある人物だけ。この男はどれにも見えない。普通に考えたら俺のことを知っている人物から話を聞いた。だが、俺の正体が公になれば戦争になることも有り得る。それなのに俺のことを話す奴がいるとは思えない。もし話した奴がいるなら正体を確かめておく必要がある。
「深夜がそう言うならいいけど。その代わり、今日の晩は私の希望するプレイでしてね」
「了解」
もし黒が男になってホモプレイをするというなら全力で拒否するけどな。
「なぁ、何で俺のことを知っているんだ?」
俺は魔王似の女の子に話かける。
「私は貴方になんか興味ない。そこの漫画を読んでいる男に聞いて」
その男が答えてくれないから、お前に聞いたんだが。にしても、無愛想な女だな。
「じゃあ、何でここにいるんだ?」
「私の目的を達成するために必要なことだと狐さんが言ったからだ」
「狐さん?」
「この男は今はしていないが、昔は常に狐面の仮面をしていたらしい。それでこの男の知り合いは皆、狐さんと呼んでいる。私もそれに倣っただけだ」
ふぅん、狐面の仮面ね。ずっとしていたことをやめた、ってことは何か心情の変化があったのだろう。さすがにそこまでは推理のしようがないが。
「じゃあ、次の質問。お前の目的は何だ?」
さっきの発言から狐さんのために動いているって感じではない。おそらくお互いの目的のために利用しあっているのだろう。
「……織斑千冬に復讐すること」
復讐ねぇ。それは何とも弄り甲斐がありそうな話だ。しかも俺の目的に利用できそうだ。
「つまり、お前は打倒魔王を掲げた勇者と言うことか」
「……は?」
魔王似の女の子は驚いた顔をする。俺の言った言葉の味が理解できなかったみたいだ。
「私の名前はエムだ」
「勇者よ、この魔法使いが打倒魔王を手伝ってやろう」
「だから私の名前はエムだ。そしてマジメにやれ」
エムってどう考えても本名じゃなくて偽名だ。だったら別にどんな呼び方でも良いだろ。
「深夜は面白いこと以外は何を言っても聞かないわよ」
「……面倒くさい奴だな。で、手伝うとはどういう意味だ?」
勇者は俺をマトモに相手するのを諦めて質問してきた。
「そのままの意味だよ。魔王とはことあるたびに戦っているんだけど中々勝てないんだよな」
まぁ、最近はいっくんを利用して不戦勝に持ち込んでいるが。勝ったことなんて指で数えられるほどしかない。
「よし、行くぞ」
漫画を読み終わった狐さんが立ち上がると、そう言った。こっちはまだ話している途中なのに。
「……仕方ない。続きは後でするか。番号とメルアドを交換しようぜ」
「分かった。その代わり、後でちゃんと事情を説明しろよ」
「当然だ」
そして俺と勇者は携帯を取り出して番号とメルアドを交換した。
「で、どこに行くんだ?」
「『で、どこに行くんだ?』か。ふん。ファミレスだよ。もう少しで昼だぞ」
俺は黒が食事できないからファミレスとかはあんまり好きじゃないんだが。今日の昼飯も事前に作っていたおにぎりをベンチに座って黒と喋りながら食べる予定だったし。
「ほら、行くぞ」
狐さんの言葉には有無を言わせない強引さがある。だが、その程度で言うことを聞く俺ではない。
「じゃあ、バイバイ」
俺は狐さんと反対側に向かって歩き出す。
「おい、何をしているんだ?こっちだぞ」
「いや、親に変な人についていってはいけません、って習ったんでな」
習った記憶はないけど。と言うか、会話した記憶自体がほとんどない。
「お前は律儀に親の言い付けを守るのか?」
「そりゃ、守るでしょ。何たって俺は良い子だからな」
「……深夜、自分で言っていて恥ずかしくないの?」
何のことを言っているのか全く分からないな。
「じゃあ、どうやったら俺の言うことを聞くんだ?」
「そうだな。ここでなら聞いてやる。あんたみたいな怪しい奴の案内する場所になんか行けるか」
「『あんたみたいな怪しい奴の案内する場所になんか行けるか』か。ふん。お前はそういう細かいことを気にするタイプではない。おそらく適当なことを言って俺に嫌がらせをするのが目的だ」
初対面で人を見透かしたような発言をするな。かなり厄介でかなり面白い人物だ。
さて、どうしたものか。夏休みに色んなタイプを相手にしたが狐さんみたいなタイプは初めてだ。
「まぁ、いい。今回は『俺の新たなる敵』の面白さを確認できただけで良しとするか」
新たなる敵?何が目的かは知らないが前にも同じようなことをしていたと言うことか。
「今度、改めてパーティーの紹介状を送る。詳しい話はその時だ。じゃあ、マドカ。昼飯を食べに行くぞ」
「私のことはエムと呼べ」
そして二人はファミレスに向かう。
て言うか、勇者の名前はマドカだったのか。やっぱり聞いたことのない名前だな。
「あの戯言遣いと同じレベルの逸材に会えるとはな。完全に予想外だ。これだから世界は面白い」
狐さんが去り際に邪悪な笑みを浮かべながらそう言った。
戯言遣い?また知らない名前だ。
俺はさっき勇者と番号とメルアドを交換するために出した携帯で『天災』篠ノ之束に電話をかける。
『ハロハロー、しっくん。しっくんが何の用もないのに電話をかけてくるなんて珍しいね。それとも束さんが忘れているだけで何かあったかな?』
「別にそういうわけじゃねぇよ」
『じゃあ、何かな?もしかして愛しの束さんの声を聞きたくなったのかな?』
イラッときたので電話を切る。すると、すぐに電話がかかってきた。
『ちょ、酷いよ、しっくん!いきなり電話をかけてきて、勝手に切るなんて!もしかして暇潰しに束さんに嫌がらせするのが目的なの!?』
「違う。今回は珍しくマジメな話だ」
『ふぅん、本当に珍しいね。もしかしたら初めてじゃないかな。で、束さんに何の用?』
ウサギは軽口ながらも俺の雰囲気に当てられてマジメに返事する。
「ちょっとウサギに聞きたいことがあるんだよ」
久し振りに『ISに告白された少年』を書きました。
おそらく、この話は続きません。正確に言うと書きたい衝動はあるのですがストーリーが思い付きません。
感想をもらえたら、もう少し本気でストーリーを考えてみようと思います。