ISに告白された少年 人類最悪の遊び人との邂逅 作:二重世界
「ねぇ、深夜。知ってる?深夜のクラスにイケメンの副担任が来たって」
狐さんと出会った日、黒とのデートを終えて部屋に帰ってきて着替えている途中でかんちゃんが言った。
「いや、知らない。そんな話は生徒会にきてなかったが本当なのか?」
「私は見てないけど本当らしい。学園中がイケメンが来たって大騒ぎだったから」
俺のクラスに新しい副担任ねぇ。タイミングがタイミングだけに匂うな。
でも、俺がその情報を今まで知らなかったというのはどういうことだ?情報操作があったのか?
「じゃあ、元々の副担任のマヤマヤはどうなったんだ?」
「私のクラスの副担任になった」
かんちゃんのクラスの副担任か。確か四組には副担任がいなかったな。
着替えが終わったところでコンコンと扉がノックされた。のほほんさんか写真を買いに来た連中のどっちかだろう。
「鍵は閉まっていないから勝手に入ってきていいぞ」
俺がそう言うと扉が開けられ客が部屋に入ってきた。その人物は俺の予想と違い見たことがない眼鏡をかけた男だった。
「初めまして。狐さんの指令で来た七芒星の一人、串中弔士です。ちなみに君の新しい副担任でもあります」
男は嘘臭いほどに礼儀正しく挨拶する。
狐さんとは違った意味で気味が悪い。全く人間味が感じられず、全てが嘘で構成されているかのような雰囲気だ。
一日で二人も異常な人物に会うとは運がない。いや、俺の場合は運が良いのか。
「……狐さん?もしかして、あんたは狐さんの刺客か何かか?」
俺は最大限に警戒しながら返事する。今日、会ったばかりなのに、いきなり刺客を送ってくるとは予想外だ。おそらく俺に接触する前から色々と準備していたのだろう。
黒はいきなり現れた不審者を気にせず俺に抱き付いている。かんちゃんも同じように気にせず漫画を読んでいる。
お前ら、自由すぎるだろ。シリアスモードに入ろうとしている俺が馬鹿みたいじゃないか。
「刺客という言葉は正しくありませんね。メッセンジャーと言った方が正しいでしょう」
「メッセンジャー?狐さんから俺にメッセージがあるのか?」
「はい。でも、ただで教えるのは面白くありません。そこで私と一つ、勝負をしませんか?」
そう言うと先生はコンビニで売っているような持ち運びに便利な将棋盤を見せてきた。
て言うか、この先生のあだ名はどうするか。あだ名を付けるにも情報が少ないし、第一印象で決めるか。
いや、この先生から何も感じられないから第一印象も何もないな。強いて言えば偽物か。
「将棋?」
「はい。ところで君は将棋のルールを知っていますか?」
「下手なプロが相手なら勝てる自信がある」
俺的にはチェスの方が得意だけどな。
「ところで勝負するだけでいいのか?」
「はい」
う~ん、目的がよく分からない。ただ将棋をして俺の性質とかを見るつもりなのか?打ち方で大体の相手の性格とかが分かるものだからな。
何とも得体の知れない男だ。
「……深夜も充分に得体が知れないけどね」
かんちゃんが漫画を読むのをやめずに言ってきた。だから俺の心を読むなよ。
「かんちゃん、俺と偽物の分のお茶を入れてくれ」
「自分で入れれば」
どうせ漫画を読んでるだけで暇なんだからお茶くらい入れてくれてもいいだろ。
「……その偽物というのは僕のことですか?」
何故か偽物が驚いた顔をしている。偽物という言葉に何か思うところでもあるのか?
「そうだけど」
「それはどういう意味ですか?」
「俺は基本的に人のことをアダ名で呼ぶことにしているんだ。で、あんたのアダ名が偽物。何となく雰囲気で決めさせてもらった」
俺が名前で呼んでいるのは今のところラウラとクロエだけだな。
「中学の時の先輩も僕のことを偽物だと言っていましたよ。僕のことを本物だと言う人もいましたけどね」
この男が本物?本物の偽者という意味か?
俺がお茶を入れてから将棋盤をベッドに置いて勝負を開始した。
「本当は中学の先輩の形見の将棋盤があるんですけどね。さすがにアレは持ち運びに不便なので今日、コンビニで買ったヤツを持ってきたんです」
また中学の先輩か。どんだけ中学時代に拘ってんだよ。
「形見ってことは、その先輩は死んでいるのか?」
「そうですね。殺されました。僕が殺したと言っても過言じゃないですけどね」
言っている意味が全く分からない。直接的に殺したのは別の人だけど原因は偽物にあるということか?何かそういうニュアンスじゃないけど。
て言うか、殺されたって物騒だな。普通に生活していて殺される可能性は低い。この人も裏の人間か?
会って数分だけどあやふやでよく分からない人だ。
とりあえず、このまま偽物のペースに持ち込まれるのはマズイ。俺のペースに持ち込まないと。
「そういや、あんたが最初に言っていた七芒星って組織の名前か?」
「その質問も勝負が終わってから答えます」
ちっ。だんまりか。夏休みに会った裏の人間の中でもトップクラスにやりずらいな。
それから数分、黙ったままひたすら駒を移動させる音だけが部屋に響いた。何とも気まずい。
すると突然、かんちゃんが漫画を読むのをやめて立ち上がった。何をするのかと将棋を指す手をとめずに様子を見る。するとかんちゃんはバスタオルに着替えを取り出し始めた。
まさか初対面の男、しかも教師がいるのにシャワーを浴びるつもりか?大浴場の方に行く可能性もあるが、基本ボッチのかんちゃんが大浴場に行くことはほとんどない。
俺との生活がそこまで、かんちゃんを羞恥心のない人間にしていたのか。
とか思っていると次は黒が俺の背中から離れて膝を枕にして転ぶ。何か狐耳になっていて可愛いので頭を撫でる。
何だ、この何とも言えない空間は?しかも偽物は気にしてないみたいだし。
もしかして俺がおかしいのか?何かいっくんの気持ちが理解できた。
「僕は狐さんのことを抜きにしても君に興味があります」
さっきまで無言だった偽物が急に口を開いた。俺の質問には答えないくせに自分の意見は言うつもりなのか。
まぁ、このまま無言で将棋を指すのも空気が重いし付き合うか。
「俺が男性のIS操縦者だからか?」
「それもあります。ですが私が気にしているのは君が私に似ているからです」
「似ている?」
別にそんな印象は受けないが。むしろ逆だろ。
「シスコンで女装趣味で日常よりも非日常を求めている。貴方は中学時代の僕によく似ている」
「…………」
最初の二つは何だ?いや、確かに俺はそうだけど偽物もそうなのか?
「中学時代の話です。さすがに今は女装していませんよ」
俺の訝しむ視線を受けて偽物が言い訳をする。まぁ、いい大人が女装はさすがにないな。オカマとかいう人種はいるが、あれは例外だ。
「で、シスコンって言うのは?」
「私には魅力的な姉がいましてね。まぁ、僕が中学一年の時に死にましたけどね」
また中学時代か。何人、死んでいるんだよ。
「問題はそこではなく君が僕と同じく非日常を求めている人間だということです。そして僕は失敗して君は成功した。僕は非日常を得ることに成功した君の意見が聞きたいんです」
いや、あんたも充分に非日常を得ることに成功しているだろ、とツッコたいが我慢した。多分、偽物が言いたいのはそう言うことではない。
「別に。俺は今の状況を非日常なんて思っていない。確かに男でISが使えるというのは周りからは非日常に見えるかもしれない。でも俺からしたら、すでに慣れた日常だ。本当に日常から離れたかったら常に進化するしかない」
俺はまだ非日常を獲得していない。というよりも、する気がない。それは俺がIS学園を卒業してからだ。
「なるほど。本人から見たらそう感じるのですか。……おっと僕の負けですね」
俺が勝利したのか?勝った実感がないな。
それはこいつが将棋を指しながらも勝負していなかったからだろう。
「じゃあ、これを。パーティーの招待状です」
そう言うと偽物は封筒を取り出して渡してきた。
「そこに書かれている場所に来れば君の知りたいことを知れるでしょう」
世界シリーズの串中弔士の登場です。中学の時ならともかく教師になった彼ではどうやって、ふざけたらいいか分かりませんでした。
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