そういえば最新刊が発売されましたね。
もちろん読み終わっています。
(何が起こっている!)
たった一瞬、一度の瞬きで先ほどまで枯渇により弱々しい想子を纏っていた零の雰囲気が豹変する。
全く別物の想子が一気に溢れ出し、零の体を覆う。
想子を使い果たしたのに、一瞬で、しかも別人のよう様な想子が発生するというあり得ない現象を目の当たりにし驚愕するも足を止めることなく敵の男は突撃する。
それは零に最初に攻撃した時よりもさらに速いスピード。
そして『高周波ブレード』を待機させ不意を突くことで、ナイフの刃を避けられても確実に殺せるようにする。
対する零は腰にぶら下がっている、今まで使わなかった特化型CADを手にし、突撃してくる男に照準を合わせ引き金を引く。
放った魔法は『最小分離』。
本来であれば蓮玉しか使うことのできない魔法だが零に限っては、蓮玉の想子を借りたときにのみ使うことができ
る。
照準した物体を原子単位まで分解するこの魔法は零の狙いとは違い、突撃してくる男の右腕を消し去った。
本来であれば男が消え去るはずだったがやはり使い慣れない想子、使い慣れない魔法ということで若干の誤差が出、失敗してしまったのだろう。
舌打ち一つを入れて零は魔法の誤差を修正すると再度CADを構え引き金を引き、驚愕のためか立ち止まっている男を消し去った。
それを確認した零はリーナを助けるべくまた足を進めていく。
そこから先は何も残らない。
戦闘や虐殺のような言葉の似合わないただ人が消えていくだけの現象が発生していく。
もちろんそれを引き起こしているのは零だ。
意思の見えない、それでいて何かしらの目的を映す瞳は前だけを見ておりそこに映した敵はすぐに消し去っていく。
敵は何が起きたのか分からないどころか自分が死んでしまったことにすら気づかない。
周りにいた仲間がいつの間にか消えていることには気づくも仲間を消した未知の魔法を恐れるような暇もなく消えていく。
地獄絵図というには相応しくない静けさが建物に残る。
そしてついにリーナのいる部屋の直前までたどり着く。
そこは強固なシャッターで閉ざされているが壊さずとも『最小分離』を使えばすぐに通れるためCADを構える。
そして引き金を引こうとしたところで突然撒き散らされたノイズによって魔法は不発に終わった。
◇◆◇◆◇◆◇
突然響いてきた高音のノイズ、そして身に打ち付けられるような不快感に思わず膝をついてしまう。
何事かと思って周りを見るといつの間にか十人ほどの敵に囲まれていた。
何人かが俺のほうに腕を向けてきている。
どうやらこのノイズは奴等から発されているようだ。
さすがにこのままではまずいと思い俺を取り囲む敵を蹴散らそうとCADの引き金を引く。
だが魔法が発動しない。
もう一度引き金を引くがやはり発動しない。
どうやら奴等から発せられるノイズは魔法の発動を妨害するようだ。
ならば魔法を使わずに脱出しようと試みると取り囲んでいない敵が出てきて俺を攻撃してくる。
普段であればすぐにでも倒せるような敵なのだが想子の消費による倦怠感と絶え間なく流れてくるノイズによって苦戦してしまう。
それでも何とか敵の猛攻を躱していくが何度目かの攻撃でついに肩に攻撃を受けてしまう。
その際に体勢を崩してしまいその隙を突いて斬りかかってくる。
…ここで終わりなのか―――
もうこの攻撃は避けられない。
俺は目を閉じ、最後の時を待つ。
――――――替われ!
◇◆◇◆◇◆◇
零を取り囲む敵、零に切りかかっていく敵が全員自分たちの勝利を確信し口元に笑みを浮かべる。
そして敵の持った剣が零を斬る。
だが膝をついていた零はCADを持った腕を前に突き出しておりまだ生きている。
そして零に斬りかかっていた敵はいつの間にかその姿を消している。
―――否、零が消し去ったのだ。
「なっ……。お前、何をした!」
驚愕で固まっていた敵の一人が零に叫ぶ。
その声で固まっていた他の敵も動きだし、止んでいたノイズがまた広がりだす。
しかし零は先程のように膝をつくことなく起き上がったまま敵を見据えている。
「な…なんで動ける!
お前ら撃て、撃てっ!」
何の異常もないように立つ零を見てヒステリック気味に叫ぶ敵の一人。
それにつられて敵は銃を撃つが弾は零に当たる前に無くなってしまう。
さっき叫んだ敵がそれを見て「なぜ魔法を使える!?」と再び叫ぶ。
零は『最小分離』を使ったのだが敵が言っているのは魔法の種類のことではなく魔法の使用方法だ。
もちろんそんなことを教えるはずもなく叫ぶ男以外を消し去り、叫ぶ男の関節を極め拘束する。
そしてその指にはめられているノイズを発生させている指輪を見る。
「やっぱりアンティナイトか。
『最小分離』なら関係なく発動できるんだが、まあ俺の想子を借りてるだけだしな。本来の力を出せなくても仕方ないか。」
先ほどまでと口調が一変した零。
しかし今零の身体を動かしているのは零ではない。
蓮玉が零から意識の主導権を奪ったのだ。
普段ならば主導権を奪うなどということは絶対にしないのだが、生を諦めていた零を生きさせるために奪ったのだった。
そして先ほど蓮玉が口にしたアンティナイト。それは想子を流すことで、無意味な想子波を散布し魔法の構成を妨害するキャストジャミングを発生させる金属である。
非魔法師でも扱えるものであるが今零の前にいる敵は蓮玉が魔法を使用したことを理解したため魔法師であるのだろう。
その蓮玉がキャストジャミングの中で魔法を使えたのは蓮玉本来の力である。
『最小分離』は蓮玉の特異魔法の一つであり蓮玉の想子、演算能力があればキャストジャミングのノイズの中だけでなくどのような状況でも発動できる干渉力を発揮する。
さっき零が魔法をつかえなかった原因が分かった蓮玉は拘束していた男を消し去った。
自分のすべきことを終わらせた蓮玉は主導権を零に返そうとするが彼の意識は浮上してこない。
そのため蓮玉はやむなくリーナを助けることにする。
目の前にあるシャッターを『最小分離』で消し去る。
その内部にはリーナはおらず女性や子供が数人いた。
おそらく人身売買のために誘拐された者たちだろう。
蓮玉はその部屋にいた人全員の拘束を解き、零の通っていない外への道順を教え逃がした。零の通った道を通らせたら数人は確実に気絶してしまうからだ。
捕まっていた人たちがいたところの奥にもう一つ扉が見える。
だが蓮玉は零の『次元の眼』を使えないためその先にリーナがいるかはわからない。
使える零は今意識の底に沈んでいてまだ目を覚ます気配がない。
しかしここで時間を取られるのも嫌なので蓮玉は零を無理矢理起こすことにした。
◇◆◇◆◇◆◇
少し意識を失っていたみたいだ。
先ほど殺されそうになって抵抗をしなかったはずなのに今はなぜか生きている。
それどころか俺を取り囲んでいた敵もすべて消え去っている。
おそらく何者かが助けてくれたのだろう。
意識を失っていた一瞬のうちにここまで処理しきっていることからもとても強い人が来たのだろう。
だが周囲にはその姿が見えず気配も感じられない。
一先ず助けてくれた人に心の中で感謝しつつ本来の目的であるリーナの救出へと動く。
『次元の眼』でリーナを探すと、敵と思われる奴に連れ去られているのが見えたためすぐに動き出す。
幸い、それほど離れていなかったのですぐに追いつけた。
逃げようとしていたのかリーナを連れ去ったのと同じ車が用意されていて今発進しようとしているところだった。
中には二、三人の敵とリーナが乗っていてその敵たちを『最小分離』で消す。
そして車のほうへ歩いていきドアを開けた。
そこには十数時間ぶりに会うリーナの姿があった。
腕を縛られているので、縄を解いてやりリーナの名前を呼ぶ。
「…レ、…レイなの?」
「うん、助けに来たよリーナ。」
なぜか困惑したように尋ねてくるが些細なことのため気にせずに返す。
すると目に涙を浮かべながら抱き着いてきた。
「うっ、グスッ…レイィィ」
よっぽど怖かったのだろう安心したように泣きついてくるリーナを抱き返し頭を撫でてあげると抱きしめてくる力が一層強くなる。
そのままの体勢で十分ほどたったころ泣き疲れたのかリーナは寝息を立てている。
そろそろこの施設を離れ、家に帰ったほうがいいのだがリーナは寝てしまっていて動かない。
仕方なくリーナを抱えて帰ることにする。
背中と膝に腕を回し所謂お姫様抱っこでリーナを抱える。
レンに借りた想子で施設の壁を分解して外までの直通の道を作る。
そしてわずかばかり回復した自分の想子で『飛脚』を使いシールズ家への帰路に就く。
少し施設から離れたところで一度振り返りある魔法を放ち俺たちはシールズ家へ帰って行った。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
――――『速報が入りました。
先ほど午後―時――分ごろ―――州の海岸でスーパーセルが発生しました。
これにより辺りの建物が全て倒壊し、その一部を占拠していた組織―――が壊滅したそうです。』
零は蓮玉の想子を借りている時どの魔法においても、干渉力と魔法の規模などは零として本来の実力を発揮できません。もちろん『最小分離』もです。
『最小分離』以外は蓮玉が魔法を使うのと同じ実力になります。
想子と魔法演算領域が噛み合ってないからです。
蓮玉が零の身体を使ったときに『最小分離』などの魔法がいつも通りに使えるのは演算領域なども蓮玉のものに変わっているからだと思ってください。
もうそろそろUSNA編も終わっていくつもりです。
感想批評、誤字・脱字などお待ちしています
お読みいただきありがとうございました。