すでに執筆は終わっていたけど投稿するのを忘れていた戦犯。
忙しかったというより書き終えてること自体を忘れてました。
「お待ちしておりました」
駅を出ると四葉家の執事らしき人がいかにも高級そうな車とともに待っていた。
黒塗りの車体にスモークのかかった窓ガラス。しかもこれ外からだけじゃなく中からも見れないやつだ。
やばい雰囲気しかないぞ。下手なこと言ったりでもしたら殺されるんじゃないか…?
そんなことを考えていたらきりがないからすぐに思考を切り替えて悟られないようにして車に乗り込む。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
かれこれ一時間経っただろうか、やっと四葉家に到着した。
道中何度も結界を通った感覚があった。警備が厳重すぎる。情報を漏らさないようにしすぎじゃないのか。てかその中に俺が入っていっていいのか。二度と出られなくなるとか本当にないんだろうな。不安だ。
車から降りると運転をしてきた花菱という執事さんにあの、と声をかけられる。
「本日は別の来客があり当主は先にそちらを対応するとのことで誠に失礼ですが大葉様には先に検査を受けて頂きます。なので今から案内するのはそちらの施設になることをご了承ください」
丁寧な一礼と共にそんなことを言われる。一瞬何のことか分からなかったがそういえば招かれたのは俺で招いた当主からの挨拶が無いのは確かに失礼か。
特に気にすることでもないから了承の意を伝える。
気にすることでもないというか会わないで済むなら会わずに帰りたいというのが本音なのだがそんなことを言えるはずもない。
では、と顔を上げた花菱さんが目の前の武家屋敷風の日本家屋へ先導してくれるのでそれについていく。
豪邸と言うには少しばかり小さいがそこでも十分に広いそこに入ると、沢山のメイドさんと執事さんに出迎えられる、といったこともなく、道中ですれ違った人たちに会釈される程度で案内は進んでいく。
お屋敷を抜けて着いたのは先ほどまでの日本家屋と違ってコンクリートなどで建てられたまさに研究所といった雰囲気の建物だった。
そこで研究員さんに案内が引き継がれて検査着に着替えとうとう検査が始まった。
大小合わせて十をゆうに超える機械と対面し検査は進み、自分の服に着替えるまで体にナイフを刺されるようなこともなく検査は無事に終わった。
ひとまずは安心したが、…それにしても長かった。
本当に数が多かった。病院に普通に置いているような大型の身体検査の機械や魔法技能に関する測定装置といったある程度オーソドックスなものからなんでこんなものまでと思うような珍しいものまで使っていった。
その結果全部終えたのは数時間が経った頃だった。
再び屋敷に案内され待合室のような部屋で少し待つように言われる。
程なくして初老の執事さんを連れた女性が入ってきた。
察するに、というか順当にこの人が四葉家当主の四葉真夜だろう。
正直イメージと全然違った。世界でも恐れられるあの四葉家の当主だからさぞ恐ろしい人なのだろうと思っていたが実際は妖艶さを持つ綺麗な人だった。
だが何か様子がおかしい。部屋に入ってこちらを見るなり彼女は固まってしまった。困惑して彼女の後ろに控える執事さんを見るとそちらは急に固まってしまった主に怪訝な目を向けている。
どうしたのかといった雰囲気で彼は固まったままの彼女に声をかける。
そこでやっと気を取り戻した彼女はまだ少し戸惑ったようにこちらに声をかける。
「はじめまして、大葉零さん。
私は四葉家当主の四葉真夜と言います」
立ち上がって挨拶を返す。
向かいの席に座った真夜さんが葉山、と呼ばれた執事さんに紅茶を用意させる。
葉山さんが紅茶を用意する間言葉を発することなくお互い無言ですごい気不味かった。なにせずっと真夜さんがこちらを真顔でじっと見つめていたのだ。
なにか悪いことをしたわけでもなにか責められていた訳でもないが真夜さんが美人なせいか凄まれているような感覚だった。
それは紅茶が出てくるまでのたった一、二分のことだったがすごく長く感じられた。
運ばれてきた紅茶に一口つけてようやく真夜さんが口を開く。
「先程は挨拶もできず申し訳なかったわ。改めて四葉家へようこそ零さん。
さて、今日は貴方の身体検査、いえ調査といったほうが正しいかしら。そのために来てもらいましたがその理由などは知っているかしら」
「はい、俺に四葉の血が流れているから呼ばれた、とは聞いています」
「そう、それ以外のことは?例えばなぜ貴方が四葉で暮らしていなかった、とか」
首を横に振り答える。確かにそういった母さんの事情とかは考えもしなかった。
まあ特に気にしなかったということもあるけど。
「そう。ならその辺から話していきましょう。
まず貴方の苗字でもある『大葉』家は四葉から追放された家系です。第四研時代に遡るのだけれどその頃はまだ大葉家は存在しなかったわ。
その頃は優れた魔法師を生み出すことが最優先の課題だったのだけれどある時魔法師としての素質を持たない子供が生まれてきたわ。それが貴方の曾祖父にあたる人よ。
当時はその子供は必要ない、使えないからと殺処分することが大半の意見だった。けれど当時の当主であった父親は殺すのは忍びない、と生かしました。
当然四葉家内での立場は低く四葉の情報を一切漏らさない、という条件で四葉を去る権利を与えました。
その結果作られたのが大葉家というわけです」
話し終え紅茶に一口つけてこちらを見ると真夜さんは面白そうに微笑む。
「あら、思ったより反応が薄いわね。
そこまで知りたいことでもなかったのかしら」
バレた。正直そこまで自分の家系のルーツとか興味はなかった。けど機嫌を損ねるとなにをされるか分からないし間違っても顔には出さない。
「そんなに警戒しなくてもいいのよ。別に取って喰おうというわけではないし。
まあ、とりあえず今日はこのくらい話したら十分かしら。何か聞きたいことはある?」
警戒しなくてもいいと言われましても。四葉家という名前自体が警戒を煽るものでもあるのだし仕方ないだろう。
特に聞きたいこともないのでいえ、と首を横に振って応える。
「あらそうなの。ならこちらから質問はいいかしら?
お母様のことはこちらもある程度知っているのだけれどお父様は殆ど情報がなくて。
零さんは何かお父様のことを覚えてるのかしら?」
何故だろう、少し背中がゾワっとした。
だけど部屋の中で何か変わったようなものはない。
気のせいかと切り替える。
「何か覚えているどころか父は俺が生まれる前にいなくなってしまったそうで何も分からないんです」
「そうですか。それなら仕方ないですね。
なら今日はこれでお終いです。
他に何か気になったことがあるなら答えますけど…」
やっと終わりか。何もないから首を振って応える。
早く帰りたい。そんな気持ちを極力隠して再び案内してくれる花菱さんに連れられ帰路につくのだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
四葉家の書斎に今日行った零の検査の結果を示す資料が並んでいる。
身長、体重から骨格や筋肉量、身体に関する異常はないか、さらには想子量や魔法の発動速度などの魔法技能までありとあらゆるデータが揃っている。
身体は健康そのもの。魔法師としての資質も軒並み高い数字を出している。精神干渉魔法に対する耐性も高く精神干渉魔法の使い手である可能性が高い。
大葉零個人における情報を全て含んだ報告書は彼が魔法適性の高い普通の人間であるということを示している。しかしその中に一つだけ極めて異常なものがあった。
「まさか二種類の想子パターンが検知されるなんて」
微弱ながら零の想子パターンのなかに全く別の想子パターンが検知されたのだ。
これは極めて異常なこと。本来なら一人が発する想子パターンは一つの形のみ。
それによって魔法を使った人間を特定することもできるし、親族との形も似通うためある程度なら家系を知ることもできる。
しかし今回零から検出されたもう一つはそういった関連性が見受けられない全く別の想子パターン。
さらにそのことに頭を悩ませる真夜の手元には一つの資料。
そこにはある人物についての情報が記載されている。驚くことにその人相は零とそっくりどころか瓜二つのものだ。
それは数十年前に突然四葉家に侵入した青年。
その時の傷が原因で死んだとみられる彼の死体は四葉家の敷地内で確認され回収されている。
零の年齢を考えると彼の子供ということはありえない。なにせ彼が四葉に侵入したのは零が生まれる以前、それこそ真夜が十代の時なのだ。
ならば二人の共通点はどこからやってきたものか。
そして真夜が視線を移した先には一つのCAD。
青年が持っていたそのCADは死体とともに発見され四葉はそれを解析しようとした。
しかしどういうことかプログラムにロックがかかっており終ぞ解析することはできなかった。わかったことといえばCADに使われていた材料が、当時主に大漢で使われていたものだということぐらい。
彼に関する情報は四葉の情報網を以ってしても少なく、得られたのは死体を解析することによって得られるデータと監視カメラに捉えられている分の使用魔法、そして実際に相対した当時の執事と真夜によるもののみ。
そのうちの一つ。青年の想子パターンについて零の調査と複合した驚くべき結果が出ている。
なんと零の想子パターンの片方と彼の想子パターンが99.9%の一致性を示したのだ。だが二人の間には遺伝子上の一致性は全く存在していない。
ならその一致性はどこから来たのか。
最も手がかりを得られそうなのは零の父親だが零は全く知らないという。戸籍情報を調べても彼の母親に結婚した事実はない。
九ノ瀬、或いは五芒ならば何か知っているかもしれないのだが彼らがそれを教えるかは別問題だ。彼らは金や物では動かない。教えてもいい、教えておくべきことならばこちらに情報が来るがそうでなければ決して口を開かない。
そしてその線引きがなんなのか分からないため彼らに頼る以外の方法を考える必要がある。
そうなると今最も有力なのは侵入者が持っていたCADだ。ロックを外すには何かしら鍵が必要なことは分かっている。零に見せれば何かしらの情報が得られる可能性が高い。
十数年前四葉家にやってきた青年と同じ顔をした得体の知れない少年。
調べても全然情報を手に入れられない。なにせ幼少期からつい先日までUSNAにいたのだ。流石にあちらの事については詳しいことまで調べられない上にそれ以前でさえ九ノ瀬家が外に出さないようにしていたため情報の絶対量が少ない。
青年の情報にせよ零の情報にせよ得られるなら僥倖。
彼から知り得る情報のどれだけが自分の求めているものか。その事に想いを馳せる真夜の口元には薄っすらと笑みが浮かんでいた。
ちなみに続きは一切書いていないので次回の更新も不明。
もしかしたら去年のうちに思いついた(思いついてしまった)SAOを先に書いてしまうかもしれない。
自分の計画性のなさに呆れてしまう。
お読みいただきありがとうございました。