転生一回目編もあと1話の予定です。それが終わればやっと原作突入ですかね。
あと、ちなみに今回は蓮玉君出てきません。
旧四研の施設内にある病室で真夜は目を覚ます。
ああ、また自分は倒れてしまったのかと考えながら先ほどから聞こえるスースーという音の方へと視線を向ける。
するとそこには椅子に座って眠っている深夜がいた。
真夜と深夜が会うのは一ヶ月ぶりだ。
ずっと喧嘩をしていたような状態だったがそれでも心配して見舞いに来てくれたのだろう、と考えていると深夜が目を覚ました。
「あら、もう起きてたの真夜。身体は大丈夫かしら?」
「ええ、おかげさまでね」
深夜は真夜の体調を確認するとすぐに部屋の外へと向かう。
恐らく使用人か英作叔父様に後のことを任せ、また研究室に篭って無茶な実験を繰り返すのであろう。
そうなれば次会えるのは何時になるのかも分からない。
もしかしたら次会うまでに私の心が変わっているかもしれない。
そんなことを考えた真夜はいつもの別れ際のように悲しそうな顔をした深夜を呼び止めようとする。
「ま、待って姉さん!」
いつもならこの呼び止める言葉すら出てこないのに、何故だか今日はなんの抵抗もなくすんなりと口に出せた。
「どうかしたの?」
不思議そうに振り返った深夜は尋ねる。
深夜の言葉を聞くと堰が切れたように真夜の口から次々と言葉が溢れてくる。
「ご、ごめんなさい!三年前あんなこと言っちゃって。」
深夜は驚いた顔で真夜を見るが、俯いている為に深夜を見れていない真夜は胸の内にある言葉を口に出していく。
「三年前姉さんは私の心が壊れてしまう前に、私を助けるために私に魔法を使ったんだって分かってた。分かってたのに私は姉さんにひどいことを言ってしまった。
そ、それをずっと謝りたくて……」
泣きながら自分の思いを伝えた真夜が顔を上げると深夜も涙を流しており真夜に抱きついて謝っていく。
「私こそごめんなさい。
いくら心が壊れそうだからと言ってあなたの心を全て書き変えてしまうなんて。あの時のあなたの言うとおり人は記憶の中の経験から形作られていく物、それを全て書き変えるということはその書き変えられた人は死んでしまうも同然よね。
それにあの時私が魔法をもっと細かくコントロール出来ればあんなことには…」
「ううん、悪いのは私の方。
記憶が書き変わっていたとしても姉さんとの楽しかった記憶はなくなったりしないはずなのに…」
真夜がそう言うと深夜は驚いたように真夜と顔を見合わせる。
「…ど、どうしたの姉さん?」
深夜の急な行動に困惑したように真夜は尋ねるが深夜には聞こえていないらしくブツブツと何かを呟いている。
「姉さん?」
「あ、ごめんなさい。どうかしたの?」
真夜が再度尋ねると深夜は気付いて返事をする。だが、まだどこか上の空だ。
「どうかしたって、姉さんこそどうかしたの?
さっきからなんか考え事してるようだけど。」
ついさっき真夜の言った言葉がどこか引っ掛かり深夜はそのことを考えていた。
しかしそのことを言えば真夜は心を壊してしまうかもしれない。しかしこのことを言わなければなにも分からないままであり、深夜は話し出す。
「真夜、あなたあの侵入者に何かされなかった?
多分あなたの記憶が元に戻ってるのよ。さっき『楽しかった記憶』って言ったでしょ?」
真夜はそれを聞くと俯き考える素振りを見せる。
少しすると驚いた様に顔を上げる。
「ほんとだ、記憶が元に戻ってる。
……でもあの事件の記憶は元のままよ?」
真夜は自分の記憶が元に戻っていることに驚きながらもつい先ほどまで深夜と喧嘩していた原因である三年前の『例の事件』の記憶は元に戻っていないことに気付き、少し疑問に思い深夜に言ってみる。
すると今度は深夜が驚いた顔て話す。
「それはあの事件の記憶だけ除外して記憶を元に戻したのよ。
そんなこと、今の私でも難しいことなのに。
…で真夜、あの侵入者に何をされたの?」
深夜の推測に納得しながら聞いていた真夜だったが次なる深夜の質問で自分に何があったのか、なぜいまここにいるのかその原因を思い出してしまう。
「べ、別に変なことはされなかったわよ!?
触れられた時にちょっと頭が痺れる様な感覚はあったけど。」
真夜は咄嗟に真実だが嘘でもある言葉で誤魔化す。
しかし声は上ずっており顔も頬のあたりが真っ赤になってしまっているため深夜は怪しむ様に真夜を見る。
「それよりも姉さん、さっきあの侵入者って言ってたけど今回侵入してきたのってあの人だけなの?」
深夜の視線から逃げる為に話題を変えようとする真夜だが未だに顔が赤くしかもそれに気付いていない。
「え、ええ。今回侵入してきたのはあなたの部屋までやってきたあの者一人だけだったわ。
しかもすぐに何処かへ逃げてしまったから捕らえることはできなかったわよ。
あとは……そうそう、今回の戦闘での死者はゼロよ。
橘さんが片手片足を失う以外は誰も怪我すらしてないわ。
まあ、想子の消費が激しくてフラフラになっちゃった人もいるけどね。
それよりも真夜、あなた大丈夫?顔が真っ赤よ?」
聞かれたこと以上のことを話した深夜は多少は薄くなったもののまだ紅潮している真夜をみて尋ねる。
「あ、ごめんなさい。すこし疲れちやったみたい。
ちょっと休ませてもらってもいい?」
真夜がそう言うと真夜のことが心配な深夜は部屋を出ていこうとする。
少しだけ心配で悲しそうな顔だが以前までとは明らかに異なる心情だとと分かる。
その顔は何処か晴れやかで何か吹っ切れたようだった。
それに気付いた真夜の顔は自然と綻ぶ。
「それじゃあ真夜、また明日。」
「うん、また明日」
短い挨拶を交わし深夜は真夜の病室を後にした。
◇◆◇◆◇◆◇◆
深夜が去った後の病室で真夜は枕に顔をうずめ羞恥に悶えていた。
その顔は深夜と話していた時よりもさらに赤く染まり、シューと音を立てて顔から煙でも出るのではないかというほどだった。
それも仕方ないだろう。
何せ初めて会った男に出会って間も無くしてキスをされたのだから。
しかもキスをされただけなら、まだその恨みと少しの恥ずかしさだけで済む為に深夜に話していただろう。
だが、あの時は途中から自分から舌を絡めにいってしまった為言えなかった。
「(たって仕方ないじゃない。
なぜかあの時はいきなり気持ち良くなってきて身体が勝手に動いちゃったんだもの…)」
それを深夜に言ってしまえば深夜は一家を上げて彼を探し、見つけ何をしたのか尋問した後、殺してしまうに違いないと思い言えなかった。
しかしいつもの真夜ならそんなことを気にも留めずに言っていただろう。
だが今回は言えなかった。
そこに潜む薄っすらとだが確かにある感情に気付かないまま。
そして真夜がその気持ちに気付き自覚していくのはまた別のお話。
二人の心情を書くのが難しい…
なるべく原作と矛盾が起きないようにはしたつもりです。
あと、最後に続きがあるみたいな書き方をしていますがその予定はありません。
だって難しいもん。
ついでに次話は蓮玉君出します。
お読み頂きありがとうございました。
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