僕と同居人と召喚獣   作:迷単底

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つか……れた……

さて、ラストは咲夜さんとなってます

多分過去編で一番キャラが崩壊してる話

時系列は高校1年の夏休みです


過去編:咲夜

咲夜side

 

「おはようございます明久様。朝食の準備が整いました」

 

私はこの春から新しく仕え始めた雇い主の息子…吉井明久様に朝食の準備ができた旨を伝える。

 

「え……もうそんな時間?」

 

「はい、もう9時ですよ。いくら夏休みだからといってあまり遅くまで起きてるのは感心できませんよ?」

 

「一応勉強していたんだけどね……」

 

そう言って明久様は起き上がる。

 

「それでもです。体調を崩してしまったら元も子もないですよ?」

 

「はいはい……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「咲夜ー、そういえば妹紅とアリスは?」

 

朝食の席、明久様はご友人であり同居人である2人の姿が見えないことに疑問を抱いたようで質問してくる。

 

「2人とも今日は遊びに行くと言ってたのを昨日言ってましたよ」

 

「ああ…そういえばそうだったね」

 

あの2人はどこからどう見ても明久様に好意を抱いている。数ヶ月一緒に暮らしていればすぐに分かるというのに、明久様は全く気付いていない。

同じ女性として少し、いやかなり不憫に思える。

 

「とすると今日は暇だな……。咲夜、たまには2人でどこかいかない?」

 

「明久様と一緒に……ですか?」

 

「うん。よく考えたら咲夜と二人きりで遊びに出かけることなんてなかったしね」

 

「いえ、私は仕事がありますので……」

 

男女二人きりで出掛けるなんて普通に考えたらデートだ。

そんなことしたらあの二人に申し訳ないので断っておくことにする。

 

「えー……。じゃあなんかお話ししてよ」

 

「お話し……ですか?」

 

「うん。今まで仕えてた家で起きた面白いこととかでもいいからさ」

 

まあそれくらいならいいだろう。そう思って了承し、紅茶をいれてお話しすることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「メイドさんも結構大変だったんだね……」

 

「当たり前ですよ。この世に大変じゃない仕事なんてありませんからね」

 

私はそれからいろいろなことを話した。

いきなり作って欲しい料理を指定されて材料が無かったので急いで買い出しに行ったこと、私以外のメイドが全てインフルエンザで一時期すごく大変だったこと。他にもいろいろなことを話した。

 

……あの忌々しいことを除いて

「ねえ咲夜。咲夜ってさ、何か話したくないこと必死に隠そうとしてない?」

 

「…………してませんよ」

 

ドキリとした。なぜこの人はこういうところだけは鋭いのだろう。

確かにアレは私にとって最悪の主だった。思い出すのすら拒否する。

 

「それにそんな話ありませんからね?」

 

私は必死にポーカーフェイスを保ち、取り繕いながらそう答える。

 

「……明らかにつらそうな顔してるしバレバレだよ。まあ、無理に聞き出そうとはしないけどね」

 

私はそんな顔をしていたのだろうか?

そこまで取り乱していたのだろうか?

 

「……そろそろお昼にしようか。今日は久々に僕が作るよ」

 

時計を見ると12時を少し過ぎたあたり、明久様は立ち上がってそう言うが私はそれを制する。

 

「いいですよ。それは私の仕事なんですから私がします」

 

「え、でも……」

 

そう言うと私は明久様に背を向けてキッチンへ向かい、料理を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は鍋の火加減を見ながら野菜を切る。

そんなことをしててもなぜかあの男のことが思い出されてしまう。

それだけでムカムカする、イラつく、どうしようもなく体が怒りで支配される。

 

「……咲夜、なんでそんなつらそうな表情で料理してるの?」

 

「……特になんでもありませんよ」

 

「はぁ……とりあえず座ってて、後は僕がやるから」

 

そう言って明久様はキッチンに入ってきて私の包丁を受け取ろうとする。

しかし私はそれを拒否する。

 

「さっきも申し上げましたとおり、これは私の仕事です。明久様は座ってお待ちください」

 

「嫌だ」

 

明久様はきっぱりとそう言うと私から包丁をするりと奪いとる。

 

「咲夜はさ……何でもかんでも一人で抱えすぎなんだよ」

 

「そんなこと……」

 

ありませんよ、とは言い切れなかった。

 

「ここはさ、僕の好意に甘えてよ。それくらいいいでしょ?」

 

「でも……」

 

「とりあえず座ってきて。後は僕がやっとくから」

 

「…………はい」

 

私はしぶしぶといった感じでそう答えたのだった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして明久様がお出しした料理を見て私は素直に驚いた。

 

「意外ですね……」

 

そう、あまりにも上手だったのだ。

私のものと遜色ないくらいに。

 

「まあ咲夜が来るまでは僕が料理担当だったからね」

 

「てっきり私は誰も料理できないから私が雇われたのだと思ってましたよ……」

 

「一応料理くらい出来るからね。母さんや姉さんはほとんどできないから僕や妹紅がやってたんだよ」

 

「そうなんですか……」

 

「それよりも冷めないうちに食べようか」

 

「そうですね」

 

そう言うと私たちはいただきますと言って料理を食べ始める

 

「美味しい……」

 

そして私は久しぶりに食べる他人が作ったご飯にそう言うのだった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昼食をとった後、私は後片付けや皿洗いをやっていた。明久様はこれもすると言ってたが、流石にこれまでもやらせるわけにはいけないと思い、私がやっている。

 

「咲夜、そういえば他に面白い話ってない?」

 

「お昼の続きですか……、ほとんど話しつくしましたよ」

 

「えー……、じゃあ同僚さんから聞いた話でもいいから」

 

「……どうしてそこまで聞きたいんですか。メイドに興味でもあるんですか?」

 

さすがにこれは聞きすぎではないだろうか?

そう思いながら私は淡々と答える。

 

「ちょっ、違うよ!僕は単に咲夜と親交を深めたいだけで」

 

「……なぜそこまで私に?」

 

「いやほらさ、咲夜とは高校卒業まで一緒に暮らすんだし知っておいて損はないし」

 

「……そんなことを言った主は今まであなただけですよ」

 

私はそう静かに呟く。

この人になら話してもいいかもしれない。

あの主のことを……

 

「ん?今何か言った?」

 

「いいえ何も。それよりも話でしたらありましたよ。昔の同僚から聞いた話ですが」

 

「え、どんなの?」

 

「そうですね……、あれは確か三年ほど前に聞いた話だったでしょうか」

 

そして私は作業の手を止めずに話し始める。

 

「ある大金持ちの家に住んでいた1人のメイドの話です」

 

 

 

「そのメイドはどんなことでもそつなくこなし、主人のお気に入りで、特別に扱われてました」

 

 

 

 

「そしてそのメイドも主人のお気に入りということをとても嬉しく思っていたそうです」

 

 

 

 

「しかしある夜、その主人はお客様と遅くまで酒を飲んでました」

 

 

 

 

「普段ならもう寝ている時間ですがたまたまそのメイドは起きていたそうです」

 

 

 

 

「そして明かりがついている主人の部屋が気になって覗いたそうです」

 

 

 

 

「そして主人はお客様にある言葉を言ってました」

 

 

 

 

「『メイドってのは金持ちからしたらステータスだ。質の良いメイドを持っているだけ誇れるもんなんだ』」

 

 

 

 

「『だから主人はメイドを騙し、縛り付けとかなきゃいけねえ』」

 

 

「『メイドってのはそういう価値のある物なんだからよ』」

 

 

 

 

「メイドは知っていました。主人は酒に強く、あれくらいではほとんど酔わないと」

 

 

 

 

「そしてメイドは絶望しました。今までのあれは全て嘘だったのかと」

 

 

 

 

「そして……程なくしてそのメイドは辞表を出し、フリーのメイドとなったそうです……」

 

ギュムッ

 

「明久様?」

 

私は誰かから後ろから抱きつかれる。

いや、誰かというまでもない。

明久様だ。

 

「咲夜……それが君の……過去なのかい?」

 

「……いえ、あくまで同僚から聞いた話ですよ」

 

「じゃあなんで……なんで泣いてるの?」

 

そして私はそこまでして気づく。

目から何か熱いものが流れていることを。

 

「……ちょっとばかし感情移入してしまっただけです」

 

「そう……それじゃあなんでそんなに悲しそうなの?つらそうなの?悔しそうなの?答えてよ!」

 

「……明久様には関係ないことです」

 

「関係ないことなんてないよ!!」

 

私は耳もとで叫んだ明久様の声の大きさにビクンとなる。

 

「咲夜は……咲夜は僕たちの家族だ!物なんかじゃない!」

 

「……」

 

「だからさ……そんなに悲しそうな顔しないでよ。悲しみくらい僕に受け止めさせてよ。僕にだってそれくらい出来るんだからさ……」

 

私は思わず振り向いて明久様と抱き合うかたちになる。

なんでこうしようと思ったのか自分でもわからない。

 

「好きなだけ愚痴りなよ、怒りなよ、そして思いっきり泣きなよ。僕はどんな時でも君の感情を受け止めてあげるからさ」

 

そう言って明久様は抱きしめる強さをより一層強くし、頭を撫でてくれる。

 

「明久様……すいませんが少し……胸をお借りしてもよろしいですか?」

 

「僕のでよければいつでも、どこでも、いくらでも貸すよ」

 

その言葉で何かがフッと切れ、涙が溢れ出てしまう。

 

 

 

「嫌だった……、私を物として扱ってたことが」

 

 

 

「悔しかった……、ちゃんと人としてみてもらえなかったことが」

 

 

 

「辛かった……、誰にも打ち明けられなかったことが」

 

 

 

「もっと早く……もっと早くあなたみたいな主人に……人に……」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーーーーー会いたかった」

 

 

 

 

 

 

 

そしてそこからのことはあまり覚えていない。

 

 

ただ、頭と背中を優しく撫でてくれた温かい手のことだけは、鮮明に覚えていた……

 

 

 

 

 

 

 

「すいません……みっともない所をお見せしてしまって……」

 

「いいさ、別に。誰にだって思いっきり泣きたいときがあるんだよ」

 

泣き終わった後も明久様は優しく頭と背中を撫でてくれる。

その手つきはいやらしいものではなく、むしろ優しく、本物の親のようなものであった。

 

「明久様……ありがとうございます、ここまでしていただいて」

 

「いいよ別に。それにさっき言ったじゃん、僕たちは家族だって」

 

「家族……」

 

「うん、一緒に暮らしてるんだ。それならもう『他人』なんかじゃないよ。僕はそう思うね」

 

私はその言葉に目頭が……胸が熱くなる。

 

ああそうか。きっとあの2人もこんな感情を抱いたのだろう……

 

 

だからこの人を好きになったのだろう……

 

 

今なら分かる、いや、分かってしまったのだから……

 

「明久様……今度、どこかに遊びに連れてってください……」

 

私は明久様の胸に顔をうずめながらそう言う。

 

「ほえ?どうしたの急に?」

 

「さっき明久様が言ってたじゃないですか……二人でどっかに遊びに行こう、って」

 

「ああ……言ってたね」

 

「よろしい……ですか?」

 

「うん、もちろん!」

 

私はその答えを聞くと顔を上げて明久様と目をあわせる。

今の私の顔は涙でぐしょぐしょだろうし、恥ずかしさで真っ赤だろうし、他にもいろいろな感情が混ざっているだろう。

でも、私は今までで一番の笑顔ができると確信できる。

だから、その顔を絶対に見て、忘れないでほしい。

 

 

 

「約束…………ですよ?」

 

私はそう笑顔で言い、心ではあることを思う。

 

 

 

 

 

明久様……

 

 

 

 

 

私はこれから先……

 

 

 

 

 

ずっとずっと、ずーっと……

 

 

 

 

 

あなたの隣にいたいです

 

 

 

 

 

 

 

この想いが絶対に変わりませんように、と……




さて、次回からは清涼祭編に入ります

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