次回からは強化合宿編、そして新同居人登場の転校生編となります
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明久side
そして僕はいま、撮影会場となる如月ハイランド内での教会でタキシードを着て咲夜が来るのを待っている。
やはりウエディングドレスともなると、着るのに時間がかかるのかな?
「すいません、お待たせしました」
そう入り口の方から咲夜の声がしたので振り向くと、そこには純白のウエディングドレスに身を包んだ咲夜がいた。
「あの……どうですか?」
「…………ん、ああ、似合ってるよ」
正直似合いすぎていて少しどころではなく見惚れてしまっていたが、それは秘密にしておく。
「明久も似合ってますよ。そのタキシード姿」
「ありがと」
『はーい、それじゃあ撮影始めてもよろしいですか?』
するとそこでカメラマンの声がかかる。
「大丈夫ですよ」
「私もです」
『分かりました。じゃあポーズですがまずは……』
そうして何枚か写真を撮っていく。
だけどその内の何枚かはとても恥ずかしいポーズのものもあった……
「ふう……そろそろ終わりかな?」
僕がそう思ってると……
『じゃあ最後はキスシーンとりますね』
いきなり超弩級の爆弾が落ちてきた。
「んなっ!?」
「キスですかっ!?」
僕も咲夜も驚いて素っ頓狂な声を出してしまう。
「……えっと、どうする?」
「さすがにここまでやったのにキスの写真は違う人というのはおかしいでしょうし……」
でもキスというのはハードルが高いと思うんだけど……
『あ、どうしても無理ならフリでもいいですよ』
「あ、フリでもいいんだ。なら良かった……」
僕はそうホッとした声で言う。
しかし咲夜の顔はムッとした顔になっている。
「えっと……どうしたの、咲夜?」
「……いえ別になんでもありません」
『あ、すいませーん。そろそろいいですか?』
「あ、はーい!」
うん、さすがにこれ以上待たせるわけにもいかないだろう。
そう思って咲夜の肩に手をかけて顔を近づける。
「あ、明久。よろしかったら目を瞑っていただけませんか?その方がリアリティーがあると思うので」
「え?ああいいよ」
そう言って僕は特に何も考えずに目を瞑り、顔をギリギリまで近づける
『じゃあいきますよー。3…2…1、ハイチーズ』
カシャッ
チュッ
そしてシャッターがきられると同時に唇に何か柔らかい感触がする
「えっと……咲夜、今のって……」
「ふふっ、なんのことですか?」
そう言って誤魔化す咲夜の顔はリンゴみたいに真っ赤になっている。
『はい、お疲れ様でーす』
「あ、私は着替えてきますのでまた後で会いましょうね」
「え、あ、そうだね……」
その後何を聞いてもはぐらかされ続け、食事やケーキの味は記憶に残ることは全く無かった……
「明久、今日は楽しかったですね」
「そうだね」
あの後は特に姫路さんたちに見つかることはなく、いくつかアトラクションを楽しんだ後、そろそろ頃合いなので帰ることにした。
「ん?あれって雄二じゃない?」
「あ、本当ですね」
遠くを見ると走ってる雄二がいた。
近くには霧島さんがおらず、その手には女性物のバックとヴェールがあった。
「あれ?雄二どうしたの?少しボロボロだし」
「それに翔子もいませんよね?何かあったんですか?」
「おうお前らか。特に何もねえよ。それよりも翔子見なかったか?ちょっとはぐれちまってな……」
雄二は少し息を切らしており、かなり走ってたことがうかがえる。
「いや、特に見てないよ」
「そうか、じゃあな。あとあいつ見つけたら連絡でもくれ」
そう言って雄二は再び走りだそうとし、その後ろ姿を見ながらアドバイスをする。
「雄二!少しは自分の気持ちに正直になってみなよ!」
「……おう!」
そう言って雄二は出口の方へ走っていった。
「……何があったんでしょうね?」
「さあ?でも分かることは僕たちが簡単に手出ししたらいけないってことだね」
あいつがあそこまで走って霧島さんを探してるってことは、間違いなくなにかあったんだろう。
でも僕はあいつが自ら助けを求めない限り助けない、いや、助けてはいけない。今回はそう思うのだ。
「明久……今日は誘ってくれてありがとうございました」
「ん?別にいいよ。咲夜が楽しめたなら」
もともと咲夜の仕事のガス抜きが目的だったんだし
「はい、おかげさまでとても楽しめました。だから……」
そう言って咲夜は一旦言葉を区切る。
「今日のこと、絶対に忘れませんね」
「おおげさだなあ……」
「そんなことありませんよ?だって私の……」
しかしそこから後は周りの音がうるさくて何も聞こえない
だけどその顔は真っ赤に染まっている
「さ、早く帰りましょ。夕飯の支度がありますし」
「はいはい」
そう言って僕は咲夜に腕をひかれながら帰路へ着いたのである……
雄二side
俺は証拠を見つけると、息を整えながら駆け寄る
「翔子!」
「……雄二」
そう翔子が泣きそうな顔で言ってくるので、言おうと思ってた言葉が口から出てこない。
「……帰るか」
そして翔子のカバンを担ぎ直して駅に向かって歩き出す。
「……雄二」
人気のない道を歩いていると翔子が小さな声で俺を呼んだ。
「……なんだ?」
「……私の夢、変なの……?」
「……確かに、一般的な話をすればお前の夢は変だな」
俺は翔子にあくまでも一般論としてそう話す。
「………ッ!」
「けどな、翔子」
「…………」
「俺は、お前の夢を変だと思ったことは無い。お前の夢は、胸を張れる立派なものだと俺は思ってる」
「たった一人の人間のことを十年近くもずっと思い続けてるなんて、普通はできないことだからな」
会場で拾っておいた物を翔子に被せる。折角の体験なんだ、これくらいの思い出はあってもいいはずだ。
「……これ、さっきのヴェール……」
翔子はヴェールを手で押さえて、驚いたように顔を上げた。
「あとお前が日頃から言ってる俺への告白への返答を改めてしてやる」
その言葉に翔子はビクリと動く。
……これはあいつの言葉を受けて、ほんの少しだけ前に進もうと思った結果だ。
「俺はお前と付き合う気はさらさらない」
「……」
翔子はその言葉に悲しそうに黙り込み、目を伏せるが俺はそれを気にせずに続ける。
「だが……いつか……いつか俺が自分の答えを出せるまで待っていてくれ」
「……え?」
「まあその答えが出るまで何十年もかかるかもしんないけどな」
自分で言っていて恥ずかしくなるな……
ああ、あとあれも言っておくか
「それと翔子」
そう言うと手に持ってる翔子のバックを少しあげる
「弁当、旨かった」
「……あ……私のお弁当……気づいて……くれたんだ……」
「早く帰るぞ。遅くなると誤解される可能性がある」
「……雄二」
「特におふくろには注意しねぇとな、アイツはいくら言っても」
「雄二っ!」
そして、ここ最近では聞いたことのないほどの大きな声に思わず立ち止まる。
「……なんだ?」
極めて冷静を装ってはいるつもりだ。少し振り返ると、自らの手でヴェールを持ち上げ、
「ーーー私、やっぱりなにも間違ってなかった」
そう、満面の笑みで翔子は言った。