明久side
「明久、お疲れ様」
「ああ、ありがとね」
試召戦争が終わると近くにいたアリスが用意してくれた椅子に座る。
正直言うとさすがにあれは疲れた。
といっても後半は楽だったけどね……
「さて、後はみんなが来るのを待つだけなんだけど……」
「そろそろ来るんじゃないの?ほら、足音も聞こえてくるし……」
アリスの言葉通りこちらに向かってたくさんの足音が聞こえてくる。
バタン
「明久、勝ったんだな!」
「まったく……ヒヤヒヤさせないでくださいね」
そう言ってドアを開けて飛び込んで来ると同時に妹紅と咲夜がそう言ってくる。
「大丈夫だったからいいじゃん別に」
「それとこれとは別だよ」
「負けるとは思ってませんでしたがそれとこれとは話が別です」
「ごめんごめん。それで他のみんなは?」
「ん?もうそろそろ来るんじゃないのか?」
そしてゾロゾロと他のみんなも入ってきて、口々に賞賛の声をもらう。
『すげえよ吉井!』『まさかやってのけるとはな……』『すごいわね、吉井君!』『見たかったな〜、どうやって勝ったのか』
「はは、ありがと。それじゃあ全員集まったことだし戦後対談に入ろうか?」
そう言って姫路さんや島田さんたちを見る。
「あれは無効です!反則なんです!」
「そうよ!あんなの反則よ!」
そうだそうだと相手チームは言ってくる。
「黙っててね?それよりも先生、敗者側のペナルティってなんですか?」
「そうですね……基本的に常識の範囲内であれば勝者側が何でも決めれますよ」
ほう……それは破格の条件だな……
「よし、姫路と島田と清水の処刑だな」
「それじゃあつまらないわよ。もっとえげつないのを……」
「そうですね。なら……」
「……みんな殺気立ってるね」
そう言いながら怪しげな会話を進める妹紅たち。正直怖い……
「「「明久に手を出したんだから当然だ(よ)(です)」」」
「はいはい。言っておくけどこのペナルティ決めるのは僕だからね?」
無理言ったとはいえ僕一人で殲滅したんだ。これくらいはいいだろう。
「分かったよ……。じゃあ言ってやれよ」
みんなは不承不承といった感じだけど、了承してくれる
「くっ、何する気なんですか?」
「吉井のくせに生意気よ!」
「お姉様に手を出すなら殺します!」
「安心して、そういうのはないから」
相変わらずうるさい3人はまだ何か言ってくるが、気にせずに僕は進める。
「僕から出すペナルティは無しでいいよ。考えるのが面倒くさい」
その言葉に両軍からざわつきが止まらない。
「おい明久、さすがにそれは甘すぎるんじゃ……」
そんなみんなの言葉を代弁するように雄二が言ってくる。
「これでいいんだよ。別に」
だけど僕はそう返す。これは僕の本心だ。
「あっち側はの大部分はさ、何が正しくて何が間違ってるかわかってない」
僕は極めて冷徹で低い声で突き放すようにそう言う。
「そうでしょ?そっち側の大部分は僕が清水さんを貶めたからそれに同情だの何だのでそっち側についた」
『な、それは……』
相手のうちの一人がそう言ってるが構わずに続ける。
「反論があるなら聞こうか?いや、それよりもどうして君たちはそんなことを信じたの?僕の何を知ってるから僕を疑ったの?清水さんの何を知ってるから信じたの?答えてみなよ」
相手側は黙り込んでいる。
「言ってあげるよ。君たちは同情とかなんやらで正義の味方ぶってるだけの子供だったんだよ」
『そ、そこまで言うならお前がやってない証拠でも見せてみろよ!!』
そう一人の男子が言ってくる。
証拠か……あれを見せてもいいんだけどな……
「吉井、どうやら意識を失ってた生徒たちの大部分が目を覚ました」
するとそこで西村先生が入ってくる。
しかもこの報告……都合がいいな……
「西村先生、その生徒たちはなぜ意識を失い、誰がやったか言ってましたか?」
「……本来なら言うべきではないんだがな。どうやら白チームに入るのを断ったら暴力を振るわれたらしい。そしてやったのは……姫路、島田、清水の3人だ」
その言葉に両チームがざわつく。
そして僕はさっき質問してきた男子に聞き返す
「……これでも清水さんがやってないって信じるのかい?」
『い、えあ、そ、それは……』
「みんな!信じちゃダメよ!そんなの吉井の策略に決まってるわ!」
島田さんが必死に何か叫んでるがざわつきは止まるどころかさらに大きくなる。
「そ、そうです!きっと吉井君が負けたときの保険にと脅したりして……」
ドン!!
姫路さんの言葉を僕は足を振り下ろした音で遮る。
その音の大きさに全員が黙り込む。
「……いい加減にしろ」
自分で出した声なのにその声に驚いた
こんなにも低く、冷たく、無感情な声が出せるなんて自分でも知らなかった
「……この際だからこんな甘ったるいペナルティにした理由を言うよ」
その声に、全員が耳を傾けている。
「正直言ってさ……面倒なんだよ」
「他人を疑うことしかできない人、嫉妬により他人暴力を振おうとする人、簡単に他人を疑う人……」
「他の人たちもなんだい?かわいそうなお姫様を助ける正義の味方にでもなったつもりなのかい?」
「自分を正義の味方と思っていい気になってたんでしょ?だけど実際は単なる噂と偏見だけで決めてた」
「君たちは自分を正義の味方だと思い込み、何が正しく何が正しくないのかわからない愚かな
「君たちが生きてきた16、7年間はなんだったの?なに学んできたの?なにも学んでないんじゃないの?」
「だから僕はそんな人たちのために考える時間なんて使いたくないんだよ。はっきり言って時間の無駄」
「どうして自分の行動を自分で決めれる人たちが自分の行動を自分で決められないやつらのために罰考える時間を費やさなきゃダメなの?」
「でもあえてペナルティを与えるとしたらこうかな?『さっさと自室に戻って自分が何をやったかじっくりと反省しろ』」
「……少しは君たちがましな人間になるよう、祈ってるよ」
僕はそれだけを言うと部屋から出て行った……
「明久、こんなところでなにやってるんだ?風邪ひくぞ?」
「妹紅か……別に、風に当たってるだけだよ」
僕は芝生の上でゴロンと寝転がっていて、空を見上げていた。
「どうしたの?こんなところまで来て。それよりもよくここにいるってわかったね」
ここは合宿所内で端の方にある芝生だ。普通はこんなところまで探しに来ないと思うんだけど……
「一応付き合い長いからな。こういうことあるとお前は一人でいたがるからすぐわかったよ。それよりお昼ご飯だし一緒に行こう」
そういやお腹が減ったな……
でもなんかみんなと顔が合わせづらいし……
「……僕は後から行くから先に行ってなよ」
「そういうわけにはいかないな」
そう言って妹紅は僕の隣に腰を下ろす。
「明久……さっきのことだけど……」
「……言っておくけど僕は後悔はしてないよ。まあ反省は……してるかな?」
あれに関してはさすがに言い過ぎたとは自分でも思ってる。
だけど言っておいて後悔はしていない。
彼ら彼女らの中には負の方向に変わる人がいても、それ以上に正の方向へと変わる人の方が多いと信じてるからだ。
「……明久らしいな」
「……悪かったね」
その言葉に僕は不貞腐れたように返事をする。
「別に悪い意味で言ったんじゃないからな?」
そう言って妹紅は僕の隣に寝転がってくる。
「お前のその他人にまっすぐと向き合い、何にも臆さずに間違いを指摘できる点、私は好きだよ」
「意外だね……。いつもこういうことすると怒るのにね」
「そりゃそうだよ。そのためにお前が傷つきでもしたら私は悲しいからな……」
「……そう」
「一応言っておくけどアリスも咲夜も同じこと思ってるよ」
僕は思わず隣を見ると、妹紅は優しい笑顔でこちらを見ていた。
「だけど、お前のその他人にまっすぐと向き合うところ……本当に本当に大好きだよ」
「何回も言われると照れるな……」
僕はそう言うと立ち上がり、草を払い落すと妹紅に手を差し伸べる。
「さ、行こうか」
「……そういえばそろそろお昼ご飯だから呼びに来てたんだよな、私」
「自分で言ってたのに自分で忘れてたの?」
僕はそう言いつつも手を掴んだ妹紅を引き起こす。
「誰にだって忘れちゃうときくらいあるって」
そう言いつつも妹紅は草を払い落し、僕の腕に抱きついてくる。
「えっと……妹紅さん?なぜこのようなことを……?」
「ふふっ、いいじゃないか。ここまで探しに来てあげたんだからエスコートくらいしてくれよな?」
「……はいはい、了解しましたお嬢様」
そう言うと僕たちは合宿所への向かって歩き出した