僕と同居人と召喚獣   作:迷単底

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第50話:再来の常夏

明久side

 

『おーい!誰かそこの釘とってくれー!』

 

『暗幕足りないぞ!誰か先生に言って借りて来い!』

 

『ねぇ、ここの装飾って涸れ井戸だけでいいのー?』

 

現在、文月学園の新校舎・旧校舎の3階は肝試しのための改装作業で大いに賑わっている。

 

「それにしてもこれはまた、凄い騒ぎだな」

 

「Aクラスも総出で手伝いしてるものね」

 

「ま、勉強ばっかってのもつまんないしね」

 

そのため、夏期講習に来ている二年生全員がおばけ屋敷作りに動員されている。

 

『吉井ー、このロッカー全部どっか置いといてくれないか?』

 

おっと、僕の仕事か……

 

「はいはい……試獣召喚(サモン)っ!」

 

世界史

 

『2ーA 吉井明久 531点』

 

おお……自分で言うのもなんだけど結構上がったな……

っと、それよりもさっさと運ぶか

 

「よいしょっと」

 

『『『『待てええいっ!!』』』』

 

「ん?」

 

なぜか持ちあげたら待ったがかかったんだけど……なんでだ?

 

『何でお前はロッカー素手でもてるんだ!?』

 

『結構重いわよ、これ?』

 

『たしか三人がかりで運ぶようなもんだぞ!?』

 

いやだって……こうすると倍運べるじゃん?そしたら運ぶ回数は半分で済むし……

ま、それよりもさっさと運ぼうっと

 

「「お前らうるせぇんだよ!!」」

 

しかしそうしようとした時に、Aクラスのドアが開けられて坊主とモヒカン頭の男子生徒が入ってくる。

 

「騒がしいと思ったらやっぱりまたお前か!吉井!」

 

「お前はつくづく目障りなヤツだな……!」

 

「…………?」

 

「おい!何とぼけてんだてめえっ!」

 

「なんか言えや!」

 

「えっと……どちら様で?」

 

「おいてめえふざけてんじゃねえよ!」

 

「常村と夏川だよ!」

 

常村と夏川……誰だっけ?

ん?まさか……!?

 

「覚えてねえってわけねえだろ!?」

 

「おい!いつまでとぼけたフリを……」

 

「誰かー、110番して!」

 

「「おい!?」」

 

おそらくこの二人はストカーだろう。そうなると国家権力の出番だ。僕にはどうしようもない。

 

「おい、吉井!やっていい冗談じゃねえぞ、それ!」

 

「あ、ちょ、すいません。近づかないでもらえます?」

 

「なんでだよ!?」

 

うわ……やばい、本気で気持ち悪い……

ん?気持ち悪い?

ってことはまさか……

 

「まさかあなたたちは……」

 

「へっ、やっと思い出したか」

 

「ったく、思い出させるまでにこんなに時間かけやがって……」

 

「気持ち悪い先輩コンビの常夏コンビ!?」

 

「「待てや!!」」

 

あれ?違ってた?

 

「なんだてめえ!気持ち悪い先輩コンビって!?」

 

「え?そのまんま……ですよね?」

 

「ぶっ殺すぞてめえ!?」

 

「やれるもんならどうぞ」

 

そう言って僕はロッカーを下ろす。

正直二人がかりとはいえ、あの先輩たちには負ける気なんてしない。それにそもそもあの人たちは受験生なんだし、そんな軽々しい真似……

 

「上等だコラ!」

 

「二対一で勝てると思うなよ!」

 

軽々しい真似しようとしてるよ……

受験生……だよね?あの人たち

 

「「死ねやあああああっ!!」」

 

「お断りです」

 

「「ぶべらっ!?」」

 

何のフェイントもなくまっすぐ突っ込んできたので、鳩尾に一発ずつ入れたらK.O.できたんだけど……

弱すぎない?この人たち……

 

「て、てめえ……」

 

「ちくしょう……こうなったら召喚獣でブチのめす!」

 

「「試獣召喚(サモン)っ!」」

 

えー……召喚獣で戦うの?まあめんどくさいけどいいか……

とりあえずロッカー下ろしてと……

 

世界史

 

『2ーA 吉井明久 531点』

 

VS

 

『3ーA 常村勇作 201点』

 

『3ーA 夏川俊平 197点』

 

「「はあっ!?」」

 

驚いてる常夏コンビをほっといて相手の召喚獣を見る。えっと……あれは牛頭と馬頭かな?特徴が『悪役』と『気持ち悪い』だな、きっと。

 

「こ、こうなったら二人がかりで行くぞ!」

 

「か、勝てると思うなよ!」

 

「うっさい」

 

装覇流剣術 九の型〈凍乱(とうらん)

 

とりあえず斬撃と打撃の連打を放ってみたけど……点数差ありすぎてぶっとんだぞ……

弱っちいな……

 

「て、てめえ……!」

 

「はあ……もういいですよね?」

 

「おい明久、どうしたんだ?」

 

「あ、雄二」

 

そしてそこに後ろの方で作業しているはずの雄二が出てくる。騒ぎを聞きつけてやってきたのだろう。

 

「な、て、てめえは昨日の朝の!?」

 

「ど、どうしてここにいやがる!?」

 

「あれ、雄二ってこの常夏コンビと知り合いなの?」

 

突然、常夏コンビが雄二を指差してそう言ってくる。まさか雄二ってこの二人と知り合いなのか?

 

「まあな。昨日の朝、学校に来る途中の曲がり角でこいつらにぶつかってな……」

 

「ほうほう」

 

「そんときにこいつらがくわえていた食パンを台無しにしたとかで因縁つけられてケンカしてな……」

 

「古くさっ!!そして気持ち悪っ!!」

 

食パンくわえてと登校とか……今どきの漫画じゃまず見ないぞ!?しかも(ムサい)男がやるとか……

 

「そんでボコボコにした。それよりなんでこうなってるんだ?」

 

「えっと……なんか知んないけどこの二人がいきなり文句言ってきた」

 

「ほう……どういうことだ、先輩方?」

 

「そりゃあお前らがうるせぇんだよ!俺達への当てつけかコラ!」

 

「夏期講習に集中できねぇだろうが!!」

 

なんだか殺気だっているようにも見える。

受験勉強でピリピリでもしてるのかな?

 

「おいおいセンパイ方。そいつは酷い言いがかりじゃないか?」

 

「そうですよ。ここは新校舎ですから防音設備はしっかりしてますよ?いくら真上の教室とはいえ聞こえないはずですよね?」

 

「「うっ!?」」

 

旧校舎はともかく、この新校舎は試召戦争用に防音設備はかなりしっかりしているのである。

 

「どうせ先輩方は……勉強に飽きてフラフラしているところで俺たちが何かやってるのに気がついて、暇つぶしに八つ当たりをしにきたってところか?」

 

雄二が笑って言うと夏川先輩はバツが悪そうに目を逸らした。

 

「それじゃあ言わせてもらうがよ、吉井に坂本よぉ!お前らは迷惑極まりないんだよ!合宿で盗撮だのがあったらしいじゃねえか!しかも挙げ句の果てには二年のほとんどが停学!俺たちの内申に響くじゃねぇか!」

 

「はあ……盗撮については僕たちはむしろ解決した方ですよ?他当たってください」

 

「あとあんたらの内申には俺たちは関係ないぞ。内申点はあくまでもその生徒の学習態度や学園生活が素になってるんだ。それと二年の停学がどう関係あるんだ?」

 

「むしろあんたらは逆にケンカふっかけてきてますからね……。受験生としての自覚あるんですか?」

 

「てめえら上等じゃねえか……」

 

「まったく……3年生はどうしてこうも厄介なことしようとするのかね……」

 

モヒカン先輩が怒鳴ろうとしていたら学園長が来て呆れながらそう言った。

 

「「「「ババア(学園)長!?」」」」

 

この場にいた全員が驚きの声をあげる。

 

「ストレス発散したいなら、あんたらも肝試しに参加すればいいじゃないかいここで小競り合いをしているよりは有意義さね」

 

「フン!冗談じゃねえ。誰がこいつらなんかと……」

 

「黙りなあんたらに拒否権はないよ」

 

さすがババア長、無駄に歳くってないな。発言に迫力があるな。ただし威厳は無い

 

「この際だからいっそのこと夏期講習の最終日は全員参加の肝試しにするよ」

 

「へえ……面白そうですね」

 

「そういうことて夏期講習の参加者は全員参加すること。以上だよ」

 

ババア長はそれだけ言うと出て行く。

あの人何しに来たんだ……?システム直すとかしなくていいのだろうか?

 

「やれやれ……ま、そういうワケだセンパイ。楽しくやろうぜ?今までのことは水に流して……よ」

 

「お生憎だが、お前らなんざと仲良くやるつもりはねぇよ」

 

「だろうな。俺もアンタらは気にくわないし……ってことで、こういうのはどうだ?」

 

「あぁ?」

 

「二年と三年で驚かす側と脅かされる側にわかれて勝負をするってのは」

 

「二年と三年で役割を分担する、ってことか」

 

「あぁ。それなら仲良くやる必要は全くないだろ?」

 

「悪かねぇな。そんなら当然俺たち三年が驚かす側だよな?俺たちはお前らにお灸を据えてやる必要があるんだからな」

 

「なるほど。散々煮え湯を飲まされた仕返しですね」

 

「違うわ!!」

 

こっちを怖がらせて笑おうということかな?

 

「決まりだな。……ルールはこれだ」

 

そう言って雄二が取り出したのはA4サイズのプリント。 

たしか雄二が昨日考えてた奴だね。

 

・二人一組での行動が必須。 一人だけになった場合のチェックポイント通過は認めない。

※一人になっても失格ではない。

 

・二人のうちのどちらかが悲鳴をあげてしまったら、両者とも失格とする。

 

・チェックポイントはA~Dの各クラスに一つずつ。 合計四ヶ所とする。

 

・チェックポイントでは各ポイントを守る代表者二名(クラス代表でなくても可)と召喚獣で勝負する。 撃破でチェックポイント通過扱いとなる。

 

・一組でもチェックポイントを全て通過できれば驚かされる側、通過者を一組も出さなければ驚かす側の勝利とする。

 

・驚かす側の一般生徒は召喚獣でのバトルは認めない。あくまでも驚かすだけとする。

 

・召喚時に必要となる教師は各クラスに一名ずつ配置する。

 

・通過の確認用として驚かされる側はカメラを携帯する。

 

・設備への手出しを禁止する。

 

「坂本。この悲鳴の定義はどうなっている?」

 

常村先輩がプリントを見ながら尋ねる。

 

「そこは声の大きさで判別するつもりだ。カメラを携帯させるわけだし、そこから拾う音声が一定値を超えたら失格だ」

 

「そんな事ができんのか?」

 

「……問題ない」

 

ムッツリーニが親指を立ててサムズアップする。

カメラとかそういうのに関しては得意だもんね。

 

「チェックポイントの勝負科目はどう決める?」

 

「それについてはお互いに一つずつ科目を指定ってことでどうだ?」

 

「一つずつ?二つずつじゃないのか?」

 

「ああ。もう既に化学と現国と教師には話をしたからな。受験で選択され易いその二つならそこまで有利不利もないし問題ないだろ?」

 

A~Dクラスなので、チェックポイントは全部で四つだね。 

そのうち二つは現代国語と化学で決定済みで、残り二つをそれぞれが選ぶことになる。

 

「坂本よぉ。それなら……」

 

「なんだ?」

 

「ただ勝負するだけじゃつまらねぇしよ……罰ゲームでも決めようぜ」

 

「出来るわけないですよ。そんなの」

 

「おいおい吉井。さては、勝つ自信がねぇな?」

 

「あほですか?あなたたちは」

 

「なんだと!?」

 

僕は呆れながらそう言った。この人たちは……気づいてないのか?

ま、しょうがないか。この二人だしね

 

「この勝負は皆はまだ知らない。それなのに、罰ゲームを相談なしに決めたら学年全体から非難されるに決まってますよ」

 

「……ちっ」

 

「そう逸るなよ、先輩。勝負がしたいのなら、あんた達はチェックポイントにいてくれたらいいんだぜ。個人的な勝負をするし、な」

 

雄二がボウズ先輩を見て挑発的にそう告げる。

 

「チェックポイントで直接対決か……面白れぇ。その話、乗ったぜ」

 

「それじゃあ、勝負は明日ってことで。楽しみにしてますよ、先輩?」

 

「クズどもが。年上の怖さを思い知らせてやる」

 

「……さっき二対一で僕に負けそうになってましたよね?」

 

「うっせえ!俺らの得意科目なら負けねえよ!」

 

ええっと、それはつまり……『俺らの得意科目なら負けない』→『僕の得意科目とは被ってない』→『そしてそれをこの二人は知っている』→『ストーカー!?』

 

「おい、吉井。なんか言わねえのか?おお?」

 

「誰か!!本気で110番して!!ここに!ここに男をつけまわすストーカーがいる!」

 

「「なんでだ!?」」

 

まさかこの先輩達がここまで気持ち悪いだなんて……

 

それはともかく、肝試しはいつの間にか二、三年生を巻き込む大規模な催しとなっていた。

 

 

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