僕と同居人と召喚獣   作:迷単底

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第52話:絶賛進行中

明久side

 

「そろそろ突入順を決めた方がいいな」

 

「しかし結構広いが……」

 

「見た感じがすごいわね……」

 

「雄二、なんか作戦とかあるの?」

 

「まあ作戦ってほどでもないがペアを二組に分けるつもりだ」

 

ペアを二組?ああ、なるほどね……

 

「つまり仕掛けを探る大部分の偵察班と実際にチェックポイントの相手を倒す少数精鋭の攻略班の二つだね」

 

「そうだ。ということでお前らは攻略班な」

 

あ、決定なのね。まあ別にいいけどさ……

 

「それはさておき、ムッツリーニ。モニターの準備は?」

 

「……問題ない。学園長に許可を取った高性能ディスプレイを運び込んである」

 

雄二はムッツリー二に尋ねるとムッツリー二はすぐに答えた。

 

「よし、そんじゃ、夏の風物詩を気軽に楽しむとするか」

 

「そうだね。今回はイベントだしね、楽しもうか」

 

「だな」

 

雄二が言うと僕と妹紅も同意する。

 

「うぅ……」

 

「アリス、大丈夫なの?」

 

「だ、大丈夫よ……」

 

そんなに怖いんなら仮病でも使って休めばよかったのに……律儀というかなんというか……

 

『ね、ねぇ……あの角、怪しくない……?』

 

『そ、そうだな……何か出てきそうだよな……』

 

ムッツリーニが設置した高性能モニターから、尖兵として出撃していったDクラスの男女ペアの送ってくる映像と音声が流れてくる。

まず最初に向かうことになっているのは、Dクラスの教室のチェックポイントである。

 

『そ、それじゃ、俺が先に行くから』

 

『うん……』

 

カメラが見るからに怪しい曲がり角を中心に周囲を映していく。 

カメラを構えた二人は入念な警戒態勢を取りながらそちらへと歩を進めていった

 

「お、なんかそろそろ出そうな感じだな」

 

「そうですね。恐らくここで仕掛けてくるでしょうね」

 

「仕掛けが一つでもわかればいいんだけど……」

 

ちなみに僕の周りには余裕でスクリーンを見ている妹紅、咲夜、霊夢と

 

「あ、明久……だ、大丈夫よね?」

 

「大丈夫だから離れてくれない?」

 

怖いということで僕にひっついているアリスがいる。うん、正面に抱きついてるんだけど……何か柔らかいものが押し当てられて……

 

『行くぞ……っ!!』

 

『うんっ!』

 

一方、カメラ側が曲がり角の向こう側を映し出す。 

そこには何がいるのかな…? 

しかし、そこには……何もなかった。

 

「よ、よかったわ……何もないじゃ……」

 

『『ぎゃぁあああーっ!?!?』』

 

「「「きゃぁあああーっ!!」」」

 

しかしアリスが安堵したと同時に、カメラの向こうから大きな悲鳴が響き、それを聞いたアリスや女子を中心として悲鳴が教室側からも響きわたる。

 

「アリス、大丈夫?」

 

「オバケ怖いオバケ怖いオバケ怖いオバケ怖いオバケ怖いオバケ怖いオバケ怖いオバケ怖い……」

 

「本当に大丈夫?」

 

そう言って震えてるアリスの頭を撫でながら慰める。

 

「……失格」

 

ムッツリーニがカメラ①と表示されている画面の右隅を指差す。 

そこに映し出されているデジタルメーターは一瞬で跳ね上がり、赤い失格ラインを遥かに超えた音声レベルを示していた。

 

「一つ目の曲がり角でいきなり失格とは……驚かす役も本気だな」

 

「そうですね。流石は三年といったところですね」

 

妹紅と咲夜がうんうんと唸りながら冷静に状況を分析していた。

いくら何でも冷静すぎない?

 

「……二組目がスタートした」

 

ムッツリーニがカメラ②と表示されている画面を指差した。 

そちらにはEクラスの男女ペアが進んでいく姿が映し出されている。

 

「今度は向こうがどんなことをしてくるのかがはっきり映るといいね」

 

「そうね」

 

一応コレは三年生との勝負だし、怖がっているアリスのためにもちょっとくらいは情報が欲しい。

せめて何が来るのかぐらいは分かっておきたいところだ。

まだ抱きついてるアリスをなだめていると……

 

「それは難しいだろうな」

 

「え?雄二、それってどういう……」

 

何かを知っている様な物言いの雄二にその真意を確認しようとしていると

 

『『ひゃぁぁあああーーーーっ!?!?』』

 

「「「きゃぁあああーっ!!」」」

 

開始早々、またもやモニターの向こうから悲鳴が聞こえてきた。

アリス、怖いのはわかるけどそんなに押し付けないで……

 

「……失格」

 

今度はさっきとは若干違って、まだ曲がり角が見えてきたばかりの地点だ。 

ポイントをずらしてくるなんて、向こうもやってくれるね。

 

『ち、血塗れの顔が壁から突然でてきやがった・・・』

 

『上からいきなり女性が・・・』

 

そんな呟きが聞こえてくる。カメラには何も映らなかったのは死角に突然現れたからか。 

今回の召喚獣は今までと違って等身大になっている。 

どれもリアルな形で現れているだろうから、かなり怖いに違いない。

しかし……

 

「なるほどね……」

 

「……あちらもカメラ使ってる可能性があるわね……」

 

カメラを使っているのが僕達だけじゃないってことは……

 

「三年生もこの映像を見ているってこと?」

 

「そりゃそうだろ。そうじゃなかったらカメラの使用なんて俺たちに有利すぎるからな」

 

「文句を言ってこなかったのは、向こうは向こうでメリットがあるからってことか……」

 

「そうなのか?私はてっきり自信があるからだと思ってたけど……」

 

妹紅の意見もあたりだろうけど……

あとは、驚かす側が相手を待ってる間も楽しむためとか……

 

「こっちのカメラの映像を見ていたら、標的がどこら辺に注意を払っているのかが分かるからな。驚かす側としてもタイミングが取り易いし、死角から襲いかかるのも簡単だ」

 

「確かにね……」

 

位置の確認くらいなら他の方法でもできるけど、どこに注意を払っているのかはカメラを通した方が断然分かり易い。

 

「おまけに明久以外の皆の召喚獣は物に触れないから、障害物をすり抜けて急襲できる。相手の位置と方向が分かればいきなり背後に化け物を配置するなんてことも可能になるしな」

 

「なるほど。何台もの固定カメラを設置しなくても私達自身が相手に情報を与えているのか。それは向こうも相当やり易いだろうな」

 

「明久、あなたなら気配読んで攻略とかできるんじゃない?」

 

「咲夜、いくら何でもそれは……」

 

物凄く集中さえできればやれるだろうけど……

 

「でもとりあえず厄介だね。奇襲がかけられるのは」

 

「……召喚獣を使った肝試しならでわ」

 

カメラ③と表示されている画面には三組目が撮っている映像が映し出されているけど、今度もやっぱりチェックポイントに至ることなく失格になってしまった。 

最初のDクラスからこの調子だと、勝負の先が思いやられるね……

 

「とは言え、あまり切羽詰まってなくても勝負は勝負。一方的にやられたままって言うのも気に食わないな」

 

ふん、と雄二が鼻を鳴らす。負けず嫌いな雄二らしい考えだ。

 

「最初は様子見と思ってたけど、これはそうも言ってられないな。あまり人が失格になりすぎるとあとが辛い」

 

「そうだね。向こうもチェックポイントには成績の良い人を配置しているだろうからね。あまり人を裂くと点数も減るし、後が持たない」

 

「こっちの攻略班まで回さないと厳しいしな」

 

「それまでの偵察班の振り分けが重要ですね」

 

三年生側の召喚獣バトルをする人は全部で四組八人。 

その人数なら間違いなく全員をAクラスメンバーで埋めてくるだろう。

こちらも攻略班を多少は残してないとチェックポイントのバトルで全滅なんていう可能性も充分にありえるわけで。

 

「んじゃ、こっちも手を打つか。皆、順番変更だ!DクラスのペアとFクラスのペアを先行させてくれ!」

 

雄二がその場に座ったまま声を上げると、しばらくしてカメラ④と表示されている画面に見慣れないの顔が、カメラ⑤と表示されている画面にFクラスの見慣れた顔が映った。

 

『んじゃ、行くか』

 

『カメラはわたしが持ちますね』

 

どうやら男女ペアのようだ。

どちらも大人びた感じがあり、カップルみたいだな。

 

時間をずらして突入するため、Fクラスには待機してもらい、まずはDクラスのペアがカメラを構えてスタスタと歩を進めていく。 

度胸があるのか、二人は何の躊躇もなく件の曲がり角へと迫っていった

 

「お、度胸あるな」

 

「そうですね。このままいけば怖さも薄れますからね」

 

「相手もタイミングが取り辛いでしょうし……

 

みんなの言う通り、警戒している人のカメラワークよりこうやって無警戒でドンドン進んでいく方が怖くない。 

それに、こうやってズンズンと先に進まれたら驚かす方だってタイミングが取り辛いだろう。

 

『お。あそこだったか? 何か出るって場所』

 

『そうみたいですね』

 

立て続けに三組のペアがやられた曲がり角をカメラが映し出す。 

二人がカメラを構えたまま角を曲がり、何気なく横の壁を映すと、

 

「「「きゃぁああああーっ!!」」」

 

そこには血みどろの顔が壁に浮き上がり、そしてそのままカメラは更に動いて背後を映す。 

そこにいたのは、女性が上から逆さでぶら下がっていた。

 

「「「きゃあぁああああっ! きゃぁああああーーーっ!!」」」

 

そう言いながら思いっきり抱きついてくるアリス。

うん、本当離れてくれない?そろそろヤバいから……

あと何で妹紅と咲夜も腕に抱きついてるの?霊夢も僕の服の裾握ってるし……

できれば恥ずかしいし周りの視線が痛いしみんな離れてもらいたいんだけど、それは彼女たちの表情から叶わぬ願いと悟ったのであった……

 

 

 

 

 

 

『オシオキオシオキオシオキオシオキオシオキオシオキオシオキオシオキオシオキオシオキオシオキオシオキオシオキオシオキオシオキ……』

 

『吉井殺ス吉井殺ス吉井殺ス吉井殺ス吉井殺ス吉井殺ス吉井殺ス吉井殺ス吉井殺ス吉井殺ス吉井殺ス吉井殺ス吉井殺ス吉井殺ス……』

 

そう狂った機械のように呟き続ける女子二人からは、誰もが距離をとったという……

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