僕と同居人と召喚獣   作:迷単底

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第56話:狂気の廃人

明久side

 

「す、すまなかったのじゃ。突破は無理でも、せめて姉上の力で少しでもダメージをと思うたのに……」

 

「いや、気にすんな。同性の、しかもあんなにムサイやつに告られたんだ。しょうがないさ」

 

秀吉は、帰ってくるなりそう言ってたけど、アレは仕方ないな。あの後『お前のことを思って作ったんだ』と言って奇抜なポエムを朗読し始めたけど……途中で耳を塞がなかったら気絶してたな……

くそっ!ゴスロリ坊主先輩といい、ポエマー(笑)先輩といいなんでこうも気色の悪い手を……

 

「さて……もうこうなっちまったら明久、行ってくれるか?」

 

「へいへい、了解」

 

さて、確かBクラスは現代文だっけ?だったら妹紅が一番高いんだけど……

 

「「「(チーン)」」」

 

妹紅、咲夜、霊夢の三人はあの告白とポエム(笑)を聞いてグロッキー状態でしばらくは行けそうにない。

となると……

 

「アリス、耳塞いでて無事なんでしょ?行くよ」

 

「え?えっ!?わ、私!?む、無理よ!多分相手の召喚獣もまともに見れないわよ?」

 

うう〜ん……だったら妹紅や咲夜たちが回復するまでしばらくは待つか?

 

「いや、お前らは6、7割ほど進んだら引き返してこい」

 

「え?チェックポイントはどうするの?」

 

雄二が小声でコソッと言ってきたので思わず聞き返してしまう。確かにそれなら大丈夫そうだけど……

 

「安心しろ。策はある」

 

「策?」

 

「ああ、とっておきのがな。そんなわけだが、行ってくれるか?」

 

「まあ、いいけど……。てことでアリス、覚悟決めてね」

 

「え?え?ええっ!?」

 

「じゃ、行こうか」

 

そう言うと、未だ騒いでるアリスの腕を引いてBクラスに向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

『オシ……オキ、しません……と。オシオキ……闇討ち……後ろから、釘バットで………ドカッて……。血の、涙で…………ゴメンナサイを……。オシオキ…………オシオキオシオキ……オシ、オキ……』

 

『殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺すころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス……』

 

後ろから付いてくる二つの人影には気づかないまま……

 

 

 

 

 

 

 

「明久……恨むわよ」

 

「もう……しょうがないじゃんか。今のみんなにアリスを任せるのは酷だし」

 

「うう……だからって……」

 

僕とアリスは今、Bクラスを攻略している途中だ。

ちなみにアリスは目を瞑って僕の腕に必死に抱きついて歩きにくい。

さて、そろそろあの先輩がいる所だけど……

 

「あら、次の方ですか……」

 

「え〜っと……どうも始めまして、小暮先輩」

 

「あら、これはどうもご丁寧に」

 

そう言ってフフフと笑う小暮先輩。その姿はとても色っぽい見せ方をしてるんだけど……

 

「じゃ、先を急ぎますので」

 

「へえ。あなたには色仕掛けが通用しませんのね?」

 

「まあ、先輩のことは綺麗だとは思いますが、それで情けない声とかは出しませんよ」

 

「あら、随分と彼女さんにぞっこんなんですね」

 

「…………彼女。…………彼女か……」

 

何呟いてんのアリス?小さすぎて聞こえないんだけど……

 

「あはは。こいつは彼女じゃありませんけどね」

 

「フフフ、ではハーレムメンバーの一員だと?」

 

「え、何ですかそれ?」

 

「あら、知りませんの?学校中の噂ですよ。『2年のエースはハーレム王』という噂がありますのよ」

 

「…………聞いたことないんですけど」

 

初耳だな……情報源は誰だ?ありすぎてよく分からないんだけど……

 

「常に美少女を入れた四人を側にはべらしてるともっぱらの噂ですよ?彼女もそのうちの一人なのでしょう?」

 

…………よし、決めた。元凶見つけたらブン殴ろう。

 

「はあ……もう先輩と話してると疲れるので先に行かせてもらいます。ではこれで」

 

「そうですか。それではあなたたちがチェックポイントを通過できないように祈ってますよ」

 

そう嫌味を言ってきた小暮先輩に振り向かずに僕たちはひたすら前へと進み始めた。

 

 

 

 

 

…………ここら辺かな?

もう既に教室の7割近く進んだな。じゃあ意図は分からないけどもと来た道を引き返……

 

『頭……スイカ…ザクロ…グチャッと……潰して……フフフ……』

 

『釘バット…バール…チェーンソー…鉄パイプ…包丁…果物ナイフ…金槌…ワイヤー…ノコギリ…アイスピック…ガソリン…灯油…』

 

引き返せないな。

ヤバい……今行ったら殺られる。確実に殺られる。

 

「さて……こうなったら。アリス、目瞑って口閉じてな。舌噛むよ」

 

「え?何をいきなり……ってええっ!?」

 

突然だけどアリスをお姫様抱っこで持ち上げる。それに驚いてるようだけど説明できないな。

そしてそのまま……

 

「とうっ!」

 

壁に向かってジャンプする。

さらに……

 

「よっ!」

 

壁を蹴って天井に向かって跳ぶ。

 

「よっ!ほっ!とっ!とっ!とうっ!」

 

さらにまた壁、天井を交互に跳んでいき、最後は地面に着地してアリスを下ろす。

うん、入り口までだいたい10メートルってとこだな。

 

「ほい到着」

 

「明久……何やるか事前に言ってよ。死ぬかと思ったじゃないの……」

 

「安心して、僕がそう簡単にアリスを落とすわけないでしょ?」

 

「まあそうだけど……」

 

「じゃ、それよりももう帰ろうか」

 

「そうね…………やっと帰れるわ…………」

 

そう言って、アリスは僕の腕を掴もうと目を開けたら……

 

グバアアアアアアアッッ!!

 

大量のオバケが目の前に突然姿を表した。

うっ!?これは流石に驚いたな……

ってアリスは!?マズイ!!これは確実に叫……

 

「うっ…………」

 

「ア、アリス!?」

 

しかし予想に反してアリスは倒れそうになり、僕はそれを支える。

…………うん、呼吸も安定してるし顔色も変わらない。単に卒倒しただけか

 

「…………とりあえず保健室に寄ってから戻ろうっと」

 

そう言って僕はアリスを抱きかかえるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいまー」

 

「おうお疲れ。マーガトロイドはどうした?」

 

「気絶したから保健室に置いてきた」

 

「そうか……」

 

「でも結局作戦ってなんだったの?」

 

「おう、それならモニターを見ればわかるぞ」

 

そう言って僕は座ってモニターを見る。そしてそこに写っていたのは……

 

「ねえ……アレ……何?」

 

「何って……姫路と島田だろ?」

 

そう言って妹紅は僕の足と足の間に座り、背中を預けてくる。

 

「えっと……姫路さんと島田さんの召喚獣……だよね?」

 

「残念ながら姫路さんと島田さん本人です」

 

そう言いながら咲夜は僕の手を掴んで自身の腰に手を誘導させて僕の隣に座る。

 

「…………じゃあなんであんな姿になってんの?」

 

「さあ?明久とアリスが出てった後に『もう我慢できません』とか言って出て行ったわね」

 

霊夢はそう言うと後ろから首に手を回し、しなだれかかるように抱きついてくる。

そう、先ほどからモニターに写ってるのは瘴気をだだ漏れにさせながらゆっくりと歩いている姫路さんと島田さんである。その姿はおよそ人間には見えず、二人の召喚獣と言われた方が納得がいく。

 

「そう…………ちなみになんでみんなはそんな風に抱きついてくるの?さっきみたいなのじゃないの?」

 

「ちょっと怖いから……」

 

「あれは流石に……」

 

「私はなんとなくね……」

 

嘘だな。まあでも跳ね除ける理由とか特にないし……別にいいか、このままで。みんながさらに寄りかかってくるけど別にいいよね

 

「明久、お前のハーレム王の噂の元凶は間違いなくお前だ」

 

「え、なんで!?」

 

「…………今の自分の姿を鏡で見ろ」

 

うーん………そう言われると確かにそうかもしれないな…………

アレ?じゃあそれなら自分で自分を殴んなきゃいけないの?それどんなプレイ?

 

「……雄二、私も抱き締めて」

 

「おい明久!てめえのせいで翔子もこんなこと言ってくるようになっちまったじゃねえか!!どうしてくれる!!」

 

…………いつも通りじゃない?

あ、それよりもモニターモニター

 

「お、もうチェックポイントか」

 

「おい!無視しないで助けろ!」

 

「明久、勝てると思うか?」

 

「んー……現代文だからね。島田さんはキツイだろうね……」

 

学年トップクラスの成績を持つ姫路さんがいても厳しいだろうな……

 

『ね、ねえみさお。あ、あれって召喚獣よね……?』

 

『そ、そうに決まってるじゃないの。き、きっとどこかに召喚者がいるはずよ』

 

『そ、そうよね……こ、こらー!い、いい加減でてきなさーい!』

 

『い、今なら手加減してあげるわよ?』

 

『『………試獣召喚(サモン)』』

 

先輩女子二人の声を無視して召喚する姫路さんと島田さん。

二人の召喚獣の装備はどっちも急所だけを守ってある限界ギリギリの鎧と、その背丈よりも大きな大剣だ。だけどその目は白目の部分と瞳孔まで赤く染まり、口は三日月のように開かれている。

 

「ねえ明久。あの召喚獣って何のオバケ?」

 

「そうだな。あんな妖怪とかは見たことないぞ」

 

「……私も」

 

んー……そう言われても僕もあんま分かんないし……

 

「………もしかしてバーサーカーじゃないですか?」

 

「「「「それだっ!」」」」

 

咲夜の言葉に思わずその場にいた全員が声を上げる。

 

「なるほどな。確かにピッタリだな」

 

「特徴は……『凶暴性』とかだな」

 

「あとは『攻撃的』とか『暴走』とかもあるんじゃない?」

 

「ピッタリすぎて声もでませんね……」

 

いやあ……なるほどね。うん、ピッタリだ。

 

『ひ、ひいっ!?召喚獣がでてきたわよっ!?』

 

『う、うそ……!?じゃああれって……人間!?』

 

多分人間です。多分ね

 

『グチャ……鈍い音……陥没音……血まみれ…………』

 

『刺殺轢殺焼殺溺殺……』

 

うん、本当に……人間、だよね?

纏ってる瘴気が人間のものとは思えないし……

 

『み、湊。私たちも召喚しなきゃ……』

 

『そ、そうね』

 

『『サ、試獣召喚(サモン)ッ!』』

 

あの先輩たち二人の召喚獣はハーピーと雪女か……

さて、四人の点数は……っと

 

現代文

 

『3ーA 中曽根みさお 277点』

 

『3ーA 寿湊 289点』

 

VS

 

『2ーF 姫路瑞希 369点』

 

『2ーF 島田美波 34点』

 

うわ……島田さんはともかく他三人はすごい点数だね……

 

『バラバラ……ホルマリン……保管……』

 

『撲殺鏖殺射殺殴殺……』

 

『み、みさおっ!私がサポートするからあなたは前衛で……』

 

『いや、湊!あなたの方が点が高いんだからあなたが前衛で……』

 

『無理よ!あの二人を正面から相手なんてしたくないわよ!』

 

『私だってそうよ!』

 

『グチャグチャ……バール……ミンチ……一つに……』

 

『毒殺爆殺斬殺絞殺……』

 

『『いぃぃぃやあああああぁぁあああぁっっ!!』』

 

……うん、大丈夫そうだね。あれなら多分勝てる。

 

「うわあ……アレは流石に……」

 

「怖いな……」

 

「正直今日見た中で一番オバケっぽいですね」

 

「オバケよりもオバケっぽいって……。確かにそうだけど……」

 

『ボコボコ……釘バット……血の海……ウフフ……』

 

『圧殺銃殺挟殺謀殺……』

 

あ、勝てた。終始雰囲気と迫力で押しっぱなしだったもんね……

 

『さ、さあ!あなたたちの勝ちよ!!』

 

『だ、だからもう行きなさい!!』

 

うわあ……まるで追い出すように手を振ってる。うん、気持ちは分かる

 

『ウフフ……待っていてくださいね……吉井君……』

 

『いっぱいいっぱい……たくさん殺してあげるわね……』

 

そう言いながら二人はBクラスから立ち去っていく。

うん……よかった、あっち側にいなくて。

 

「ま、まあAクラスもあいつらに任せておくか」

 

「そうだね。オバケの方が驚いて逃げてくレベルだろうしね」

 

それにしてもあの二人がもしも戻ってきたら……うん、殺されるな、間違いなく。

ははっ、まさか姉さんと母さん以外から死の恐怖を感じるとは……

そう思いながら、少し震える手で妹紅の頬を撫で、咲夜を引き寄せるのであった……

 

 

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