僕と同居人と召喚獣   作:迷単底

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第58話:逆鱗

明久side

 

「よう先輩。待たせたな」

 

「おせーぞ吉井、坂本。格下が目上の人間を待たせんじゃねーよ」

 

「ちょいと相方にヤボ用があったみたいでな。日々忙しい先輩方は時間が貴重なんだよな?」

 

「当たり前だろ。お前らみたいな出来損ないとは違うんだよ」

 

僕と雄二がチェックポイントに足を踏み入れると、常夏コンビは揃っていやらしい笑みを浮かべた。自分達が圧倒的に優位な立場にあるという余裕の表情だ。そして、常夏コンビの坊主頭の先輩が提案してきた。

 

「ところで、こっちから提案なんだが、『個人的な勝負』でもしないか?」

 

「個人的な勝負?」

 

「おうよ。ま、ようは賭けだ」

 

「やりたくねぇなら、まぁそれでもいいが……」

 

「いいですよ」

 

僕は雄二の意見を聞かずに答えた。

 

「最初っからこっちが言うつもりだったんです。そうですね……『負けた方は勝った方の言うことをなんでも聞く』でどうでしょう」

 

「なっ!?」

 

「んだと……!?」

 

「言い出したのはそちらなんですから、当然、のりますよね?」

 

常夏コンビは狼狽えた様子だけど、僕にはどうだっていい。

 

「てめぇ、何を企んでやがる……?」

 

「よっぽど自信があるみてぇじゃねぇか」

 

「別に何も。ああ、あと今回は僕が一人で戦うので」

 

「坂本抜きで戦うだと?」

 

「へっ、今から負けた時の言い訳作りか?ご苦労なこった」

 

そう言ってケラケラと常夏コンビは笑ってくる。

 

「………始めましょうか。試獣召喚(サモン)

 

「いいぜ。試獣召喚(サモン)っ!」

 

「ボコボコにしてやるよ。試獣召喚(サモン)っ!」

 

物理

 

『2ーA 吉井明久 382点』

 

VS

 

『3ーA 常村勇作 412点』

 

『3ーA 夏川俊平 408点』

 

「おいおい、大見得切った割には俺らと20点以上の差があるじゃねえか?」

 

「どうする?今ならまだ坂本が召喚するのを認めてやるぜ?」

 

「結構だ。…………あと先輩方、いいこと教えてやるよ」

 

「あん?何だ?」

 

「てめえらは……明久を本気で怒らせたんだよ」

 

「はあ?何を……」

 

「ま、体感すれば分かるさ……」

 

そう言って雄二は邪魔にならないように下がってくれる。

さて、あとは僕の仕事だ

 

「行きますよ、先輩方……」

 

そう言うと剣を先輩たちに向かって構えをとらせる。

 

「はんっ!せいぜい楽しませてくれよ?」

 

「すぐに終わったらつまんねえからな」

 

「装覇流剣術、四の型……」

 

僕は刀を逆手で持たせると、自分の召喚獣を突っ込ませて片足を軸にして回転しながら刀を振るう。

 

煌月(こうげつ)っ!」

 

「おっと」

 

「いきなりとは考えたがまだま……」

 

「九の型、凍乱(とうらん)っ!」

 

「「なっ!?」」

 

しかしそこから刀を順手に持ち替え、回転とともに剣と打撃を振るう。今回は〈煌月〉の回転力も活かしてるため、スピードはなかなかのものだ。

 

「てめえ……!」

 

「やりやがったな……!」

 

先輩二人が怒りを露わにしながらこちらに突っ込んでくるが、全然怖くない。

霊夢のような他者をたじろがせるような迫力が全く感じられない。

 

「あまいんですよ……」

 

今度は先に突っ込んできたほうに足をかけて転ばし、もう一方は刀で攻撃を後ろへ受け流しながら柄による打撃を放つ。

 

「二の型、流星(りゅうせい)っ!」

 

「ぐっ……また……!」

 

「だがあまいのはお前だよ吉井。今のお前の召喚獣、挟み撃ちに合わせることだってできるんだよ!」

 

そう言って前後からの挟み撃ちにかかる先輩たち。

……まだわかってないのか?

 

「ほいっ」

 

僕は召喚獣をバックステップで下がらせながら相手の後ろからの攻撃を避け、足を引っ掛けて体勢を崩す。

そしてそのま後頭部を鷲掴みにすると……

 

「はあっ!」

 

前方にいる相手へと顔を打ちつける。

 

「はっ!」

 

さらに後頭部から手を離すと、蹴り飛ばしてぶつからせ、もつれ合うように転ばせる。

 

「…………この程度ですか?」

 

「っ!舐めんなやあっ!」

 

「おい夏川、落ち着……」

 

そう言いながらモヒカン先輩の召喚獣が向かってくる。

それを見ながら僕はゆっくりと刀を構えさせる。

 

「死ね!吉井いいっっ!!」

 

「装覇流剣術……」

 

そして刀と斧が勢いよくぶつかり、激しい音と火花を立たせて……

 

「零の型、虚空(こくう)っ!!」

 

「なあっ!?」

 

何てことはなく、音も火花もなしに僕の刀は相手をスラリと切り裂き、切断する。

 

「て、てめえっ!何しやがった!?」

 

「別に……見えていたでしょう?ただ僕の召喚獣が先輩の召喚獣を切っただけですよ」

 

零の型〈虚空〉はただ切断することに重きを置いた一撃である。武器も防具も肉も骨も何もかもを、ただ一刀のもとに切断する斬撃である。

 

「………まずは一人」

 

「っ!!」

 

「次は……先輩ですよ?」

 

そして僕は残っている坊主の先輩の方を見ながら声をかける。

 

「へっ……さっきは何をやったか知らねえが要は剣に触れなきゃいいんだろ?先輩の力ってもんを見せてやるよ!」

 

そう言いながら坊主先輩の召喚獣も突っ込んでくる。

確かに〈虚空〉は連発も難しいし、斬撃の線もまだ読みやすい。

 

「これで終わりだ!!」

 

「装覇流剣術……」

 

そして僕と先輩の召喚獣が正面からぶつかり合い、僕の召喚獣は刀を振り切った体勢のまま立ち止まっている。

 

「もらっ……た…あっ?」

 

そして坊主先輩の召喚獣が追撃を加えようと振り向く。

だがそれは……

 

「な、い、いつの間に!?」

 

「終の型…………」

 

上半身が半分ほど切られており、振り向けたのは上半身だけであった。

 

「……空蝉(うつせみ)

 

終の型〈空蝉〉はノーモーションで放たれる、不可視の域までに達した斬撃。いつの間にか相手に一撃を与え、剣が見えるのは刀を振る前と後の姿の時だけだ。

 

「ぐっ!立て!立ちやがれっ!」

 

ああ、まだやられてなかったのか。だったら……

 

「終わりだ」

 

確実に息の根を止めるため、首に剣を突き刺し、相手の召喚獣の姿は消滅する。

 

「そ、そんな……」

 

「俺らが……こんなやつに二度も……」

 

そう言って膝をつく二人の先輩。二度も、しかも二度目は自分たちの得意教科で負けたことがよっぽどのショックなのだろう。

それにしてもまさか〈虚空〉と〈空蝉〉が再現できるようになるとはね……。

残像もついこの間再現できるようになったし、この二つは難しいから正直無理だと思ってたんだけど……

 

「僕の勝ちです。約束……覚えてますよね?」

 

「けっ……俺たちに何をやらせようってんだ?」

 

そんなの……最初っから決まってる

 

「霊夢に……謝れ」

 

「へっ……そんだけでいいなら……」

 

「あと、先輩方、受験勉強頑張ってくださいね?」

 

「はあ?残念だが俺たちは推薦で行くつもりなんだよ。受験勉強なんて……」

 

「そんなもん、ありませんよ?」

 

「「はあ?」」

 

分かってないように言ってくる常夏コンビにそう返す。

 

「あんたらがさっきやったことは、第二学年全体に対する侮蔑、特定生徒に対する暴言……しかもその生徒は最底辺から学年次席に上り詰めた生徒。これでも僕、先生方からの受けはいいんですよ?」

 

一応僕は特別処遇者としての仕事をしてて、成績もかなり成長したからまさしく模範生徒として見られてるからね(竹原先生談)。

多少脚色されてる感もあるけど……

 

「そんなこと……」

 

「そしてこの肝試しの映像は学園長を始めとする教師、そしてスポンサーの関係者に見られてるんですよ?」

 

「なっ!?」

 

「んだとおっ……!?」

 

「学校の教師陣にスポンサーの企業関係者……その人たちは先輩たちのことをどう見ると思いますか?」

 

現にさっき竹原先生からメール来たんだよね。

 

『スポンサーにお前の母親の知り合いが多いみたいでな……。息子であるお前にも目をかけてるみたいなんだ。そんで常村と夏川のさっきの言葉にお怒りだ。今ババアがスポンサーに平謝りしてるがまだ溜飲が下がってないみたいだ。あの二人を倒してどうにかしてくれ』

 

って感じのメールがね……

スポンサーへの対応はババアに任せてそんな連絡をしてきたからね……

それに(一応)一生徒である僕への依頼……。かなり重大な事態なんだよね、これって……

 

「ま、内申点が無くなることと推薦の取り消しは確実。企業関係者にも見られてるから就職は……どうなるんでしょうかね?」

 

「て、てめえら……っ!」

 

「ま、残念ながら自業自得ですよ。高校三年っていう大学生や社会人……自分で責任を取る必要がある立場に最も近い生徒ですよ。こんくらいの責任と問題……自分でどうにかしてくださいね」

 

「くっ……」

 

「じゃあ僕はこれで」

 

「けっ、さっさと行きやがれ……」

 

さて、じゃあそろそろ帰ろうかな……

そう思いつつ振り返るけど……あ、あとあれもあった。

 

「あ、最後に一つ」

 

「あ?なんだ?」

 

「……今度、僕の大切な人に手を出したり、泣かせようとするものなら……」

 

そう言うと声を低くし、睨みつけ、殺気を放ちながら告げる。

 

 

 

 

 

「…………本気で殺し尽くす。ありとあらゆる手を使って、ね」

 

「「な、ひ、ひいいっ!!」」

 

「じゃ、今度こそこれで。ああ、約束は守ってくださいね」

 

そして僕はもう振り返ることなく、Aクラスを出るのであった。

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