明久side
あれから数日経ちいよいよ旅行当日、僕たちは空の上にいる。まあ飛行機で3時間ほどのフライトである。
「ねえ、明久……」
「ん?どうしたの、霊夢」
「なんでプライベートジェットで行くのよ……」
ただし、行くのに使う飛行機はプライベートジェットであるが……
「母さん曰く『好きなときに行けて好きなときに帰れるから』らしいよ?」
「そ、そう……」
いやー、やっぱりびびるよね、これは。
「そもそもどうやって手に入れたのよ、こんなの……」
「母さんの所有物じゃなくて
ちなみに電話で交渉(と言う名の脅迫)の音が耳に入ったときがあるんだけど……うん、相手がものっすごい怯えてた。
何者なんだ、うちの母親は……
「本当に、むちゃくちゃね……」
「そのうち慣れちゃうよ。きっと……」
「そう……」
実際にみんな慣れていったし。
ちなみに今は咲夜が淹れてくれた紅茶を飲みながら僕がGMでTRPGで遊んでいる。
普通のTVゲームとかは一度やるとストーリーが分かってしまうので二回目以降はつまらなくなるが、TRPGだと好きにストーリーが作れるのでうちでは重宝されている。
現にルールブックとかは結構な種類あるし。
まあ、やってるのは僕たち高校生組だけだけどね。
だって父さんはそもそもゲーム関連に詳しくないのでやりたがらない、姉さんはトンチンカンなプレイをするのでやらない。
「明久、なんで私は参加させてくれないのよ。母さんは寂しいわ」
「ゲームバランスが崩れるからだよ」
そして母さんに至ってはダイス目をコントロールするわ、シナリオのメタ読みがえげつないわ、シナリオ作るにしても難解すぎるシナリオ作るわで参加禁止されてる。
「そういや明久さー」
「んー、何?」
母さんが話しかけてきたけどきっとロクでもないことに違いないので適当に聞き流しておこう。
「あんたって恋人とか作らないの?」
その言葉で妹紅たちの動きが一瞬止まる。
あれ? いま結構大事な場面なんだけど止まるのって珍しいな……。
普段は考察以外で止まることなんて滅多にないのに……。
「いや、別に作りたいなーとは思ってるけどさ、告白されても付き合う気になれないっていうか……」
「あれ、今の話し方からすると告白されたことってあるの?」
「まあ中学の頃から年に2、3回は」
確か夏休み前に一年生の子に告白されたし……っておや? みんなの様子がなんか怖いんだけど……。
具体的に言えば阿修羅とか仁王とか龍とか虎とかが背中に見える気が……。
「じゃあなんで今まで誰とも付き合わなかったの? 可愛くない子ばっかりだったとか?」
「いや、別に普通に可愛かった子や性格も良さそうな子もいたんだけどねー……」
……ってあれ、気のせいかな? 話す度に目の前の妹紅たちから放たれる威圧感が増してきている気が……。
「ふーん、そんなんなら付き合えばよかったじゃないの」
「なんかそんな気がしないんだよ。付き合いたくはないとは思わないけど、付き合いたいと思うような感じがしたんだよ。今までの子全員が」
不思議だよね……。告白してきた子の中には可愛い子もいたし性格の良さそうな子もいたしクラスメイトでそれなりに仲のいい子もいた。
だけど付き合いたいと思った子は一切いなかった。
好きだとか嫌いだとか関係なく、誰一人として付き合いたいと思えなかったのだ。
「ふーん……」
母さんがつまらなさそうに呟くと同時に妹紅たちから放たれる威圧感が消える。
あの威圧感の詳細はわからなかったけど、収まったのなら別に良いか……
「じゃあ妹紅ちゃんたち四人の中に付き合いたいとか思った子はいる?」
!?!?!!?!??!?
何故先程よりも強い威圧感が!?
なんでみんなはそんなに僕の恋愛遍歴聞きたがるの?
確かに女子は恋話とか好きなのは知ってるけどさ。
「い、いやー……どうだろうなー。はははー……」
「真面目に答えろ」
「はぐらかさないで」
「ちゃんと話してください」
「キリキリと話しなさい」
……ヤバい。みんながいつになく怖いんだけど。
でも誰かと付き合うかー……。
そんなことあんまり真剣に考えたことなかったからなぁ……。
容姿においてはみんなかなりの美少女とも言えるから甲乙付けがたいと言えるだろう。
性格面とかについては妹紅とは長い付き合いだから気心が知れわたってるから隣にいて安心できる存在と言える。
アリスは英語を教えてもらってるときとかから分かるけど、かなり優しくて面倒見が良い。
咲夜は普段は落ち着いていてしっかりしてるんだけどふとした時に見せる表情や仕草に可愛いところがある。
霊夢とは付き合いが短いけど誰かのために真剣に怒ることのできる優しい心根の持ち主だと知っている。
うーん……こう見ると性格面でも甲乙付けがたいな。
本当にこの四人の中の誰かと付き合わなければならないとか言われたら本当き困るなあ……
…………って明久は思ってるわね」
うん、まさしく母さんが今言った通りだ……って!?
「母さああああああんんっ!?」
何心の中読んでくれてんの!?
そして何でそれを本人たちの前で言っちゃってくれてんの!?
ものすっごい恥ずかしいんだけど!?
聞いてたみんなも恥ずかしそうにしてるし!!
「いや、みんな。これは、その、えーと、その、母さんの冗談で……」
「心を読んだけど『付き合いたいと思わない』って感情は誰に対しても出てないわよねー。それに四人に対する好感度はかなり高いみたいだし、上手くいけば」
「あんたもう黙れ!!」
結局母さんを黙らせようと母さんに挑んだ結果、一瞬で絞め落とされて気絶したままフライトを終えることとなった。