銀牙伝説NIGER『リメイク版』   作:ニゲル

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「GAAAAAA!」

 

 

 本当にこれが人間なのか?!

 強すぎる!

 私達と互角、いやわずかに押されている。

 迂回するにも、あまり離れると射線上に出てしまう。

 人間を傷付けてはいけないとはいえ……………

 

 

「――――っ!」

 

 

 危険な気配を察知し、咄嗟に躯を低く屈める。

 瞬間、私の上で風を斬る音がした。

 更に――――。

 

 

「「「ッギャ!」」」

 

 

 部下の断末魔が、幾つか重なった。

 どうやら私を討ち取ろうとした蹴りが、三匹の兵の胴体をまとめて両断したらしい。

 血と腸が舞い、地面と私達の躯を濡らした。

 その凄惨な光景を見て、一匹の兵が立ちすくむ。

 目の前の人間………怪物が彼の隙を逃す訳もなく、右手で彼の頭を掴んだ。

 

 

「ガァァァ――――――っ!」

 

「やめてくれっ!」

 

 

 私の懇願するような制止の声を、怪物が聞いてくれる筈もなかった。

 ミシミシと、何かが軋む音が聞こえてくる。

 怪物はそのまま、彼の頭を握り潰した。

 

 

「………貴様っ!よくも私の部下を!」

 

 

 作戦も何もかも頭から飛び、怒りのまま目の前の怪物に跳び掛かろうとした時。

 背後から銃声が鳴り響いた。

 

 …………っは!何をやっている私は!

 

 お陰と言ってはなんだが、どうにか正気を取り戻せた。

 だが、何故銃声が?

 まだ射線上に出てない筈。

 残っている3匹の部下も、出ていない。

 

 

「何が……………っ!」

 

 

 わずかに私の意識が怪物からずれた。

 その隙を逃すほど、この怪物は甘くはなかった。

 

 

「GAAAAAA――――!!」

 

 

 私の眼前に、もう避けることが出来ない距離に、怪物の魔手が迫っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺たちは、いや俺だけは、絶対に生き残って成り上がる。

 そんなことを考えながら、当馬は駆け続ける。

 

 …………ざまあみろ! ざまあみろだ、馬鹿共! 正しいのは俺だ、生き残るのは俺だっ!

 

 正義だなんだと宣う、奥羽の連中。

 女の癖に、偉そうに俺の上にたっていること。

 そして、捨て駒の様な部隊の、気味の悪い間抜けな男 。

 その全てを嘲って、彼は走る。

 

 だが――――

 

 

『―――――――――っ!」

 

 

 この中の誰が知ろう。

 侵入者たる人間達と、偶然か木々の拓けた場所ではち合わせになることを。

 

 ………何で、何で人間が此処にっ?!

 

 一瞬で、当馬達の脚が硬直する。

 お蔭か人間達はまだ気づいていなかった。

 

 ………ビビるな、落ち着け!どうやら、まだ天は俺を見離していないようだ。

 

 人間達は、他の群に集中して当馬達の事にきづいていない。

 今すぐ、気付かれないように静かに立ち去れば大丈夫だろう。

 そう考え、ゆっくりと後ろ脚を戻す。

 

 

「お前ら、音をたてるなよ、ゆっくりだ………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァイ、帰レルト思ッタ?思ッチマッタ?残念ダッタネ此処デ止マッテネ!!」

 

 

 

 不吉な声が背後から聞こえた。

 とっさに振り向くが、誰もいない。

 その際、少しばかり音をたててしまったが………幸いにも気付かれなかったようだ。

 

 

「誰だ…」

 

 

 できる限り声を小さくし、謎の声主に問う。 

 だが、返事が返ってこない。

 それどころか、何かが声主の琴線に触れたのか、くつくつと笑っている。

 

 

「何が可笑しいっ!」

 

「イヤァ、馬鹿ガ慌テフタメクノハ、観テイテ楽シイモンダネ♪

モウ少シ観テイタイケド………モウ時間ダネ」

 

 

 当馬達には、何を言っているのか理解出来なかった。 

 

 

「時間?」

 

「ソレジャァ、始メヨウカ――――――」

 

 

 「何を言っている?!」と当馬達が言う前に、声主の咆哮が奥羽の山に響き渡った。

 

 

「っな?!!」

 

 

 そんなことをしてしまえば……と、当馬達は人間の方を向く。

 やはり違う方向に向いていた人間達が一斉に此方を向いた。

 そして、当馬達に銃口が―――。

 

 

「っひぃ!」

 

「クソッ逃げろ!」

 

 

 当馬は叫び、人間に背を向け逃げようとする。

 だが人間は待ってなどくれなかった。

 次の瞬間―――

 

 

「「「―――ッグハッ!」」」

 

 

 深夜の森に、火花が咲いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 五衛郎。

 元々山賊にして、現奥羽軍の部隊長。

 彼の率いる部隊は、奥羽軍の部隊の中で異質の存在であった。

 それも、彼女を除き、その全ての部下が謎に包まれているからだ。

 その姿、名前、数すら不明。

 常に裏で画策し、知らぬまに奥羽軍の劣勢をひっくり返してしまう。

 加えて彼の容姿が、不気味さを助長させてしまっていた。

 表に出ているのが彼と彼女だけなので、畏怖の視線と陰口が彼に集中してしまうのは自明の理。

 私は陰口とかそういうものは嫌いだ。

 その様な輩は、軽蔑こそすれ、仲間意識等持ちたくもない。

 だから私の部下には言わせないし、言う奴もいない。

 だが、他の者はそうもいかない。

 よく聞くのは、化物やヒ犬。

 ヒ犬が何かわからず、部下に聞けば………何とも馬鹿らしいものであった。

 火傷から連想される火と、彼奴は犬ではないという非をかけたという巫山戯た蔑称。

 

 ………まぁ、部下でも仲間でもない奴に注意する義理はない。それに、私が言わなくても言うやつがいるしな。

 

 五衛郎の部下で、唯一表舞台に出ている女……夏魅。

 素晴らしい武勇を誇り、義侠の心を持っていると聞いているが………彼女は五衛郎に心酔しているらしい。

 そんな蔑称を彼女が聞けば、どうなるか語るまでもないだろう。

 

 ある意味有名な彼等だが、彼等の心根や性分を知らない。

 私は、軍義以外で彼等と話したことがあまりない。

 

 だから、目の前で起きたことが信じられなかった。

 

 

「――――大丈夫、か?」

 

 

 窮地に陥った私の前に、彼が颯爽と現れた事が。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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