銀牙伝説NIGER『リメイク版』   作:ニゲル

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短いだす。
主人公登場だす。




 

 

 

 顔を上げると、岩の合間から満月が見えた。

 奥羽山脈、双子峠の牙城は虫達が音楽(メロディー)を奏でている。

 皆が寝静まった深夜。

 まだ一歳にも満たない黒毛の少年が、牙城の広間で佇んでいた。

 立ち耳で、少し長めの垂れ尾が印象的である。

 細身だが華奢な印象はない、しなやかな強靭さを感じさせる、言わば細マッチョという奴だろうか。

 少年は無言で、上から正面に視線を移す。

 淡い碧眼に映すのは、静謐な気配を纏う男。

 流れ星を連想させる額の三本傷、銀色の虎毛を持った、犬界で最も有名な英雄。

 まさに、奥羽軍二代目総大将『銀』の姿。

 内情を知らない者がみれば、確実に総大将と間違えるだろう。

 しかし彼の正体は、少年も事前に知っていた。

 銀の影武者として生き、それ以外を捨てた時宗(ときむね)という男。

 少年はそんな彼の生き方が、理解出来ない。

 いや理解したくなかった、何故自分を捨て去る事が出来るのか。

 他人として生きる、それはもう時宗は死んでいると同じだ。

 故に、時宗は気付かない。

 少年が時宗に内心、殺意を抱いていることに。

 いや殺意自体は気付いてるだろう。

 それが何故発せられ、自分に向けられるかは理解出来ない、気にしない。

 少年はそう考える。

 そして―――

 

 

「………名は?」

 

 

 時宗が、言葉を発した。

 貫禄のある声だ、やはり影武者だけはある。

 その一言に、決して軽くはない威圧感が乗せられていた。

 

 

「ニゲルだ。別に覚えなくてもいいぜ!」

 

 

 少年は、威圧感を笑い飛ばし、睨み付ける。

 だが、時宗は構わず質問を続けていく。

 

 

「そうか、ニゲル。君は何故此処に?

奥羽に魂を預けてる訳でも無いのだろう?

それに、対話をしに来たのでは?その様子ではまともな会話が出来るとは思えないのだが?」

 

「質問ばっかだな……そんなんじゃモテないぜ?

いいか、俺の魂は誰の物でもねぇ!俺の、俺だけのものだ!!

それに、これが俺の通常仕様だ!怒りの炎は生の原動力ってな!

あんたにはないのか?自分だけの何かが?」

「……………愚問だな、ニゲル。正義の体現、それが俺の役目。それが全てだよ。

して君の用件はなんだ?話してくれ」

 

 

 時宗の感情がわからない。

 ニゲルには、どうも借り物の意思に思えてしまう。

 淡々と話す時宗に、ニゲルは更なる怒りを燃やす。

 だが、今はそんな場合じゃなかった。

 感情をなんとか押し殺し、時宗と視線をあわせ対峙する。

 

 

奏牙(そうが)さんについてだ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――同時刻。

 双子峠の麓では、不穏な影が蠢いていた。

 

 

「¢£◎&%′○&▼▲」

 

「※◇%▼&◆……¢▽▲&仝ヾ゜▽」

 

 

 木々の間を、複数の影が何かを話ながら移動する。

 だが近くにいた男――ディムには理解出来なかった。

 種族が違えば、会話は出来ない。当たり前だ。

 ディムには犬の言葉しかわからない。

 故に、彼等の会話はわからないのだ。

 

 

「何をしに来たんだ?」

 

 

 半垂れの茶耳を、自慢の鼻をひくつかせ、警戒する。

 彼等の向かう方向には、楽園がある。

 そこには仲間や、最愛の家族がいるのだ。

 もし彼等が敵ならば、仲間や家族が危険に晒される。

 そんなことはさせない。

 そのために自分達いるのだ!と。

 そんなディムの鼻に、風が臭いを運んできた。

 

 

「ん?――これは?!」

 

 

 ディムは驚愕に目を見開く。

 この鼻を曲げる強烈に嫌な臭い。

 あまりにも危険で悪質な、死神の匂い。 

 

(危険だ!早く皆に報せなければ!)

 

 報せに動こうとし、ディムは失敗を犯した。

 慎重に動く事は意識していた、だが運が悪かったのだ。

 ゆっくりと後ろに置こうとした脚が、ビニール袋とかいうモノを踏んでしまった。

 

 ―――ガサッ!

 

 

「▼◆¢▽&◆○※◇¢!!」

 

 

 奴等に気付かれてしまった。

 ディムは一目散に逃げようと、走り出そうとし―――

 次の瞬間、雷のような轟音と、感じたことのない激痛が頭を襲った。

 

 

「ッ」

 

(皆逃げてくれ……人間が敵にまわった!)

 

 大切な者の安否を願い、ディムの意識は闇に堕ちていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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