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「………あの腰抜け野郎共、私が連れ戻してやる」
「落ち着け
私は苛々していた。
あの当馬の野郎共、五衛郎様への恩を忘れて逃げやがった。
その上、あの此方を馬鹿にするような視線。
今すぐに連れ戻して、私が仕置きしてやる。
飛び出そうとした私を、頭上から止める声が聴こえた。
上を見れば、木の枝に伏せる小柄な黒い男がいた。
「これでいいとは、どういうことだ
「………此方がそう誘導したんだ。それに、奴等は直ぐ酬いをうける事になる!」
そう言って、疾風はにやりと笑う。
疾風も私と同じ、五衛郎様専属の部下である。
脳筋と言われる私と違い、疾風は頭がいい。
今回も五衛郎様の作戦であり、それを理解しているらしい。
「むぅ………私は知らなかったぞ?!」
「これは俺の領域だしな。夏魅の領域は違うだろ?」
「そうだが……う~ん」
何だか私だけのけ者にされた様な気がする。
「………夏魅、疾風、今は無駄に、話す暇は、ない!
疾風には、俺が頼ん、だんだ、意見がある、なら俺に言ってくれ」
「あ、いや、申し訳ありません!」
「失礼しました」
何をやってるのだ私はっ!
疾風には疾風の、私には私のやるべき事があるのだ。
二人が私に話さなかったなら、その必要があったのだろう。
私のせいで、貴重な五衛郎様の時間を奪ってしまった。
私の、馬鹿!
このままでは五衛郎様に見放されてしまう。
どうすれば、ああ、どうしよう!
◆
「…………うぅっ~グスッ」
夏魅がグズってきやがった。
どうせ五衛郎様に嫌われてしまう、とでも考えてんだろう。
枝から降り、五衛郎様の側による。
「はぁ……五衛郎様、当馬等は予定通りに動いてくれてるんだが、少し懸念事項が」
「何だ?」
「はい、李喋さんの逃走経路に不気味な人間が現れました」
「不気味な、人間?」
「どうやら、奴等とは別口の様で、人間や犬族等関係無く襲っています」
「見境なく?銃でか?」
「いや、銃や武器の類いは持っていないと思います」
「それなら大丈…………何かある、のか」
「はい、人間とは思えない程身体能力が高く、旅犬でしょうか、五匹中二匹が簡単に捕まり殺されました。その場にいた人間も、一瞬でした」
「そうか………」
「はい、李喋さんだけなら何とか逃げれそうですが、他の者になると」
あれは、ただの人間ではない。
あの赤い瞳、怪しい雰囲気。
脅威的な身体能力、殺意のままに動く存在。
化物だ。
「………俺が動こう」
「なっ?!危険です!」
確かに五衛郎様は強いが、こんな三つ巴な状況でしかも護りながら、危険すぎる。
「………大丈夫だ、考えは、ある」
「し、しかし!」
「それと、夏魅も、連れて、いく」
くっ!こうなった五衛郎様は、意思を変えないだろう。
仕方ない、夏魅がいればなんとかなるかもしれない。
夏魅は馬鹿だが、腕だけは確かだ。
「わかりました」
「疾風、お前は、計画通りに、いいな?!」
「はっ!」
「夏魅!」
「はいっ!」
いつのまに立ち直ったのか、嬉しそうに返事をしている。
「俺について、こい!俺の背後は、任せたぞ!」
「はぃぃっ!!お任せをっ!」
夏魅、五衛郎様はお前に任せたぞ。
俺も諜報活動を再開するか………。