クロンの呼応   作:恐竜紳士

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注意。
今回のデュエルも例によってグロい描写があります。


第三十二話:落とした首が笑う事もありましょう

 たった一つのビスケットを二つに割って、誰かと分け合うようなもの。ワンホールのショートケーキを、切り分けて食べるようなもの。

 “(タワー)”の名で呼ばれる少女――…本名ユミル=ムスペルにとって、生き物の首を斬り落とすという行為は、その程度の事でしかなかった。

 彼女が自身の趣向に初めて気付いたのは、彼女が五歳の頃。可愛がっていた野良猫がトラックに轢かれ、その頭部が磨り潰される瞬間を間近で目撃した事がきっかけだった。

 どんな経緯でその猫が轢かれたのかは覚えていない。自分の元に駆け寄ろうと車道に飛び出したところを轢かれたような気もするし、逆に逃げようとしたところを轢かれたような記憶もある。

 はっきりと覚えているのは、その猫が頭を潰された一瞬の光景と、残った胴体から流れ出る血と飛び散った脳髄を、ぼんやりと眺めていたという事だけだ。

 恐怖は無かった。死んでしまった猫を可哀想だと思う気持ちはあったものの、その死骸を気持ち悪いと思ったり、汚いと思う事は無かった。

 ビスケットは二つに割ってもビスケット。どんなに薄く切ったとしても、ケーキはケーキでしかない。それと同じだ、とユミルは動かなくなった猫の死骸を見て考えるのは、あるいは自然な事だったのかも知れない。

 例え頭が無くなったとしても猫は猫、私が可愛がっていた猫ちゃんに違いない。無意識のうちに考えたユミルは、他の目撃者が騒ぐ中で猫の死骸に歩み寄り、少し軽くなった肉塊を拾い上げた。

「よしよし、車にぶつかって痛かったね…? おうちに帰って手当してあげるね…」

 血塗れの死骸を抱いて笑うユミルの姿は、傍目には異常なものに映ったかも知れない。ショックで気が狂ったのではと考えた者も居ただろう。

 だがユミルからすれば、そんな彼らの考え方こそ理解できなかった。どうして頭が無いだけで気持ちが悪いと言えるのだろう? 生きているか死んでいるかは、そんなに重要な事なのだろうか?

「こんなに可愛い猫ちゃんなのに…」

 不思議そうに呟いた彼女は、そのまま何事も無かったかのように死骸を抱いて家に帰る。

 そして母親が見つけて取り上げるまで――…彼女は、首の無い猫の死骸と楽しそうに遊んでいた。

 

 

 その日を境に、ユミルの趣向は大きく変わった。

 猫への愛情は次の日には忘れていたが、代わりに可愛いと思ったものの首を切り落とす奇行を取り始めたのだ。始めは親に買い与えられた縫いぐるみの首をハサミで切断し、次はリビングに飾られていた白雪姫と小人達の人形の首を切り落とした。

 彼女が首の無い人形を使ってごっこ遊びをする様はすぐに母親の知るところとなったが、母は決して娘を強く叱るような事はしなかった。死骸で遊ぶよりは良いと考えたのかも知れないし、我が子に甘い母だったので気のすむようにさせてあげようと思ったのかも知れない。

 あるいはしばらくすれば元に戻るだろうと安易に考えていたのかも知れないが、少なくとも彼女の趣向は自然に治る事は無かった。

 ユミルにとって首を切り落とすという行為は「可愛いものが二つに増える」程度の認識でしかなく、悪い事だとは思う気持ちは微塵もなかった。ある時は庭先で見つけた蟻や蟷螂の首を捻切って瓶に詰め込み、ある時は晒し首のように人形の頭をテーブルに並べてくすくすと笑う。

 その奇行が通っていた幼稚園に知れ渡るのにもそう時間は掛からなかった。仲良しの園児達は彼女を怖がって避けるようになり、先生達も扱いに困っているのが見てとれた。

 ここに来てようやく母親が彼女を叱咤するも、一度根付いた趣味はもはや抑えがきくものではない。母子家庭であったため父親が厳格に嗜める事もできず、ついには家族写真にまで手を出そうとする娘から涙ながらにアルバムを取り上げる事しかできなかった。

 このままでは、娘は歪んだ人間に育ってしまう。何処で間違ってしまったのだろう。病院に連れて行った方がいいのだろうか?

 首の無い縫いぐるみを抱きしめて眠る娘の顔を見詰めながら、母親は毎晩のように思い悩んだ。

 

 

「――ユミルちゃんは、どうして生き物の頭を取ったりするの?」

 ある日の事。幼稚園の砂場で蟻の頭を潰して遊んでいたユミルに、声を掛ける者があった。彼女と同い年の、眼鏡をかけた少年だ。

 少年はユミルの家の向かいに住んでおり、ユミルとは家族ぐるみの付き合いがあった。他の園児達がユミルを避けるようになっても彼だけは変わらずユミルと付き合い続け、こうして皆が聞けない質問を平然と投げかけてくるのである。

 ユミルもそんな少年の事を好いており、蟻を潰す作業を一旦止めると、

「頭を取った方が可愛いから」

 と、当然のように答えた。

「アリさんは捕まえようとすると逃げちゃうけど、頭を取っちゃえば逃げずに遊んでくれるでしょ? だから楽しいの」

「ふーん…。遊んだ後は、どうするの?」

 少年はユミルの隣に腰掛け、緑色の双眸を彼女に向ける。宝石のように綺麗な瞳で顔を覗き込まれるのは何故だか恥ずかしくて、ユミルは思わず目を背けた。

「昨日ユミルちゃんが滑り台の近くで見つけたダンゴムシ、今日もそのままだったよ。ユミルちゃんが頭を潰しちゃったから、おうちに帰れないんですよ、きっと」

 丁寧な口調を交えながら、少年は少し離れた場所にある滑り台を指差す。

 そう言えば、あそこで団子虫の首を取ったっけ……と、ぼんやり思い出したユミルは、死骸をそのままにして帰った事に始めて気付いた。

「頭が無いと可愛いかはわかんないけど……家に帰れないのは可哀想だと思いますよ、僕。あのダンゴムシにも、そのアリさん達にも、お父さんやお母さんがいるんだから」

 責めるような口調では無かった。ユミルの趣味を否定する訳でもなく、ただ遠回しにそれは悪い事だと断ずるその声に、ユミルは少し沈黙する。

 どんな生き物にも命がある。その命を安易に奪ってはいけない。母親に再三言われて遂には理解できなかった事が、「おうちに帰れない」と言葉を変えられた事で初めて理解できたような気がして、初めてユミルの心はずきりと痛んだ。

「……メリスくんは、やめた方がいいと思う?」

 既に何匹か潰した蟻の死骸を指で摘み上げながら、ユミルは尋ねる。メリスと呼ばれた少年は少し間を置いた後、「うん」と小さく頷いた。

「…じゃあ、やめる」

 少年の意見をすんなり受け入れたユミルは、蟻の遺骸を近くの巣穴にねじ込む。

「おうちに帰れないのは可哀想だもんね…。メリスくんがやめた方がいいって思うなら、そうする」

 母の懇願や友達の不安でさえ動かなかった彼女の心がこうも簡単に変わったのは、ちょっとした奇跡であった。

 それ程の力が――…母親の言葉以上にユミルに影響を与える力が、このメリスという少年にはあった。

 ユミルより一日早くこの世に生まれ、兄妹のように一緒に育った彼は、ユミルにとって心を照らす光だった。側に居るだけで暖かく、真っ直ぐな気持ちで自分と向き合ってくれる清らかな光…。

 その(かれ)が言うのならば、やめた方がいいのだろう。ユミルが考えを改めたのはその程度の理由でしかなかったが、彼女にとっては何より重要な事であった。

 それ以来、ユミルが生き物の首を切断する事は無くなった。

 頭の無いものを可愛いと思う気持ちは変わらなかったが、生きているものを殺してしまうのは悪い事だ。少年の言葉でそう考えるようになった彼女は、蟻や蟷螂を見かけても興味を示さなくなった。

 無論、一度付いた印象は簡単に消えるものでは無い。彼女が生き物を殺さなくなった後も園児達は彼女を恐れ続けていたし、大人達もユミルの行動を警戒しているようだった。…が、そんな事はユミルにはどうでも良かった。

 やがて一年の時が経ち、幼稚園を卒業したユミルとメリスは揃って小学生となる。同じ学校、同じクラス、通学路も同じ。ユミルの首狩り趣味が再発する事も無く、二人は穏やかな日常を過ごして居た。

 その時が、訪れるまでは。

「ねぇメリスくん…。メリスくんは大きくなったら何になりたいの?」

 小学校からの帰路。まだ真新しいランドセルを背負いながら二人で歩いている途中、何気なくユミルは尋ねた。メリスは緑色の髪を揺らしながら首を傾げ、「大きくなったらですか?」と鸚鵡返しに答えた。

「どうしたんですか、突然?」

「…ううん。ただ、何となく聞いてみたいなーって思って」

「将来の夢かぁ…。そうですねー」

 メリスは難しい顔をして、緑色の瞳を辺りに巡らせる。やがて彼は道端に咲いた一輪の花を見つけると、ぱっと表情を明るくしてユミルの方を振り返った。

「お花屋さんかなっ。僕、花を育てるのも見るのも好きですし、お花屋さんになってみたいです」

「お花屋さんかぁ…。そう言えばメリスくん、お昼休みはお花の所にいる事多いもんね」

「綺麗ですからね、学校のお花は。…ところで、ユミルさんは大きくなったら何になりたいんですか?」

 高揚した表情で笑いながら、今度はメリスの方から同じ質問を投げかけて来た。

 よもや聞き返されるとは思っていなかったユミルは困ったように思案投げ首した後、伸びた前髪の間から覗く紫色の瞳をメリスに向けた。

「……お花屋さん、かな…」

「お花屋さんって…、それじゃ僕と同じじゃないですか」

 珍しくむっとした表情を浮かべるメリスを見て、ユミルはくすくすと笑う。揶揄ったつもりはなかったが、その反応はあまりにも楽しかった。

「私はお花はそこまで好きじゃないけど……メリスくんがお花屋さんになるなら、私もお花屋さんになろうかなーって思ったの」

「…じゃあ、僕がケーキ屋さんになりたいって言ったら?」

「ケーキ屋さんになろうかな…」

「もーっ。マネしないで下さいよーっ」

 口を尖らせて拗ねるメリスの様子に、ユミルはまたくすくすと笑う。

 嘘では無かった。メリスという光とずっと一緒に居られるのなら、花屋でもケーキ屋でも構わない。そう願う気持ちが、彼女の胸の内にはあった。

 無自覚で、幼くて、ささやかな願い。この一瞬を永遠の中に閉じ込めるような、そんな望みに思いを馳せていると……周囲の人々の様子がおかしい事に、ユミルは初めて気付いた。

「あれ…?」

 思わず足を止めて、辺りをぐるりと見渡す。

 彼らの周りには老若男女様々な人が歩いていたのだが、いつしか彼らは足を止めて、怪訝な表情で空を見上げていた。何か奇妙な物でも見つけたかのように。

「ねぇ、何アレ…?」

立体映像(ソリッドビジョン)? 誰か近くでデュエルしてんじゃないの?」

「いや、あんなの見た事ないけど…。えっ、ていうかどうなってんのあれ?」

 人々は口々に呟きながら、じっと空を見詰めている。思わず同じように空を見上げたユミルは――、初めて目の当たりにする光景に戦慄した。

 彼らの頭上――…青い空には、亀裂が入っていた。

 強化ガラスに岩をぶつけたような、不規則なヒビ。そんなものが何もない空間に無数に生じていたのだ。幼いユミルとメリスにはそれが異常な光景だとはわからなかったが、おかしな事であるのは理解できた。

「何だろう、お空にヒビが入ってる…。メリスくん、あれ何だかわかる?」

「い、いえ…。あんなの初めて見ますけど…」

 同じように空を見上げながらメリスが返す。何が起きているのか訳がわからないでいると――…亀裂の中から黒い何かが噴出して来るのを、ユミルは見た。

 それは黒い羽根であった。烏の羽根に似た形の、直径3cm程しかない小さな羽根…。無数に現れたその羽根は空一面に広がったかと思うと、雨の如くユミル達の頭上に降り注いだ。

「わっ――!」

 思わず頭を庇ったユミルの髪を黒い羽根が撫で、そのまま背後に擦り抜ける。他にも幾つかの羽根がユミルの体に触れたが、特に痛みは感じなかった。

 ただ、得体の知れない何かが起きている……という感覚だけは確かにあり、このままここでじっとしているのは危険だと彼女の本能は告げていた。

「何か変だよ…。メリスくん、早く家に帰ろう?」

 衣類に付着した羽根を手で払いながら、メリスに声を掛けると――…。たった今まで隣に居た筈の彼が、忽然と姿を消していた。

 ほんの一瞬だ。ユミルが頭を庇い、思わず目を閉じた一瞬のうちに。同じように頭を庇うメリスを横目で確認した、その次の瞬間に。まるで最初から存在していなかったかのように、メリスの姿はユミルの視界から消え去った。

「……メリス、くん…?」

 光が、消えた。

 そんな不吉な言葉が脳裏を過ったと同時、すぐ近くから人々の悲鳴が聞こえて来て、ユミルは表情に不安と恐怖を浮かべてそちらを見る。そこには、降り注ぐ黒い羽根から逃げ惑う人々の姿があった。

 悪夢のような光景であった。黒い羽根の一つが走る男性の肩に触れたかと思うと、その男性は体の全てが光の粒子となって蒸散し、消えていく。彼だけでは無い。自分と同じ制服を着た子供、杖を突いた老人、スーツ姿の女性――…黒い羽根に触れた者は皆粒子となって、空気の中に溶けて行った。

 中には日傘を盾に羽根を振り払おうと試みる者も居たが、羽根はその日傘を先に消滅させ、次いでその持ち主を消滅させる。近くに留めてあった自転車、消滅した子供が持っていたサッカーボールといった物も、次々と羽根に呑まれて消えていった。

「きゃあぁぁ! 誰かっ、誰かぁ――!」

「助けて! 助け――、」

「うわぁぁ! いったい何がどうなっ――、」

 消えていく。この世の終わりのような絶叫を上げながら、人々が消えていく。

 その阿鼻叫喚な光景を目の当たりにして、ユミルは気付いてしまう。メリスが何故、自分の傍から消えてしまったのか。どのようにして消滅したのかを。

「あ…、ああぁ…。あぁぁ…! あぁぁぁッ……!」

 人々が消えていく。街が、景色が、黒い羽根に塗り潰されていく。亀裂からは新たな羽根が次々と現れ、人々の悲鳴さえも無へと還していく。

 そんな中、ユミルだけは羽根に触れても無事だったのだが――…そんな事は彼女にはどうでもいい事だった。

 光が消えた。自分のすぐ傍で、メリスくんが消えた。周りの人達と同じように。私が目を閉じてる間に消えてしまった。理解できない状況の中、その事実だけがユミルの心を蹂躙し、彼女は頭を抱えてその場に崩れ落ちる。

「メリスくんが…っ。わ、私の……何処かに、行っちゃって……何処に…!」

 消えた。死んで、消え失せた。崩壊する世界の中、ユミルは絶望と涙で顔を濡らして心を四散させていく。

「あ…、あぁ……うあぁぁぁあぁ!」

 声にならない声が涙と共に溢れ出て来て、無音の空間に木魂していく。

 黒い羽根は、ユミル以外の全てを消し去って、広く遠く、空を覆っていく――。

 

 

――――――

 

―――――

 

――――

 

 そして現在。八歳となったユミルは(タワー)の名で呼ばれるようになり、“教皇”の部下として働いていた。

 消えた(メリス)は、二度と戻っては来ない。その事実を受け入れるのはとても辛い事だったが、いつまでも悲しみに暮れている訳にはいかない。今は教皇の命令に従って、目の前の敵(ミランダ)を倒すだけだ。

 生まれ持った趣向が異端の札という武器となるのならば、教皇の信頼に応える事は難しくは無い。塔はにやりと笑みを浮かべ、こちらを睨みつけるミランダを見つめ返した。

 

 

 【ミランダ】 LP:8000

 手札:1枚

 モンスター:凍氷帝メビウス(攻撃表示)

 魔法&罠:伏せカード×1

 ペンデュラム:無し

 フィールド:無し。

 

 【塔】 LP:6700

 手札:2枚

 モンスター:無し

 魔法&罠:無し

 ペンデュラム:無し

 フィールド:無し

 

 「凍氷帝メビウス」 モンスター

 水属性 水族 ☆8

 攻撃力2800 守備力1000

 効果:このカードはアドバンス召喚したモンスター1体をリリースしてアドバンス召喚できる。

 このカードがアドバンス召喚に成功した時、フィールド上の魔法・罠カードを3枚まで選択して破壊できる。このカードが水属性モンスターをリリースしてアドバンス召喚に成功した場合、その時の効果に以下の効果を加える。

 ●この効果の発動に対して相手は選択されたカードを発動できない。

 

 

「私のターンだね…」

 不敵な微笑を浮かべつつ、塔は自らのターンを開始する。

 攻撃の要となる筈の《未染色の塔(アンステンド・タワー)》があっさり処理されたのは痛手だったが、異端の札はデッキにまだ二枚残っている。今は残された三枚の手札でどう勝利を目指すかが重要と気持ちを切り替え、塔はさっと手札から一枚のカードを発動させた。

「魔法カード、大熱波を発動…。次の私のドローフェイズまで、全ての効果モンスターの召喚と特殊召喚は封じられるよ…」

 塔が発動したカードから異常なまでの熱波が発生し、フィールドを覆い尽くす。《メビウス》は自身の傍に氷塊を発生させる事で身を守るが、《大熱波》そのものに対処する事はできず、しばらくは効果モンスターの召喚は不可能となった。

 無論、この影響は塔自身も受ける事になり、あまり相性の良いカードとも思えないが……例によってイラストを理由に採用したのだろう。カードに描かれている恐竜の頭部は、炭化され白骨化していた。

「うふふ…。そして手札から、首なし騎士ちゃんを召喚…!」

 塔がそのカードを決闘盤に叩き付けると、彼女の背後の闇から一体の騎士が現れ、彼女の身を護るかのようにミランダの前に立ちはだかる。先のターンに彼女が手札に加えたモンスター、《首なし騎士》である。

 その名の通り首から上は失われており、然したる特徴を持たないモンスターであるが、塔はこのモンスターを非常に気に入っていた。その理由に関しては、もはや言及の必要はあるまい。

「更に魔法カード、馬の骨の対価を発動するよ…。首なし騎士ちゃんを墓地に送って、代わりにデッキからカードを二枚ドローする…」

 召喚されたばかりの《首なし騎士》が闇へと還り、塔は二枚のカードをデッキから補充する。

 理想はここで二枚目の《未染色の塔》を引き当てる事であったが、流石にそう上手くはいかなかった。と言って悪い引きでも無く、塔は口元を吊り上げてドローしたカードをそのまま決闘盤に差し込んだ。

「どんどん増やすよ…。魔法カード、黙する死者を発動…! 首なし騎士ちゃん、帰っておいで」

 彼女が発動させたのは、通常モンスター専用の蘇生魔法。墓地に送られたばかりの《首なし騎士》が再び塔の場に蘇り、その場で防御の構えを取る。

「そしてこの瞬間――、速攻魔法、地獄の暴走召喚を発動っ! 首なし騎士ちゃんを更に二体、私の場に並べるよ…!」

「むっ…」

 厄介なカードを……と思わず舌打ちするミランダを余所に、塔はデッキと墓地から第二第三の《首なし騎士》を選び、決闘盤に叩き付ける。

 身を護る《首なし騎士》の両隣に全く同じ姿の亡霊が二体現れ、さながら三つ子の様に塔の場に綺麗に並ぶ。首の無いモンスターが三体展開される姿は、ミランダをして不気味に感じられた。

 これで塔の場には壁モンスターが三体。本来であればミランダも《暴走召喚》の恩恵によって《メビウス》を可能な限り特殊召喚できるのだが、《大熱波》で効果モンスターの召喚を制限している以上、効果を利用される心配も無い。

 もっとも《撲滅の使徒》の効果でミランダのデッキを確認した限り、彼女のデッキにはもう《メビウス》は存在しない筈だが…。塔はもう一度くすりと笑みを浮かべると、三体並んだ亡霊を楽しげに見つめてターンを終了した。

 

 

 「大熱波」 通常魔法

 効果:メインフェイズ1の開始時に発動する事ができる。

 次の自分のドローフェイズ時まで、お互いに効果モンスターを召喚・特殊召喚する事はできない。

 

 「首なし騎士」 通常モンスター

 地属性 悪魔族 ☆4

 攻撃力1450 守備力1700

 テキスト:反逆者に仕立て上げられ処刑された騎士の亡霊。

 失ったものを求め、出会った者に襲いかかる。

 

 「黙する死者」 通常魔法

 効果:①:自分の墓地の通常モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを守備表示で特殊召喚する。

 この効果で特殊召喚したモンスターは攻撃できない。

 

 「地獄の暴走召喚」 速攻魔法

 効果:①:相手フィールドに表側表示モンスターが存在し、自分フィールドに攻撃力1500以下のモンスター1体のみが特殊召喚された時に発動できる。

 その特殊召喚したモンスターの同名モンスターを自分の手札・デッキ・墓地から可能な限り攻撃表示で特殊召喚し、相手は自身のフィールドの表側表示モンスター1体を選び、そのモンスターの同名モンスターを自身の手札・デッキ・墓地から可能な限り特殊召喚する。

 

 

「私のターン!」

 続いてミランダのターン。彼女はドローしたカードを確認すると、塔の場に並んだ《首なし騎士》に目を向ける。

 単体では大した脅威では無いが、同時に三体も出されたのは厄介だ。《撲滅の使徒》で確認した限り塔のデッキには通常モンスター用のサポートカードがいくつか投入されているし、シンクロ召喚やエクシーズ召喚に使用される可能性も十分考えられる。

 全て破壊しようにも、《大熱波》によってこのターンは効果モンスターの展開を封じられている。現状でこちらが動かせるモンスターは《メビウス》一体、あちらは三体。攻撃を仕掛けたところで、二体は残る計算だ。

(面倒ね…。ま、メビウスだけで押し切れるとも思ってなかったけど)

 不穏な状況を「面倒」の一言で済ませ、ミランダはバトルフェイズに突入する。塔が何をして来ようが受けて立つ、彼女の目はそう語っていた。

「行くわよ! 凍氷帝メビウスで、首なし騎士を攻撃!」

 ミランダの指示を受けた《メビウス》は側にあった氷塊を一つ拳で粉砕し、鋭い槍のように砕けた欠片を掴んで《首なし騎士》に向かって投擲する。狙いは《暴走召喚》で特殊召喚された内の一体、《黙する使者》で出された方は残しておいた方が都合がいいという判断だ。

 塔には手札も伏せカードも無く、この攻撃を止める術は無い。標的となった《首なし騎士》は氷の槍によって胸を貫かれ、光の粒子となって消滅した。

「あーあ、壊しちゃった…。勿体ない勿体ない…」

 そう呟いて、けらけらと笑う塔。《首なし騎士》の破壊は想定内、驚くには値しないという事だろう。

 だが、これで残る《首なし騎士》は二体。少なくとも三体を素材にエクシーズ召喚される危険は抑えたが、ここから先は塔の出方次第だ。

「…手札からモンスターをセットして、ターンエンドよ」

 少し思案した後、ミランダは念の為に守りを固めてターンを明け渡す。

 《大熱波》は召喚と特殊召喚を封じるが、セットまでは制限する事ができない。従って効果モンスターを壁として出す分には何ら問題は無かった。

 

 

「そろそろ、メビウスちゃんのお首が落ちる時間かなぁ…?」

 くすくすと微笑を浮かべながら、塔は新たなカードを手札に加える。彼女は引いたカードを一瞥すると、言葉通りまずは《メビウス》の排除に取り掛かった。

「私の可愛いモンスターちゃんを見せてあげる…。二体の首なし騎士を素材にして、ランク4、『シリアル・チョッパー』をエクシーズ召喚っ!」

 二体並んだ《首なし騎士》の姿が消え、代わりに巨大な肉切り包丁を二本手にした大男が出現する。料理人風の衣装は鮮血で汚れ、肉切り包丁にも赤黒い血がこびり付いている。如何にもな猟奇的な外見だが、彼女にしては珍しく頭と胴体が繋がっているモンスターであった。

 その攻撃力は2200ポイントと僅かに《メビウス》に届かないが、エクシーズモンスターの強みは攻撃力よりも効果にある事が多い。当然、この《シリアル・チョッパー》にも強力な効果が内蔵されているのだが――…塔がその効果を発動するよりも早く、ミランダの伏せカードが翻った。

「永続罠カード、アイスバーンを発動! 私の場に水属性モンスターが存在する限り、召喚・特殊召喚された水属性以外のモンスターは守備表示になるわ!」

「っ……!」

 突如雄叫びを上げた《メビウス》が右の拳で地面を叩くと、周囲の地面が一瞬にして凍り付く。その範囲はミランダはもちろん塔の場にも及び、凍結した地面に足を滑らした《シリアル・チョッパー》はその場で転倒していた。

 これにより《シリアル・チョッパー》は守備表示となり、事実上このターンの攻撃が不可能となる。しかし塔は少しも気にする様子も無く、自身のターンを続行した。

「エクシーズ素材を一つ取り除いて、シリアル・チョッパーの効果を発動するよ…。私とお姉ちゃんの場のモンスターを一体ずつ選択して、その両方を破壊するの…」

「破壊効果…。なるほどね」

「もちろん、破壊するのはメビウスちゃんだよ…。ふふっ…、あはははっ…」

 肉切り包丁を地面に突き刺して立ち上がった《シリアル・チョッパー》が、右手に持った包丁を《メビウス》目掛けて水平に投擲する。血に染まった凶器は《メビウス》の首を容易に切り飛ばし、その後ろに居たミランダの頬をも掠めた。

 頭部を切り落とされた《メビウス》は大きく仰け反ったかと思うと、その場に倒れ消滅する。《メビウス》が消えた事で《アイスバーン》の効果は一時解除され、凍り付いていた地面は元通りに戻った。

「うふっ……あはっ、あははは! やぁっと一つ目! メビウスちゃんの可愛いお首が取れちゃったね…!」

「…喜んでるところ悪いけど、シリアル・チョッパーの効果はあんたの場のモンスターも破壊するって話だったわよね? そっちの方はどう処理するつもり?」

 デュエルを観戦しているクリフの様子を気にかけながら、ミランダは問う。

 塔の場のモンスターは《シリアル・チョッパー》のみ。塔の説明が事実なら、《シリアル・チョッパー》は自身を破壊するという事になるが――…。

「チョッパーちゃん、チョッパーちゃん。次は自分の首を取っちゃおうね…?」

 歪んだ笑みを浮かべたまま塔が命じると、《シリアル・チョッパー》はもう一本の肉切り包丁を両手で握りしめ、今度は自らの首を切断する。

 やはりか。何処か予期していたミランダは、転がった頭部を目に高笑いする塔を無視して再びクリフの様子を確認する。どうやら百合が上手く目隠しした為モンスターの頭部が切り落とされる瞬間は見ていないようだが、塔の異常な雰囲気とモンスターの外見に怯えているのが見て取れた。

(思っていた以上に……こいつとのデュエルは、クリフの清らかな心には良くないわね)

 塔への敵意を更に強め、ミランダは心の中で確実な勝利を弟に誓う。そして再び目の前の敵に向き直った時、塔は高笑いを止めてターンの進行を続けていた。

「次はねー……『首なしの道化師(ヘッドレス・ジェスター)』を召喚するよ」

 塔の場に現れたのは、六つの眼球をジャグリングしながら踊る首の無い道化師。クリフ、亮助とのデュエルでも使用した、墓地の通常モンスターを蘇生する効果を持ったモンスターだ。

「首なし道化師ちゃんの効果で、墓地から首なし騎士ちゃんをもう一度蘇生するよ…」

 くすりと塔が笑うと同時、たった今墓地へ送られた《首なし騎士》が大地を砕いて復活する。それを見て、ミランダは思わず舌打ちした。

 塔の悪趣味に対してでは無い。《道化師》と《首なし騎士》がどちらもレベル4モンスターである事に気付いたが故の舌打ちだった。

「うふふ…。レベル4の道化師ちゃんと首なし騎士ちゃんを素材にして、もう一度エクシーズ召喚だよ…」

 案の定、塔は二体のモンスターを用いて再度エクシーズ召喚を実行する。彼女の目の前に現れた異空間が悪趣味なモンスター達を飲み込み、爆発。更に悪趣味な外見のモンスターを、彼女の場に産み落とした。

「今度のはね、ちょっとエッチで可愛いよ…。エクシーズ召喚、『ネクロフィリア・パラムール』っ!」

 現れたのは、筋骨隆々の上半身を晒した人型モンスター。左右の手の甲に鍵爪のような武器を装備し、攻撃力は2500ポイントとなかなかの数値を誇る。

 外見はこれまで塔が使用したモンスターの例に漏れず首から上が存在しないグロテスクなデザインなのだが、このモンスターは特に酷く、腹部を刃物か何かでばっくりと切り開かれてそこに男性の頭部が深く埋め込まれている。恐らくは《パラムール》自身の頭なのだろう、血と涙に汚れた無残な姿だった。

 死体愛好家の情夫と名付けられたそれは、意思を持たない肉人形の如くその場で立ち尽くす。その醜悪な姿はミランダでさえ目を背けたくなる程であった。

「これはまた…、何とも悪趣味なモンスターが出て来たものね。どうしてそこまで頭部の有無に拘るのか、理解に苦しむわ」

「そうかなぁ…? ケーキやビスケットと同じだよ。お姉ちゃん達、ケーキは食べた事無いの?」

 微笑を浮かべ、意味不明な答えを返す塔。理解できない相手なのはわかっていたが、つくづく言葉が通じないと痛感した。

「そうそう。パラムールちゃんは我が儘な子でね、エクシーズ素材を一つ取り除かないと攻撃してくれないの。私はパラムールちゃんから首なし騎士を取り除いて、お姉ちゃんの裏守備モンスターを攻撃するよ」

 楽しげに笑う塔が攻撃を命じると、《パラムール》がビクンと体を跳ねさせ、ミランダの場のモンスターに向かって突進する。

 《アイスバーン》の効果が解除されている今、その攻撃を止める手段は彼女の場には無い。セットモンスターはカード状態のまま鍵爪によって引き裂かれ、その姿を場に出現させた。

「――破壊されたオーロラ・ウィングの効果発動! このカードが戦闘で破壊された場合、攻撃表示で場に蘇生されるわ!」

 ミランダがセットしていたのは、その名の通りオーロラような美しい色彩を持つ鳥獣族モンスター。その翼と尾羽は天女の羽衣のように柔らかで、《パラムール》に引き裂かれても即座に治癒し、何事も無かったかのようにミランダの場に復帰する。

 1ターンに1度という制限こそあるものの、実質的な戦闘破壊耐性を持つモンスターだ。守備表示で出していた事もありミランダにダメージは無い。塔は心底つまら無さそうに項垂れたかと思うと、「まあいっか」と気を取り直してターンを続行した。

「私はこれでターンエンド…。この瞬間、破壊されたシリアル・チョッパーの効果が発動するよ…」

 塔が宣言すると同時、、つい先ほど破壊されたばかりの《シリアル・チョッパー》が闇の中から現れ、彼女の場に蘇る。

 その姿は召喚された時のままの状態に戻っており、切断した頭部も繋がっている。エクシーズ素材は失われているものの、完全蘇生と言っていい状態であった。ただし、《オーロラ・ウィング》が表側表示となった事で《アイスバーン》の効果も復活、特殊召喚された《シリアル・チョッパー》は再度転倒して守備表示となっていた。

「へぇ、どうりで…。自己再生効果を持ってたって訳ね」

「うふふ…、正解。シリアル・チョッパーちゃんは私のカードの効果で破壊された場合、エンドフェイズに復活するの。何回でも、何回でもね…。もちろんエクシーズ素材は墓地に行っちゃったから、もう破壊効果は使えないけど…」

 そう言うと、塔は両手で顔を覆ってまたくすくすと笑い始める。このターン中に首が取れたモンスター達の事を思い出しているのだろう、とても正気と保った者の笑い方には見えなかった。

 

 

 「アイスバーン」 永続罠

 効果:自分フィールド上に水属性モンスターが表側表示で存在し、水属性以外のモンスターが召喚・特殊召喚に成功した時、そのモンスターは守備表示になる。

 

 『シリアル・チョッパー』 エクシーズ

 闇属性 悪魔族 ランク4

 攻撃力2200 守備力1300

 効果:悪魔族レベル4モンスター×2

 ①:1ターンに1度、このカードのX素材を1つ取り除き、自分及び相手フィールドの表側表示モンスターを1体ずつ選択して発動できる。選択したカードを破壊する。

 ②:このカードが自分のカードの効果によって破壊された場合、そのターンのエンドフェイズに発動できる。このカードを墓地から攻撃表示で特殊召喚する。

 

 『首なしの道化師(ヘッドレス・ジェスター)』 モンスター

 地属性 魔法使い族 ☆4

 攻撃力1200 守備力1200

 効果:このカードの召喚に成功した時、自分の墓地の攻撃力1500ポイント以下の通常モンスター1体を選択して発動できる。

 そのモンスターを特殊召喚する。

 

 『ネクロフィリア・パラムール』 エクシーズ

 闇属性 悪魔族 ランク4

 攻撃力2500 守備力2000

 効果:悪魔族レベル4モンスター×2

 ①:このカードがモンスターゾーンに存在する限り、このカードの攻撃宣言の際に、自分はこのカードのX素材を1つ取り除かなければならない。

 ②:このカードが自分の墓地から特殊召喚された場合に発動する。このカードの①の効果は無効化され、このカードの攻撃力は1000ポイントアップする。

 

 「オーロラ・ウィング」 モンスター

 水属性 鳥獣族 ☆4

 攻撃力1200 守備力1600

 効果:このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、このカードを表側攻撃表示で特殊召喚できる。

 「オーロラ・ウィング」の効果は1ターンに1度しか使用できない。

 

 

「これ以上好きにさせる気は無いわ…。私のターン!」

 意気込みを込めた開始宣言と共に、ミランダのターンが開始する。

 《メビウス》が破壊された事は痛手であったが、ミランダとて凡庸な決闘者では無い。いつまでも一体のモンスターに頼るつもりは無かったし、次の手は既に用意してある。彼女はドローしたカードを確認すると、まずは先のターンに引いたカードを決闘盤に差し込んだ。

「魔法カード、死者蘇生を発動! 私の墓地からブリザード・プリンセスを特殊召喚するわ!」

 ミランダの墓地から白いドレスを身に着けた氷の王女が、暖かな光に包まれて蘇る。その攻撃力は《パラムール》を上回る2800ポイント、この時点で《パラムール》の処理は確定した。

「更に手札から、スノーマン・クリエイターを召喚よ!」

 次いで彼女が召喚したのは、雪だるまのような形状をした青色のマシン。半透明のパイプからは巨大な氷が常に供給され、腹部の作業台にて雪の結晶に加工、更に内部のハンドユニットを用いて雪だるまを作成している。

 作業台はそのままベルトコンベアに繋がっており、完成した雪だるまを相手の場に送り込む仕掛けになっていた。

「スノーマン・クリエイターが召喚された時、私の場の水属性モンスターの数だけ相手モンスターにアイスカウンターを乗せる事ができるわ。私の場にはクリエイター自身を含め水属性モンスターが三体、従って三つのカウンターをパラムールに乗せる!」

 稼働した雪だるま製造機が瞬く間に三つの雪だるまを作成し、ベルトコンベアで《パラムール》の傍に郵送する。何処かほのぼのとした効果演出に塔は目を丸くするが、この効果は見た目ほど優しいものでは無かった。

「そしてスノーマン・クリエイターのアイスカウンターが三つ造られた場合、相手フィールド上のカードを一枚破壊する事ができる! その効果でシリアル・チョッパーを破壊するわ!」

「あっ…」

 三つ目の雪だるまが塔の場に設置された瞬間、その雪だるまの底面(あしもと)から正体不明の怪物が現れ、傍に居た《シリアル・チョッパー》に飛び掛かり、鋭い牙で腹部を噛み千切った。

 不意を突かれた《シリアル・チョッパー》は断末魔の叫びを上げて倒れ、光の粒子となって消滅する。怪物は再び雪だるまの底面に潜り込むと、最初から居なかったかのようにその姿を暗ました。

「……シリアル・チョッパーちゃんがっ…」

「さあ、バトルよ! ブリザード・プリンセスで、パラムールを攻撃!」

 準備は整ったとばかりにミランダが命じ、氷の王女は手に持った氷塊のモーニングスターを水平に振り回す。氷塊は三つの雪だるま諸共《パラムール》を砕き、反撃すら許さず葬った。

 二体のエクシーズモンスターが消え、これで塔の場はがら空きとなった。この機を逃す理由は無い、ミランダは続けて二体のモンスターに攻撃を命じた。

「さーて、一気に叩き込もうかしら。スノーマン・クリエイターとオーロラ・ウィングで、直接攻撃!」

 雪だるまの残骸から飛び出た怪物と《オーロラ・ウィング》が同時に塔に襲い掛かり、そのライフを削りに掛かる。

 モンスターを失い、伏せカードも無い彼女にその攻撃を防ぐ方法はない。二体の攻撃はすんなりと通り、《ブリザード・プリンセス》による戦闘ダメージを含め、彼女のライフは大きく削られた。

「……むぅぅ…っ」

「ま、こんな所かしらね。私はこれでターンエンドよ。さあ、足掻けるものなら足掻いてみなさい」

 ミランダは煽るように吐き捨て、その場で腕組みする。

 塔の場にはもはや一枚のカードも無く、手札も存在しない。デュエルの流れは完全にミランダが掌握したと言っていいだろう。じんわりとであるものの、両者の実力差は確実に戦局に現れていた。

 

 

 「死者蘇生」 通常魔法

 効果:①:自分または相手の墓地のモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。

 

 「スノーマン・クリエイター」 モンスター

 水属性 機械族 ☆4

 攻撃力1600 守備力1000

 効果:このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時に発動できる。

 自分フィールド上の水属性モンスターの数と同じ数だけ、相手フィールド上に表側表示で存在するモンスターにアイスカウンターを置く。

 この効果で置いた数が3つ以上の場合、さらに相手フィールド上のカード1枚を選んで破壊できる。

 

 【塔】

 LP:6700→6400→4800→3600

 

 

 ミランダのターンが終わり、次いで塔のターンが訪れる。

 自身の不利を感じてか彼女の表情には明らかな苛立ちが浮かんでおり、鋭い目付きでミランダを睨みつけていた。

「……教皇のおじちゃんはね…」

 カードを引こうと決闘盤に伸ばした手を止めて、塔が呟く。

「教皇のおじちゃんは……皆を守る為に戦ってるの。あの黒い羽根から、色んな人達を助ける為に頑張ってるんだよ…。誰かに頼まれた訳でも無いのに……私が生まれるずっとずっと昔から、皆を守ろうとしてるんだよ」

 恨み言のような声のトーンで語る塔に、ミランダは無言で双眸を向ける。

 彼女が何を言おうとしているのか、ミランダにはわからなかったし、わかる気も毛頭ない。ただ、塔の言葉の奥には執念のようなものが見え、初めてミランダは彼女の言葉に関心を向けた。

「だから私は、教皇のおじちゃんを守る為に戦うの。教皇のおじちゃんの邪魔をする人は、みぃんな私で止めてあげる…! 私のターン!」

 怒気を込めた声で宣言し、塔はカードをドローする。

 だが、どんなに感情を昂らせようと彼女の不利は動かない。塔は睨むように引いたカードを確認すると、そのまま決闘盤に叩き付けた。

「手札から、『飛頭蛮(ひとうばん)の怪女』を召喚するよ…!」

 現れたのは、黒いコートを着た美しい女性。その外見は人間に近くとてもモンスターには見えなかったが、外見とは裏腹に攻撃力は1800ポイントと高めであった。

「飛頭蛮の怪女の効果…! デュエル中に一度だけ、このカードと同じステータスのトークンを特殊召喚できるよ…」

 塔が宣言すると、微笑を浮かべた女性の頭部がふわりと浮かび、胴体から離れていく。どうやらそれぞれ自律して動いているようで、首と胴は切り離されても活動を続けていた。

「なるほど、一体で二体分の働きをするモンスターという事ね…。けど、アイスバーンの効果を忘れちゃいないでしょうね。水属性以外のモンスターは場に出た瞬間、全て守備表示となるわ!」

 凍結した地面に足を滑らせ、《飛頭蛮》の胴体はその場で転倒する。その際に思わず頭の方を掴んでしまい、頭部を巻き込んで揃って守備表示となってしまった。

 攻撃力こそ1800とそこそこの数値の《飛頭蛮》だが、守備力は1000ポイントとリクルーターにすら劣るほど低い。「それじゃ壁にもならないわね」と皮肉るミランダの言葉に言い返せず、塔はそのままターンを終了させた。

 

 

 『飛頭蛮(ひとうばん)の怪女』 モンスター

 闇属性 悪魔族 ☆4

 攻撃力1800 守備力1000

 効果:このカード名の効果はデュエル中に1度しか使用できない。

 ①:自分のターンのメインフェイズに発動できる。自分フィールド上に「飛頭蛮トークン」(悪魔族・地・星4・攻1800/守1000)1体を攻撃表示で特殊召喚する。

 

 

「私のターン!」

 流れが背を押す感覚を感じながら、ミランダはターンを開始する。

 塔のライフは残り3600ポイント。ここはモンスターカードを引いて一気に畳み掛けたい所であったが、ドローしたのは魔法カード《強欲なウツボ》。この状況では使い道のないカードだった。

「…バトルよ! スノーマン・クリエイターとオーロラ・ウィングで、二体の飛頭蛮を攻撃するわ!」

 落胆を胸に仕舞い、即座に攻撃命令を下す。命令を受けた二体のモンスターは素早く《飛頭蛮》を片付け、続く《ブリザード・プリンセス》への露払いとなった。

「次! ブリザード・プリンセスで、塔、あんたに直接攻撃よッ!」

 《クリエイター》と《オーロラ・ウィング》を踏み台にして、《ブリザード・プリンセス》が塔の頭上に飛びあがる。その手に握られた氷塊のモーニングスターを空中で振り回し、塔目掛けて叩き付けた。

「うぅっ…!」

 劣勢の底から、更に劣勢へ。

 成す術なく一撃を叩き込まれた塔のライフは更に減少し、残りライフは遂に三桁に達する。対するミランダのライフは未だ一ポイントも削られておらず、勝敗はもはや歴然としていた。

「これで、いよいよ後が無くなったわね」

 バトルフェイズを終えたミランダが、モンスター達を自分の手元に戻しながら冷ややかに言う。

 次のターンに仕留める。そう意味を含ませた彼女の声に、塔は「まだ終わってない」と敵意で返した。

「教皇のおじちゃんは…、貴方達を捕まえるように私に言ったの。だから、私は負けないよ…。貴方のモンスターをみんな首だけにして、貴方のライフも削り切って、私は――!」

「無理よ」

 突き放すような返答に、塔ならずクリフ達も驚いてミランダを見る。ミランダはデュエルの手を止めて射るような目で塔を睨むと、宣告にも似た言葉を続けた。

「あんたのデッキのカードは全て、最初の撲滅の使徒で把握したわ。あんたのデッキには、この状況を覆せるカードは存在しない。次のターンにあんたがどんなカードを引こうと、たった一枚のカードで逆転はあり得ないわ」

「うっ…」

 思い当たる節があるのだろう。塔は青ざめた表情を浮かべてミランダから一歩距離を取る。その心の動揺を見逃さず、ミランダは更に畳み掛けた。

「もちろん、撲滅の使徒ではエクストラデッキまでは確認できないから、シンクロ召喚やエクシーズ召喚っていう不確定要素もあるにはあるわ。けど――、その可能性もこのカードで確実に潰す。私はカードを一枚セットして、ターンエンドよ」

 可能な限り不安を煽り、ミランダはカードを一枚伏せてターンを終える。

 その伏せカードとはこのターンに引いた《強欲なウツボ》。即ちただのブラフであるが、状況と話術に追い込まれた塔には、強力な罠カードを伏せたように映った事だろう。

「さあ塔、あんたのターンよ。泣いても笑っても、次のドローで全てが決まるわ。あんたの言う教皇に祈りながら、最後のカードを引きなさい」

「わ、私は…! 私は……!」

 声を震わせながら、塔は自らのデッキに視線を落とす。もはや笑みを浮かべる気力も無く、精神的にも追い込まれているようだった。

 この様子なら、再起はあるまい。ミランダは勝利を確信し、ちらりとクリフの方へと視線を送る。彼もまた姉の勝利を確信したらしく、明るい笑みをミランダに向けていた。

 

 

 「強欲なウツボ」 通常魔法

 効果:手札の水属性モンスター2体をデッキに戻してシャッフルする。その後、デッキからカードを3枚ドローする。

 

 【塔】

 LP:3600→800

 

「私は……、私は…」

 同じ事を何度も呟きながら、塔は呆然と立ち尽くす。自らのターンが訪れた事にすら気付かないまま、ただただ目の前の空間に視線を泳がせていた。それ程までに、彼女は追い詰められていたのだ。

 負ける訳にはいかない。ここで私が倒れたら、この敵はきっと“教皇”のおじちゃんと出会ってしまう――…私の光を消してしまう。

 かつて目の前でメリスを失った光景がフラッシュバックし、見慣れた教皇の笑顔と一つに重なる。塔が最も恐れる事は、ただそれだけだった。

 塔にとって教皇は、仲間や指導者という枠組みを越えた存在だった。父親代わりや、恋人なんてものでも無い。あの日失った大切な光……メリスという少年の生まれ変わりだと、彼女は心から信じていた。

 二年前のあの日――。彼女を除いた全てが黒い羽根によって消滅し、何もかもが無くなった世界にただ一人残されたユミルは、あてもなく世界を彷徨っていた。

 太陽や月、お星様さえも失われた死の世界。平らな大地とオレンジ色の空が延々と続くだけの場所。涙は既に枯れ、感情もなくふらふらと歩き続けていると……不意に背後から声を掛けられた。

《君が今度の“異端”かい? 可哀想に、まだ小さいのに》

 久し振りに聞いた、人の声だった。ピクリと肩を竦ませたユミルが振り返ると――、そこには微笑を浮かべた大人の男が立っていた。

 銀縁の眼鏡を掛けた、緑髪緑眼の人物。何処から現れたかも定かでないその男は、ユミルの顔を見てにこりと笑みを浮かべた。

《大丈夫、僕は君の味方だよ。崩壊したこの世界から、君のような生き延びた子を助ける為に来たんだ》

 ユミルが怯えないよう気を使ったのだろう。その声は暖かく清らで――…何処かメリスに似た雰囲気を、ユミルは感じた。

 いや、雰囲気だけでは無い。年齢こそ違うものの、中性的な顔立ちや髪と瞳の色、全てがメリスの生き写しであるようにユミルには見えた。まるで一人だけ大人になった彼が、自分の前に居るかのような…。

《メリス……君…?》

 思わずその名で呼ぶと、男性は心持ち驚いた様子で「君は…」とユミルを見返す。その表情の作り方さえもメリスに酷似していると気付いた瞬間、出尽くした筈の涙が溢れ出て来て、思わずその男性に抱き付いていた。

 生きていた。姿形は変わったけど、私の(メリス)は消えていなかった! 無上の幸福感と安心感に胸がいっぱいになりながら、ユミルはわんわんと泣き叫んだ。

 その男性――…教皇は、そんな彼女の様子に優しく微笑むと、その小さな肩にそっと手を乗せた。

《よしよし、怖かったね。寂しかったね。…もう大丈夫だよ。僕は君の知っている友達じゃないけれど……これからは僕が、()の代わりに君を守るよ。この世のあらゆる残酷さから、どんな事があっても》

 心地の良い善意がユミルをそっと抱きしめ、暖かな光で絶望を払う。――そして、その日を境に“ユミル”は“(タワー)”となった。

 教皇は“異端の札”と呼ぶ力で彼女を自身の拠点に導くと、我が子の様に彼女の世話をした。居場所を与え、毎日の食事を与え、可愛い衣服を与え、年齢相応の教養を与えた。それは一般的な少女とは懸け離れた生活だったかも知れないが、塔にとってはそんな事は問題では無かった。

 教皇という光が居る。彼という絶対的な光が、自分を照らしてくれている。教皇は決して見返りを求めなかったし、彼女がメリスの面影を自分に重ねる事にも肯定的では無かったが、塔にとっては教皇は絶対的な光だった。

(その光が、また消えてしまう――!)

 脳裏に浮かんだトラウマが、現実と噛み合った時。胸の奥底からあらゆる感情が湧き上がってきて、絶望しかけた塔の心を奮い立たせた。

 消させない。今度こそ、私の光を消させはしない。憤怒とも憎悪ともつかぬ感情が胸の内で絡み合い、塔はようやく自らのデッキに手を掛けた。

「私の――、ターンッ!」

 執念の一手でカードを引き抜き、紫色の瞳でドローカードを睨む。何としても教皇を守るという彼女の心が強運を呼び込んだのか、彼女が引き当てたのはこの状況で唯一最良のカードだった。

「ふふっ……はは、あはははッ! 引いた、引いたよおじちゃん…! 魔法カード、命削りの宝札を発動ッ!」

「むっ…!」

 塔が発動したカードを見て、ミランダは顔を顰める。彼女は敢えて口にしなかったが、この《命削りの宝札》は塔に残された唯一の逆転の可能性だった。

 たった一枚のカードでは逆転はあり得ない。それは言い変えれば、複数枚のドローを可能にするカードを引き当てれば逆転の芽がある事を意味している。《命削りの宝札》は、まさにその逆転の芽を生むカードであった。

「命削りの宝札の効果で、私はカードを三枚ドローできる…! ふふ、うふふ……!」

 憑かれたように笑いながら、塔は更に三枚ものカードをデッキからドローする。カードを一枚引き抜く度にぞくぞくと体が震え、最良のカードを引いたのだと感覚で分かった。

「ふふ…、うふふ……勝った…! 魔法カード、ハーピィの羽根箒を発動! 貴方の場の魔法と罠カードを全部、ぜぇんぶ破壊するよ!」

 塔がそのカードを決闘盤に叩き付けると、フィールドに奇妙な《羽根箒》が現れて、厄介だった《アイスバーン》と伏せられていた《強欲なウツボ》を吹き飛ばす。凍り付いた床が再び元通りになり、ミランダの場にはモンスターだけが残った。

「伏せカードは通常魔法…。なぁんだ、てっきりカウンター罠でも伏せたのかと思ったけど……さっきのは嘘だったんだね…」

 塔はにやにや笑いながら墓地に送られたカードを確認すると、そのまま残った二枚の手札を決闘盤に差し込む。

「私はカードを二枚セットして、ターンエンド! うふっ……あは、あはははは…!」

 二枚のカードが場に出現し、彼女の手札は0枚。これでエンドフェイズ時に手札を全て捨てるという《命削りの宝札》のデメリットは事実上回避し、正体不明の二枚のカードをミランダに突き付ける結果となった。

 

 

 「命削りの宝札」 通常魔法

 効果:「命削りの宝札」は1ターンに1枚しか発動できず、このカードを発動するターン、自分はモンスターを特殊召喚できない。

 ①:自分は手札が3枚になるようにデッキからドローする。

 このカードの発動後、ターン終了時まで相手が受ける全てのダメージは0になる。このターンのエンドフェイズに、自分の手札を全て墓地へ送る。

 

 「ハーピィの羽根箒」 通常魔法

 効果:①:相手フィールドの魔法・罠カードを全て破壊する。

 

 

 流れが変わった。デッキからカードをドローしながら、ミランダは状況の僅かな傾きを感じ取る。

 この土壇場で《命削りの宝札》を引き当てた事で、追い詰められていた塔は再び息を吹き返した。それもただ復活したのでは無い。彼女の様子を見る限り、ドローした三枚のカード全てが状況に適したカードであったのだろう。

 まるで得体の知れない力が彼女を後押ししているかのような、そんな不穏な気配――。ミランダは舌打ちし、引いたカードを確認すると同時に行動に移った。

「…オーロラ・ウィングを守備表示に変更して、バトルフェイズ! ブリザード・プリンセスで、直接攻撃するわ!」

 命令を受けた《ブリザード・プリンセス》が小さく頷き、氷塊のモーニングスターをブンブン振り回しながら塔に向かって突撃する。

 この攻撃が通れば塔のライフは0となりミランダの勝利であるが――…やはり、事はそう上手くは運ばない。待っていたとばかりに塔は一枚の伏せカードを翻し、発動させた。

「異端の札、『未染色の塔(アンステンド・タワー)』を発動! 一ターンに一度、相手の攻撃モンスターを破壊する!」

「くっ…」

 やはりか。何処か予期していたミランダは、百合にクリフの目を覆うよう合図を送る。

 翻った塔のカードから無数の生首が出現し、群れを成して《ブリザード・プリンセス》に襲い掛かる。それらはピラニアの如く《プリンセス》の頭部に群がると、肉も骨も噛み砕いて惨殺した。

「あっはっ…! 王女ちゃん王女ちゃん、頭が取れちゃって大変だね? あはは! あはっ!」

 手を叩いてはしゃぐ塔。《ブリザード・プリンセス》を破壊した生首達は一頭ずつ彼女の元へと戻ると、その背後に積み重なって死肉の塔を築き上げる。

 モンスターの破壊に特化した異端の札、《未染色の塔》。デザインも効果も凶悪極まりないこのカードが再び発動した事で、ミランダは確信する。デュエルの流れは今、塔の執念によって変えられつつあると。

「教皇のおじちゃんは言ってたよ…。異端の札の変化は、持ち主の心そのものだって……私の心と願いが、カードに宿るんだって…」

 薄ら笑いを浮かべながら、塔が呟く。その目にはもはや正気は残っておらず、ただデュエルに勝とうという執念だけが浮かんでいた。

「異端の札が私なら、未染色の塔はおじちゃんの為のカードだよ…。教皇のおじちゃんを邪魔する人をやっつけて、おじちゃんを守る為の塔。それが私の異端の札……そうだよね、おじちゃん…? くすくす、うふふふふ…」

「独り言を…!」

 尋常ではない塔の雰囲気に真向からぶつかりながら、ミランダは次の行動に出る。《ブリザード・プリンセス》の攻撃は失敗に終わったが、彼女の場にはまだモンスターがいる。

「あんたの戯言もこれで終わらせるわ! スノーマン・クリエイターで、直接攻撃!」

 胴体だけになった雪だるまが再び動き出し、その底面に潜む怪物が塔に襲い掛かる。

 一ターンに一度という制限を持つ《未染色の塔》では、この攻撃を止める事はできない。今度こそと意気込むミランダだが、その思惑は「リバースカード発動!」と割って入った声に容易く砕かれた。

「罠カード、『外法頭の召喚術』! 私の墓地の同名モンスター三体を特殊召喚して、そのモンスターちゃん達でエクシーズ召喚をする事ができる…!」

「っ…! このタイミングで、エクシーズ召喚を…!?」

 塔の足元に真赤な五芒星が描かれ、そこに三体の《首なし騎士》が出現する。三体の亡霊は黒い粒子となって五芒星の中に取り込まれ、新たなモンスターとなって塔の場に出現した。

「見せてあげる、私の切り札…! エクシーズ召喚、『ネックドレス・デュラハン』!」

 五芒星の中から現れたのは、白銀の鎧を纏った首の無い亡霊。自身の頭部を脇に抱え、右手には巨大な大剣を握っている。同じく首の無い馬に引かれた戦車に乗り込んだ、伝説上の死の宣告者だった。

 その攻撃力・守備力はどちらも《クリエイター》を上回っており、この時点でミランダは攻撃を中止せざるを得ない。しかし塔がこのカードをエクシーズ召喚したのは、ただ攻撃を防ぐ事だけが狙いでは無かった。

「あのカードは…、まさか!」

 最初に気が付いたのは、二人のデュエルを観戦していた亮助だった。

 以前塔とデュエルした事のある彼は、この《ネックドレス・デュラハン》のカードを見た事があった。その時は難なく対処できたものの、このカードが持つ恐ろしい効果を思い出し、《未染色の塔》の効果と重なった瞬間。亮助は青ざめた顔をして叫んだ。

「クリフの姉ちゃんッ! そのエクシーズモンスターは今すぐ破壊しないと駄目だッ! そのモンスターの攻撃を貰ったら、いくらライフが残ってたって!」

 ただならぬ亮助の声に、ミランダは驚いて彼に視線を向ける。

「そのモンスターは特殊勝利効果を持ったモンスターだ! 発動条件は直接攻撃で相手にダメージを与えた時! その子の異端の札は自分のモンスターの攻撃を相手への直接攻撃に変える効果を持っているから、今ここでデュラハンを倒しておかないと――!」

 ぞわりと肌が泡立つ感覚が、全身を駆け巡る。

 直接攻撃によって発動する特殊勝利……そんな隠し玉を持っていたか。ミランダは亮助の警告を受け取ると、塔の執念の化身とも言うべき《デュラハン》を睨んだ。

 直接攻撃をトリガーに発動する特殊勝利効果と、モンスターに直接攻撃を与える効果。なるほど亮助の言う通り、えげつないほど相性がいい。恐らく唯一であろう勝ち筋をここに来て展開してくるとは、その怨讐の強さに驚嘆する他無かった。

 このコンボを崩すには《デュラハン》か《未染色の塔》を破壊するより他無いが、ミランダの手札にはそれを可能にするカードは無い。圧倒的有利が一転、抜き差しならない状況に陥っていた。

「……不味いわね」

 素直に窮地を認めながら、しかしミランダの余裕は崩れない。彼女は場に残った二体のモンスターに目を向けると、素早く次の手を打った。

「メインフェイズ2! 私はカードを一枚セットして……レベル4のオーロラ・ウィングとスノーマン・クリエイターで、オーバーレイ!」

 二体のモンスターが異空間に呑まれて消え、爆発と共に新たなモンスターを出現させる。

「エクシーズ召喚! 現れなさい、No.39 希望皇ホープ!」

 現れたのは、白と金を基調とした鎧を付けた戦士。エクシーズモンスターとしては程々の攻撃力と、相手モンスターの攻撃を無効にする効果を持ったランク4のモンスター。

 今回のような窮地に陥った際の“保険”として用意していたカードであるが、このデュエルではそれが活きた。攻撃無効効果を持つ《ホープ》ならば、《デュラハン》と《未染色の塔》のコンボを防ぐ事ができる。一時凌ぎではあるものの、次のターンで逆転される危険は辛うじて回避できる筈だ。

「希望皇ホープか…、ミラるんにしては珍しいチョイスのCだねぇ…」

 心持ち驚いた表情を浮かべてで百合が呟く。

「流石のミラるんもこんな形で反撃されるとは読めなかったと見えるね。このデュエル、ひょっとするとひょっとするかもよ」

「えっ…。けど、デュラハンの攻撃はホープの効果で防げるから、少なくとも次のターンは…」

 言い掛けた亮助の言葉を、百合は「いんや」とおっとりした口調で否定する。

「確かにホープが居ればデュラハンの攻撃は防げるよ。でもそれって逆に言えば、ホープが除去されたら今度こそ終わりって事じゃん。…で、あの塔って子のデッキはモンスター除去が得意らしいじゃない。冗談抜きにヤバいよ、これ」

「………」

 何か言い返そうとする亮助だが、言葉が思いつかずに口を噤む。百合の分析は間違っておらず、ここで《ホープ》を破壊されたら最後、もはや後が無い状況だった。

 そんな不穏な空気を察したのだろう。これまでじっと姉のデュエルを見ていたクリフが、不安そうな視線をミランダに向ける。

「……おねえちゃん、負けちゃうの…?」

 うるうると瞳を潤ませながら、クリフがぽつりと呟いた時。ミランダは塔に顔を向けたまま、「そんな訳ないでしょ」と笑って返した。

「安心しなさいクリフ。このデュエル、もう決着はついたわ。…もちろん、私の勝利でね」

「えっ…?」

 ミランダの勝利宣言に、クリフは、百合は、亮助は。そして塔は、目を丸くする。ミランダはそんな視線を浴びながら、再び厳しい表情を浮かべて塔を睨んだ。

「言った筈よ。あんたが何を引こうと、あんたの逆転勝利はあり得ない。あんたの勝ちの芽は、既に潰えたわ」

「…ふーん? 強欲なウツボを伏せて、ハッタリなんかしてたのに?」

 にやりと笑い、皮肉を返す塔。ミランダはこちらも口元を吊り上げ、「予告するわ」と強気に返した。

「あんたは次のターンに敗北する。この希望皇ホープは、デュラハンの攻撃を防ぐ為のカードじゃない。あんたを倒す為の最後の一手よ。あんたはこの希望皇ホープが原因で敗北するわ。確実にね」

「……ふーん」

 塔の顔から笑みが消え、苛立った表情で《ホープ》を見上げる。ミランダは内心ほくそ笑みながら、「私はこれでターンエンドよ」と力強く宣言した。

 

 

 『未染色の塔(アンステンド・タワー)』 永続罠

 “マイク、マイク、お前の頭は見つかったかい? それはお前と同じように、胴が無くても生きて動いていたのかい?”

 効果:「未染色の塔」はフィールド上に1枚しか存在できない。

 このカードの②と③の効果はそれぞれ1ターンに1度、このカードが魔法&罠カードゾーンに存在する場合に発動できる。

 ①:このカードが効果によって破壊された場合、このカードは効果モンスター(アンデット族・闇・星8・攻/守3000)となり、モンスターゾーンに攻撃表示で特殊召喚する。このカードは罠カードとしても扱う。

この効果を発動したターン終了時、このカードがモンスターゾーンに存在する場合、このカードを罠カードとして魔法&罠ゾーンにセットする事ができる。

 ②:自分フィールド上のモンスターが相手モンスターを攻撃する場合、その攻撃宣言時に発動できる。攻撃を相手への直接攻撃に変更し、攻撃対象となっていたモンスターをダメージ計算後に破壊する。

 ③:相手モンスターの攻撃宣言時、その攻撃モンスターを破壊する。

 

 『外法頭の召喚術』 通常罠

 効果:このカードを発動するターン、自分はこのカードの効果以外ではモンスターを特殊召喚できない。

 ①:自分の墓地の同名モンスター3体を対象として発動できる。

 そのモンスター3体を効果を無効にして特殊召喚し、その3体のみを素材として悪魔族Xモンスター1体をX召喚する。

 

 『ネックドレス・デュラハン』 エクシーズ

 地属性 悪魔族 ランク4

 攻撃力2000 守備力2550

 効果:地属性レベル4の通常モンスター×3

 このカードはX召喚でのみ特殊召喚できる。

 ①:このカードは特殊召喚したターンには攻撃できない。

 ②:このカードが直接攻撃で相手に戦闘ダメージを与えた場合に発動できる。このカードのX素材を3つ取り除く事で、自分はデュエルに勝利する。

 

 「No.39 希望皇ホープ」 エクシーズ

 光属性 戦士族 ランク4

 攻撃力2500 守備力2000

 効果:レベル4モンスター×2

 ①:自分または相手のモンスターの攻撃宣言時、このカードのX素材を1つ取り除いて発動できる。そのモンスターの攻撃を無効にする。

 ②:このカードがX素材の無い状態で攻撃対象に選択された場合に発動する。このカードを破壊する。

 

 

「私のターン…」

 続いて塔のターン。彼女は不快な表情を浮かべながらも、しかし勝利への自信は決して揺らぎはしなかった。

 《命削りの宝札》を引いてからここまで、見えない力のようなものが自分に味方しているのがわかる。指先から溢れ出るかのように感じるその力は、ミランダの勝利宣言を受けた今も些かも衰えはしていない。

 まるで自分が望めば、デッキから好きなカードを引き当てる事ができるかのような、そんな感覚。塔は自らのデッキに視線を落とすと、頭の中に一枚のカードの形を浮かべ、勢いよくカードをドローした。

(来た…!)

 案の定、望んだカードを引く事ができた塔はにやりと口元を緩ませ、爛々とした視線を《希望皇ホープ》に向ける。

「ふふっ…。速攻魔法、『血錆の鋏(ラステッド・シザース)』を発動! ホープちゃんの首を、切断するよ…!」

 ここに来て彼女が引き当てたのは、相手モンスター一体を破壊する効果を持つ魔法カード。彼女の場に巨大な鋏が出現し、刃を開いて《ホープ》に向かって飛んでいく。

 ミランダの言葉を真に受けた訳では無いが、彼女にとって最後の障害がこの《ホープ》だ。それを破壊するカードをピンポイントで引き当てたのは、やはり強運が彼女を後押ししている証拠と言えよう。

 ぱっくりと口を開けた刃は《ホープ》の首に食らい付き、瞬時に胴と頭部を両断する。ころころとボールの様に転がった《ホープ》の頭が塔の足元に触れ、光の粒子となって消えていく。

「これで、ホープちゃんも死んじゃったね…? ホープちゃんで私を倒すって言ってたのに、残念残念…」

 最後の障害は消えた。塔はくすくすと笑みを浮かべながら、次いで自身の場の《デュラハン》に目を向ける。

「これで最後っ…! ネックドレス・デュラハンで、お姉ちゃんに直接攻撃!」

 勝利を確信し、最後の攻撃命令を下した瞬間。――塔は、ミランダが「ふふん」と笑う声を聞いた。

「別に、ホープであんたを倒すなんて言った覚えは無いわ。私が言ったのは、あんたはホープが原因で負けるって事だけよ。そして今、予告は現実のものとなったわ」

 そう言って、ミランダは先のターンに伏せたカードを翻す。

「罠カード、ヘイト・クレバスを発動! このカードは私の場のモンスターが相手の効果によって破壊された場合に発動し、相手のモンスターを一体破壊し、その攻撃力分のダメージを相手に与える!」

「っ――!」

 ミランダがそのカードを発動した瞬間、《デュラハン》の足元が裂け、ゆっくりとその体を地の底へと引きずり込む。その瞬間、塔は全てを悟った。

 彼女が《ホープ》を出したのは《デュラハン》の攻撃を防ぐ為では無く、自分に《ホープ》を除去させる事で《ヘイト・クレバス》の発動条件を満たす為だったのだ。即ち《ホープ》はただの撒き餌でしかなく、ただの引き金(トリガー)に過ぎない。

 そして今、自分は彼女の目論見通り除去カードを引き当ててしまった(・・・・・・・・・)

「さっきのターン、羽根箒を発動したのが失敗だったわね」

 呆然とする塔を睨みながら、ミランダが言葉を投げ掛ける。

「もし羽根箒をこのターンまで温存していれば、ヘイト・クレバスは破壊されてあんたはデュエルに勝っていたわ。…けど、あんたは発動してしまった。あんたのデッキは十分にあんたの勝利に貢献してたっていうのに、私のブラフを信じて伏せカードの破壊を急いでしまった」

「うっ…」

「怯えたわね。その心の弱さが、そのままあんたの敗因よ」

 冷たく吐き捨てた言葉が塔の心を貫いた瞬間、《クレバス》が《デュラハン》を完全に呑み込み、塔の場から完全に消滅させる。それは同時に、このデュエルの終焉を意味していた。

 《デュラハン》を失った塔のライフが《クレバス》の効果によって削られていく。全ての手札を失った塔にそのダメージを防ぐ手は無い。残り僅かであった彼女のライフは、この一撃を最後に0となった。

「…私の勝ちね。何か言い残したい事があるなら、聞いてあげるわ」

 塔のライフが尽き、彼女の決闘盤に仕込まれたシステムが彼女自身を襲う直前、ミランダは静かに問い掛ける。塔は強張った表情でミランダを見つめ返し、「どうして?」と小さく答えた。

「おじちゃんは……教皇のおじちゃんは、正しい事をしてるんだよ…? 皆を守る為に戦ってるのに……貴方達の世界だって守ろうとしてるのに、どうしておじちゃんの邪魔をするの…!?」

 教皇のおじちゃんは悪くないのに。何にも悪い事はしていないのに。悪いのは、おじちゃんの邪魔をする貴方達の方なのに――!

「邪魔をするなあぁぁーッ!」

 涙ながらに叫んだその声は、決闘盤から放たれた電流に掻き消された。

 どんなに正義をかざしたところで、敗者の言葉が届く事は無い。電流は幼い彼女の体を容赦なく蹂躙し、その意識を奪っていく。自分が何を怒って叫んでいたのか、それさえも遠い意識として離れていく。

「教皇のおじちゃん……メリス君…」

 涙の中に浮かんだ二人の顔が、遠く遠く離れていく。その幻影を掴まえようと小さな手を伸ばしながら――…ユミルは、意識を失った。

 

 

 『血錆の鋏(ラステッド・シザース)』 速攻魔法

 効果:「血錆の鋏」は1ターンに1枚しか発動できない。

 ①:相手フィールドの特殊召喚されたモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを破壊する。

 

 「ヘイト・クレバス」 通常罠

 効果:自分フィールド上に存在するモンスター1体が相手のカードの効果によって破壊され墓地へ送られた時、相手フィールド上に存在するモンスター1体を選択して墓地へ送り、その元々の攻撃力分のダメージを相手ライフに与える。

 

 【塔】

 LP:800→0

 

 

――――――

 

―――――

 

――――

 

 デュエルは終わった。

 塔が倒れた事で全ての立体映像は消滅し、両者の決闘盤は停止する。廊下を塞いでいた《未染色の塔》の生首達も、塔の意識が途切れたからか光の粒子となって消滅した。

「…まるで、こっちが悪者と言わんばかりだったわね」

 気絶した塔を見詰めながら、ミランダがぽつりと呟く。その表情には怒りも哀れみも無く、ただ勝者として敗者の姿を見据えている。

「やった! やった! ミラおねえちゃんが勝ったー!」

 二人のデュエルを見守っていたクリフが部屋の中から出て来て、仔犬か猫のようにミランダに駆け寄って抱き着く。勝利を信じていたとはいえ不安が無かった訳でも無いのだろう、その表情は何処までも嬉しそうだった。

 無論、彼女の勝利を喜んでいるのは彼だけでは無い。同じようにミランダを案じていた百合と亮助も、それぞれ安堵の表情を浮かべて部屋から出て来た。

「いやはや…。デュエルの腕はそれ程だけど、それ以外の部分が恐ろしい相手だったねぇ。一時はどうなる事かと思ったよ実際」

 そう言って百合は、抱きしめ合うミランダ達姉弟の姿を微笑ましげに見つめつつ塔の方へと歩み寄る。

 そして恐る恐るうつ伏せに倒れた彼女の体に触れると、「ん、大丈夫」と改めてミランダ達に声を掛けた。

「息はしてるよ、気を失ってるだけみたい。デュエルで負ければ意識を失うって話は本当だったみたいだね」

 百合は塔を近くの壁にもたれ掛けさせると、その表情をまじまじと見つめる。凶悪な意識が断たれたからか、塔の顔は年齢相応の幼さと愛嬌があるように百合には思えた。

「…けど、これからどうする?」

 百合とミランダ達を交互に見比べながら、ふと亮助が疑問を上げる。

「廊下を塞いでた頭も消えたし、クロン探しを続けるのもありだけど……一度姫利の姉ちゃん達と合流した方がいいんじゃないかな? 敵は他にもいる訳だし…」

「その必要は無いわ。向こうがデュエルで襲って来るのなら、むしろ私と姫は別れて行動した方が効率的よ」

 答えたのはミランダだった。

 敵がデュエルで自分達を制圧すると言うのなら、必要なのは数では無く決闘者の質だ。二手に別れた自分達の戦力が綺麗に分散している以上、わざわざ合流する必要は無い。…と言うのが彼女の意見だった。

 その意見には百合も同意のようで、「確かに確かに」と笑って頷きながら賛同する。

「あのデュエル馬鹿がそうそう負けるとは思えないし、向こうにはメイどんやフロむんもいる。心配はいらないか」

「そういう事よ」

「しかしあれだねぇ。こうなると負ける気がしないって言うか、逆に敵が可哀想になってくるね。姫りんにミラるんにメイどんにフロむんとか、最強メンバーのデュエル四天王じゃん。にしし…」

 陽気に笑いながら、百合はクリフと亮助に「ねっ、ねっ」と同意を求める。本心であるのは間違いないが、彼らを気遣った鼓舞でもあるようだった。

「………」

 ただ、一人だけ。ミランダの自信や百合の鼓舞を受けても、浮かない顔をしている者があった。

 その表情は高校生二人には帽子の鍔に隠れて見えなかったが、身長の近いクリフはその事に気付いて、何処か不安げなその少年に声を掛ける。

「…亮助くん、どうしたの?」

「え?」

 亮助は頓狂な声を上げてクリフを見返すと、

「あっ、いや、別に何でも無い! ちょっと考え事してただけだから」

「考え事?」

 重ねて質問するクリフに亮助は一瞬困ったような表情を浮かべ、「姉ちゃん達には内緒だぞ」と声を抑えて、首を傾げるクリフに囁きかけた。

「…確かにデュエルで勝負するって話なら、俺達が負けるとは思えない。クリフの姉ちゃんがおっかないのはわかったし、姫利の姉ちゃん達の方も大丈夫だと思う」

「うんっ。ミラお姉ちゃんはすっごく強いし、メイお姉ちゃんだって悪い人には負けないよっ」

「そうなんだよなぁ、それはわかってる筈なのに……何だか、胸騒ぎがするんだ。何か俺達にとって致命的な事を見落としているような、そんな予感がさ」

 不安を含んだその声に、クリフもまた表情を変える。亮助はそれ以上何も言わなかったが、言葉にできない「何か」が彼の心に影を落としていた。

 これまで開示された情報の中で、真先に考えなければならない事を忘れているかのような。あるいは無意識の内に気付いていながら、その可能性を忘れようとしているような。

「………」

 その不安の正体が何なのかは亮助自身にもわからない。

 ただ一つ、確かな事は。少なくとも自分達は今、塔という驚異を取り除いたという事実だけだった。

 

 

――――――

 

―――――

 

――――

 

 ミランダと塔のデュエルが終わった頃。(リリオン)死神(デス)を撃破したソールとフロムは、廃墟の最上階から一つ下の階を歩いていた。

 デスの話によれば、攫われたクロンはこの階の何処かにいるとの事だ。敵の言葉を真に受けるつもりは無かったが、他に手掛かりが無い以上、彼の言葉を頼りにクロンを探すしかない。

 とは言え、この階にも同じような部屋がいくつかあり、どの部屋にクロンが居るのかまではわからなかった。止むを得ずソール達は、端から部屋を一つ一つ調べていく。無論、敵が自分達を探している以上のんびりとはしていられない。扉を少し開けて中を確認するだけに留め、作業を簡略化していた。

「クソッ、この部屋でもねぇ…。おい天才野郎、そっちはどうだ!?」

「あのさ、君っていちいち騒がないと生きていけないの? 居たらちゃんと居るって言うんだよ、そのくらい理解しなよ」

 それぞれ別の部屋を探す二人だが、なかなかクロンは見つからない。

 だが、必ずこの階の何処かに居る筈だ。意地も含みながらソールはそう心に念じ、今調べた扉を乱暴に閉めて次の部屋へと向かう。別行動を取った姫利達もそろそろ敵と接触している筈、ソールは焦っていた。

「……ん。どうやらこの部屋みたいだね」

 ある部屋の前で止まったフロムが、扉を見上げて小さく呟く。

「あ? なんでそんな事がわかんだよ」

「見ればわかるよ。ほら、扉にネームプレートが付けてある」

 そう言ってフロムは扉に付けられたらプレートを指差す。「死神」と名前が刻まれた鉄の板を見た瞬間、ソールの心はどくんと跳ねた。

 死神……さっき倒したデスの事か。気付いたソールは思わずドアノブに手を伸ばすが、フロムはそれを「ストップ」と声で制した。

「中にも敵が居る可能性がある。慎重に行こう」

「……わかってる」

 珍しく素直に答え、ソールはゆっくりとドアノブを回して静かに扉を開ける。

 部屋の中には明かりがついており、内装も比較的綺麗に整えられているのが見える。他の部屋の荒れ具合と比べれば雲泥の差だった。

 やはりこの部屋が本命か。二人は顔を見合わせて互いに頷くと、警戒しながら室内に突入する。

 扉を抜けた先は細い廊下が続いており、その奥に大きく開けた部屋がある。構造自体は他の部屋と変わりないようだが、一つだけ違うのは、明らかに誰かが住んでいる様子がある事だった。

 ソールは慎重に歩を進め、廊下の角から静かに室内の様子を窺う。蓄音機にルンバ、カラオケセット等の趣向品が最初に目につき、ここが生活空間である事を再認識する。そして部屋の隅に置かれた大きなベッドに目を向けた時――…ソールは、思わず「あっ!」と声を上げた。

 真白なシーツが敷かれたベッドの上に、小さな少年が寝転んで居るのが見える。見慣れた黒髪に見慣れた服、そして見覚えのあるピンク色の決闘盤。それが誰のものか気付いた瞬間、ソールは警戒を忘れて室内に飛び込んでいた。

「クロン!? ……クロンだな!?」

 思わず叫んだその声に、うつ伏せで寝ていた少年の体がピクリと反応する。

 ゆったりと身を起こした少年がこちらを振り返り、両者の視線が絡み合った時。「ソール、ちゃん…?」と聞き慣れた声がソールの耳朶を叩いた。

「ソールちゃん……ッスか? そこに居るのは…」

 目を丸くしてソールを見つめ返すその少年は、紛れもなくクロン本人だった。

 敵に攫われ、もう会えないとすら宣告された相手。ようやく見つけたと安堵したソールは、思わず彼に駆け寄って、力いっぱい彼を抱きしめていた。

「心配させやがってっ…! 俺様の事、わかるよな!?」

「わかるも何も……なんでソールちゃんがここに居るんです!? フロムお兄ちゃんまで…!」

 唖然とした様子のクロンは、ソールの後ろにフロムの姿を見付けて二人の顔を交互に見比べる。フロムは居心地の悪そうに顔を背けていたが、クロンが生きているのを見て安堵しているようだった。

「畜生、生きてて良かったぜっ…。おい、奴らに何かされてねぇか? 怪我とかしてねーだろうな?」

「えっ…。まぁ、うん……一応は」

「大丈夫なんだな?」

 ソールがしつこい程に確認すると、クロンは唖然とした表情のまま「大丈夫ッスよ」と律儀に答える。

 いつも通りのやり取りが今回ばかりは嬉しくて、目頭が熱くなる思いだった。ソールは思わず涙ぐみそうになるのを堪え、次の瞬間には、感情のままにクロンの頭を拳で殴っていた。

「痛っ! …え? なんで叩くの?」

「心配かけやがっただろうが!」

「えっ…、それボクが悪いの?」

 違う意味で唖然とするクロンに「当たり(めー)だろ!」と即答し、有無を言わさず納得させる。これもいつも通りの事だと思うと、嬉しくて仕方が無かった。

「…とにかく、無事で何よりだぜ。苦労して助けに来た甲斐があるってもんだ」

「苦労も何も…。いや、そもそも二人はどうやってここに来たんです? だって、ここは――、」

「あのさ、余計な話は後にしようよ。どうやら今は居ないみたいだけど、いつここに敵が来るかわからない。さっさと姫利お姉ちゃん達と合流して、ここから逃げよう」

 ここは並行世界で、二人来れる筈なんて無いのに。そう続けようとしたクロンの言葉は、フロムの意見に遮られた。

 彼は部屋の扉に顔を向けながら、急かすようにクロンとソールに一瞥を向けている。クロンは「姫利お姉ちゃん?」と彼の言葉に反応すると、驚きを隠せない様子で彼に問い返した。

「まさか……ひょっとして、姫利お姉ちゃん達もここに来てるの?」

「話は後だって言ったつもりなんだけどね。聞こえなかった?」

 質問に皮肉で返し、さっと部屋から出ようとするフロム。彼らしい合理的な意見であるが、クロンは慌ててその背中を呼び止めた。

「待った! 助けに来てくれたのは嬉しいし、姫利お姉ちゃん達にも早く会いたいけど……その前に、どうして皆がここに居るのか教えてよ。どうやってここに辿り着いたの?」

「……どうやって(・・・・・)?」

「うるせぇな、そんなもん後だ後! 今はフロムの言う通り脱出が先だ! リリオン達が目を覚ます前に、とっとと…」

(バカ)は黙ってて」

 部屋を出ようとしたフロムが足を止め、ソールをあしらいつつクロンに視線を向ける。

 クロンの様子から何か感じ取ったのだろう。普段は余裕たっぷりな彼にしては珍しくは真剣な表情を浮かべていた。

「…どうもさっきから、まるでボク達がここに居る事自体が有り得ないって感じの物言いだね。けどそれは、敵地ど真ん中で話し合う程重要な事なの?」

「ここから脱出できるかどうかって話です。大事に決まってるッスよ」

 同じく真面目な表情でクロンが返す。聡明な者同士の双眸がしばらく見つめ合い、言葉無く意見を交換し合う。

 やがて根負けしたフロムは「OK」と吐息混じりに答え、近くにあった椅子に腰掛けた。

「そこまで言うなら、少し話そうか。ただし、敵がボク達を探し回ってる事も事実。話は手短にね」

「……了解ッス」

 真剣な面持ちで頷いたクロンは、まずは自分が知る限りの事を二人に伝える。

 ここ(・・)が自分達が居た世界とは異なる並行世界である事。異端の札は、それらの世界を行き来する道具である事。数ある並行世界が滅びを迎えており、教皇達はその破滅を回避する為に活動している事。

 それらの事実をフロム達がどう受け止めるかはわからない。しかし今は、情報の共有こそが彼らにとって最重要な事であった。

 

 

――――――

 

―――――

 

――――

 

 同じ頃。廃墟内のある一室では、敵の統領である教皇はソファに腰掛けて悠々と時を過ごしていた。

 彼は自ら放った部下が全て倒れた事もソール達がクロンを奪還した事も知らず、ただ静かに本を読んでいた。

 赤い装丁が施された、古いアルバム。教皇が懐かしむような表情を浮かべてアルバムに目を通していると、近くのテーブルに置かれていたノートパソコンのような機械が起動し、そこから人の声が聞こえて来た。

「教皇君、私だ。Dr.(ドクター)31だが。少しいいかね?」

 女性の声だった。

 何処となく剽軽な印象を受け、それでいて知性を感じさせる落ち着きを持った声。教皇はその呼び掛けに気付くと、アルバムを眺めたままその声に答えた。

「やあ博士。僕に何か用かい?」

「うむ、実は君に残念な報せがある。三つだ」

 Dr.31と名乗った声が言うと、教皇はようやく機械に視線を向けて、「重要な方から聞こうか」と間を置いて返す。話の内容を何となく察したのか、その表情は少し険しかった。

「君が放った二人と一匹の部下、(リリオン)死神(デス)(タワー)の事だがね。どうやら返り討ちにあったようだよ。彼らのライフが0になったのをこちらで確認した」

「ありゃ…。意外と早かったね」

 事前に内容を予測していたからか、それとも部下の全滅を予期していたのか、教皇の反応は薄い。彼はアルバムを閉じて膝の上に乗せると、「それで?」と機械に問い掛けた。

「塔達の全滅は仕方ないとして、侵入者はあと何人くらい残ってるのかな?」

「それが二つ目の報告になるね。残念ながら、彼らは一勝も上げずに倒れたようだよ。八引くゼロは八だから、つまり残りは八人と言う計算になるね」

 それを聞くと、流石に教皇も表情を変えた。彼が驚いた様子で「一勝も?」と問い返すと、Dr.31は「うむ」と短く答えた。

「決闘者では無い私が言うのも何だが、チミの部下は少し練度不足なのかも知れないね。異端の札を使って全滅というのは私としても意外だったよ」

「…僕も意外だよ。半数くらい倒してくれれば御の字と思ってたけど、まさか一人も倒せないとはね……僕が戦おうにも、流石に一人で全員倒すのは厳しいなぁ…」

「ああ、それからもう一つ。侵入者の一部が愚者と接触した事も伝えておこうか」

 頭を抱えた教皇に追い討ちを掛けるように、Dr.31は淡々と続ける。

「どうやら敵は二手に別れたようだ。上階で力と死神を撃破した連中が、死神の部屋に居た愚者を発見したのを確認している。愚者は彼らの仲間なのだから、こちらに味方する事はまずあるまい。…つまり八足す(いち)、敵の数は九人に増えたと言い換えるべきだろうね」

「んー…、それは困ったな」

 教皇は言葉通りの表情を浮かべながら、

「僕一人で九人……は、ちょっと自信が無いよ。(ムーン)は博士の警護で動かせないし、女帝(エンプレス)は審判の所で遊んでるし…」

「と言って、君まで倒れたらもう後が無い」

 教皇の思考を先読みしたDr.31が、落ち着いた声で言い放つ。「無論、私も戦力にはならない」と言葉を付け加えると、彼女は更に教皇に問い掛けた。

「さて、どうするね教皇君。チミの思案が試されているよ。一人で全勝を成し遂げるか、それとも別のプランを考えるか。選択肢は多々あるが、君の答えはどれだろうね?」

 彼女の問いに教皇はすぐには答えず、唇に指を当ててしばらく考え込む。

 やがて彼は諦めたように吐息すると、「仕方ない」と小さく呟いた。

「あまり気は進まないけど、審判に援軍を頼もう。もうそれしか方法は無い」

「ほう、審判君を。しかしこの件に彼を介入させると後が大変ではないかな? 彼の性格だ、侵入者を生かして帰そうとはしないだろう。異端の札に選ばれた者以外は死ぬ事になるよ」

 何処までも傍観者たろうと決め込んだ声が、教皇の耳朶を叩く。教皇は珍しく声に苛立ちを含ませて「わかってる」と返すと、忌々しげに機械を睨んだ。

「その辺りは後で上手く計らうよ。今は、今の事が最優先だ。…博士、審判に繋いでくれないか。彼と連絡を取りたい」

「ふむ…。その事だがね」

 Dr.31が惚けた声を上げると、

「――状況は把握した。随分とお粗末な事だな、教皇」

 彼女の声を伝えている機械から、別の声が聞こえて来た。感情が感じられない、あるいは始めから感情など無いかのような低い男の声。教皇はその声を聞くと目を丸くして、「その声」に語りかけた。

「審判? どうして君が…!」

「無論、私が彼と繋いだからだよ」

 審判と呼ばれた声に代わり、Dr.31の声が答える。

「月君から事情を聞いた時点で、念の為に審判君にコンタクトを付けておいた。最悪の場合、いつでも救援を出せるようにとね。君には悪いと思ったんだが、事態は急を要する。必要な事だった」

「そう言う事だ。もっとも事情を聞いたところで介入する気は無かったんだが、お前から俺に助けを求めるなら話は別だ。救援を寄越す代わりに、俺もこの件の後処理(・・・)に関わらせてもらう。構わないな?」

 威圧を含んだ審判の声。教皇は額に汗を滲ませながら、「…ああ」と審判の問いに答えた。

 できる事なら、教皇はこの審判という男を関わらせたくは無かった。彼は教皇の無二の友人であったが、その考え方は見事に相反するものだったからである。

 教皇が人を慈しむ性格であるのに対し、審判は徹底的した合理主義者であった。必要と判断すれば人命を奪う事を厭わず、躊躇う事を知らない。

 厄介なのは、彼がその罪を自覚した上で行動しているという事だ。彼に罪の意識が無ければまだ説得の余地はあっただろう。しかし彼は十字架を背負う事を覚悟し、その上で人を殺している。

 地獄に落ちる事を承知で目的に殉じる。そんな男に善意を説いたところで意味がある筈も無く、今も教皇は審判の言葉を真向から咎めはしなかった。

「決まりだな。今から“正義”を送る」

 審判が短く言い放つと、教皇はまた少し間を空けて「ああ…」と了承する。

 あまり気乗りはしないが、今は審判の手を借りるしか無い。手持ちの部下は皆倒れてしまったのだから。

「正義にはお前の指示に従うよう言い含めてある。その方がお前としてもやりやすいだろう。連中が片付いたら連絡しろ。後で俺もそちらに行く」

「…わかった。ありがとうね、審判」

「気にするな。二十年の付き合いだろう」

 その言葉を最後に、審判の声は聞こえなくなる。会話から抜けたのだと教皇が理解したのも束の間、「では、私もそろそろ通話を切るとしよう」とDr.31の声が聞こえてきた。

「正義が援軍に来るのなら、もう問題は片付いたも同然だろう。後の事は全て君らに任せるよ。私は少し話し疲れた」

 Dr.31がそう告げると、彼らの声を繋いでいた機械が静かに停止し、部屋には再び静寂が訪れる。

 教皇は溜めていた息をゆっくりと吐き出すと、だらしなくソファに凭れかかって緑色の双眸を天井に向けた。

「うーん…、審判が絡んだのは予定外だったなぁ…。面倒な事にならなきゃいいけど」

 憂鬱な表情を浮かべながら、教皇がもう一度溜め息を吐いた時。彼の目の前の空間が、突如として歪み始めた。

 空間の渦とでも形容すべきそれは、始めは点ほどの小さなものであったが、徐々に大きくなって楕円型の歪みとなる。縦に長い楕円の歪みを教皇が力無く見つめていると、一人の老人が歪みの中から姿を現した。

 時代錯誤を絵に描いたような、そんな奇妙な出で立ちだった。二メートル近くはあろう屈強な肉体を真赤な鎧で包み、同じく赤い兜を被って白髪頭を覆った姿は、さながら数百年の時を超えて蘇った鎧武者のようである。

 鎧は日本風の見た目ながら装甲部分が異様に分厚くなっており、兜には鬼の角を思わせる脇立と剣の前立によって装飾が施されて武骨なシルエットを老人に与えている。また、それらの装甲の間には小さな筒状の機械がいくつも剥き出しに配置されており、この鎧兜がただ身を守るだけの物では無い事を表していた。

「――そなた(・・・)らしからぬ不手際だな、教皇」

 ()の字のように固く結んでいた口を開け、老人は言う。その顔の上半分は鬼を模した仮面で隠していたため表情は読めないが、その声には怒りと呆れが含まれているように思えた。

「我らが居城に鼠の侵入を許した上に、その者共の制圧にこうも手間取るとは。白璧(はくへき)微瑕(びか)とは申せ、些か失望させられたぞ」

「はは…。面目ないとしか言いようがないな、正義」

 老人の威圧感に物怖じせず、教皇は笑みを浮かべて返す。正義と呼ばれた老人はだらしない体勢の教皇を見て深い溜息を吐いた後、「まあ良い」と腕組みして視線を逸らした。

「今はそなたの望み通り、鼠の捕獲に掛かるとしよう。数があろうと鼠は鼠、余一人でも造作無かろうよ」

 当然の事の様に言い放った正義は、再び鬼の面を教皇に向ける。

 新たな異端(カード)が教皇の手に加わり、クロン達の運命はまた一つ窮地へと歩を進めるのだった。

 

 

――――

【デッキ紹介】

 

No.16

デッキ名:アイスカウンター

使用者:ミランダ

切り札:???

コンセプト:水属性モンスターを主体としたデッキ。今回は塔ちゃんがガン攻め特化の戦術だった為発揮できなかったが、本来はアイスカウンターを駆使したテクニカルな戦術を基本とする。

決して扱いやすいとは言えないアイスカウンターを上手く使いこなして相手の目論見を妨害しつつ、手痛いダメージを与えて確実に相手のライフを奪っていく。ただしアイスカウンター戦術に特化している訳では無く、相手によっては火力を重視しての怒涛の攻めを展開する事も可能。今回披露した戦術はむしろそちら側だろう。

《撲滅の使徒》でお互いのデッキを全て公開する事で緻密な戦術を使った勝負に持ち込む事も出来る。剛と柔、相手や状況によって多様な戦術を使い分けるテクニカルなデッキと言える。

ただし先述の通り、今回のデュエルではこのデッキの進化は剛の部分しか披露しておらず、本来の性能の半分程しか発揮していないと言っていい。次のデュエルではその真価を見せる事ができるだろうか…。




ここだけの話、塔ちゃんは結構お気に入りのキャラだったりする。
でも精神があれ過ぎて上手く動かすのに苦労するのが難点。僕は猟奇趣味者ではありません。それだけははっきりと真実を伝えたかった。

そんな訳で、次回のデュエルではクロン&ソール&フロムvs正義になりますー。三対一のデュエルなんて書くの初めてだから楽しみだし不安だぜー。
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