そう言えば放り出したの渓流だよね。
(むっ…?)
竜状態で凶暴なモンスターがひしめく渓流の狩場にも含まれない奥地へと踏み込んで、顔を上げた涼人。
あのドタバタした様子のユクモ村を抜け、今は渓流に入っていた。
何かの気配を感じ、導かれるように奥地に来た涼人が見たのは、真っ黒な竜だった。
「グァルッ?ガルルル…?」
ちょっとこづいてみる。
ピクリとも動かない。
「ガァー…ルゥァ!?」
大きく振りかぶって、一撃お見舞いさせようとするが、竜の逞しい翼脚に殴られてしまう。
その威力はなかなかの物で、涼人は竜から数歩引いた。
むくり、と起き上がった竜を、涼人は見る。真っ黒な体に紫色がほんの少し。
他に見られない独特のフォルムはその竜が異質の存在である事を誇示していた。
禍々しい雰囲気と、黒い靄のようなものを振りまくその竜、涼人は見覚えがあった。
(ゴマ…)
略し過ぎである。
黒触竜ゴアマガラ。涼人がいる時点では、まだ正式発表がなされる前のモンスターである。
涼人がこの話を知っていたのは元々知っていたからであり、レラカムから、四人組の筆頭ハンター達が調査している真っ最中である事も耳にしていた。
そもそも、違法闇ギルドで謎扱いなのだから正式発表待ちである事は容易に想像できる。
「グウルルルル…」
一度戦った事があるが、相手は本気だったのか分からない。つまり未知数の竜。
涼人は警戒して低く唸る。
だが、ゴアマガラは、
「その声、もしかして助けてくれた人?」
突拍子も無い事を言いだした。
「うぇ?」
涼人は思わず拍子抜けしてしまう。
「声だけで良く分かったな…」
「当たり前だよ。そうでもしなきゃ僕は目が見えないからね!聴覚に関しては誰にも負けないよ」
ウイルスがあるのに、この竜は聴覚が凄まじく高いようだ。
「凄ぇ…なぁ、あんた名前はあるのか?」
涼人はそれとなく聞いてみた。
「あるよ。人に成って移動したほうが僕の能力を隠せるし、なにより人に狩られる事もないからね。僕はエグゼさ。宜しく。で、君は?」
「涼人だよ。宜しく。ところでさ、最近ここらのモンスターが暴れまくってんだが、何か知らないか?」
エグゼは首を横に振る。
「聴覚が鋭い分、なるべく騒ぎは起こさない主義だし、モンスターが近づかないよう細心の注意をはらってるんだ。まぁ、前は食べ物捕ろうとした時に捕まったんだけど…」
「じゃ、何で…?」
「探すの手伝うよ。僕も前に比べて襲われるようになって来たし、何より秩序が無いんだ、ここ最近」
涼人はそれに嬉しそうな顔になる。
「有り難うな!おし、じゃあまた会おうな!」
「うん!それじゃ」
そう言って分かれた二人の遥か頭上。
(ちぇーっ喧嘩じゃねーのかよ!)
赤と黒の二色の竜が、羽ばたきながらどこかへ行った。
エグゼの元ネタはロック○ン。じゃなくてマガラ武器群のスラッシュアックスTHEエグゼキューターからです。