寿命かと思ったら別世界に飛ばされた件   作:スティレット

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 肩の調子も良く、早朝に起きれたので清々しい気分で執筆。


第19話

「と、言う事で、石化した人達と無事だった人達の為にウェールズに飛ぶ許可を下さい」

 

 現在、学園長に直訴中。俺達はあくまで「人助け」の為に行くと言う建前を全力で推している。

 

「むう、しかしじゃな」

 

「石化に対する回復手段なら既に用意済みです。それに、生存した人達も、目の前で知人友人が石から元に戻ることが出来れば復讐などの後ろ暗いものより治癒術を修めようとも考えてくれるでしょうしね」

 

 こっちが本題だ。ネギは今から誰か、師を付けておけばあの才能だ。攻撃よりも治癒に目を向けさせれば世界有数の治癒術師になるだろう。もちろんアルビレオ辺りに頼んで戦闘の訓練も付けて貰うが。

 

「いくら石になっている間は意識が無く、体感時間も感覚が無いと言っても浦島状態は可能な限り軽くしなければなりません。それに、人を助けるのに理由は必要ですか?」

 

 まあ、ようは気まぐれとかそこら辺のレベルなんだけどね。後、ネギのついで。

 

「なんなら、エヴァ」

 

「なんだ?」

 

「少しナギの息子に稽古をつけてやってくれよ。まあ幼児が耐えられるレベルの奴な。お前がナギの知人って聞いたら多分せがまれるだろうし・・・・・・(それに好みの男に育てても一向に構わんぞ?)

 

「な!?」

 

 オレは別にエヴァを束縛したいわけじゃないからな。一応俺のものだけど、別の男を見ると言うなら俺もそれまでの男だったと言うだけの事よ。

 

「面倒になったらアルビレオにでもやらせればいい。深く考える必要も無い」

 

 エヴァはその言葉に思案し――。

 

「ふむ、実際会ってから考えるか」

 

 とりあえず選択を未来に投げることにした。

 

「そんなわけで、シフトに休みを下さい。早急に解決したほうが良さそうな案件もありますし」

 

「フォッ・・・・・・筋は通っているし、夏休みに海外に遊びに行くくらいは他の学生もするしの。あい解った。行ってきなさい。タカミチ君にも後で説明しておく」

 

 早速アルビレオの根回しが効いたか。そして高畑先生は出張中である。

 

「ありがとうございます」

 

 

 

 そして俺達は空港に居る。ん? ミカンで飛んでいかないのかって? 長時間の飛行に加えて、いかに魔力で戦車並みの装甲が有っても先々で戦闘機やミサイルに追い掛け回される趣味は無いからな。エヴァのチャチャゼロは影の中だ。幻術だと探知機に引っかかりそうだし、次からは人化の術でも覚えるんだな。

 

「久しぶりの外だぁ~」

 

 吸血鬼が日差しの中、思い切り伸びをして外の空気を満喫している。お前、それでいいのか?

 

「帰りにどこか寄るか?」

 

「京都がいい」

 

「なら、学園長に一報入れておいて貰うか」

 

「もう少し気楽に外を回りたいものだがな」

 

「仕方ないだろう」

 

「それもそうだな」

 

 俺達がまったりとロビーでくつろいでいると、荷物を抱えたミカンが帰ってきた。

 

「お土産たくさん買ってきたから食べましょう!」

 

「お土産ってそういうのじゃねーから」

 

「まあまあ、待っている間暇ですし、良いじゃないですか」

 

 しょうがないので俺達は土産を開けた。とりあえずひよこから攻略していくか。

 

「これ可愛いですね、マスター。ってあー! なんで頭から食べるんですか! 可哀想じゃないですか!」

 

「いや、これはこういうもんだし」

 

 こいつはピータン・・・・・・じゃなかった。孵化寸前の卵とか普通に食べるんだけどな。なんなのかもうわかんねえな。

 

「才人、茶を買ってきたぞ」

 

「おお、ありがたい」

 

 茶にうるさいエヴァも、流石に空港のロビーで淹れるわけにも行かない。適当な奴を買ってきてくれた。

 

 こうして3人で土産をぱくついていると、飛行機到着の時間になった。そろそろ片付けないといけないな。

 

 

 

 飛行機が墜落中でも単独で脱出可能故に早々とイヤホンとアイマスクで熟睡の姿勢を取った俺は、ミカンのことはエヴァに任せてさっさと寝た。

 

 後は特に記すことも無く、ロンドンまではトイレで席を立ったり機内食を食べたりする程度であった。

 

 

 

 何の問題もなくロンドンに到着。ここでまず一泊して、それからウェールズの山奥に向かう予定である。荷物も影にしまって置けるから最低限で済む。覚えてよかった。

 

「ここも大分様変わりしているな。以前来たのは何時だったか・・・・・・」

 

 ナギが各地を放浪している間にここに寄らなかったと仮定したら、下手したら世紀単位でヨーロッパには近付いていないんじゃないか?

 

「ここから本格的に麻帆良の常識が通じなくなるから、特にミカン。おとなしくしていろよ」

 

「もー、分かってますよ。マスターは心配性なんだからー」

 

「ならいいや。じゃ、行こうか」

 

「才人、イギリス料理は・・・・・・」

 

「あー、無難な所を選んだから多分大丈夫だ」

 

「そうか」

 

 エヴァはあからさまにほっとしている。ハギスとかそんなに不味いのかね?

 

「イギリス観光は用事が終わって余裕があったらな。京都は・・・・・・冬にするか。とにかく行くぞ」

 

「おー」

 

「分かった」

 

 ひとまず一泊するためのホテルに向かうことにした。

 

 

 

 ホテルにチェックインした後、飛行機疲れで飯と風呂以外はおとなしく就寝。起床したら3人で列車とバスでウェールズに向かうことに。

 

 ウェールズに到着後、バス停の前で一組の男女が俺達を待っていた。

 

「サイト・ヒラガ様にエヴァンジェリン・A・K・マクダウェル様、使い魔のミカンさんですね? ウェールズの魔法協会の者です」

 

「これは、どうもご丁寧に。サイト・ヒラガです。エヴァンジェリンの情報は行っていると思うのですが、いかほどに?」

 

「ヒラガ様がマクダウェル様を下し、使い魔にしたとか」

 

「概ねその通りです。手を出さない限り無害なので、思うところはあると思いますが、客の一人として扱ってもらえると幸いです」

 

「確約は出来ますか?」

 

「ちょっと子供っぽいところもあるので挑発などはしないようお願いします」

 

「・・・・・・かしこまりました」

 

 なまはげ扱いだから怖がるのも無理は無いがね。

 

「では、長に挨拶した後、悪魔襲撃の被害者の元へ案内してもらえますか? 石化解除の手段を持ってきました」

 

「おお、それは素晴らしい」

 

「その際無事だった方も一緒だった方がいいでしょう。呼んでもらえますか?」

 

「そちらは長へお願いします」

 

 ひとまずウェールズの学園長のところへ案内される事となった。

 

 

 

「それにしてもあの石化の治療を行うとは・・・・・・どのような手立てをお持ちなのですか?」

 

「召喚したバジリスクの目を潰し、密封した箱の中にレジスト処理を施した手袋を突っ込んで採血した後血清を作りました。流石に一匹だけだと足りないのでコカトリスの養殖に切り替えようかとも思いましたけどね」

 

「あの魔獣はそんな容易に屠殺することなんて出来ないのですが・・・・・・流石闇の福音(ダークエヴァンジェル)を下しただけありますね」

 

「あまり連呼しないでやってください」

 

「これは失礼しました・・・・・・ここです」

 

 案内員のうち一人がドアをノックする。

 

「入りたまえ」

 

 そこには白髪を後ろに流し、豊かな髭を蓄えた老人が居た。確かネギの祖父だっけ?

 

「初めまして、サイト・ヒラガです。こちらは現在私の使い魔をやっているエヴァンジェリン・A・K・マクダウェルとミカン。よろしくお願いします」

 

「うむ、よろしくお願いする。儂はこの魔法学校の長などをやっておるものじゃよ。と、言ってもそこまでの力は無いがの」

 

 悪魔襲撃が結構堪えているようだ。

 

「今回はこちらのエヴァンジェリンがネギ君に話を聞きたいと言う事で、その対価に村人達の治療にとやってきました。もちろん話を聞くだけなので、心配されるような事はありません」

 

「確かに、そこら辺は近右衛門からも聞いておるし、元はナギの馬鹿者が呪いを解かないまま放置していたからの」

 

「まあ、そこら辺は追々。では、被害者のご家族の方を集めてもらえますか? それと被害者の方々の所へ案内をお願いします。治療を行います」

 

「あい分かった。手配するとしよう。君、案内を頼もうかの」

 

「かしこまりました」

 

 そうして俺達は石化した村人達が「保管」されている区画に連れて来られた。

 

「では、ご家族の方が来るまで時間があるので簡単に説明致します。通常であれば回復魔法などで石化の治療を行うのですが、今回石化させた犯人は悪魔との事。なので魔界から召喚したバジリスクの血で作った血清を、術処理した金の針で効果を強くして使います。当然、金の針は柔らかいので一人に対して一つの使い捨てになるでしょう。まあ、溶かせば再利用可能なのでそこは気にする必要は無いです。何か質問はございますか?」

 

 辺りを見回すが、特に質問は無いようだ。

 

「無いようですね。では、道具の準備に入ります」

 

 俺は影からいくつかのケースを取り出す。ケースの中の血清は空気で劣化しないようアンプルに入れられ、金の針は一本一本干渉し合って折れないよう包んである。

 

「特に待つ理由も思いつかないので治療を開始したいと思います。ご家族への説明はあなた方からお願いします。エヴァ、石化を解いたら倒れると思うから人形を出して支えてくれ。ミカンは俺の補助」

 

「ああ」

 

「分かりました」

 

 一本のアンプルを手に取ると、パキッと口を折り、石化した患者の頭からかけていく。エヴァの人形が患者を支えたら、頭頂部、肺、心臓辺りを金の針で軽く突く。

 

 ふむ、服も無事だったか。これなら面倒が少なくて済むな。

 

「わ、私は一体・・・・・・」

 

「おはようございます。あなたは石になっていたので治療しました。このまま他の人にも治療を施すので、休んでいてください」

 

「ありがとうございます・・・・・・」

 

 軽く衰弱しているようだ。治療した人々は魔法学院の職員の手によって運び出される。

 

 何人目になった頃か。この治療はそれ自体が単純だが、血清の浸透などで時間がかかるため、どうしても長くなる。そうしてゆっくり続けていると、こちらに向かって走り寄ってくる足音がいくつか。

 

「スタンおじいちゃん!」

 

「こら、ネギ! 今治してる途中なんだから邪魔するんじゃないの!」

 

「アーニャちゃんの言うとおりよ。落ち着いて、ね? ネギ」

 

 どうやらネギ少年達が来たようだ。村から無事に逃げ延びたのってこの3人くらいだったんだっけ?

 

「君がネギ君か。今、村の人達を治しているからね。スタンおじいちゃんもちゃんと治療するから待っていてくれるかな?」

 

「うん、ありがとうお兄さん!」

 

「そちらのアーニャちゃんと・・・・・・」

 

「ネカネです」

 

「ネカネさんも、ちょっと数が多いから少し時間がかかるけど、1日あれば全員分行き渡るから辛抱してね。3人とも、後でお話を聞かせてくれるかな?」

 

「うん!」

 

「わかりました!」

 

「私なんかの話でよければ、いくらでも」

 

「なら、続きと行こうか」

 

 再びルーチンワークに戻る。血清が浸透しにくいところを金の針で、循環器系や呼吸器系を重点的に見て針で突く。極論で言うとてきとーに針で突いても問題は無いが、顔から石化を解除して呼吸が出来ないとパニックになったりするかもしれないのでこう言う事をしているのだ。

 

 こうして全員分の治療を終え、足元には数え切れないほどのアンプルが、金の針は潰す度に別の容器に入れてあるので問題は無いが、片付けが大変だなと思った。まあ、自前の手札で足りないのならよそから持ってくればいいのは魔術師における基本だよ。

 

 今日は疲れた。今頃ネギ君たちは感動の再会をしているだろう。話を聞くのは明日でいいや。




 やっぱり4千字くらいから調子が出てくるようです。これまでしばらくスランプ気味だったので2千字くらいでお茶を濁してたのが辛い。

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