短いですが生存報告も兼ねて投稿です。
「―――それで、子育てしてるのか調教してるのか分からなくなって逃げてきたのか」
現在エヴァ宅別荘内、昨日の出来事で色々と心労が祟ったのでダラダラしに来たのだ。
「そりゃ嫁さんも大勢居たし、偉くなる途中で年端もいかない娘を紹介なんてよくあったけどね」
嘆息しながらも思い返せば日本より永く住んでいたハルケギニア。いかに魔法が発達していようが魔法の使えない平民が圧倒的多数の世の中。勿論平均寿命も全体で見てこちらの中世と大して変わらなかった。貴族は水の秘薬で無理やり病魔を黙らせる事が出来ても、平民がそれを手にするには文字通り魔法の薬だった。
それでも平民でもジェネリック品が手に入りやすいよう色々と手を施したがロマリアをジョゼフのおっさんがぶっ潰して三国……エルフはそもそも寿命が比較にならないし一々手を貸さないでも強く生きていたので割愛。こちらの貨幣で言うと諭吉さんが一人居ればそれが一本手に入ると言った具合だった。
それまで下手したら薬で給金数か月吹っ飛ぶ事を考えれば十分だったと思うが、それでも平民は栄養ドリンクのような飲み方は出来なかったのだ。
話が脱線した。寿命が短けりゃ嫁ぐ年齢も早い。ルイズくらいの年齢なら適齢期だったしあちらのロリコンは年齢一桁とかザラだった。ルイズとシャルロットを見たアホが俺の嗜好を深読みして6つにもなるか怪しい子供を嫁にどうだって式典の度に言われれば堪えるものもあったわけだ。
いや待て、目の前に居るロリババア吸血鬼と言い俺はロリコンなのか……? いや、キュルケとテファのおっぱいは偉大だったし……。
「いやまてエヴァ……俺はロリコンなのかも知れない」
「お前は今更何を言っているんだ?」
呆れ果てた目で俺を見る合法ロリ。
「いや、忘れてくれ。俺が好きになった女がたまたま幼い容姿をしてただけだ。そうに違いない」
強引に結論付けて思考を打ち切る。中々動揺が収まらないらしい。
「どうやら相当堪えたようだな。で、どうだ? ペットのように娘のように思っていた奴に想いを寄せられる気分は?」
エヴァが安酒の瓶を片手に揶揄ってくる。ああうん分かるよ。我ながら聞くに堪えない事をぐだぐだしてればまともに取り合うのもあほらしい。
「さてな。まだ整理が付かんな。ミカンについてはきちんと答えを出すさ。後月詠はもともとタガが外れていたようだし、求め方が分からんのだろうな」
愛着障害と言う病がある。それは本来得られるはずだった親からの無償の愛が与えられなかった存在がかかる一生ものの持病だが、たしかあいつは孤児だったか。
例えば、目の前の世紀単位で生きているエヴァのように膨大な時間があれば一度は全てを諦め風化させ、折り合いがついた後に理屈と照らし合わせながら色恋と言うものを学んでいくのかもしれない。
だが月詠はまだ生まれて10年経つか経たないか。あいつ自身が孤児で正確な年齢が分からないにしても、本来は親の庇護下で安心を享受していたはず。そこに神鳴流で妖怪退治なんかを日常とすれば、ただひたすらに生き急いでいるのが普通になるのだろう。ハルケギニアの民とは似ているようで全く違う。
未だ前世から覚えている数少ない漫画のシーンに幼い双子を殺し屋に仕立て上げ、常人どころか死にながら歩いているような街の住人にさえ理解を放棄するようなものがあった。
三つ子の魂百まで。それまで培ってきたものはその倍の年月でようやく拭い去れる。遭って年すら明けていない関係が簡単に変えられる方がおかしいのだ。
「それで?」
目の前のかつて孤児であり、永い年月を経てサウザントマスターと呼ばれた男から人の温もりを与えられるも置いてけぼりにされた存在が俺に問いかける。
「長い目で見るさ」
殺し屋の双子に同情した海賊は己の無力さに涙した。そして、俺は違うとは言わない。言えない。
それでも、今の月詠は気に食わない奴を蚊を潰すように殺すような心の在り様ではない。性に依存するだけ大分良い。なら目はある。
「そうか」
ふん、と、鼻で笑いながらエヴァは漏らし、安酒をラッパ飲みする。
「すまんな、今度埋め合わせする」
付き合ってくれた人生の先輩に謝罪とも感謝ともつかず腰を折る。
「いいさ……いや、一杯付き合え」
その手に持った瓶を受け取り、一気に煽った。
本来これは26話にくっつけて投稿するものだったのですが、話の短さの割に他とくっつけるとテンポが悪くなるので単話です。許してくださいなんでもしまむら!
時間を置いたら案外するりと書けたので良かったです。次辺りはもっと書けるようにしたい。