寿命かと思ったら別世界に飛ばされた件   作:スティレット

3 / 27
 おはようございます。台風で休みになったので執筆しました。


第3話

 学園生活も落ち着き、街を散策していたらロボ研のロボトリケラが暴走していた。

 

「相変わらず非常識な街だなぁ」

 

 俺の進路方向には来ないのでこの際無視。誰か広域指導員が止めるだろうと考えてのことだ。一学生が悪目立ちとかしたくない。

 

 だが、俺のうかつな一言を聞いているものが居たのであった。

 

 

 

「あの、この街が非常識だって本当に思いますか?」

 

 俺にそんな話を持ちかけているのは小学低学年くらいの女の子。

 

「うん、そうだけど。君のお名前は何かな? 俺の名前は平賀才人って言うんだけど」

 

「あ、ごめんなさい。私の名前は長谷川千雨です」

 

「うん、千雨ちゃんか。よろしくね」

 

「は、はい。よろしくお願いします・・・・・・」

 

「とにかく、立ち話もなんだしお茶でも飲もうか。コーヒー飲める? それとも紅茶がいいかな?」

 

「ミルクと砂糖入りならコーヒーも飲めます」

 

「ならスタブにでも行こうか」

 

 

 

 そしてスタブで幼女の相談事を聞いている。

 

「私、実は周りから変って言われてて・・・・・・どう見てもオリンピックの人たちよりこっちの人たちの方が早いのにみんなはオリンピックの人たちを見て話題にしてるし、大きすぎる木があるし、わけが分かりません!」

 

「千雨ちゃん、気持ちは分かるけどもうちょっと声を小さくね」

 

 しーっと言うジェスチャーをする。

 

「あ、すみません」

 

「うん、それじゃ、その答えを言おうか。気を強く持ってね」

 

 俺は周囲に「ここには居たくない」と言う呪を飛ばす。オープンテラスだからそこまで違和感は無いはずだ。

 

「うっ」

 

「この力は呪い、裏返せば祝福や加護って力になるものかな。周りが変なのは、認識阻害って言う魔法をかけられているせいなんだ」

 

「え、ええ!?」

 

「まあ、いきなりこんな突拍子も無い話をしても仕方がないよね。でも事実なんだ。この世界には魔法使いが居る。そして魔法使いがここを隠れ蓑にするために認識阻害って言う「周りが違和感を持たない」魔法を使っているんだよ」

 

「そんな・・・・・・」

 

「でも悪いことばかりじゃない。外では非常識として扱われる人間がここでは受け入れられる。そういう土地なんだよ。ここは」

 

「でも、私はこんな土地じゃなくて普通の土地に住みたかった!」

 

「まあ、そうだろうね。君みたいな異常を異常として認識しちゃう子には難しいだろうね。だから、一つ解消する手段をあげる」

 

「え?」

 

「不満が溜まったら俺に愚痴をこぼしに来るといい。異常に遭遇したらなんとかするために、ここでは中国拳法などの気というものが使えるらしいんだ。だから、何か運動系の部に入って身体を鍛えてたら土地柄、自然と身につくと思う。そうすればあんなロボットに轢かれるようなことも無いだろうし」

 

 幼女には優しく。紳士足る勤めだ。

 

「それで、それでなんとかなるんですか? 友達から仲間はずれにされないんですか?」

 

「少なくとも君が異常を異常として認識して、その上で見過ごせるんだったら大丈夫だと思うよ。最低でも知人は出来る」

 

「ふ、ふえぇ、おにいざん」

 

 心細かったのだろう。だが、今しばらくの間は大丈夫だと思う。千雨ちゃんの頭を撫でながらそう思った。

 

 

 

 それから数日、以前から飲んでいた蟠桃製ポーションが魔力の最大値を上げることに気が付き、中級魔法にでも手を出そうかと思っていた。ちなみに俺の得意系統は何故か全部で、苦手なものが無い。これも元の世界でニュートラルな属性を維持していた結果なのかもしれない。

 

 そういうことで、中級魔法の本をトレジャーハンティングしようと図書館島に向かっていた。俺に取って致死性の低い罠はむしろ小遣いになるんだぜ。

 

 ちなみに俺は図書館探検部の幽霊部員だ。好きに行き、理不尽に休む。図書館探検部と言ったらゆえ吉に遭遇するかと思ったらあの子中学からの編入だっけ? 遭遇しなかった。

 

「あれー? 珍しい奴が居る」

 

「羽田か」

 

 こいつの名前は羽田。やかましい女子だ。

 

「せっかく企画してるんだから、もっと顔出しなさいよー」

 

「悪いな。俺は目的のものを手に入れるために入ったんだ」

 

「怪盗風に言ってもだめよー」

 

「とにかく、今日も目的のものは見つけた。あばよ」

 

「まてー」

 

 適当に撒いた。

 

 

 

「えーと、集え氷の精霊 槍もて迅雨となりて 敵を貫け・・・・・・か」

 

 現在俺は氷属性の魔法を集中して覚えている。光だと可視光の時点でまぶしいだろうし、火は燃え移るので論外だ。残るは水、氷、闇、風、雷、土くらいだったので、攻撃力が高そうで汎用性も高そうな氷から着手していた。

 

「次は復習しておくか。氷結 武装解除」

 

 標的にした雑巾もどきになっているTシャツが氷の破片となってばらばらになる。うん、こういう小手先の技は俺好きだ。

 

「最後に、弾薬を増やしておくか」

 

 俺はガンドルフィーニ先生のツテで弾薬の母型を手に入れることに成功していた。薬莢は繰り返し固定化をエミュレートした魔術をかけているので大丈夫だが、.454カスールと20ミリの弾頭、それにシングルベース火薬は暇を見て毎日貯めている。

 

 今俺が持っているのはXフレームに.454カスール弾を6連装にし、ロッド二点保持で頑丈に作ったリボルバーと中折れ式単発20ミリ砲、カルバリンだ。他には学園長から貰った刀とデルフリンガー(レプリカ)投げナイフなどの暗器。鉄靴など。これくらいだ。

 

 ああ、忘れてた。ミカンとのリンクがどうも切れていないようだ。外に出て呼んでみよう。

 

「我が名は平賀才人。五つの力を司るペンタゴン。我の運命に従いし、使い魔を召喚せよ」

 

 ハルケギニアにある魔法は俺の生前にほぼエミュレートは終わっている。格差はほぼ無く、貴族だけの地位にしがみつこうとした愚か者は平民の手によって引きずり降ろされた。それでも貴族足らんとするものだけが残ったのだ。

 

『マスター!』

 

 そこには15メイル・・・・・・いや、15メートルを超す立派な竜。それが思い切り突っ込んできた。

 

「うおあっ!」

 

 それをスルー。流石に轢かれるのは勘弁して欲しい。

 

『ああっひどいですマスター! マスターとミカンとの感動の抱擁が!』

 

「その図体で突っ込まれたら死ぬわ」

 

 ともかく思いつきだが、召喚してしまった。どうしようか。

 

 俺は携帯を取り出し、学園長に電話をかけた。

 

「ああ、すみません夜分遅く。平賀です。実は前の世界で飼っていた竜を召喚してしまいまして」

 

 

 

 俺のせいで緊急会議を開くことになった。

 

「この度は集まってもらって感謝する。題目は平賀君がうっかり召喚してしまった飼い竜についてじゃ」

 

「学園長! その竜は危なくないんですか?」

 

『失礼ですね。マスターに危害を加えない限り危ないことなんて無いです!』

 

「これは、念話か?」

 

『マスターに教えてもらいました♪』

 

 自慢するように強調するミカン。人間じゃなくてもそのドヤ顔は分かるぞ。

 

「思ったより理性的ですが、この巨体はどこに隠しておけば・・・・・・」

 

「図書館島には先客が居るしのぅ」

 

「なんのお話ですか?」

 

「いいや、なんでもないぞい」

 

「学園長」

 

 ここで俺が手を挙げた。

 

「どうしたのかの? 平賀君」

 

「確かここの幻術って質量をもごまかせるんでしたよね。うちに新種のトカゲとして小さくして置いておいてもよろしいでしょうか?」

 

「うむ、それだったらなんとかなるじゃろ。幻術は2ヶ月間のうちに覚えること。それまではこちらで薬を支給しておこうかの。なんじゃい、思ったより丸く済んだの。皆のもの、お騒がせしたぞい。解散じゃ」

 

 この言葉に納得はいかないもののと言った具合で撤収していく魔法生徒や魔法先生たち。その中でエヴァが面白そうな顔でこちらを見ていた。

 

『平賀、その竜の血液をよこせ。その竜からは凄まじい魔力を感じる。もしかしたら封印を解く鍵になるかもしれん』

 

『きゅいい!? マスター! ミカンはろくに知らない吸血鬼に噛まれたくないです!』

 

『注射器を用意するからそれで勘弁してくれ』

 

『注射も嫌~!』

 

 エヴァの念話はともかく、ミカンの念話は漏れていたのでそれでまたひと悶着あった。




 ミカン召喚の回。エミュレートした魔術はハルケギニア魔法より汎用性を高めています。ベルカ式とミッド式みたいなものです。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。