ホグワーツに入学してまず最初に行う大イベントは何と言ってもクラス分けだ。
これからの7年間を過ごす寮を決める大事な選定であり、ここで出た結果がそのままその後の学校生活を運命付けると言っても言い過ぎではないだろう。
寮は全部で4つ。
勇気を重んじるグリフィンドール。
知恵持つ者が集うレイブンクロー。
優しい者達のハッフルパフ。
そして狡猾な者達の集い、スリザリン。
何処に振り分けられるかは生徒の素質と組み分け帽子に託される。
そんな中にあって、帽子を被る前から既にクラスが8割決まっている生徒も何人か存在していた。
例えばロナルド・ウィーズリー。
家族が皆グリフィンドールに振り分けられている赤毛の少年は、やはりグリフィンドール行きが決定付けられている。
それは彼の家系がグリフィンドールの創始者であるゴドリック・グリフィンドールの末裔と噂される事と決して無関係ではないだろう。
例えばドラコ・マルフォイ。
父親が死喰い人であり、本人もまたその教育を受けた将来の死喰い人候補。
そして純血主義者であり差別主義者、とくればスリザリン以外に受け皿など存在しない。
と、いうよりもスリザリン以外に入って上手くやっていけるわけがない、という方が正確か。
そしてハリー・ポッター。
これに関してはもう説明の必要すらない。
何せ顔がヴォルデモートだ。
こいつをスリザリンに入れなくてどこに入れるんだという話である。
「ハンナ・アボット!」
「ハッフルパフ!」
「スーザン・ボーンズ!」
「ハッフルパフ!」
「テリー・ブート!」
「レイブンクロー!」
「ブロリー!」
「ハッフルパフ!」
「マンディ・ブルックルハースト!」
「レイブンクロー!」
次々の生徒の名が呼ばれ、クラスが決まって行く。
その度の各寮生が集まった4つのテーブルの何処かから歓声が上がり、新たな仲間を歓迎した。
「ハーマイオニー・グレンジャー!」
「管理きょ……グリフィンドール!」
汽車の中でハリーを吹き飛ばしたあの栗毛の少女はグリフィンドールのようだ。
どうでもいいがハリーの杖は未だに彼女が持っている。
というよりも杖が望んで付いて行ってしまったという方が正しい。
おかげでハリーはいきなり杖なしだ。どうするんだこれ。
「パンジー・パーキンソン!」
続けて前に出てきたのは、まるで壁に激突して顔が潰れたパグ犬のような顔の生徒であった。
大きな瞳はクリクリと動き、舌を出したその顔は不細工であるが不思議な愛らしさを感じさせる。
いわゆるブサ可愛いというやつだ。
短い手足を動かし、尻尾を振りながら椅子に飛び乗る姿はなるほど、よく見れば保護欲をそそられるではないか。
――というかこれ、ただのパグ犬だ!
おい、犬が入学してるぞ。いいのかホグワーツ。
「ハウス!」
当然犬にクラスが振り当てられるはずもないが、犬がそんなのを気にするはずもない。
まるで帽子の声など聞こえていないように椅子から飛び降り、マルフォイ目掛けて走り出した。
どうやらパンジーはマルフォイがお気に入りのようだ。
千切れんばかりに尻尾を振り、嫌そうな顔をしているマルフォイの顔をベロベロと舐め回している。
「ハリー・ポッター!」
そしていよいよハリーの名が呼ばれ、ハリーが跳ぶ。
空中で3回捻り半、華麗にスピンを決めてシャンデリアに激突して墜落し、帽子を手に取った。
そして被る、己の栄光を決めるその帽子を。
すると頭の中に帽子の声が響き渡る。
「難しい、非常に難しい……。
ふむ、勇気の欠片もない。頭も悪い。才能はない。
おう、なんと、なるほど、とにかくお辞儀させたいという意味の解らない欲望がある。
どこに入れればいいんだこんなの」
普通ならばスリザリン一直線なのだが、ハリーをスリザリンにすると間違いなく闇の帝王まっしぐらだろう。
正直帽子としてはそれは避けたいところだ。
しかしハリーは何故かお辞儀の姿勢のまま「グリフィンドールは嫌だ、グリフィンドールは嫌だ」と願い続けている。
「ふむ、グリフィンドールは嫌かね。
よろしい、君がそう確信しているなら――グリフィンドォォォォォォォォォル!!」
――この帽子正気か!?
その時、ホグワーツの心が一つになった。
生徒教師ゴースト、潜入していたソリッド・スネーク例外なく帽子の判断に耳を疑った。
いやいや、ねーよ。あれがグリフィンドールはねーよ。
顔が帝王のグリフィンドール生とかどんなんだよ。
宣告されたハリーは顔は唖然とした表情で固まり、さしものダンブルドアも帽子の予想外の暴走に白眼を剥いていた。
「ダンブルドア」
「おお、ミネルバ。わしは明日一番に組み分け帽子を燃やして新しい帽子に変えようと思うんじゃが、どうじゃろう」
「大賛成ですわ、校長」
「少し長く使いすぎたかのう」
壇上の二人が組み分け帽子の処分を固く決意している間にハリーは意気消沈した様子でグリフィンドールの席へ向かってた。
その顔はショックのあまり絵柄まで変わり、まるでFXで有り金全部溶かした人の顔のようだ。
哀しみを背負うあまり、なんだか無想転生のような動きでスライド移動している。
その後も様々な生徒が寮分けされ、時にアズカバンに振り当てられ、ようやく寮分けが終わった時には1時間以上の時間が経過していた。
当然待っている間は退屈である。
上級生の何人かも暇つぶしにチェスを嗜む程には退屈な時間だった。
最初こそ誰が何処に振り当てられるかで盛り上がれるが、それもずっと続けば苦痛でしかない。
最後の方などほとんど誰も見ておらず、ハリーもロンを相手にマグルの作ったカードでゲームをしていた。
「俺様のターン! ホーリー・エルフにドーピングコンソメスープを使用!
攻撃力はこれで4000となる!」
「謝れ! 全国のホーリーエルフのファンに謝れ!」
「更に魔法カード融合を発動! ベビードラゴンと融合し、竜騎士ホーリーエルフ・マッスルを召還する!」
「やめてやれよ! 重すぎてベビードラゴン潰れかけてるじゃないか!?」
もう寮分けなど見てもいない。
魔法で立体化させたモンスター同士を戦わせるのに夢中になっていた二人は、いつしか周囲が静寂に包まれている事に気付くまでそのままカードを嗜んでいた。
気付いた時は既に遅い。他の生徒は全員寮へ向かった後であり、二人は完全に取り残されてしまっていた。
監督生仕事しろ?
無理である、誰が好き好んで帝王フェイスなどに話しかけるというのだ。
「お、おい、大変だハリー! 僕達置いていかれちゃったぜ!」
「何! 俺様を放置するとは何たる不届き者!」
ハリーはカードゲームを中断し、慌てて駆け出した。
場に放置されたホーリーエルフ・マッスルも一緒に駆けた。
ベビードラゴン? あいつは死んだよ。
ハリーは凄まじい速度で駆け、途中悪戯に現れたピーブスが逆に驚いて逃げる形相でグリフィンドール寮へと向かった。
「合言葉を言いなさい! 言わなければ通さな――」
グリフィンドール寮の扉を守る肖像画である『太った婦人』がハリーに合言葉を求める。
しかしそんなものは聞いていないのだから知るはずもない。
知らないならば強行突破以外ありえない。
そんな謎理論を引っさげ、ホーリーエルフ・マッスルが扉をゴシカァンして破壊!
ハリーとホーリーエルフは一糸乱れぬ無想転生のスライド移動でグリフィンドールの談話室へ飛び込んだ。
「よし、流石俺様! 無事間に合ったぞ!」
「全然よしじゃねえよ! 何やってるんだよ君は!」
自我自賛するハリーへ、後から追いついてきたロンが怒りとも嘆きとも取れる叫びをあげる。
もうこいつ嫌だ、本当に嫌だ。
突っ込み所しかなくて何処から突っ込めばいいのかわからねえよ。
さめざめと涙を流し、ロンは膝をつく。
そんな彼の肩に手を置き、ハリーは帝王フェイスの極上笑顔を浮べてサムズアップした。
ムカついたので取りあえず殴っておいた、僕は悪くない。
*
ホグワーツは本当に生徒に授業を受けさせる気があるのだろうか。
ロナルド・ウィーズリーは強くそう思い、呆れたように溜息を吐いた。
階段の数は142。多すぎる、明らかに無駄だ。
広い壮大な階段、狭いガタガタの階段、金曜日にはナメック星へ繋がる階段、真ん中でいつも消えてしまうので忘れずにジャンプしなければならない階段……。
扉も多種多様に渡り、正確に一定の場所をくすぐらなければ開かない扉や、丁寧にお辞儀しなければ開かない扉などがあった。
物という物が動き、これではどこに何があるかを覚える事も出来ない。
肖像画の人物もしょっちゅう移動するし、きっと鎧だって歩けるに違いない。
――さまよう鎧が現れた!
ニア たたかう
さくせん
いれかえ
にげる
「いや、本当に出て来るなよ!」
突然、某ドラゴンクエストのように沸いて出てきた鎧を前に咄嗟にロンは逃げ出した。
鎧が生徒を襲うなんて、全くホグワーツは狂っている。
だが本当に狂っているのはひのきの棒で鎧に殴りかかるあの帝王フェイスの方かもしれない。
ひのきの棒から緑の閃光を飛ばすが、残念、鎧は生き物ではない。
しかし彼はその事に気付いていないのか、まるでザラキ病にかかったクリフトのようにアバダケダブラを連射していた。
そんな事をしている間にホーリーエルフ・マッスルが会心の一撃を決め、彷徨う鎧を壊してしまう。
というかまだいたのか、お前。
「フゥー、フゥー……クワッ」
「英語でおk」
ホーリーエルフ・マッスルが何かほざいてるが、ロンはそれをあえて気にしない事にした。
何を言っているのか分からないし、わかりたいとも思わない。
その後も罠としか思えないホグワーツの仕掛けを抜け、時にお辞儀し、時にフィルチを倒し、ようやくハリーとロンは教室へ行く事が出来た。
しかし移動が大変ならば授業はもっと大変だ。
魔法とはただ杖を振るだけではないと生徒達は強く思い知らされた。
変身術ではマクゴナガル先生が机を豚に変え、すぐに元の姿に戻すパフォーマンスを披露して生徒達を感激させた。
皆すぐに試したくてウズウズし、しかし家具を動物に変えるのは困難であると思い知らされた。
まず彼等にはマッチ棒が配られ、それを銀の針に変える所から始めなければならなかった。
これを成功させたのはハーマイオニー一人で、マクゴナガルは滅多に見せない微笑みを彼女へ見せた。
一方ハリーは杖がないので何も出来なかった。
これはまずい。俺様超まずい。
このままでは帝王の威厳が崩れ去ってしまう。
実際には威厳も何もあったものではないのだが、彼自身は威厳があると思いこんでいるらしい。
しかし杖がなければ魔法が撃てない。
さっきアバダケダブラしてた気がしないでもないが、ひのきの棒も置いてきてしまった。
どうしよう……これはすごくまずいぞ。
そうして彼が悩んでいると、突然窓が破壊されて教室に黒い影が飛び込んできた。
現れたそれは黒い髪に、手入れのされていない肌、隈だらけの鋭い瞳に髑髏のような輪郭。
いかにも『私は悪女です』と言わんばかりの黒い魔女、死喰い人のベラトリックス・レストレンジであった。
唐突過ぎる死喰い人の登場に唖然とするマクゴナガルの前で彼女は堂々たる名乗りをあげる。
「天が呼ぶ地が呼ぶ帝王様が呼ぶ。
ヴォルデモート様が一の忠臣、ベラドリックス・レストレンジ只今推参!
我が君、アズカバンで囚人服を着こなしカモシカのようなフォームで逃げる貴方様を見た時からずっと、お会いしとうございました!
貴方様の苦労は私の苦労! 今こそ我が力を示す時!」
ベラドリックスは奇声をあげ、マッチ棒に魔法をかける。
するとマッチ棒は素晴らしい銀色の針となり、ベラドリックスは一年生の課題であるそれをドヤ顔でマクゴナガルに提出した。
「さあマクゴナガル、これで我が君は課題をクリアされた!
グリフィンドールに10点を加点せよ!」
マクゴナガルは無言でベラドリックスを殴った。
すると黒い魔女は凄まじい速度で吹き飛んで窓を突き破り、空の彼方へ消えた。
それを見てハリーは呟く。
「……あいつ誰?」
吹き飛びながら地獄耳でそれを聞いたベラドリックスはショックのあまり、白眼を剥いて気絶した。
(*´ω`*) とりあえず帝王フェイスハリーはこの3話で終わりです。
ここまで書いてみたはいいけど、「これで長編は無理あるよなあ」と気付き、パソコンの中に封印していました。
この後は帝王フェイスハリー、ロン、リリカルハー子、ホーリーエルフ・マッスル、困った時のお助け役ベラドリックスの五人をレギュラーキャラとし色々やる脳内プロットもありましたが、途中で破綻を起こしました。
それでは、またお会いしましょう。