没SS集   作:ウルトラ長男
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没作品第2弾。
全1話(即エター)

備考:秘密道具を駆使して様々な世界でチートするドラえもん系オリ主を書こうとして盛大に爆死したSS。


オリ主えもん

 白い男が荒野を歩いていた。

 腰まで届く白髪を風になびかせ、首から下を覆う白いローブで身体を隠し、ただ歩いていた。

 生気のない灰色の瞳は空虚に地平を眺め、本来ならば整っていただろう顔は病人のようにやつれ果てていた。

 

 ――男は独りだった。

 現存する既存宇宙の中で、独り放浪していた。

 あらゆる過去現在未来、平行時間軸の中で独りだけ生き残ってしまった。

 

 彼は今や、たった独りの歩く特異点であった。

 

 

 

「――今までこうならなかった方がおかしかった。

むしろ、よくこれまで平和が続いたものだ」

 

 荒廃し、見渡す限りの廃墟と化した己の母星を見ながら彼――ジュゼッペは悲観に暮れた。

 時は西暦2404年。24世紀に差しかかり、人類はまさに科学の絶頂にあった。

 過ぎたる科学は魔法と同じ――いつか誰かが言ったその言葉を人類は完璧に体現した。

 宇宙空間すら隔て、あらゆる場所へ移動出来る『どこでもドア』。

 時空間を超越し歴史すら改変せしめる『タイムマシン』。

 己の望んだ平行世界へ自在に渡る事が出来る『もしもボックス』。

 吐いた言葉全てが虚言と化し未来すら操る『ウソ800』。

 吐いた嘘総てが現実に起こる『ソノウソホント』。

 日記に書き込むだけで未来を掌握する『あらかじめ日記』。

 気に入らない相手を抹消する『独裁スイッチ』。

 そして銀河すら容易く創生する『創世セット』。

 

 この時代、人に不可能はなかった。

 人類はまさに神であり、全知全能であった。

 病気を廃し、寿命を殺し、死した者すらも蘇らせ、一人の個人が複数の宇宙を所有している事すら珍しくはなかった。

 空を飛び、深海へ潜り、あらゆる星々を植民地とし、人間を練成する道具が当然のように市場に出回った。

 

 だがいかに全知だろうと、いかに全能だろうと人は人だ。

 神でも天使でも悪魔でもない。やはり人間はどこまで行っても人間なのだ。

 賢者がいれば愚者がいる。聖人がいれば悪党もいる。

 そんな当たり前の、知恵ある生き物でしかなかったのだ。

 

 故にこの末路は至極当然、予想して然るべき未来でしかなかった。

 ああ、それはそうだ。こうなるに決まっている。

 誰でもお小遣いを払えば『地球破壊爆弾』を買えて、夏休みの自由研究に『神様シート』を求める。

 何の考えもない幼い子供に全能となれる道具が与えられ、それを自在に使う事に何の障害もない。

 今が気に食わないならば過去の先祖の元に自らの息がかかった猫型ロボットを送り込んで過去を改変し、己の望む現在へと変える。

 そんな事が当たり前のように誰でも出来る世界で、どうして破綻が訪れないと思えよう。

 むしろ今まで崩れなかった方がおかしいのだ。

 今まで平和が続いた事こそが奇跡であり異常であったのだ。

 

 終末は唐突だった。

 

 切欠は果たして何であったか――子供が癇癪で爆発させた地球破壊爆弾だったか。

 それとも、ソノウソホントを用いて現実にしてはならない嘘を叶えてしまったか。

 あるいは不注意な誰かがウソ800を使用した状態で『世界がずっと平和でありますように』とでもほざいたか。

 もしかしたら、タイムマシンを用いた過去改変が何かとんでもない過ちを引き起こしたか。

 ――いずれにせよ、どうしようもなく馬鹿げた理由で人類最期の戦争は幕を開けた。

 

 振るう力は互いに全知全能。

 一個人が世界を所有する24世紀の戦争は激化を極め、旧時代の機関銃の弾のような軽さで地球破壊爆弾が飛び交った。

 タイムマシンで過去へ介入し、創世セットで味方を無限に増やし、あらかじめ日記で運命を捻じ曲げた。

 バイバインであらゆる道具が無限に増殖し、展開される地球破壊爆弾の弾幕は那由他すら越えた。

 あらゆる平行世界を巻き込み、あらゆる並列時空を巻き添えにし、過去現在未来の総てを砕き散らし、再生し、まだ砕きながら遂には既存宇宙すらも捻じ曲げた。

 神話に語られる神々の戦争とはきっと、こうしたものであったのだろう。

 人類は発展しすぎた武器を互いに向け合い、もはや止まる事も出来ずに自滅への道を駆け抜けた。

 

 故に、これは当然の結末であった。

 むしろ星の原型が残っているだけ奇跡だ。

 無論100回や200回は砕け散っただろうが、それでも再生に次ぐ再生で地球は何とかその原型を保っている。

 ――もっとも、そこに生き物はなく酸素もなく、普通であれば生きる事など到底出来ない死の星と化してしまっているが……そんなのはテキオー灯でどうとでもなった。

 

「ああ、何たる愚昧。

人類とはかくも愚かで軽挙であったか。

何と滑稽で救いのない――いやはや、最早笑う他ない」

 

 ジュゼッペは渇いた笑い声をあげ、発展の先の末路を眺める。

 ここ数ヶ月、秘密道具を駆使して休まず生存者を探索しているが未だに子犬一匹見付からない。

 秘密道具を使えばあの戦争を乗り切り生存も出来るはずだ。

 きっと誰かが自分と同じように生きているはずだ。

 その希望を胸にもしもボックスで平行世界へ渡り、タイムマシンで過去へ渡り、どこでもドアで宇宙へ渡った。

 だが――ああ何たる無情。そこにあるのは破壊、破壊、破壊のみ。

 過去も現在も未来も、並列するパラレルワールドも、どこかの誰かが創った神様シートの宇宙も、万象総てが壊れてしまった。

 森羅万象あらゆる物を砕いた人類はとうとう自分達の歴史すらも空白へ帰し、今ではもう人類の歴史すら『無かった事』になっている。

 ジュゼッペはかろうじて秘密道具を十全以上に活用し続ける事で歴史改変の波すらも乗り切ったが、それでも自分一人の身を守るのが限度であった。

 その過程で万能の道具たるソノウソホントは失われ、ウソ800はほぼ使い尽くし、後一口飲めば宇宙最後のウソ800も消えてなくなる。

 しかしこの一口で何が出来よう。

 ウソ800は虚言を用いて『これから起こる事象』を自在に操る事が出来る。

 しかし起こってしまった過去は変えられない。

 かといって、再生する余地すらない空白の宇宙を変えうる力もない。

 ウソ800は可能性を自在に操る。だが可能性がゼロでは何も出来ないのだ。

 それでも――。

 

「認めんよ」

 

 それでも――。

 

「認められるわけがあるまい」

 

 それでも尚――。

 

「こんな終末など私は認めん。

ああそうとも、こんなものが人類の終わりであるはずがあるまい」

 

 認めない。

 認めてたまるか。

 こんな末路など望んでいない。

 こんな終末など願っていない。

 故にこそ、ここから総てをやり直す。

 

「これが真実人の末路というならば――よろしい、私が虚言で彩ろう。

これより総てを嘘へと変えよう」

 

 永劫続く時間の牢獄であろうと構わない。

 二度とこの口は真実を語らなくてもいい。

 ジュゼッペ・カリオストロは芝居がかった動作で両手を挙げ、誰一人見ぬ舞台で声高らかに謳う。

 

「これより始まるは私の独り芝居。

私の、私による、私の為の舞台上演。

語る言葉は万事虚言と化し、この口は真実を語る事がない」

 

 瞳には決意。

 口元には笑み。

 超然者然とした雰囲気すら纏い、彼は最後のウソ800を飲み干す。

 そして、己の運命を固定するその言葉を言い放った。

 

「これより吐く私の言葉は総て真実となる」

 

 ――これより吐く私の言葉は総て虚言と化す。

 

「私は嘘を付かない」

 

 ――私は嘘しか口にしない。

 

「私は神ではない」

 

 ――私は神となる。

 

「この身は無力な人間で無知無能。

この矮小な身で何が出来ようか」

 

 ――この身は人である事を捨て全知全能となる。

 ――出来ない事など何もない。

 

「秘密道具の力など私は持たない。

道具もなく力を振るう事など出来やしない」

 

 ――秘密道具の力を私は持っている。

 ――道具もなくそれらの力を振るう事が出来る。

 

「何より私の心は脆弱だ。永劫の時間になどとても耐えられない。

磨耗し、消え去る運命にある」

 

 ――私の心は弱さを捨てる。永劫の時間すら耐えてみせよう。

 ――いかに磨耗しようと、決して消えたりしない。

 

 

 

「故にここで終わる。世界は二度と蘇らない」

 

――故にここより始めよう。もう二度と同じ過ちを繰り返しはしない。

 

 

 

*

 

 

 

 ジュゼッペ・カリオストロは人である事を捨てた。

 そしてこれより真実、神となる。

 虚言しか吐けぬ創生の神へと変わるのだ。

 

 彼が眼下に広げるは、決して大きくはない布だ。

 大きさにして1m程度の小さな布であり、しかしここには宇宙が内包されていた。

 

 『神様シート』。

 

 これを使えば誰でも神になれる。

 これを使えば誰でも望む世界を創生出来る。

 そしてそれを、見渡す限りのあらゆる箇所に敷き詰めていた。

 この廃墟と化した地球のあらゆる大地に隙間なく『神様シート』を並べていた。

 今や彼は歩く秘密道具。歩くスペアポケット。

 その身体の内にはあらゆる道具が内包され、自在に取り出して操る事が出来る。

 その彼にとって神様シートを増やすなど最早造作もない。

 

 まずは世界を創ろう。

 ありとあらゆる世界をここより創生し、そして導こう。

 虚言を操る悪神となり、人々の未来を支えよう。

 数多の愛しき、生まれ立ての宇宙達。

 その総てを騙し、欺き、翻弄し、そして愛そう。

 

 独り荒野を放浪し、そこに敷き詰めた宇宙を一つ余さず管理する。

 どれか一つとて見落としなどしない。

 二度と滅びの運命など辿らせない。

 そこにある歴史、物語、営み、愛……その総てを見届け、導こう。

 この身は虚言の神。

 虚言しか吐けぬなれど、世界の未来を憂う心に偽りなどない。

 

「愚かな人の子らよ」

 

 ジュゼッペは謳う。

 

「無知蒙昧なる子羊達よ」

 

 超越者の面を偽り、遥かな高みより無数の宇宙を愛でる。

 

 

 

「君達に神の祝福などない。

見捨てられた楽園の人形でしかない事を、いずれ君達は知るだろう」

 

 

 

 ――神は汝ら総てを祝福しよう。

 決して見捨てたりしない。

 例え誰一人、それを知る事がないとしても――。

 

 

 




没理由:主人公の目的に終着点がないので終わらない。
つまり主人公を殺すか、世界を放棄させない限り何をどうしようがエタる欠陥SSだと書いてから気付いてしまった。





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