さっき狩ったばかりのケルビのお腹にかぶりつく。むせ返るような血の匂いに惹かれて、群れの下っ端のジャギィが数匹寄ってくるが、一声吠えるだけで逃げていくようになった。
・・・私が初めてガーグァを殺して食べた日から、すでに1ヶ月が経とうとしている。
体格としてはドスジャギィと同格となり、アオアシラとはお互いに干渉しない日々を送っていた。
「虫歯になりそうだからハチミツなんかいらないんだけどなぁ」
ファーストコンタクトで「ハチミツはあげないよ!」と威嚇されたのは記憶に新しい。
すっかり渓流の暮らしに慣れた私だけど、人間(いや、まぁ竜だけど心は人間だからね)ひとつ欲が満たされるとまた次がほしくなるもので。
「はぁ……話し相手がほしい……」
もう少し大きくなって力も強くなったら、おしゃべりくらいはできるだろうか。メラルーやアイルーには悲鳴をあげられて心が折れた。可愛いし、あわよくばもふもふしたかった……。
毎日を生きるだけで必死だった頃は大して気にもしてなかったけど、やっぱり一人ぼっちは寂しい。太陽が昇る前に起きて、ガーグァやケルビを1日に1匹だけ狩って食べ、足りない分はキノコや草、虫でどうにか凌いで日暮れと共に眠りにつく。これじゃ、本当にただの獣だ。
最近、いつも考える。体は竜でも心は人間の私は、どう生きるべきなのだろう。獣として生きていくのは楽だ。でもそれは私の人間の部分が悲鳴をあげる。人間として生きるのは私の体が許さない。
ケルビを食べ終わり、最近の寝床に帰った。メラルーたちの住処に近い、大木の高いところにある大きな洞は木を登らなくちゃいけないけど、なかなか住み心地がいい。
ごろりと体を横たえて赤く汚れた刃翼を綺麗にしながら、また悩む。
いまだにガーグァとかを殺して食べるのには嫌悪感と罪悪感がある。だから1日に1匹だけと決めて食べているけど、これからもっと食べなきゃいけなくなる・・・私は、悩んでいた。
「私、生きてていいの「ニャーーーーーー!!!」うぉっ!?」
……び、びびったぁ……尻尾ぶわってなってるよ……。
えーと、今のは真下からだ。ひょこりと顔を出して覗き見してみる。
「いやニャーー!! ボクなんか食べても美味しくないのニャー!!」
「うるせぃ! オレたちゃメシがとれねぃんじゃオヤビンに怒られるんだよぉ!」
「だからオマィがメシになるか、メシをオレたちによこすか選びなぁ!」
私の住処の大木を背に1匹のメラルーがジャギィたちに追い詰められていた。……メラルー追いかけるより、ケルビ追いかけるほうが効率いいと思うんだけどなぁ?
「ギニャーァアア!! だぁかぁらぁ! ボクは食べるところないし! あんたらもケルビ追っかけたほうがいいのニャ!」
「「な、何だってぃ!?」」
あ、やっぱりそう思うよね。
*****
ああああもう!ヤバイのニャ、ごっつヤバイのニャ!
せっかく故郷の砂原から渓流のメラルー村へ出稼ぎにきてたのに……センパイたちとはぐれちゃうなんてー!
こっちのジャギィ怖すぎニャー!
「……ケルビとメラルー……どっちがオトクってオヤビン言ってたっけぃ?」
「ばっか、オマィ……そりゃあ目の前にいるのといないのとじゃ、いるほうがオトク?に決まってんだろぉ! ……たぶん」
「……あんたら……バカすぎるのニャ」
「「ぬぁんだってぃ!!?」」
「ギニャー! おかぁさん、おとぉさーん!! 先立つ不幸をお許しくださぁぁい!!」
まだ可愛いおヨメさんももらってないのに、ボク死んじゃうのニャ……。
「グルルルルルル……ここで何してんの……?」
「!? こっこの声はっ」
「あいつじゃねぃか!? あの空色の!」
「まじでか! だったらさっさとトンズラしちまおうぜぃ!」
えっえっ、な、何なのニャ?急にジャギィたちが逃げちゃったのニャ……。
「……大丈夫?」
「あっ、さっきの声の……た、助けてくれたのニャ? 誰なのニャ?」
「あー……ま、まあそんなことはいいから「よくないのニャ! 恩は100倍にして返せって家訓なのニャー!」……びっくりしない? 逃げない?」
「びびらないし、逃げないニャ!」
むんっと胸を張って答えると、謎の声さんは黙り込んでしまったのニャ。
うーん、でも本当にどこにいるのかニャ?ジャギィたちが逃げたんだから、強いんだろうけど……人間かニャア?アオアシラは……ないない、いつもボクたちとハチミツの取り合いしてて仲悪いからありえないニャ。
誰なのかニャー、お礼は何がいいのかニャーと考えていると、ふっとボクの周りが暗くなった。
「ニャァアア!? ふ、吹っ飛んじゃうのニャー!」
背中側にあった大きな木にしがみついて風圧に耐えながら、降ってきた大きな空色を観察する。
その大きさのわりにたすっなんていう軽い音で着地し……着地したってコレ、生き物だったのニャ!?……そぉっと右を見ると長いムチのような尻尾。ボクたちと似ている後ろ足。ま、まさかニャ……。
空色はゆっくりと振り向く。鋭い刃物みたいな翼、次に鋭くて青い爪が見え始め、最後に。
ボクたちが嘴をつけたみたいな顔が。
「………………じ、迅竜ナルガクルガニャーーーーーー!!!!」
は、話が進まない・・・(´A`;)