紘子さんへの手紙   作:榎木 昇

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 米国の2代ほど前の大統領C氏。

 彼は執務中のM嬢との不倫が取りざたされ、追求に対し「性的関係はなかったが不適切な関係はあった」という迷言を残しました。その内容は聞けば聞くほどややこしく、説明不能です。

 

 ××は粘膜の接触をしだが、××と××の直接の接触はしていない。

 葉巻は××と接触していたが、手は葉巻を持っていただけで接触していないから性的関係ではない。etc

 

 連邦当局による捜査とか議会下院での追求とかいろいろあって、性的関係があったことを認めてしまうと偽証罪に問われるので必死だったようですが、よくこんな言い逃れをして罷免にならなかったものです。

 当時はM嬢の青いドレス、と不適切な関係、は数々のネタになりました。いや、もちろん笑いのネタですよ?

 

 青いドレスの方は有名になりすぎたんで、「異文化交流してみない?」とかは、ニュースとかに関心の薄い空っぽギャルを見抜くフィルターの働きもありました。芸能ゴシップしか興味のない噂好きが引っかかったりしてましたが。

 

 なぜこんな話を持ち出したかというと、先日Sさんと「接触」したからです。

 C元大統領のような不適切な関係に相当する接触はしていませんが、Sさんはその接触について、なぜか女房との比較を求めました。どちらとの接触が嬉しいか、というわけです。

 そりゃあ若い方が良いに決まってますが、どう答えようと恰好のからかいのネタにされるのは分かり切っていますから、最近接触の経験がないことを理由に比較できないと答えたところ、なぜか

「嫉妬しちゃう」と言われました。

 どこかに嫉妬する要因があっただろうかと疑問に思ったのですが、同時に「本格的に嫉妬させたらどうなるのだろう」ということを検証したい気持ちが頭を擡げました。いつもの悪い癖です。

 女房とは面識がないしできても困るので、Yさんを褒めたり、興味があるように振る舞うのはどうだろうかと、作戦を立ててみました。

 

 結論から言うと、2つの理由で断念せざるを得ませんでした。

 

 1つは、本格的に嫉妬したSさんの態度の危険性が身の破滅を招きかねないほど大きいと予想されたからですが、これは今更ですね。嫉妬していなくても、安全とは限りません。

 

 もう一つはYさんの性格です。

 興味を持っているフリをするのですから、Yさんのことを全く知らないのも変だろうと、ちょっと観察に行ったのです。Yさんとは接点が0ではないものの、積極的に関わろうとしたことはないし関わりたくもありません。そこで、不自然でなく話題にできる程度の情報を得に行こうとしたわけです。

 で、少し仕組んで見に行ったのですよ。

 関わりが0ではないはずなのに、接近しただけで避けられて……いや、怯えられてしまいました。普通に歩いていても不思議はない人物が、歩いても不思議のない場所を通っただけで怯えますか?

 多少不審人物に見えるのは自覚していますが、通っただけで怯えられるほどでしょうか。

 

 Sさんの距離感はハトの距離感です。餌を持っていたらもちろん、丸めた紙を落としても寄ってきます。

 Yさんはツグミの距離感でしょうか。動くヒトっぽいものをを見かけたら、とりあえず寄ってきません、と言うより逃げていきます。

 

 SさんがYさんに対しとげとげしい態度を取るのは同族嫌悪の面もあるのではないかと思っていたのですが、どうもまるで性格や行動が違うようです。あれは、全く異質の存在ですね。

 

 Kさんはどうやってあのツグミっぽい性格を手懐けたのでしょうか。

 ツグミの方から寄ってきたにしても、何か寄ってくる理由があったのだろうし。

 

 謎です。この謎を解明できたら、人間関係に悩む人々の救世主になれるかも知れません。

 早々に観察を断念した私には無理なんですけども。




 不適切な関係はやっぱり不適切ではあるので、まねをしたら我々は当然アウトでしょうね。
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