♂が♀にプレゼントを渡す動物は多い。
最も多いパターンは、♂が♀に食べ物を贈るものである。
シリアゲムシという昆虫では♂が♀に餌となる虫を捕まえてカプセルに入れてプレゼントするのだが、♀は貰った餌を食べている間だけは♂に交尾をさせる。この虫では交尾時間が長いほど受精率が上がるので、真剣に自分の子孫を残したい(長い時間交尾したい)♂は、頑張って大きな獲物を渡そうとする。
この虫にも泥棒や詐欺師がいて、オカマ戦略で他の♂が渡してきた獲物をかっさらったり、大きなカプセルに入れて大きな餌に見せかける個体もいる。擬人化して考えるとひどい話だが、生物学的に見れば立派な交尾戦略の一つに過ぎない。
鳥類や肉食の哺乳類では、魚や肉のプレゼントが直接生活力の証明になるようで、食べ物を持ってきてくれる♂と交尾する♀は珍しくない。
卵を産むには大きなコストがかかるから当然の話で、餌をくれない♂など関心を寄せる価値もないようだ。
小魚を♀にプレゼントするカワセミは微笑ましいが、擬人化してみるとものすごく現金な♀である。
カマキリやクモでは、自分自身を餌として差し出す場合もある。これはなにも無意味に食べられているわけではない。
カマキリの場合は頭が交尾行動に対して抑制するように働いているため、頭を囓られるとスイッチが入って交尾が盛んになることが知られいる。クモでは精莢(精子のカプセル)を2つ、つまり交尾2回分しか作れないので、確率の低い2頭目の交尾相手を探すより、♀に自分という餌を与えて卵に回す栄養を増やした方が子どもを育てるコストを考えると有利ということになる。
これは人に当てはめ……たくないな。
カッコウのように形骸化しているものもいるが、巣の材料を渡したりすることもある。
魚や鳥では巣そのものをプレゼントする例がある。産卵床、すなわち安全に産卵できる場所の提供というのは大きなプレゼントなのだろう。トゲウオや昨年の新種10に選ばれて今更感のある話題になったアマミホシゾラフグの海底ミステリーサークルなんかはこれに相当する。ツリスガラという鳥のように巣を作って♀を呼び込んで交尾し、♀が抱卵を始めると♂は次の♀を呼ぶ巣を作り始める奴もいる。次々と♀を呼んで巣を作り続ける♂がいる一方で、最初の1羽の♀に来て貰えない♂もいる。
これまた人に当てはめて考えると哀愁が漂う。
♀による選択行動として様式化が進むと、巣そのものではなく、シンボルとしての構造物としての出来が問われるようになってくる。アズマヤドリは「♀を誘って交尾する巣」は豪華で立派だが、子育てをする巣は♀が単独で作るし余り立派ではない。同じ仲間のニワシドリ(庭師鳥)もディスプレイ用の飾り立てた巣を作るのは交尾が目的である。
ヒトに近い類人猿ではどうだろうか。
類人猿の、と言うよりチンパンジーのプレゼントは他の動物には見られない特徴がある。
基本的に動物のプレゼントは♂が♀に与えるもので、もちろん目的は交尾である。
チンパンジーは肉が好きである。野生ではよく他の猿を襲って食べることがわかってきたし撮影もされているのだが、イメージを壊すからなのか動物番組で放映されることはない。
この(サルの)肉を、チンパンジーでは♂が血縁者や仲間に与えるらしい。
もちろん、強い♂が肉を手に入れたとき、優先的にその肉を貰うのは発情した♀である。しかし、肉の量が多いと、♂は血縁や仲の良い♂にも分け与えるのである。♂から♂へのプレゼントは、だまされた場合を除き他の動物では見られない。
肉を貰った♂は勢力争いの時に肉をくれた♂に加担し、勝った♂は順位が上がって♀を獲得しやすくなるので、これも結局は♀獲得のためのプレゼントであることに変わりはない。
結局プレゼントって♀獲得の手段なのか。何かむなしい。
しかし、ヒトはチンパンジーよりさらに変である。なぜなら♀が♂にプレゼントをすることがあるからだ。
は? 3倍返しを期待しているだけ?