♀から♂にプレゼントをすることがあるのは基本的にはヒトだけだ。
チンパンジーでは母親がバナナなどの皮を子ザルに渡すことがあるが、実の部分は絶対に渡さないのでプレゼントと言えるかどうか微妙だ。
人間は子どもがかなり軟弱に生まれてくるので、子育てに♂の協力が必要になってくる。♂を観察すると、子育てに協力的な子どもの相手が得意な個体と、子どもの世話を♀に押しつけて別の♀を追いかける傾向にある個体の両方が存在していることがわかる。殆どの個体はその中間で、子どもも可愛がりつつ、チャンスがあれば浮気するという行動を取る(幼稚園の保護者の集まりに父親が参加するとなぜかモテる)。
この状況を♀視点で見ると、自分と子どもの相手をする傾向にあり、なおかつ育児に必要な資源を持っている個体を選びたいことになる。出産前に育児に参加しそうかどうかはわかりにくいので、資源量、つまり経済力のありそうな♂(男)を選べば良いことになる。
しかし、育児に参加する可能性のある優しそうでなおかつ経済力のある♂は限られているので、♀の間には熾烈な競争が起こる。動物であればフェロモン量で勝敗が決するか、♂がハーレムを形成しておわる。
だが、ヒトの場合はフェロモンで決まらないしさらに一夫一婦制の縛りがあると、♂の気を引くことが重要になってくる。そのため、♂へのプレゼントが起こるわけだ(Sさんは自分で贈るわけではなく、なおかつ自分が貰ったものを利用して気を引くという技を使っていました。さすがです)。
♀から♂へのプレゼントとして有名なのはなんといってもチョコレートである。
知り合いに気の毒なことにカカオの香りが苦手な者がおり(ココアも飲めない)、「自分で食えないものを貰ってお返しを考えるのはきつい」と言っていたが、実際に一定数チョコレートが苦手な人はいるらしいので、安直に「プレゼントはチョコ」と決めつけない方が良いのかも知れない。
一方でこのお返しも、発生当初はマシュマロだクッキーだと言われていたものの、どこの業界の陰謀なのか知らないがどんどんエスカレートしていき(チョコの値段のウン十倍の値段のアクセお返しに貰った、あの恰好良い上司に抱かれたい、みたいなデマが流されたと予想している)、♂の懐を痛めるのに十分なイベントと化している。女性の方もプレゼント(この場合はお返し)貰って嬉しくないはずがない、とのことですし。
あと、「胃袋をつかむ」と言う表現があるように、他の食品、特にお弁当をプレゼントするのが良く行われているようだ。ただ、育児に参加しそうな♂、という前提条件がある以上そんな♂は料理ができて当然であり、へたをするとお弁当を持っていったらはるかに立派な自作の弁当を食べていたなんてことになりかねない。そうなればキャラ弁と言ったネタに走るか、入手困難な食材を利用したものにチャレンジするかだろうが、余り変な食材で弁当を作るとドン引きされてしまう可能性もある諸刃の剣である。
また、世の中には「メシマズ」と呼称される料理に向いていない♀が存在するらしい。
アレンジャー、カゲンシラズ、モノシラズ、アジミネーゼなどと命名された彼女たちは、どうやら自覚無く破壊的味付けの料理(の、ようなもの)を生みだし、周囲を恐怖と混乱に陥れる。私も(幸いなことに一度だけ)それらしい食べ物に遭遇したことがあるので、自作の食品をプレゼントに予定しているならば、なるべく多くの味見係を用意した上で、人の意見を良く聞く姿勢が重要だと思う。
でも、そもそも人の意見を聞く気があるなら、そんな破壊的味付けはとっくに直っているはずなんですよね。
そんな料理(?)しか作れないのに♂に選ばれた。
それはそれで奇跡のカップルですが、その場合は将来その夫婦の納得する味付けのご飯を食べさせられる子どもが不憫でなりません。子どもが♀の場合にはメシマズの再生産と言うことになるのでしょうか。
家では小食な子どもが幼稚園では大食漢、あるいは友達のお弁当を欲しがる、とか聞いたのなら要注意です。