紘子さんへの手紙   作:榎木 昇

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⑲-1:私は中間宿主か

 ここまでSさんの行動を繁殖戦略と結びつけて考えてきましたが、必ずしも直接繁殖に結びついた行動を取っていない以上、もう一つ別の考え方に行き当たりました。

 ミツクリチョウチンアンコウやオキアンコウでは繁殖戦略にも取り入れているあれ、寄生戦略です。

 

 上記アンコウでは♂が♀に事実上寄生し、完全にヒモ生活を送っています。

 動物では♂に寄生する♀は知られていませんが、パラサイトなんたらという語もあるので、Sさんの行動を寄生と考えてみましょう。

 

 そうすると、Sさんの最終目的は少なくとも私ではなさそうですから、私は最終宿主に至るための途中経過、即ち中間宿主であることになります。

 中間宿主は多くの場合使い捨ての踏み台、ルートが確立した所で捨てられます。

 殆どの中間宿主は寄生者の宿主間移動のために食われて終わりですが、ロイコクロリディウムが入っている貝のように一部だけ食われることもあります。できればその程度に抑えていただきたいですね。

 

 とまれ、まずは寄生の定義ですが

①まず、寄生者が、宿主から利益を得ていること。

 Sさんは何らかの利益は得ていると考えられます、いくつかの情報とかアイテムとか。

②次に、寄生者が一定期間、宿主の表面か内部にいること。

 建物をカタツムリの殻的に考えると、同じ屋内にいるのはこれと考えて良さそうですね。

 なにか、だいぶ寄生っぽいです。

③そして、宿主は寄生者の存在によってはっきりと不利益を被ること。

 はっきりと不利益を被る? 不利益……?

 被っていませんね。

 

 最終宿主(予定)がどう感じるかは知りませんが、少なくとも中間宿主と位置づけられる私は不利益を感じていません。

 

 ということは寄生ではない?

 

 寄生者がいると、宿主は栄養などを搾取され、その量が多いと衰弱していきます。そして、いずれ宿主として役に立たなくなってしまうことになります。

 

 そうなれば、寄生者は新たな宿主に移動しなければなりませんが、これが意外に困難です。都合良く、条件の良い宿主がすぐ見つかるとは限らないからです。すぐ見つからなければ、見つかるまでの間は不便な生活を強いられます。なぜなら、宿主は(寄生形態に因りますが)衣食住の殆どを供給してくれるからです。

 

 そのため、一部の寄生者は搾取するだけではなく、積極的な宿主のメンテナンスを行ってなんとか宿主を長持ちさせようとします。その方が結果的に長い期間安全快適な環境にいられるからです。

 

 そして、メンテナンスが永続的にプラスの効果を持った場合、それは寄生関係ではなく共生関係と呼ばれます。

 

 また、最近は寄生-共生の違いは明確なものではなく、環境や時間経過によって変化するという考え方もあります。

 

 Sさんと私の関係は共生関係なのでしょうか。

 

 一般的用語では、共生関係は片利共生と相利共生があります。

 共生関係にあるとして、利益を得ているのはどちらでしょうか。

 

 Sさんは情報や感情を操作するアイテムを入手していますから、利益を得ていると考えて良いですよね。

 私の方は……気の持ちようでしょうが、不利益は感じません。極上の女を観察させて貰っていますし、可愛いアイテムも貰いました。状況の変化によって著しい不利益を被る可能性が残っていますが、それはおそらく私が何かヘマをやらかした場合でしょう。

 

 なるほど、Sさんと私の関係は中間宿主的共生関係にあったわけですね。

 

 ただ、この両者間の力関係を考えると、私から見て結構恐ろしいことになります。

 

 なにしろ、私は中間宿主的ニッチ(生態的位置づけのこと)にいますから、Sさんから見て使い捨て可能です。一方、共生関係とすると私の方はSさんに依存していますから、捨てられると不利益が生じます。具体的には、こんな脳天気な文章を垂れ流していられなくなります。

 

 直接的表現をすれば、極上の女に逃げられたダメージを受けることになります。

 

 共生関係って、こんな一方的なダメージが生じるものでしたか?

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