紘子さんへの手紙   作:榎木 昇

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⑲-2:私は猛禽類の2羽目の雛か

 猛禽類、たとえばイヌワシの産卵数は通常2個で、産卵間隔が10日ほど開く。従って通常は1羽が先に孵化し、親からえさをもらって先に育つ。もう1羽は先に孵化した個体がある程度大きくなってから孵化するので、最初から体格差がある。

 

 だから、猛禽類の巣では大小2羽の雛がいることが普通で、大きさのそろった雛が複数いることは滅多にない。

 

 もちろんこれらの雛は積極的に親から餌をもらおうとするのだが、先に生まれた方は体格も大きくなっており、より餌を与える親に近い所まで嘴が届く。餌が少ない場合は後から孵化した個体は十分な餌をもらえず、いよいよ体格差が開いていく。さらに餌が少ないと、後から孵化した方は非常食として利用されることもあるらしい。

 

 非常食要員とは、完全に予備としての卵である。

 

 ただし、猛禽類の孵化率は100%ではない。産卵数が1個でその卵が孵化しなければ、その年に巣立つ雛はいなくなってしまうが、産卵数が2個であれば最初に産卵された方が孵化しなくても、雛が巣立つ可能性が残っていることになる。つまり、1個目の卵が孵化しない場合に、2個目の卵の存在が効果を発揮する。

 

 この点でも、2個目の卵は予備なのだ。

 

 一応、親が狩りがうまく、餌の豊富な年であれば、2羽とも無事に育って巣立つこともあるらしい。ただし、それは早々あることではない。

 

 この、うまく育っても所詮2番目、基本保険用の非常食扱いであるあたり、見事に誰かの立場を示している気がする……。

 

 猛禽類は生態系のほぼ頂点に位置しており、その生活に広範囲のナワバリを要求する。そのナワバリは広大で、人間活動が目立つ平地にかかっていることも多いから、開発の影響を受けて生息数が減少したりしやすい。

 そのため(今はそんなことはないが)、保護の網を被せようという話になったりして何が何でもすべての雛を巣立たせようとしていたこともあった。

 

 もちろん、そんなことをすれば本来淘汰されるべき、軟弱な遺伝子を持った個体も個体群に加わってしまう。

 かっては、そんな理由で猛禽類の野生の生存能力がなくなりかけたこともあった。親が暖めようと上に乗ると割れる卵とか。

 

 しかし、いまだにトキで同じことをしようとしている。

 

 産卵し、孵化した個体を大事に育て、生活力のないままに放鳥、野生化するのは保護として正しくない。野外には危険も多いのだから、実際に危険に遭遇したとき、対応できる個体を残すべきなのだ。そのためには、実際に危険に遭遇したとき、どのように振る舞うのか確認しなければならない。

 

 イタチの襲撃に対応できない個体群を増やして野外に放った所で、イタチ向けのレストランを開店しているようなものである。

 

 もちろん、対応のまずい個体は危険をやり過ごすことはできずに消滅してしまうことだってあるだろう。しかし、それは本来淘汰されるはずの個体で、いわば、存在があり得ない個体でもあるのだ。

 

 生存能力というのは、過酷な経験を通して培われていくものであるし、その結果、より強い者が生き残っていくことができるのである。

 

 ここは、歩みは遅くとも、確実に実を結ぶ方法で対応していくべきだと思う。

 

 その時間があればね。

 

 ありますよね?

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