デート・ア・ブレイド   作:白い鴉

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今月のデアラの十二巻が楽しみすぎる。そろそろ士道の秘密とか明かされるのかな……。
そして今回話のチェックをしていて思った事が一つ。士道これ続けてたら過労死するんじゃ?


第三話 真実と襲撃

  

 

 

 ――――久しぶり。

 

 頭の中で、声がする。どこかで聞いた事のあるような、ないような。そんな不思議な声だ。

 

 ――――やっと、やっと会えたね、×××。

 

 まるで、懐かしむように、慈しむように。

 

 ――――嬉しいよ。でも、もう少し、もう少し待って。

 

 お前は誰だ、と問いかけても答えはない。声は、ただ自分に向かって語りかけてくる。

 

 ――――もう、絶対離さない。もう、絶対間違わない。だから、

 

 それを最後にして、不思議な声は途切れた。

 

 

 

 

 

「……ん」

 士道はうめき声を出しながら、目を覚ました。何やら不思議な夢を見ていた気がするが、夢の内容がなんだったのかよく思いだせない。それに、思い出す暇もなかった。

「うわっ!」

 と、士道は思わず叫んでしまった。

 何故なら、見た事も無い女性が士道の瞼を開いて、小さなペンライトのようなもので光を士道の目に当てていたのだから。

「……ん? 目覚めたね」

 その女性は、目元にくっきりと濃い隈を浮かべた女性だった。どうやら気絶した士道の眼球運動を見ていたらしく、妙に顔が近い。女性からわずかに漂ってくる良い香りに士道は自分の鼓動が高鳴るのを意識してしまいながら、女性に尋ねる。

「だ、だだだだ誰ですか?」

「……ああ」

 女性はぼーっとした様子のまま体を起こすと、垂れていた前髪を鬱陶しげにかき上げる。

 軍服らしき服を纏った二十歳ぐらいの女性である。無造作にまとめられた髪に、眠たそうな瞳、そして何故か軍服のポケットから顔を覗かせている傷だらけのクマのぬいぐるみが特徴的だった。

 士道は一瞬BOARDの関係者かと思ったが、すぐにその可能性を否定する。彼女のような人間は見た事も無いし、BOARDに軍服のような衣装は存在しない。

「……ここで解析官をしている、村雨(むらさめ)令音(れいね)だ。生憎医務官が席を外していてね。……まぁ安心してくれ。免許こそ持っていないが、簡単な看護くらいならできる」

 と女性――――令音はそんな事を言うが、士道はまったく安心できなかった。こんな場所で目を覚ましたかと思ったら、目の前には見知らぬ女性がいたのだ。これで安心する方がどうかしているだろう。

 そして、士道は令音の言葉に引っ掛かりを覚えた。

「……ここ?」

 言いながら周囲を見回す。

 士道は簡素なパイプベッドに寝かされていた。その周り取り囲むように、白いカーテンが仕切りを作っている。まるで学校の保健室を真似て作ったような部屋だった。

 唯一学校の保健室と違う点を挙げるならば、天井で剥き出しの状態になっている無骨な配管や配線だろう。どこをどう見てもBOARDの施設ではない。

 それを知った士道は、目の前の女性に警戒心を抱いた。秘密組織であるBOARDの存在を知る者はきわめて少ないものの、何らかの手段を用いてBOARDの秘密を知った誰かが自分をここに運び込んだという可能性がある。

 その目的は、士道の所有しているブレイドアーマーだろう。

 ブレイドアーマーにはアンデッドの力だけではなく、かなり高度の科学技術が使われている。どこかの組織がブレイドアーマーに目をつけて、それを所有する士道もろとも持ち去ろうと考えている可能性は無いとも言えない。そういう事は、ライダーになる際に広瀬や烏丸から耳にタコができるほど注意されている。士道はこっそりと懐に手をやると、指先にブレイバックルの固い感触が触れた。どうやらブレイバックルは奪われていないらしい。恐らくラウズカードも奪われていないだろう。これなら、いつでも逃げ出す事が可能になる。無論、ここがどこなのか分からなければ話にならないが。

 士道がこれからの事を考えていると、令音が無言で士道に背を向けた。

「ちょ、ちょっと……」

「……ついてきたまえ。君に紹介したい人がいる。……気になる事はいろいろあるだろうが、どうも私は説明下手でね。詳しい話はその人から聞くと良い」

 言いながら令音はカーテンを開けた。カーテンの外は少し広い空間になっていた。ベッドが六つほど並び、部屋の奥には見慣れない医療器具のようなものと妙な機械が置かれている。士道はそれを見て、かすかに眉をひそめた。

(これまさか……医療用の顕現装置(リアライザ)か?)

 士道自身は使った事はないが、前に烏丸に見せてもらった物に形が酷似している。するとじっと機械を見つめている士道に気付いていないのか、令音が部屋の出入り口らしい方向に向かって歩みを進める。

 だが、すぐに足をもつれさせると、ガンッ! という音を立てて頭を壁に打ちつけた。わりとシャレにならない音だったので、士道が慌てて声をかける。

「だ、大丈夫ですか!?」

「……むう」

 令音は壁にもたれかかるようにしながら呻く。どうやら無事のようらしい。

「……ああ、すまないね。少し寝不足なんだ」

「ど、どれくらい寝てないんですか?」

 士道が尋ねると、令音は少し考え込んでから指を三本立てた。

「三日もですか。そりゃ眠いですよ」

「……三十年、かな」

「それはもう寝不足ってレベルじゃない!」

 三週間くらいまでの答えだったら覚悟していた士道だったが、さすがに予想外の答え過ぎた。しかも明らかに彼女の外見年齢を超えている。冗談なのか、それとも見た目以上の年齢なのか気になるが、さすがに女性に年齢の事を尋ねるのは失礼だよなと士道は質問するのをやめる事にした。

「……まあ、最後に睡眠をとった日が思い出せないのは本当だ。どうも不眠症気味でね」

「どう考えても不眠症ってレベルをはるかに超えてると思いますけど……」

「……そうか?」

 きょとんとしているかのように、令音は首を傾げた。とは言っても無表情のままなので、本当に疑問に思っているかは士道には分からない。士道が顔をひきつらせていると、おもむろに令音が腕時計に視線を落とした。

「……ああ、すまない。薬の時間だ」

 言いながら懐を探ると、錠剤の入ったピルケースを取り出した。そしてピルケースの蓋を開け、ピルケースの逆さまにして中に入っていた錠剤を一気に口の中に放り込む。

「って待て待て待て待て!」

 ついに敬語すら忘れて士道が叫ぶ。彼女はかなりの量の錠剤をバリバリグシャグシャバキバキゴクゴクと中々凄まじい音を立てながら飲みこむと、士道に視線を向ける。

「……何だね、騒々しい」

「いや、それは悪いと思ってますけど! 何の薬ですかそれ!?」

「……全部睡眠導入剤だが」

「自殺志願者ですかあなたは!? さすがにシャレにならねえ!」

「……でも今一つ効きが悪くてね」

「マジですか!?」

「……まあでも甘くておいしいから良いんだがね」

「それラムネじゃねえの!?」

 叫んでから、士道ははぁはぁと息継ぎする。中々ツッコミ所の多い女性である。相手をしているこっちの方が先に力尽きそうだ。士道がようやく呼吸を落ち着かせると、令音が士道に言う。

「……さ、こっちだ。ついてきたまえ」

 令音は空になったピルケースを懐にしまい込むと、再び危なっかしい足取りで歩き始め、医務室の扉を開ける。士道は罠の可能性も考えたが、いつまでもここにいても仕方がない。仕方なく靴を履き、彼女の後を追って部屋の外に出る。

「……おいおい、何だよこれ……」

 部屋の外は狭い廊下のような作りになっていた。BOARDの内部や通路が研究所のような無機質な物なら、こちらはスペースオペラなどに出てくる宇宙戦艦の内部や潜水艦の通路を連想させる。その光景に戸惑いながらも、士道は令音の背中を追いかけていく。

 しばらく歩くと、令音が突然立ち止まった。

「……ここだ」

 二人が立ち止ったのは、横に小さな電子パネルが付いた扉の前だった。すると次の瞬間、電子パネルが軽快な音を鳴らして扉がスライドする。

「……さ、入りたまえ」

 令音が中に入ると、士道もそれに続くように部屋の中へと足を踏み入れる。

「……こりゃあ……」

 扉の向こうに広がっていた光景に、士道は思わず声を漏らした。

 一言で言うならば、船の艦橋のような場所だった。半楕円形の形に床が広がり、中心には艦長が座ると思われる椅子が設えられている。左右両側にはなだらかな階段が伸びており、そこから下りた下段には複雑そうなコンソールを操作するクルー達が見受けられる。全体的に薄暗いせいか、あちこちにあるモニタの光がいやに存在感を主張していた。

(おいおい……。これ、BOARD(うち)のレベルを越えてんじゃないか……?)

 士道がモニタなどを見て心の中で呟いていると、令音が頭をふらふらと揺らしながら誰かに言った。

「……連れてきたよ」

「ご苦労様です」

 礼をしながらそう言ったのは、艦長席の横に立った長身の男だった。ウェーブのかかった髪に、日本人離れした鼻梁をしている。一言で言ってしまえば、かなりのレベルの美青年だ。

「初めまして。私はここの副司令、神無月(かんなづき)恭平(きょうへい)と申します。以後お見知りおきを」

「は、はい……」

 士道は戸惑いながらも、小さく頭を下げる。

 士道は一瞬、令音がこの男に話しかけたのだと思った。

 だが、実際には違った。

「司令、村雨解析菅が戻りました」

 神無月が声をかけると、士道達に背を向けていた艦長席が低い唸りを上げながらゆっくりと回転した。

 それと同時に、士道に聞き覚えのある声がかけられた。

「――――歓迎するわ、士道。ようこそ、ラタトスクへ」

 可愛らしい声を響かせながら、真紅の軍服を肩掛けにした少女の姿が明らかになる。

 黒いリボンで二つにくくられた髪に、小柄な体躯。どんぐりのようなくりくりっとした丸い目に、口にはくわえたチュッパチャップス。

 その少女の姿を見て、士道は思わず眉をひそめながら、少女の名前を口にする。

「………琴里?」

 そう。いつもの姿と違いは結構あるが、艦長席に腰掛けている少女は紛れもなく士道の妹である五河琴里だった。

 

 

 

 

 

「で、これが精霊って呼ばれてる怪物で、こっちがAST。陸自の対精霊部隊よ。厄介な物に巻き込まれてくれたわね。私達が回収してなかったら、今頃二、三回ぐらい死んでたかもしれないわよ? で、次に行くけど――――」

「ちょ、ちょっと待て!」

 いきなり説明を始めた琴里を制するように、士道が声を上げた。

「何、どうしたのよ。折角司令官直々に説明してあげるっていうのに、もっと光栄に咽び泣いて見せなさいよ。今なら特別に、足の裏くらい舐めさせてあげるわよ?」

 軽く顎を上に向け、士道を見下すような視線を送りながら、いつもの無邪気な琴里とは思えないほどの暴言を吐いてくる。

「ほ、本当ですか!?」

 何故か琴里の横に立っていた神無月が喜びの声を上げると、琴里が「あんたじゃない」と言いながら彼の鳩尾に肘鉄を放つ。

「ぎゃぉふっ……!」

 苦しそうな声を出しながらも、何故か神無月は嬉しそうだった。ああ、この人ドMなんだな……と士道は半眼で神無月を見ながらそう思った。それから琴里に視線を戻して、改めて彼女に問う。

「……ってか、お前琴里だよな? 無事だったのか?」

「あら、妹の顔を忘れたの、士道。物覚えが悪いと思っていたけど、さすがにそこまでとは私も予想外だったわ。今から老人ホームを予約しておいた方が良いかしら」

 妹の毒舌に目を丸くしながらも、士道は後頭部を掻いて琴里に言う。

「……なんかもう意味が分からなすぎる。とりあえず一つ一つ説明してくれ」

「安心しなさい、言われなくても最初からそのつもりよ。じゃあまず、こっちから理解してもらうわ」

 言いながら琴里が艦橋のスクリーンを指さす。

 そこには、先刻士道が遭遇した黒髪の少女に、ブレイドアーマーとはまた違う機械の鎧を身に纏った人間達の姿が映し出された。

「確か、精霊って言ったっけ?」

 先ほど、琴里は彼女の事を説明する際にそう言っていた。

 不定期に世界に出現する、正体不明の怪物。

「そ。彼女は本来この世界には存在しないものであり、この世界に出現するだけで己の意志とは関係なく辺り一帯を吹き飛ばしちゃうの」

 ドーン! と琴里が両手を思いっきり広げて爆発を表現する。そこだけは何故か歳相応な気がして微笑ましいが、今の士道はそれだけではない。まだ琴里の話を完全に理解できていないのだ。

「……つまり、どういう事だ?」

 すると琴里が肩をすくめながら息を吐き、事実を告げる。

「つまり、空間震って呼ばれてる現象は、彼女みたいな精霊がこの世界に現れる時の余波なのよ」

「なっ……」

 士道は思わず声を出した。

 空間の地震。空間震。

 人類を、世界を破壊する理不尽極まる現象。

 その原因が、彼女だというのだろうか?

「ま、規模はまちまちだけどね。小さければ数メートル程度、大きければ……それこそ大陸に穴が開くくらい」

 それは、三十年前確認された最初であると同時に最悪の空間震、ユーラシア大空災の事を言っているのだろう。そして彼女の言葉は、それも精霊がこの世界に現れた事で発生したものだという事を暗に意味していた。

「運が良いわよ士道。もし今回の爆発規模がもっと大きかったら、あなた一緒に吹っ飛ばされてたかもしれないんだから」

「………っ」

 確かに妹の言うとおりだった。今思えば、あの時の状況は本当に空間震に巻き込まれてもおかしくないレベルである。運が悪ければ、士道の五体は今頃この世に存在してないだろう。そう思うと、士道は自分の体が震えるのを感じた。そんな士道を琴里は半眼で見つめ、

「大体、あなた何で警報発令中に外に出てたの? 馬鹿なの? アホなの? 死ぬの?」

「いや、だってお前……」

 ポケットから携帯電話を取り出し、琴里の位置情報を表情させる。やはり、琴里の位置を示す赤いアイコンはファミレスの前で停止していた。

「ん? ああ、それね」

 だが琴里はポケットからある物を取り出して士道に見せた。それは琴里の携帯電話だった。

「あれ? 何でお前、それ」

 士道は自分の携帯電話の画面に表示されている赤いアイコンと、目の前に掲げられている琴里の携帯電話を交互に見る。こんな所に琴里がいるので、てっきり士道はファミレス前に携帯電話を落としたのかと思っていたのだ。

 琴里は肩をすくめ、はあと嘆息した。

「何で警報発令中に外にいたのかと思ってたら、それが原因だったのね。私をどれだけ馬鹿だと思ってるのかしらこのアホ兄は。空間震警報が鳴ってるのに、外に出てると思ってるの?」

「じゃあ、このアイコンは……」

「簡単よ。ここがファミレスの前だからよ」

「……? どういう事だ?」

「そうね、百聞は一見に如かずって言うし……。一回フィルター切って」

 琴里がそう言うと、薄暗かった艦橋が一気に明るくなる。

 証明が点けられたわけではない。どちらかと言うと、天井にかけられていた暗幕を一気に取り払ったという表現の方が正しい。

 事実、辺りには青空が広がっていた。

「な、何だこりゃ……」

「騒がないでちょうだい。外の景色がそのまま見えてるだけよ」

「外の景色?」

「ええ。ここは天宮市一万五千メートル。位置的にはちょうど、待ち合わせしてたファミレスのあたりになるかしらね」

「一万……って、ここってまさか……!?」

「そう。このフラクシナスは空中艦よ」

 腕組みし、まるで誇るように琴里がふふんと鼻を鳴らす。一方、士道は愕然としていた。

 ありとあらゆる科学技術が集められたBOARDにいる士道でも、こんな規模の空中艦など見た事も聞いた事も無い。ラタトスクとやらの科学力は、本当にBOARDを超えているのかもしれない。

「ってか、何でお前が空中艦なんかに乗ってるんだよ」

「だから順を追って説明するって言ってるでしょう? 鶏だって三歩歩くまでは覚えるでしょうに」

「む……」

「でもケータイの位置確認で調べられちゃうなんて盲点だったわね。顕現装置(リアライザ)不可視迷彩(インビジブル)自動回避(アヴォイド)かけてたから油断してたわ。あとで対策打っておかないと」

 恐らく琴里は士道が話の内容を理解できないと思っているからこんな独り言を呟いているのだろうが、それを聞いていた士道はそう言えばBOARD(うち)は、特殊なジャミングを使ってGPSとかで位置を探られないようにしてるって前に聞いた事があるなー、と内心思っていた。

「ま、最近は精霊と同じぐらいに厄介な連中が出てきてるんだけどね」

「連中?」

「ええ。スクリーンに出して」

 琴里が言うと、スクリーンにまた別の映像が映し出された。

 そこに映し出されたのは、異形だった。とても人間とは思えない恐ろしい姿に、人間のように二本の足で地面に立っている。

 その怪物の姿を見て士道は凍りついた。その怪物の恐ろしさ、にではない。その怪物とは、何回も戦った事があったからだ。

(アンデッド……!?)

 その怪物の名前を心の中で呟きながら、士道はスクリーンを凝視する。そんな士道には気付いていないのか、琴里はさらに説明を続ける。

「最近になってよく出てきた怪物よ。発生原因とかはまだ分からないけど、分かってる事が二つあるわ。一つは精霊とは違って積極的に人を襲う事。もう一つは……どんな手段を用いてたとしても、『殺す』事ができない事」

「ASTが彼らを討伐しようと試みた事が何度もありますが、彼らを倒す手段は未だ見つかっていません。何回殺そうとしてもすぐに復活し、逃げられてしまっています」

 琴里の横にいた神無月が彼女に新しい飴を手渡しながら説明してくる。その説明を補足するように、今度は令音が口を開く。

「……私達は、この生物の事をアンデッドと呼んでいる。元々は、どこかの組織が名づけたらしいがね」

 どうやら、BOARDが名づけたアンデッドという名称はラタトスクの耳にも入っているらしい。しかし名前がバレているという事は組織の事もラタトスクに気付かれているのでは? と士道が思っていると、琴里が言った。

「噂だと、このアンデッド専門の組織があるらしいけど、詳細はまったくの不明。一体こんな怪物を、どうやって殺してるのかしら」

 殺してるんじゃなくて封印してるんだけどな、と士道は訂正するも口にはもちろん出さない。

 また、どうやら琴里達ラタトスクはBOARDという組織の事をまだ知らないらしい。精々、アンデッドを倒すための組織があるようだ、という程度だろう。これほどの科学力を誇るラタトスクがBOARDの事を知らないというのも奇妙な話だが、それも当然かもしれないと士道は思う。

 BOARDはライダーシステムの情報を守り続けるために、セキュリティを何重にもして情報が漏れるのを防いできた。あれほどの情報を守るシステムそのものが、BOARDの一つの武器なのだ。

「話を戻すわ。最後はこっちよ。AST。アンチ・スピリット・チームでAST。精霊専門の部隊よ」

 琴里はスクリーンを先ほどのものに戻すと、そこに映し出されている一団を指さす。

「精霊専門の部隊って……。まさか、殺す、とか?」

 士道が恐る恐ると言った状態で言うと琴里はあら、と意外そうな表情を浮かべた。

「よく分かったわね。その通りよ」

「………っ!」

 予想していた言葉ではあった。しかしいざそれを直接知らされると、士道は心臓が引き絞られるかのように感じた。

 別におかしな事ではない。自分だってアンデッドと戦い、彼らを封印している。彼女達ASTもきっと彼女達なりの信念と正義を胸にして、精霊を倒すために戦っているのだろう。

 しかし、そんな士道の頭にあの少女の顔が浮かんできた。

『だってお前も、私を殺しに来たんだろう?』

 少女があんな事を言った理由が、ようやく理解する事が出来た。

 そして彼女が浮かべていた、今にも泣きだしてしまいそうな顔の意味も。

「まあ、普通に考えれば死んでくれるのが一番でしょうね」

 特に何の感慨もなさそうに、琴里が言った。士道は拳を強く握りしめながら口を開く。

「なん……でだよ」

「なんで、ですって?」

 士道の言葉を聞いて、琴里が興味深そうに顎に手を当てながら言う。

「何もおかしい事はないでしょう? あれは怪物よ? この世界に現れるだけで空間震を起こす最凶最悪の猛毒よ?」

「で、でも空間震は精霊の意思とは関係なく起こるんだろ?」

「ええ。少なくとも現界時の爆発は、本人の意思とは関係ないっていうのが有力な見方よ。まあ、その後のASTとドンパチした破壊痕も空災被害に数えられるけどね」

「だってそれは、ASTの連中が攻撃するからじゃないのか?」

「そうかもしれないわね。でもそれはあくまで推測の話よ。もしかしたらASTが何もしなくても、精霊は大喜びで破壊活動を始めるかもしれない。今までたくさんの人間を襲ってきたアンデッドのようにね」

「………それは、ねえだろ」

 士道が俯きながら言うと、琴里が不思議そうに首を傾げる。

「根拠は?」

「……アンデッドの奴等みたいに好きこのんで街をぶっ壊すような奴は……あんな顔は、しねえよ」

 それは、根拠と呼ぶにはあまりに曖昧で薄弱すぎるものだった。しかし、何故か士道はそれを心の底から確信していた。一方、琴里は士道の言葉を聞くと眉をひそめて、

「……まるでアンデッドの事をよく知ってるみたいな口ぶりね。もしかして、何回か遭遇した事があるの?」

「……別に。何となく、そう思っただけだ。それよりも、暴れるのは精霊本人の意思じゃねえんだろ? それなのに……」

「随意か不随意かなんて、大した問題じゃないのよ。どっちにしろ精霊が空間震お起こす事に変わりはないんだから。士道の言い分も分からなくはないけど、かわいそうって理由だけで核弾頭レベルの危険生物を放置しておくことはできないわ。力の大きさだけ見てみれば、アンデッドよりも精霊の方が危険なんだから。今は小規模な爆発で済んでるけれど、いつユーラシア大陸級の大空災が起こるか分からないのよ?」

「でも……それでも殺すなんて……」

 士道が追いすがると、琴里はやれやれと言うように肩をすくめた。

「数分程度しか接点のない、しかも自分が殺されかけた相手だっていうのに、随分精霊の肩を持つじゃない。もしかして、惚れちゃった?」

「……っ、違ぇよ。ただ、殺す以外に方法があるんじゃねえかって思うだけだ」

「……方法、ね」

 士道の言葉を反芻すると、琴里はふうと息を吐いた。

「それじゃあ聞きたいんだけど、他にどんな方法があると思うの?」

「それは……」

 琴里に言われて、言葉が止まってしまう。

 頭では理解できてしまっているのだ。

 出現するだけで空間震を起こし、世界に深刻な爪痕を残す異常、精霊。

 そんなものは迅速に殺さねばならないのかもしれない。

 しかし、たった一瞬ではあるが士道は見た。

 あの少女の、今にも泣きだしてしまいそうな顔を。

 そして、聞いてしまった。

 あの少女の、今にも泣きだしてしまいそうな悲痛な声を。

「……とにかく」

 気が付けば、士道の口は自然と言葉を紡いでいた。

「一度、ちゃんと話をしてみないと……分かんねえだろ」

 確かにあの時の死の恐怖は未だ体に残っている。

 しかし、死の恐怖だけならばアンデッドとの戦いの中でも味わった事が何回もある。それに相手はアンデッドのように話が通じない訳でも、好き好んで人を襲っているわけでもない。

 それに士道には、あの少女をこのまま放ってはおけなかった。

 だって彼女は、士道と同じだったのだから。

 すると、その士道の言葉を待っていたかのように、琴里は笑みを浮かべた。

「そう。じゃあ手伝ってあげる」

「は……?」

 思いもよらなかった言葉に士道が思わず口をぽかんと開けると、琴里が両手をばっと広げた。

 まるで、令音を、神無月を、下段に広がるクルー達を、この空中艦『フラクシナス』を示すように。

「私達が、それを手伝ってあげるって言ったのよ。『ラタトスク機関』の総力をもって、士道をサポートしてあげるって」

 その言葉に、士道は戸惑いながらも声を発する。

「な、何だよそれ。意味が……」

 だが士道の言葉を遮るように、琴里が声を上げる。

「良い? 精霊の対処方法は、大きく分けて二つあるの。一つはASTのやり方。戦力をぶつけてこれを殲滅する方法」

「……じゃあ、もう一つは?」

 士道が尋ねると琴里は笑みを浮かべながら、

「もう一つは、精霊と対話する方法。私達は『ラタトスク』。対話によって、精霊を殺さず空間震を解決するために結成された組織よ」

 士道は眉をひそめた。何の目的でそんな組織が結成されたのかとか、琴里が何故その所属しているのとか、聞きたい事はたくさんある。しかし、今はそれよりも気になる事が一つある。

「……で、何でその組織が俺をサポートするって話になるんだよ」

「ていうか、前提が逆なのよ。そもそも『ラタトスク』っていうのは、士道のために作られた組織だから」

「は、はぁっ!?」

 士道は思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。だがそれも当然である。 

 サポート自体ならBOARDも士道がアンデッドと戦う時にしてくれているが、それはあくまでもBOARDという組織全体のためであって士道個人のためではない。が、今の琴里の言葉通りなら、ラタトスクはその逆で士道個人のために作られたというのだ。これで驚くなという方が無理がある。

「ちょっと待て。俺のため?」

「ええ。まあ、士道を精霊との交渉役に据えて精霊問題を解決しようって組織って言った方が正しいのかもしれないけれど。どちらにせよ、士道がいなかったら始まらない組織なのよ」

「ま、待てって。どういう事なんだよ。ここにいる人達が、全部そんな事のために集められたって事か? ってか、何で俺なんだ?」

 士道が問うと、琴里はキャンディを口の中で転がしながら告げた。

「そうね……。一言で言えば、あなたが私達の『切り札』だからよ。士道」

「……切り札」

 士道は口の中でその言葉を繰り返した。自分が何故彼女達の切り札なのかは分からない。だが、琴里が発したその言葉には、どこか確信じみた響きがあった。士道が黙り込むと、琴里がさらに続けてくる。

「まあ、理由はその内分かるわ。良いじゃない、私達が全員、全技術を以て士道の行動を後押ししてあげるって言ってるのよ? それとも、また一人で何の用意もなく精霊とASTの間に立つつもり? 死ぬわよ、今度こそ」

 別に何の用意もないわけじゃないんだけどな、と士道は内心呟きながら懐のブレイバックルに触る。だが、極力これは使いたくなかった。もしもこれを使ってあの少女の前に立ってしまえば、話し合いも何もできないと思ったからだ。かと言って士道個人の力のみでは、あの少女と話をする事すらも難しい。

 とりあえず、琴里の話を聞くしかないと思い、士道は彼女に尋ねた。

「……で、その対話っていうのは具体的に何をするんだよ」

 すると琴里は再び小さく笑みを浮かべた。

「それはね」

 そして顎に手を置き、

「精霊に、恋をさせるの」

 ふふんと得意げに、そう言った。

「………」

 それを聞いた士道は一瞬聞き間違いかと思ったが、どうやら自分の鼓膜はいたって正常らしい。しばし魔を開けてから、

「………はい?」

 と、思わず間抜けな声を出してしまっていた。頬に汗を垂らしながら、眉をひそめる。

「……すまん、ちょっと意味が分からん」

「だから、精霊と仲良くお話してイチャイチャしてデートしてメロメロにさせるの」

「……ええと、それで何で空間震が解決するんだ?」

 琴里は指を一本顎に当てながら、んーと考えるようなしぐさを見せた後に口を開いた。

「武力以外で空間震を解決しようとしたら、要は精霊を説得しなきゃならない訳でしょ?」

「そうだな」

「そのためにはまず、精霊に世界を好きになってもらうのが手っ取り早いじゃない。世界がこんなに素晴らしいものなんだー、って分かれば精霊だってむやみやたらに暴れたりしないでしょうし」

「……まあ、そうだな」

「で、ほら、よく言うじゃない。恋をすると世界が美しく見えるって。――――というわけでデートして、精霊をデレさせなさい!」

「いや、意味が分からない」

 明らかに論理が飛躍しすぎている。だがここで駄々をこねれば、ではどういう手段を取れば良いのだという話になってくる。士道がうーんと悩んでいると、士道の考えを察したのか琴里が言ってくる。

「腹の底では全部に賛同してなくたって良いわ。でも、あなたが本当に精霊を殺したくないって言うのなら、手段は選んでいられないんじゃない?」

 言い終えると同時、琴里が悪そうな笑みを浮かべる。

 確かに彼女の言うとおりだった。自分にはライダーとしての力があるが、あの少女相手には使いたくない。高い科学技術を持つ組織と言ったらラタトスクの他にBOARDがあるが、BOARDはあくまでアンデッドを封印するための組織だ。精霊相手に動いてくれるとは考えにくい。

 かと言ってASTのやり方は論外だし、琴里達だって要は精霊を籠絡して良いように利用しようとしているようにしか思えない。

 だが、他に方法が無いのも事実だった。

「……分かったよ」

 士道が苦々しく頷くと、琴里は満面の笑みを作った。

「よろしい。今までのデータから見て、精霊が現界するのは最短でも一週間後。早速明日から訓練よ」

「……は? 訓練?」

 士道は、思わず呆然と呟いた。

 

 

 

 

「つ、疲れた……」

 その日の夜、士道は自宅のベッドにダイブしていた。

 琴里との話の後士道は別室に移され、ラタトスクの職員と思われる男性から事態の詳細な説明を延々と聞かされた後に、様々な書類にサインをさせられてようやく今帰宅する事が出来たのだ。置時計を見てみると、もう十一時を回っている。

「はぁ……。訓練って、何やるんだろ」

 琴里の言葉を思い出して士道はため息をついた。訓練など、ライダーになるための基礎体力作りやアンデッドとの戦闘に備えての戦闘訓練以来だ。あの妹が考える訓練の事を考えると今から気が滅入るのだがそうも言ってられない。訓練をしなければ、あの少女と話す事すらできないのだ。あの少女と話し合うためにも、頑張らなければならない。

 そして天井を見上げながら、ふと思った。

「……そう言えば、広瀬さん達は精霊の事を知ってるのか……?」

 今まで彼女達の口から精霊やASTの事を聞いた事はないが、彼女達は何か知っているのだろうか? もしも知らなくても、ラタトスクの事などを念のために報告しといた方が良いのかもしれない。烏丸や広瀬ならば、何か精霊と接触する上で何か貴重な助言をくれるかもしれないからだ。

 と、士道が携帯電話に手を伸ばした時だった。突然軽快な電子音が鳴り、驚いた士道は携帯電話を開いて相手が誰かを確認する。

「……ん? 広瀬さん?」

 電話をかけてきた相手は、今電話をしようと思った広瀬だった。士道は携帯電話の通話ボタンを押し、耳に当てる。

「あ、広瀬さん? どうしたんですか?」

 そして聞こえてきた広瀬の声は、かなり切羽詰まったものだった。

『五河君!? 大変よ、BOARDにアンデッドが!!』

「えっ!?」

 士道は思わずベッドから立ち上がり、目を見開いた。BOARDはあらゆるセキュリティで研究所がある場所を隠している。そこが、アンデッドに強襲された?

『早く来て! みんなが……きゃあああっ!!』

「広瀬さん!? 広瀬さん!!」

 しかし彼女の悲鳴を最後にして、通話は途切れた。

「くそっ!!」

 士道は舌打ちすると机の上に置いてあったブレイバックルを掴み、階段を下りて家を出る。すぐさまブルースペイダーに乗ってヘルメットをかぶりエンジンをかけると、BOARDへと向かった。

 

 

 

「士道? 訓練の事だけど、明日……」

 フラクシナスから帰ってきた琴里は士道の部屋を覗き込みながらそう言ったが、その瞬間彼女の表情が怪訝そうなものになった。

 部屋の電気はついているのに、肝心の士道の姿がない。ベッドが少し乱れており、恐らく寝転がった状態からすぐに立ち上がってどこかへ行ったのだが、家の中に姿は見えない。コンビニにでも行ったのだろうか?

「……まったく、体調管理だって大切なのに。やる気あるのかしら」

 ふんと鼻を鳴らしながら琴里はそう呟いた。

 彼女は知らない。

 自分が兄に自分の裏の顔を隠していたように、兄も裏の顔を隠していたのだという事を。

 そして、その兄は今は死地に向かっているのだという事を。

 彼女は、何も知らなかった。

 

 

 

 

 

「何だよ、これ……!」

 ようやくBOARDの研究所に辿り着いた士道は研究所の様子を見て絶句した。

 研究所からは警戒音がうるさいほどに鳴り響き、緊急時に作動する大型スポットライトが辺りを照らしている。そして、これほどの緊急事態だというのに辺りには人影が一つもない。普通なら逃げている人間が一人ぐらいはいても良いはずなのに、これは明らかに異常事態だった。

 士道が我を取り戻して研究所に向かおうとしたその時、士道に何かが襲いかかった。

「うわっ!?」

 驚いてその何かをかわすと、勢い余ったそれがスポットライトの下に出た。そのおかげで、その生物の全容が見て取れるようになる。

 イナゴのような姿に、背中には虫の羽。それに加えて凄まじい跳躍力を生み出すであろう強靭な脚。

 二足歩行で立つその姿は、紛れもなく士道の敵――――アンデッドだった。

「お前が……お前が広瀬さん達を!!」

 士道は声に怒りをのせながらブレイバックルを取り出し、ビートルアンデッドが封印されたラウズカードをブレイバックルのラウズリーダーに装填する。さらにブレイバックルを腰に押し当てると、バックルからカード状のベルト『シャッフルラップ』が自動的に伸びて士道の腰に装着される。

 そして右手の親指と人差し指を伸ばし、手の甲を前にした状態でゆっくりと前方に伸ばしてから一度動きを止めてから手首をくるりと回し、叫ぶ。

「変身!」

 それと同時、今度は左手を伸ばしてから右手でターンアップハンドルを引くと、ラウズリーダーが回転して露わになったスペードの紋章が青い輝きを帯びる。

『Turn Up』

 音声が鳴ると同時、ブレイバックルからオリハルコンエレメントが飛び出し、アンデッド――――ローカストアンデッドを弾き飛ばす。ローカストアンデッドが弾き飛ばされてから、士道はビートルアンデッドの紋章が浮かび上がっているオリハルコンエレメントに突進する。

 士道の体がオリハルコンエレメントを通過した瞬間、士道の体に青いスーツと銀色の機械の鎧、さらに頭部を覆う仮面が装着され、士道はブレイドへと瞬時に変身を遂げた。

「おおっ!!」

 ブレイドはローカストアンデッドの体に拳を数発叩き込んでから、ホルスターからブレイラウザーを引き抜き相手の体を斬り裂き、そのたびにローカストアンデッドの体から火花が散る。ローカストアンデッドが負けじと腕を横薙ぎに振るってくるが、ブレイドはその攻撃をかわして逆に強烈な蹴りを叩き込んでやる。

 ローカストアンデッドはその攻撃で一瞬怯んだもののすぐに体勢を立て直すと、自分の全身を無数のイナゴへと変えてブレイドに襲いかかる。ブレイドはブレイラウザーで全て斬り伏せようとするが、何せ小さく数も多いので中々攻撃を当てる事ができない。イナゴから攻撃を受けるたびに、ブレイドの全身から火花が散る。

「ぐああああっ!!」

 イナゴからの猛攻にブレイドはついに吹き飛ばされ、地面を転がる。そのブレイドにとどめを刺そうとしたのか無数のイナゴから元の状態に戻ったローカストアンデッドが、倒れているブレイドに腕を振り上げる。しかしブレイは起き上がるとブレイラウザーを逆手に持ち、カウンターと言わんばかりにローカストアンデッドを斬り裂く。さらにそのまま攻撃する暇すら与えず、次々に攻撃を加えていく。

『ガアアアアアッ!!』

 連撃に耐えきれず、ついにローカストアンデッドが地面に膝をついた。ブレイドはブレイラウザーのオープントレイを展開すると、カードを一枚引き抜きスラッシュリーダーで読み取る。

『TACKLE』

 その音声と同時にブレイドの胸部にカードの力が吸収され、ブレイドの全身に凄まじい突進の力を与える。ローカストアンデッドに突進する構えを取ると、次の瞬間一気に全速力で走り出す。

「はぁああああああっ!!」

 そして凄まじい突進がローカストアンデッドに直撃すると思われた瞬間、予想外の事が起きた。

 突然ローカストアンデッドが上空高く跳躍し、ブレイドの突進をかわしたのだ。

「何っ!?」

 凄まじい跳躍力に驚いたブレイドが思わず上空を見上げると、攻撃をかわしたローカストアンデッドが地上に降りてきた。

 良く見てみるとローカストアンデッドの脚が変形していた。まるでイナゴのような脚になっており、普段よりも高く跳躍できるように強化されている。

「そんな事もできるのかよ……!」

 大量のイナゴに分裂したり、脚を変形させる事ができたりと、もはや何でもありに近い。琴里は力は精霊の方が強いと言っていたが、技の多様性などはアンデッドも負けていないのではないかとブレイドは思う。

 と、ローカストアンデッドは背中の羽を羽ばたかせると、一気にブレイドとの距離を詰めると彼の体を掴んで空に舞い上がる。背後には研究所の壁があり、恐らくそこに叩き付ける気なのだろう。

「くそっ!」

 ブレイドはブレイラウザーのオープントレイを展開し、カードを一枚抜き取るとブレイラウザーでカードを読み取る。

『SLASH』

 オリハルコンエッジにカードの力が宿り、ブレイドはその刃を思いっきりローカストアンデッドの胸部に突き刺した。

『グアアアアアアアアアッ!!』

 ローカストアンデッドから悲鳴が放たれると同時、ブレイドの体が研究所の体に叩き付けられ全身を激痛が襲う。ブレイドとローカストアンデッドは真っ逆さまに落ち、地面に叩き付けられた。

「ぐっ……!」

 痛みで呻きながらブレイドがローカストアンデッドに目を向けると、倒れているローカストアンデッドのバックルが音を立てて二つに割れた。封印可能の合図だ。

 ブレイドはカードを一枚抜き取ると、ローカストアンデッドに向けて投げる。カードがローカストアンデッドに突き刺さると、ローカストアンデッドはカードに吸収されるように消え、カードがブレイドの手に戻ってくる。

 ローカストアンデッドを封印したカードにはイナゴのような絵にスペードの紋章、そして『KICK』という単語が並んでいた。

「ははっ……やっ……た……」

 呟きながらブレイドは地面に仰向けに倒れ込むと、震える手でターンアップハンドルを引いてラウズリーダーを回転させる。それからラウズリーダーに装填されているカードを抜き取るとオリハルコンエレメントが放たれ、ブレイドの全身が自動で下がってきたオリハルコンエレメントを通過すると、ブレイドは士道の姿に戻った。

(……烏丸所長、広瀬さん……)

 研究所にいるはずであろう二人の事を考えながら、士道は意識を失った。

 

 




平成仮面ライダーのDVDを見たいけど、中々時間が無くて辛い……。
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